著者
髙橋 辰政
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.412-419, 1990
被引用文献数
7

重合した可視光線重合型レジン中の残存二重結合量(RDB)の経時的変化を検討した.RDBは, 試作のアンフィルドレジン5種, 市販のコンポジットレジン8種および歯冠用硬質レジン3種について, フーリエ変換赤外分光光度計を用い, 液膜法に準じて測定した.吸光度の測定は, 光照射前および光照射後の所定の時期に行い, RDBは, 光照射前の二重結合量に対する百分率で表示した.5種のアンフィルドレジンのRDBは, いずれも光照射開始5分以降対数時間と直線関係で減少した.また, モノマーの種類によって5分でのRDBおよびこの時間以降でのRDBの減少速度に差が認められた.5種のアンフィルドレジンのなかで, 光照射開始5分後のRDBの最も少ない値を示したのは, モノマーとしてBMPEPP(BPE-200)を用いた場合で, 逆に最も多い値を示したのは, モノマーとして4PN-(TF)_2-(EMA)_6を用いた場合であった.Tri-EDMAを用いたアンフィルドレジンの場合, 光照射時間の延長にともない, RDBは減少したが, 1カ月後ではいずれの照射時間のものもほぼ同じ値を示した.市販可視光線重合型コンポジットレジンおよび歯冠用硬質レジンのRDBは, いずれも光照射開始5分以降対数時間と直線関係で減少した.また, いずれのレジンの場合もRDBは, ベースモノマーがBis-GMA系の場合に少なく, UDMA系で多かった.
著者
森田 直久
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.218-239, 1990-03-25 (Released:2018-04-03)
被引用文献数
1

本発明の目的は, 鋳造床程度の大きさの純チタンを電解研磨により鏡面にまで仕上げることである.従来から, チタンの電解研磨は, その強い酸化傾向のために困難とされてきたが, 今回非水系の電解液を用い, 被研磨体の形状や電解条件などに工夫を加えた結果, 30cm2程度の大きさの純チタン板を電解研磨により鏡面仕上げすることができた.まず, 小型試片の電解研磨条件を見いだした.しかし, 大型試片の場合には同じ条件では, 研磨面の中程に顕著な梨地を生じ, 均一な研磨はできなかった.梨地部分は, 表面あらさ値が大きく, このままでは生体材料に適さない.このような梨地は電解液面を貫く被研磨体の面積を小さくすることで阻止できることを見いだした.また, 純チタン鋳造体の電解研磨は, 加工材の場合と同一の研磨条件で可能であった.さらに, アルコールを主成分とする電解液の溶媒成分の配合を変えることによって, より安全で, ふかみのある鏡面研磨が可能で, 疲労しにくく, 使用回数などの制限の比較的緩やかな優れた電解液を開発した. 例 エチルアルコール70ml iso-プロピルアルコール30ml 塩化アルミニウム6g 塩化亜鉛25g 電解条件 電圧30V 通電時間6分 電解液温25℃
著者
日比野 靖 橋本 弘一
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.14, no.5, pp.554-559, 1995
参考文献数
14
被引用文献数
8

本研究の目的は強化型グラスアイオノマーセメントの諸性質を測定し, 従来型のグラスアイオノマーセメントと比較検討を行うことである. 強化型グラスアイオノマーセメント (Fuji DUET) と従来型のグラスアイオノマーセメント (Fuji I) を本研究に使用した. 各セメントの練和はメーカー指定の粉液比にて行った.稠度, 硬化時間, 被膜厚さ, 圧縮強さならびに崩壊率をADA規格No.8に準じて測定を行った. また, 操作時間の測定もあわせて行った. 接着強さならびに接触角の測定は従来から行ってきた方法により測定した. その結果, 強化型グラスアイオノマーセメントの稠度, 硬化時間, 操作時間ならびに圧縮強さは従来型と比較して小さい結果を示した. 被膜厚さならびに崩壊率については従来型と差が認められなかった. 強化型グラスアイオノマーセメントの各被着体に対する接触角はチタンを除いて従来型と比較して有意に大きな結果を示した. 強化型グラスアイオノマーセメントの各被着体に対する接着強さはAu-Ag-Cu合金を除いて従来型と差が認められなかった.<br> 以上のことから, 強化型グラスアイオノマーセメントは稠度, 操作時間ならびに圧縮強さが小さいものの, 従来型と比較してその諸性質に懸念される問題はないことが示唆された.
著者
荒木 吉馬 川上 道夫 菊池 雅彦
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.299-306, 1985
被引用文献数
3

