著者
村上 源太郎 名越 利幸
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.95-98, 2014

本研究室では奥羽山脈,雫石町上空,盛岡市上空に南北に伸びる波状雲を発見した.波状雲は,北西から吹く季節風が奥羽山脈の山越え気流となることで生じる定常状態にある雲である.お天気雨,風花,虹などの盛岡市でしばしば見られる気象現象の原因と考えられる波状雲は,盛岡市の気象を学ぶ上で重要な役割を担っていると考えられる.高橋(2012)は「学校気象台」動画データによる観測によって 2011 年の波状雲月別出現頻度をまとめた.北西の季節風が吹く冬に波状雲は頻繁に出現し,夏にはほとんど見られないことが分かった.本研究では 2012 年から 2014 年までの観測を行い,先行研究と同様の結果を得ることができた.また,今回の観測では南北に伸びる典型的な波状雲の他に岩手山を中心に弧を描くように形成する波状雲を発見した.これより波状雲の形成には奥羽山脈だけでなく岩手山も影響を及ぼしていることが考えられる.今後は気象条件との関係にだけでなく,地形効果との関係についても調べるため,シミュレーションソフトの利用や模型による再現を考えている.
著者
大黒 孝文 山本 智一 出口 明子 竹中 真希子 黒田 秀子 舟生 日出男
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.33, no.7, pp.29-32, 2019-06-01 (Released:2019-05-29)
参考文献数
13

本研究では,教員に協同学習の指導力を付けることを目的に,教員研修及び教員養成課程において使用するマンガケースメソッド学習プログラム:ジグソー編を開発し評価を行った.学習プログラムは,現在マンガケースメソッド教材とテキストが完成している.兵庫県内の国立大学法人に通う中学校高校理科教員志望大学生43名を対象に3時間の授業において実験研究を行った.評価の内容は,学習プログラムの使用感や有効性とジグソー学習に対する関心・意欲に関する質問紙調査であった.評価の結果,すべての項目において有意に肯定的な評価を得た.以上から本プログラムの有効性が示唆された.
著者
生田目 美紀 小川 義和
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.33, no.7, pp.1-4, 2019-06-01 (Released:2019-05-29)
参考文献数
8

ドイツ博物館協会ではMUSEUMの使命として、インクルーシブデザインやダイバーシティを掲げている。具体的な内容を知るために、2019年2月10日から12日の期間、ドイツベルリンの博物館島を中心に、取組状況を調査した。子供からお年寄りまで、できる限り多くの来館者が楽しめるような配慮と工夫は、各館ごとに所蔵品を活かしながら取り組んでいることがわかった。現地でのハンズオン音声ガイドは基本的にどの館も多言語対応であるが、対応可能な言語の数は館によりまちまちであった。子供用音声ガイドを設置している館もあった。その他、聴覚や視覚に障害のある来館者のためのガイドツアーを用意している館もある。視覚障害のある来館者に向けた専用の常設展示「ネフェルティティの胸像」は、ユニバーサルデザインの7原則に従い、触れる胸像の高さや点字プレートの位置などを改善することにより、より良い展示になると考える。
著者
池田 幸夫
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.33-38, 2007 (Released:2018-04-07)
参考文献数
11

観察・実験と理論・法則は自然科学を構成する基本的な要素である。両者の関係に基づいて,理科授業を2つの型に分けることができる。まず,観察・実験によって得たデータから,きまり(理論・法則)を帰納的に発見させる授業が理論追求型である。学校で行われている問題解決型の授業の多くは,この型である。一方,理論や法則を前提にして,問題解決活動に重点を置いた授業が理論依存型である。理論や法則に対する矛盾を自覚させる場面をうまく仕組むことによって,理論依存型授業は科学的思考力の育成に大きな効果を発揮し,科学に対する学習者の興味関心を高めることが可能である。
著者
沢井 正美 東 徹哉
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.53-56, 1999
参考文献数
1
被引用文献数
1

