著者
佐藤 慧 丹保 亜希仁 奥田 勝博 清水 惠子 南波 仁 一宮 尚裕 山蔭 道明
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.454-457, 2021-09-01 (Released:2021-09-01)
参考文献数
10

要約:急性カフェイン中毒は用量依存性の反応を示し,同じくキサンチン誘導体であるテオフィリン中毒に症状や機序が類似する。致死量の急性カフェイン中毒に対して血液透析(hemodialysis, HD)を施行して改善を認めた症例を経験し,経過中のカフェインおよび中間代謝産物のテオフィリン血中濃度の推移から治療戦略について検討した。本症例のカフェインとテオフィリンの血中濃度は,内服後早期で異なった推移を示した。HD施行後,腸管再吸収に伴うカフェイン血中濃度再上昇時も含め,両者は相似的に推移した。HD効果によるカフェイン血中濃度低下の指標や,再吸収による血中濃度再上昇の指標として,テオフィリン血中濃度の推移は参考となる可能性が示唆された。
著者
武田 親宗 美馬 裕之 川上 大裕 浅香 葉子 朱 祐珍 植田 浩司 下薗 崇宏 山崎 和夫
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.306-311, 2016-05-01 (Released:2016-05-02)
参考文献数
7
被引用文献数
1 2

【目的】ICU再入室に関する危険因子を検討した。【方法】後方視的診療録調査で,2012~2013年にICUを退室した患者のうち,死亡退室,18歳未満の小児患者,データ不備を除いた,生存退室患者879例を対象とした。【結果】ICU再入室は36例であった。独立した再入室の危険因子[OR]は入室時のAPACHE IIスコア[1.11 per point]と輪状甲状間膜穿刺キット挿入[15.5]と主診療科(腹部外科[7.34],頭頸部外科[9.03],その他の外科[4.74])であった。25例が隣接するハイケアユニット(HCU)からの再入室で,再入室理由の18例が呼吸器系トラブルを理由としていた。【結論】入室時の重症度が高く,喀痰排出障害がある患者の再入室のリスクは高く,HCUなどワンステップおいた退室が妥当と考えられる。
著者
小野 理恵 橘 一也 松浪 薫 木内 恵子 宮川 慈子 香河 清和 渡辺 高士 奥山 宏臣
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.213-218, 2008-04-01 (Released:2008-11-01)
参考文献数
7

気管無形成は予後不良の先天性疾患で,長期生存例の報告はほとんどない。今回,退院に至った気管無形成患児の集中治療管理について報告する。患児は出生直後よりチアノーゼを呈し,食道挿管によって換気可能となった。気管無形成と診断し,出生当日に食道皮膚瘻造設術,食道絞扼術,胃瘻造設術を行った。術後,気道として利用している食道と気管食道瘻が容易に閉塞し,換気不全を繰り返した。鎮静や高いPEEPにより気道の開存維持を図ったが著効せず,呼吸管理に難渋した。生後52日目,人工心肺下に食道気管吻合と食道外ステント術を施行し,術後呼吸状態が安定した。2回目の術後34日目に人工呼吸からの離脱が可能となり,生後10ヶ月で退院となった。気管無形成では,出生直後の適切な蘇生処置とそれに続く姑息的手術により生存可能であるが,呼吸管理が困難であり,気道の開存を維持するために更なる外科的治療を考慮する必要がある。
著者
西村 文宏 牛島 智子 三嶋 あかね 杉野 由起子 柳 茂樹 宮村 重幸 鬼木 健太郎 猿渡 淳二
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.26, no.6, pp.438-444, 2019-11-01 (Released:2019-11-01)
参考文献数
35

【目的】心臓血管外科手術患者における術後せん妄発症のリスク因子を抽出し,せん妄チェックシートを作成する。【方法】心臓血管外科手術を施行した患者267例を対象に,せん妄のリスク因子をロジスティック回帰分析により抽出し,術前に確認可能な因子をもとにせん妄チェックシートを作成した。さらに,2017年度の心臓血管外科で手術を施行した患者131例に本チェックシートを適用し,検証した。【結果】緊急手術,ICU入室期間の延長,高齢,ヒドロキシジンの単剤投与が有意なリスク因子であった。ヒドロキシジン未使用患者を対象としたサブ解析では多剤併用,低体重がリスク因子であった。せん妄を発症した患者の2例に1例はせん妄チェックシートでせん妄高リスクに該当し,本チェックシートの有用性が示唆された。【結論】本研究で作成したせん妄チェックシートを用いることで,術前にせん妄高リスク患者を効率的に把握できることが示唆された。
著者
戸塚 亮 鈴木 秀鷹 相原 史子 櫻井 うらら 松尾 和廣 寺岡 麻梨 原 俊輔 原田 尚重
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.28, no.6, pp.532-536, 2021-11-01 (Released:2021-11-01)
参考文献数
10

