著者
佐野 友香莉 辻 宏子 森田 裕介
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.181-186, 2019-12-21 (Released:2019-12-18)
参考文献数
12

本研究では,思考力などの21世紀を生き抜く力の育成に向けて開発した,ゲーム型学習教材「ラスワン」における,教材としての特徴を示した上で,大学生22名を対象とした調査より,⑴本教材と学習者が持っている思考力の関係性,⑵本教材をプレイする際に用いる推論方法,について検討した.その結果,⑴論理的思考力の高い学習者は,論理的思考力の低い学習者よりも,本教材の起こりうる場面における適切な推察について問く「場面提示テスト」において,場面に応じて適切な選択をする傾向があること、⑵学習者は,本教材をプレイする際,および,場面提示テストに回答する際,論理的思考力を用いており,その推論方法は演繹的推論に限らず,帰納的推論および類似的推論も用いていること,が示された.また,調査によって,計算を間違えた際に即時にフィードバックができるようなシステムを,ゲームデザインに組み込むべきであることが,明らかになった.
著者
人見 久城 尾形 祐美
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.1-6, 2018 (Released:2018-04-07)
参考文献数
7

児童・生徒の自然体験と理科に対する意識について調査を行った。自然体験の多いグループでは,小学生と中学生で共通に,「理科が大好き」と回答した割合が高い。一方,自然体験の多くないグループでは,「理科が大好き」の割合は,小学生でやや高いものの,中学生では低かった。「理科の勉強が楽しいか」,「将来,理科を使うことが含まれる仕事につきたいか」に対する回答においては,自然体験の多少と明確な関係は見られなかった。
著者
松原 克志 大辻 永
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.6, no.5, pp.27-28, 1992-04-04 (Released:2017-11-17)

本研究はSTS教育として科学の本性について構成主義的見地から講義方法を検討したものである. 科学の本性として「科学者杜会で観察事実 (データ) が帰納と演繹によって議論され、科学者杜会内の合意 (共通了解) が形成される. その合意が科学理論であり、科学理論を一般社会では知識と呼ぶ」を講義した後, KJ法の作業を経験させ, 科学の本性のモデルとKJ法のモデルとを提示した. そして演繹と帰納, 集団内の合意という観点から比較した課題作文を書かせた. その結果, 学習者は科学の本性を再定義した上で, 両者を学習者自身の観点から検討していた. このことは構成主義的な見地から科学の本性について学習者が理解していたことを示唆している。
著者
年森 敦子
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告
巻号頁・発行日
vol.21, no.5, pp.9-12, 2007
参考文献数
6

近年,コンピュータの高性能化やアプリケーションの充実により,小学校や中学校においてデジタル教材を授業で利用する機会は増加する傾向にある。情報機器の利用という授業環境の変化に伴い,教員にはデジタル教材の作成能力と活用能力も要求されてきている。一方,平成15年度からの高等学校における教科「情報」の実施により,大学における情報教育は,高等学校の「情報」との接続性の面からも,これまでの汎用的なアプリケーションソフト操作教育から,専門分野での活用や,将来の職域において活用できるようなコンピュータ操作技術の習得を目指すなど,高度な内容への変化が望まれてきている。そこで,本研究では,教員養成課程の学生を対象としたデジタル教材作成技術の育成,およびその効果の調査に関する研究の一環として,情報教育科目の中でのデジタル教材作成演習を取り上げ,実施結果について報告する。
著者
野田 尚吾 後藤 朱 紙本 裕一
出版者
Japan Society for Science Education
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.251-256, 2023-12-09 (Released:2023-12-07)
参考文献数
7

学習指導案は教科によって書き方も異なり,各項目も異なっている.教科全体で見たときに,その前に学習指導案はどのような傾向・特徴を持っているのだろうか.本稿は,教科全体で見たときの学習指導案の特徴を明らかにすることを目的とする.小学校学習指導案細案を題材として分析した結果,「①西日本・東日本で見て学習指導案細案の特徴に傾向の差はない.②質的に見ると,社会が最も他の教科と特徴が近く,理科が最も遠い傾向がある.③質的に見ると,近畿,中国・四国,九州は比較的特徴が近い指導案を書く傾向にある」という結果が得られた.
著者
山川 結衣
出版者
Japan Society for Science Education
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.291-294, 2023-12-09 (Released:2023-12-07)
参考文献数
3

本研究では,沖縄の生徒が理科の授業で学ぶものは身近ではないという潜在意識があることが課題であるとし,沖縄の文化に関連した理科の授業を行うことで,生徒の学習意欲に変化がみられるのではないかと考えた.授業づくりにおいて,沖縄の自然や文化に関する題材を用いることで,生徒の興味・関心を引き,理科と日常生活との関連性への気づきが得られることや,実践意欲が高まることが分かった.また,生徒自身で学習内容を応用し,科学的な根拠に基づき,新しい考え方へと発展させることができると実感できた.
著者
服部 裕一郎 上ヶ谷 友佑
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.59-64, 2019-12-21 (Released:2019-12-18)
参考文献数
13
被引用文献数
1