小学校において, 地球温暖化現象を含む海洋環境問題を考える学習過程は, まだ充分検討されていない。そこで, 総合的な学習の時間を想定し, テレビ会議システムを活用した水族館との遠隔授業を構想してみた。日頃, 海との関わりの少ない上野小と直川小の小学生らが, マンボウの生態をきっかけに海洋環境について学ぶ授業実践の試みを考察する。
著者
比嘉 信勝
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.39-41, 1992

本県の学力向上対策は、沖縄の施政権が米国民政府から、日本国に返還されたいわゆる「祖国復帰」直後から、県民の世論によって開始された。復帰前から実施されていた日本政府による、沖縄の学生を国費で日本本土の国立大学に留学させる「国費留学制度」が、復帰に伴い段階的に廃止されることになったこと、また、琉球政府立の琉球大学が国立に移管されることによって、沖縄の高校生の入学率の問題、さらに、本土企業の進入等が予想され、人材育成が大きくクローズアップされるようになった。そこで、沖縄県教育委員会は県民世論にも応えて、復帰3年後の昭和50年に学習対策研究会を設置し、学力向上対策に着手した。昭和61年には、沖縄県学力向上対策委員会を設置し、ニ次に亘る答申を得て、昭和63年度に「学力向上対策主要施策」を策定し、学力向上を本県教育の最重点課題として位置付けて県民をあげた取り組みにすべく、強力に展開し、平成3年度は5年目を迎えている。本シンポジウムにおける「学力の視点」について、沖縄県教育委員会としては、昭和63年度から展開している「沖縄県学力向上対策主要施策」に掲げる目標・方針が「学力観」であり、その学力向上対策の経緯と具体的展開及ぴその成果を述べることとなる。
著者
天羽 康
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.17-22, 2018

<p>次期学習指導要領の改訂において,「理数探究」の新設が予定されており,ICT機器の活用の充実化も求められている。また,「理数探究」に取り組むにあたり,深い探究を材,ICT 機器を扱うような教材,理科の現象伴を数う教学で探究するような教材を蓄積していくことが今後の課題である。そこで,実験結果の処理が簡単にできる超音波距離センサに注目し,実験を通して重力と摩擦の関係を探る教材を開発した。本稿では,教材開発の意図,実践の概要を報告するとともに,高校1年生を対象として行った授業実践をもとに成果と課題を考察した。</p>
著者
平井 安久
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.57-62, 2018 (Released:2018-04-07)
参考文献数
2

資料の活用領域の教材開発を試みた.交通量のデータを分割表とモザイクプロット表示を用いて読み取る内容の授業実践を既に何度か実践した.過去の実践をふまえた改善された授業実践により生徒の記述内容の変容の様子を分析した.その結果,授業者の意図に沿った方向でデータの読み取りをした生徒と授業者の意図とは異なる見方をした生徒の両者が存在した.これにより教材化する際の重要な点がより明らかになった.
著者
上羽 貴之 和田 一郎 田中 明夫 森本 信也
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.45-50, 2015

今日,理科教育では平成 27 年度全国学力学習・状況調査の結果を受けて,「科学的な思考・表現」能力の育成が叫ばれている。本研究では,その育成に必要な能力として挙げられている問題解決能力の「推論(resoning)」に着眼した。理科学習を通じた推論と捉えられる「科学的推論」を育成するには,その成立過程及び教授学習モデルが明らかとなっていることが要請される。しかし,科学的推論を成立させるための要素や手立て等,詳細な研究が十分なされているとは言い難い。そこで,本研究では,科学的推論の育成を促す授業デザインの提案を目的とした。その際,タイトラーらが体系化した科学的推論と表象の関連を示したモデルと和田らが提案している表象ネットワークモデルを援用し,表象の視点に立脚することで学習モデルを模式化した。また,タイトラーらが明らかにした大別された2つの推論過程に位置付く推論活動を基に教授モデルを模式化した。これらのモデルを基に,実証的に理科授業を分析することで「科学的推論」の成立過程の内実を具体的に明らかにした。
著者
日高 俊一郎
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.57-62, 2004
参考文献数
13