メトホルミン関連乳酸アシドーシス(metformin-associated lactic acidosis, MALA)は広く知られているが,血漿中濃度測定と剖検の報告は少ない。今回,MALAを発症して死亡し,死亡前の血漿メトホルミン濃度が高値であった剖検例を経験したので報告する。症例は糖尿病でメトホルミン内服中の64歳,女性。嘔吐を主訴に救急搬送され,MALA,急性腎障害,肺炎の診断でICUに入室した。抗菌薬,人工呼吸器管理,腎代替療法を施行したが奏功せず死亡した。血漿メトホルミン濃度は51.9 mg/Lと高値であった。病理解剖で巣状融合性肺炎を認めたが,高度な乳酸アシドーシスの原因は指摘できず,MALAの診断に矛盾しなかった。 血漿中濃度測定,病理解剖ともに行った症例は稀少で, MALAの診断には血漿メトホルミン濃度と臨床像の蓄積が重要であり,特異的な病理所見の有無の確認のためには,さらなる研究が待たれる。
著者
日本集中治療医学会集中治療CE検討委員会
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.139-148, 2019-03-01 (Released:2019-03-01)
参考文献数
3
被引用文献数
1 1

2014年の診療報酬改定以降,集中治療室(ICU)に関わる臨床工学技士(clinical engineer, CE)が増加している。そこで,CEのICUにおける業務成果を把握するため,医師・看護師からCEの評価を受ける形式で調査を行った。血液浄化・体外循環・人工呼吸の生命維持管理装置を安全に迅速に実施すること,医療機器のトラブル対応・インシデント発生軽減・不安軽減にどの程度CEが貢献しているか,CEの業務に満足しているかを調査した。その結果,CEがICUに常駐する・夜勤を行うなど,ICUに長く関わるほど貢献度・満足度ともに高く評価された。このことによりCEがより深くICU業務に関わることが,ICUにおける治療の質の向上や安全確保に成果を上げることにつながると考える。
著者
卯野木 健
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.381-386, 2013-07-01 (Released:2013-08-09)
参考文献数
11

Quality indicatorは,現在行われている医療の質を示すために用いられ,質を改善する試みを行う場合に必須なものである。その中で,看護の質を示す指標はnursing-sensitive indicators(NSI)と呼ばれる。NSIには,褥瘡発生率,転倒転落率などが挙げられるが,急性期領域ではさらに鎮静深度や離床までの期間などもNSIとして定義されうると考えられる。しかし,看護師の役割や責任範囲は施設間で異なるため,ある指標がNSIと成りうるかは施設によって異なる可能性が大きい。今後は看護師の役割や責任範囲を標準化し,どのような指標がNSIとして妥当なのかを検討する必要があるだろう。
著者
坂本 篤裕 清水 淳 鈴木 規仁 松村 純也 小川 龍
出版者
The Japanese Society of Intensive Care Medicine
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.15-19, 2001-01-01 (Released:2009-03-27)
参考文献数
29
被引用文献数
2 2