ユーモアを取り入れた数学教育の研究が,一般に,ユーモアが数学学習の情意的側面に肯定的な影響を与えることを期待する中,本研究は,ユーモアが数学学習の認知的側面に与える影響を検討する.とりわけ本稿の目的は,中等教育の文脈で「ユーモア」を意図的に取り入れた数学授業において,生徒達の数学的活動が真正となるためのユーモアの役割を明らかにすることである.理論的枠組みとして,ユーモアにおける不一致理論の立場に依拠し,中学校数学でユーモアを取り入れた数学授業の実践の具体から,生徒達の活動の様相を分析した.分析の結果,数学教育にユーモアを取り入れることにより,「生徒個々人の数学的な問題解決における思考の自由性の保障」,「授業者と生徒達によって交わされる教授学的契約の更新」,「生徒達の批判的思考の誘発」の3点をユーモアの役割として特定し,ユーモアが生徒達の真正な数学的活動の実現に貢献することを指摘した.
著者
酒本 涼 小倉 康
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.43-48, 2019-03-16 (Released:2019-03-13)
参考文献数
6

本研究の目的は,中学校段階の生徒に対して有効な,クリティカルシンキングの育成を図る理科指導法を開発することにある.そのためにまず,クリティカルシンキングに関するアンケートを設計し,大学生を対象に実施した.アンケートの結果から,批判的思考習慣の中でも特に「操作的定義」について習熟度が低いことが示された.これを踏まえて,クリティカルシンキングの育成を図る授業を設計し,実施した結果,一部において指導の有効性が示された.
著者
山代 一成 栢野 彰秀 有藤 裕衣 渡邉 潤 大谷 修司
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.30, no.8, pp.17-20, 2015 (Released:2018-04-07)

教育実習で中学校第 3 学年の単元「植物の成長と生殖」を担当した。ニンニクの根端を使用し体細胞分裂の観察をさせたが、観察できた生徒は多くはなかった。そのため、根端の処理方法を見直す必要があった。そこで、根端の固定と塩酸処理、染色等は定法で行い、根の先端から 5 [mm] で切断していた方法を根冠と成長点のみを切断する方法に変えたところ、体細胞分裂中の細胞を見つけやすくなった。その結果 1 クラス 35 人の生徒のうち半数以上が観察できた。
著者
山田 優基 今井 壱彦
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.1-4, 2019-03-16 (Released:2019-03-13)
参考文献数
6
被引用文献数
1

本研究では『AI vs.教科書が読めない子どもたち』にて扱われている,リーディングスキルテストによって判定する基礎的読解力の1分野である「イメージ同定」に焦点を当てている.筆者らは「文章や図形やグラフを比べて,内容が一致しているかどうかを認識する能力」という「イメージ同定」の定義と,例題を基に,「イメージ同定」を測定する問題に必要な4つの要素を挙げている.本稿では,全国学力・学習状況調査とTIMSS調査の問題を参考にして,「リサイクル問題」と「ぬりつぶし問題」の提案をおこなう.参考にした全国学力・学習状況調査とTIMSS調査の問題の趣旨を述べた後,「リサイクル問題」と「ぬりつぶし問題」のリーディングスキルテストとして出題する趣旨,「イメージ同定」を測定する問題に必要な4つの要素を満たしていること,および選択肢を確認する.また,「リサイクル問題」と「ぬりつぶし問題」において想定される誤答を記述する.
著者
長谷川 恭子 吉田 歩 森藤 義孝
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.25-30, 2015 (Released:2018-04-07)
参考文献数
7
被引用文献数
1

平成 20 年の小学校学習指導要領の改訂により,「月の満ち欠け」に関する内容が,小学校第 6 学年において再び取り扱われるようになった。吉田らは,天動説の立場から,小学校第 6 学年「月と太陽」で取り上げる「月の満ち欠け」について,月早見板の作成活動を取り入れた授業を構想し,実践を行った。本研究では,小学校第 6 学年の「月の満ち欠け」に関する効果的な学習指導法の検討を行うため,吉田らの授業を受けた子どもを対象に,月の満ち欠けに関わる理解がどのように維持され,あるいは崩壊しているのかを明らかにした。
著者
山本 輝太郎 久保田 善彦
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.23-26, 2022-03-27 (Released:2022-03-24)
参考文献数
13

新型コロナウイルスの世界的な流行によるいわゆる「コロナ禍」において,科学的根拠に乏しいとみなしうるさまざまな説(疑似科学的言説)も登場し,問題となっている.なかには「新型コロナワクチンを接種すると不妊になる」といった,それが蔓延することでより深刻な問題を引き起こしかねない説もあり,そうした説に傾倒する背景要因の究明は社会的な喫緊の課題であるといえる.本研究では,こうした新型コロナに関連する疑似科学的言説への態度に関わる背景要因の分析を行った.具体的には,新型コロナに関して科学的根拠に乏しいと思われる個別の説を収集,質問項目を作成したうえで,「科学に対する認識」や「新型コロナ以外の疑似科学的言説への態度」「科学知識」などとの関連性を検討した.クラウドソーシングを用いた調査を行った結果,新型コロナに関する疑似科学的言説への態度に対して,従来の疑似科学への態度や科学に対する認識,科学知識との一定の関連性が示された.これらの結果に基づき,科学に対する認識の次元にまで踏み込んだ教材開発およびその教育実践の重要性について提案したい.