家族の虫嫌い,虫好きに関して質問紙調査を行い,分析をした結果以下の知見が得られた。①母親に虫嫌いが多い。②虫嫌いの子どもの母親は虫嫌いである。③虫嫌いの子どもの父親は虫嫌いである。④虫好きの子どもの母親は虫好きである。⑤虫好きの子どもの父親は虫好きである。⑥父親の場合,子どもが虫好きでも虫嫌いである場合や子どもが虫嫌いでも虫好きである場合がある。
著者
藤谷 哲 峯村 恒平
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.91-96, 2019-03-16 (Released:2019-03-13)
参考文献数
5

スーパーサイエンスハイスクール(SSH)にみられるような特筆すべき中等教育のためには,人材育成や教員養成においてどのような専門性や教員意識が重要かを考察するため,全国のSSHに指定されている高等学校で働く先生方を対象として,どのような専門性を持った教員が,どのような役割意識をいだいて勤務されているのかを探ることを目的とした調査を行った.
著者
川端 康正 森田 直之 中安 雅美 中込 秀樹
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.45-50, 2016

人工知能やオートメーション化の発達が予想される将来社会を考慮すると、アクティブ・ラーニングの教育効果の重要性は工業高校でも高いと考えられる。しかしながら、授業への参加意欲があまりみられない偏差値下位の工業高校生徒に関して、アクティブ・ラーニングの導入障壁は高いことがうかがえた。本研究では、授業環境に対する調査を行い、アクティブ・ラーニング導入条件や講義内容の改善について検討をおこなった。調査から、生徒の生活習慣の質は低く、授業への集中よりも睡眠欲が勝ることが示唆された。また、アクティブ・ラーニングの知名度はほとんど皆無に等しかった。従来の講義のみでは生徒の学ぶ意欲を呼び起こすことは難しいが、総合的な考察から、各種の試みのひとつとして、生徒の関心に沿った形でアクティブ・ラーニングの段階的導入によって生徒の意欲も段階的に高めていくことは絶望的ではないことが示唆された。
著者
石﨑 友規
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.23-28, 2016 (Released:2018-04-07)
参考文献数
12

本稿では,文献調査により,シュワブ,ブルーナー両者のナラティヴに関する議論を検討した。その結果,両者とも,探究の過程で生じる困難な状況を取り上げる重要性を主張していることが明らかになった。また,特にブルーナーは,探究を物語的に語る際,語り手は語ろうとする内容を解釈する必要があり,しかも,物語解釈では解釈学的循環が行われている点に留意することを主張していた。これらの主張は,探究過程の理解を指向した「探究のナラティヴ」を基盤とする教授方略を開発する視点の一つになり得る。
著者
杜 威
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.77-81, 2011 (Released:2018-04-07)
参考文献数
12

21 世紀入りにともない,中国の学校教育はエーリト教育から大衆教育へと大きく変わろうとしている。2005 年から 2009 年までの 4 年間,高等学校への入学率は約 5 割から約 8 割に急上昇した。新しい数学教育課程は,小中学校の場合,「すべての者が価値のある数学を学ぶ,すべての者が必需の数学を獲得できる,それぞれの者が数学においてそれなりの発展を達成できる」(全日制義務教育数学課程標準,2001)という理念の下で制定・実施されており,高等学校の場合,「数学科が後期中等教育で実施される主な教科の 1 つであり,数学の最も基本的な内容を網羅すべき,国民の素質を培う最も基礎的な教育課程である」(普通高中数学課程標準,2003)という考えの下で制定・実施されている。本稿はこの新課程に準拠する教科書の特徴や内容の扱い方などの一部分に焦点をあてたものである。
著者
熊野 善介 国宗 進 唐木 清志 二宮 裕之 萱野 貴広
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告
巻号頁・発行日
vol.21, no.6, pp.5-11, 2007
参考文献数
16