エンドトキシンショック時には,誘導型一酸化窒素合成酵素による一酸お化窒素(NO)の過剰産生とともに,誘導型ヘムオキシゲナーゼによる一酸化炭素(CO)の過剰産生が病態進展に重要な役割を担うことが示唆されている。NOとCOはともにグアニリルシクラーゼのヘム分子に結合し,cGMP増加による血管平滑筋弛緩作用を示すとされるが,その結合の競合作用や,産生酵素活性の抑制作用などの相互調節機構も存在することが示されている。一方,リポポリサッカライド(LPS)などの過剰な刺激における両者の相互影響や病態進展への役割については不明であり,本研究ではラットエンドトキシンショックモデルにおいてnitrosyl hemoglobin (NO-Hb)およびcarboxy-hemoglobin(CO-Hb)を指標に,それぞれの合成酵素阻害薬であるL-canavanine(CAN)およびzinc protoporphyrin (ZPP)による影響を血圧変動とともに検討した。LPSの投与により経時的血圧低下とNO-HbおよびCO-Hbの増加を認めた。CANおよびZPPはともに血圧低下抑制効果を認めたが,CANはNO-Hb増加のみを,ZPPはCO-Hb増加のみを抑制した。致死的エンドトキシンショック時にはNO産生系とCO産生系抑制はともに血圧低下抑制に有用であるが,それぞれの産生酵素阻害薬の効果からみた場合,生体調節機構に有用と考えられる相互作用は認められなかった。
著者
江木 盛時 小倉 裕司 矢田部 智昭 安宅 一晃 井上 茂亮 射場 敏明 垣花 泰之 川崎 達也 久志本 成樹 黒田 泰弘 小谷 穣治 志馬 伸朗 谷口 巧 鶴田 良介 土井 研人 土井 松幸 中田 孝明 中根 正樹 藤島 清太郎 細川 直登 升田 好樹 松嶋 麻子 松田 直之 山川 一馬 原 嘉孝 大下 慎一郎 青木 善孝 稲田 麻衣 梅村 穣 河合 佑亮 近藤 豊 斎藤 浩輝 櫻谷 正明 對東 俊介 武田 親宗 寺山 毅郎 東平 日出夫 橋本 英樹 林田 敬 一二三 亨 廣瀬 智也 福田 龍将 藤井 智子 三浦 慎也 安田 英人 阿部 智一 安藤 幸吉 飯田 有輝 石原 唯史 井手 健太郎 伊藤 健太 伊藤 雄介 稲田 雄 宇都宮 明美 卯野木 健 遠藤 功二 大内 玲 尾崎 将之 小野 聡 桂 守弘 川口 敦 川村 雄介 工藤 大介 久保 健児 倉橋 清泰 櫻本 秀明 下山 哲 鈴木 武志 関根 秀介 関野 元裕 高橋 希 高橋 世 高橋 弘 田上 隆 田島 吾郎 巽 博臣 谷 昌憲 土谷 飛鳥 堤 悠介 内藤 貴基 長江 正晴 長澤 俊郎 中村 謙介 西村 哲郎 布宮 伸 則末 泰博 橋本 悟 長谷川 大祐 畠山 淳司 原 直己 東別府 直紀 古島 夏奈 古薗 弘隆 松石 雄二朗 松山 匡 峰松 佑輔 宮下 亮一 宮武 祐士 森安 恵実 山田 亨 山田 博之 山元 良 吉田 健史 吉田 悠平 吉村 旬平 四本 竜一 米倉 寛 和田 剛志 渡邉 栄三 青木 誠 浅井 英樹 安部 隆国 五十嵐 豊 井口 直也 石川 雅巳 石丸 剛 磯川 修太郎 板倉 隆太 今長谷 尚史 井村 春樹 入野田 崇 上原 健司 生塩 典敬 梅垣 岳志 江川 裕子 榎本 有希 太田 浩平 大地 嘉史 大野 孝則 大邉 寛幸 岡 和幸 岡田 信長 岡田 遥平 岡野 弘 岡本 潤 奥田 拓史 小倉 崇以 小野寺 悠 小山 雄太 貝沼 関志 加古 英介 柏浦 正広 加藤 弘美 金谷 明浩 金子 唯 金畑 圭太 狩野 謙一 河野 浩幸 菊谷 知也 菊地 斉 城戸 崇裕 木村 翔 小網 博之 小橋 大輔 齊木 巌 堺 正仁 坂本 彩香 佐藤 哲哉 志賀 康浩 下戸 学 下山 伸哉 庄古 知久 菅原 陽 杉田 篤紀 鈴木 聡 鈴木 祐二 壽原 朋宏 其田 健司 高氏 修平 高島 光平 高橋 生 高橋 洋子 竹下 淳 田中 裕記 丹保 亜希仁 角山 泰一朗 鉄原 健一 徳永 健太郎 富岡 義裕 冨田 健太朗 富永 直樹 豊﨑 光信 豊田 幸樹年 内藤 宏道 永田 功 長門 直 中村 嘉 中森 裕毅 名原 功 奈良場 啓 成田 知大 西岡 典宏 西村 朋也 西山 慶 野村 智久 芳賀 大樹 萩原 祥弘 橋本 克彦 旗智 武志 浜崎 俊明 林 拓也 林 実 速水 宏樹 原口 剛 平野 洋平 藤井 遼 藤田 基 藤村 直幸 舩越 拓 堀口 真仁 牧 盾 増永 直久 松村 洋輔 真弓 卓也 南 啓介 宮崎 裕也 宮本 和幸 村田 哲平 柳井 真知 矢野 隆郎 山田 浩平 山田 直樹 山本 朋納 吉廣 尚大 田中 裕 西田 修 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.28, no.Supplement, pp.27S0001, 2020 (Released:2021-02-25)
被引用文献数
1