3年間静岡理科教育研究会はFirstClassを導入し、e-learningベースの現職教員研修・教員養成教育システムの構築と問題点と課題を明らかにしてきた。その一環として北米における理数科現職教育のためのe-learningシステム利用の現状と課題について、理数科教育から多少幅を広げて、どのような動向が見られるかを探ってきた。その結果、Webを利用した学習の理論的な枠組みとして、構成主義者の立場を中心とした自己増殖型のフリーウェイ系のe-learningソフトが2000年後、幾何級数的に利用者が拡大していることを発見した。次世代の主体的な理数科教師のための授業の質を向上させるためのウェブベースのコンテンツとシステムの構築はわが国においても急務である。
著者
内ノ倉 真吾 石崎 友規 齊藤 智樹 Rahma Suwarma Irma 今村 哲史 熊野 善介 長洲 南海男
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.87-92, 2018 (Released:2018-04-07)
参考文献数
23

現在アメリカでは、科学、技術、工学、数学(Science, Technology, Engineering, Mathematics;STEM)の教育が推進されている。アメリカでの訪問調査と関連文献と Web 公開資料の分析に基づいて、STEM 教育の推進に関わる主体の具体的な活動事例と相互の関係を把握した。そこでは、州政府、教師教育団体、大学、K-12 教育段階の諸学校が、連邦政府の財政的な支援を基盤として、相互に協力・連携して、子どもの STEM 系教科の学力および興味・関心の向上と教師の職能開発の促進を目指した STEM 教育の推進活動が行われていた。
著者
杉本 ひとみ 隅田 学 V マンザーノ 稲垣 成哲 中山 迅
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.13-16, 2001
参考文献数
10

本研究では, フィリピンにおける小学5年生と中学2年生を対象として, 描画法を用い科学者の絵を描かせることで, 彼らがどのようなサイエンス・イメージを持っているのかを検討した。その結果, 次のような特徴が見られた。 (1)白衣を着た科学者像はあまり多くなかった。 (2)女性科学者像が多く, 特に女子児童・生徒によって多く描かれた。 (3)科学者の研究分野像は, 小学校では生物分野, 中学校では化学分野が多かった。 (4)科学者が研究に使っている器具については, 試験管とパソコンをイメージする児童・生徒の割合が高かった。
著者
吉田 安規良
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.111-116, 2018

<p>天球儀を外側から直接観察しつつ地球から見た天体の動きも観察できるようにウェアラブルカメラを組み込んだ透視天球儀と市販の非透視型天球儀を用いて,教員免許状更新講習を実施した.受講者は天球儀の操作法を時間内に習得できた.多くの受講者から,天球儀を教材・教具として使用するメリットとして,季節や月日,時刻と天体の位置との関係や天体の相互位置関係が確認できることや簡単に観察・観測できない地点の星空の様子を確認できることが,デメリットとして「視点移動の難しさ」や「操作説明の難しさ」がそれぞれ寄せられた.改造した透視天球儀は,視点を変換しながら天体の動きの理解を促すものだと評価された.一方,問題点として「準備の簡素化」と「カメラから得られた画像中の星や星座をわかりやすくする」が特に指摘された.</p>
著者
出口 明子 舟生 日出男 山口 悦司 稲垣 成哲
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.35-38, 2003
参考文献数
13
被引用文献数
4

筆者らは,再構成型コンセプトマップ作成ソフトウェアの開発に取り組んできている.本稿では,ユーザーのニーズを反映しながら2003年度に行ってきたソフトウェアの機能拡張について報告するとともに,カラーパレットの色数を増加した最新バージョンを紹介する.