日本集中治療医学会と日本救急医学会は,合同の特別委員会を組織し,2016 年に発表した日本版敗血症診療ガイドライン(J-SSCG) 2016 の改訂を行った。本ガイドライン(J-SSCG 2020)の目的は,J-SSCG 2016 と同様に,敗血症・敗血症性ショックの診療において,医療従事者が患者の予後改善のために適切な判断を下す支援を行うことである。改訂に際し,一般臨床家だけでなく多職種医療者にも理解しやすく,かつ質の高いガイドラインとすることによって,広い普及を目指した。J-SSCG 2016 ではSSCG 2016 にない新しい領域[ICU-acquired weakness( ICU-AW)と post-intensive care syndrome(PICS),体温管理など]を取り上げたが,J-SSCG 2020 では新たに注目すべき4 領域(Patient-and Family-Centered Care,sepsis treatment system,神経集中治療,ストレス潰瘍)を追加し,計22 領域とした。重要な118 の臨床課題(clinical question:CQ)をエビデンスの有無にかかわらず抽出した。これらのCQ には,本邦で特に注目されているCQ も含まれる。多領域にわたる大規模ガイドラインであることから,委員25 名を中心に,多職種(看護師,理学療法士,臨床工学技士,薬剤師)および患者経験者も含めたワーキンググループメンバー,両学会の公募によるシステマティックレビューメンバーによる総勢226 名の参加・協力を得た。また,中立的な立場で横断的に活躍するアカデミックガイドライン推進班をJ-SSCG 2016 に引き続き組織した。将来への橋渡しとなることを企図して,多くの若手医師をシステマティックレビューチーム・ワーキンググループに登用し,学会や施設の垣根を越えたネットワーク構築も進めた。作成工程においては,質の担保と作業過程の透明化を図るために様々な工夫を行い,パブリックコメント募集は計2 回行った。推奨作成にはGRADE方式を取り入れ,修正Delphi 法を用いて全委員の投票により推奨を決定した。結果,118CQ に対する回答として,79 個のGRADE による推奨,5 個のGPS(good practice statement),18 個のエキスパートコンセンサス,27 個のBQ(background question)の解説,および敗血症の定義と診断を示した。新たな試みとして,CQ ごとに診療フローなど時間軸に沿った視覚的情報を取り入れた。J-SSCG 2020 は,多職種が関わる国内外の敗血症診療の現場において,ベッドサイドで役立つガイドラインとして広く活用されることが期待される。なお,本ガイドラインは,日本集中治療医学会と日本救急医学会の両機関誌のガイドライン増刊号として同時掲載するものである。
著者
片山 浩
出版者
The Japanese Society of Intensive Care Medicine
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.115-121, 1998-04-01 (Released:2009-03-27)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

現在行われている持続血液浄化法の3形態,持続血液濾過(CHF),持続血液透析(CHD),持続血液濾過透析(CHDF)の物質除去効率の違いを,血中尿素窒素(分子量60),ビタミンB12(分子量1,355),デキストラン(分子量4,400),チトクロームC(分子量12,400),ミオグロビン(分子量17,800)のクリアランスを計測することにより検討した。血液流量は100ml・min-1,浄化器はPAN(polyacrylonitrile)膜を使用した。CHFはいずれの分子量領域においても,濾過量にほぼ等しいクリアランスを示した。CHDは小分子量物質ではCHFと同等のクリアランスを示したが,分子量が増大するに従って,透析液流量を増加させてもクリアランスが増加しにくくなった。CHDFのクリアランスは常にCHDとCHFの間にあった。