前報において, トレー内の圧力分布は, 用いるトレーの形態に強く依存するものであることを指摘したが, 今回これをさらに具体的に実証するため, 3種の円形トレー, すなわち平板状のFタイプ, 同心円状のV字形溝を付したVタイプおよびVタイプの周縁にふちどりを付したRタイプにおいて内部圧力分布を測定するとともに, そのトレー形態による効果を流体力学的に検討した.<br> 各点の圧力は, Rタイプ, Vタイプ, Fタイプの順に大きかった.VタイプとRタイプのV字形溝より内側の圧力分布はほぼ平坦な形であり, 溝の部分で急激な圧力降下を示した.また, Rタイプのふちどり部分においても著明な圧力降下がみられた.<br> これらの特徴は解析結果とよく対応している.つまり溝およびふちどり部分では, 試料のせん断速度が高くなり, さらに溝の部分では流動路も長くなるので, それぞれの部分において特に圧力降下が著しくあらわれることになる.<br> 以上の結果から, トレー形態や筋圧形成が圧力分布に及ぼす影響はかなり明確に把握できるものと思われる.
著者
平野 進 齋藤 仁弘 西山 實 平澤 忠
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.12, no.6, pp.759-764, 1993-11-25 (Released:2018-04-05)
被引用文献数
6

市販光重合型コンポジットレジンの乾燥状態と吸水飽和状態における熱的性質について, 室温条件下で測定した.その結果, コンポジットレジンの熱伝導率は0.3〜0.8Wm-1K-1の範囲であった.また, 水分がその熱的性質に影響を及ぼすと示唆された.さらに, 吸水による影響は単純ではなく, フィラーの種類および混入量によって異なることが判明した.シリカが主たるフィラーでは, 吸水飽和状態での熱拡散率および熱伝導率は, 乾燥状態でのそれらに比較して上昇した.しかし, Zrのような元素を含むフィラーでは, 吸水飽和状態での熱拡散率や熱伝導率は, 乾燥状態のそれらに比較して低下した.
著者
横山 和泰 今井 弘一
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.9, no.5, pp.703-719, 1990-09-25 (Released:2018-04-05)

最近の合着用セメントの細胞毒性をしらべるために, 市販の5種類18製品の市販品について, 細胞回復度試験法を活用してL-929細胞, HEp-2細胞, Gin-1細胞およびHp細胞を用いて実験を行った.その結果, リン酸亜鉛セメントおよびグラスアイオノマーセメントでは, 練和後3時間目および24時間目ともに, 4種類の細胞に対していずれもきわめて低い細胞回復度であった.カルボキシレートセメントでは, Hp細胞を除く3種の細胞に対して練和後の時間経過にかかわらず低い細胞回復度を示した.しかし, Hp細胞では練和後の時間経過でわずかながら細胞回復度の上昇をみた.グラスアイオノマーセメントでは, リン酸亜鉛セメントと同じく練和後の時間経過にかかわらず, きわめて低い細胞回復度であった.接着性レジンセメントでは5製品中の2製品で低い細胞回復度であったものの, 他の3製品は中等度の値を示した.酸化亜鉛ユージノール・EBAセメントではグラスアイオノマーセメントと同程度の低い細胞回復度であった.また, 各セメントの実験培養液のpH値は, リン酸亜鉛セメント, グラスアイオノマーセメントおよび酸化亜鉛ユージノール・EBAセメントでは弱酸性に傾き, カルボキシレートセメントではほとんど変化がなかった.一方, 接着性レジンセメンでは, 5製品で酸性傾向からアルカリ性傾向を示す製品まで認められた.さらに血清添加培養液中での溶解度は, グラスアイオノマーセメントで最も高かった.酸化亜鉛ユージノール・EBAセメントならびに接着性レジンセメント1製品がつぎに高く, カルボキシレートセメントでグラスアイオノマーセメントの約1/2の溶解度を示し, ついでリン酸亜鉛セメントと接着性レジンセメント1製品であった.他の接着性レジンセメント3製品ではほとんど溶解性が認められなかった.以上の結果から, 合着材の種類あるいは製品によって4種類の細胞に対する影響は大きく異なることが判明した.それには材料組成, 溶解度ならびに試験法の関与が考えられた.さらに合着材の細胞毒性をしらべる上で細胞回復度試験法の有用性も確認された.
著者
渡辺 和美エリゼッテ 鈴木 一臣 山下 敦 繁田 真人 今井 誠 矢谷 博文 中井 宏之
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.187-191, 1996
参考文献数
16
被引用文献数
5

歯質被着面に一定期間作用した仮着材は, 接着における阻害因子になることが懸念されている.そこで, 仮着材を作用させた象牙質に対する接着性レジンセメントの接着強さを測定し, 残留仮着材が接着に及ぼす影響について検討した.すなわち, ウシの歯象牙質に種々の仮着材を24時間作用させた後, エキスカベーターを用いて仮着材を肉眼的に付着していない状態まで除去し, この被着面と接着材(パナビア21, クラレ)との接着強さの測定および接着界面の形態をSEM観察した.その結果, コントロールの接着強さは6.9MPaであったが, ハイボンドテンポラリーセメント作用面に3.6MPa, フリージノールテンポラリーパック作用面に4.9MPaおよびテンパック作用面に5.3MPaの値を示し, いずれの仮着材においても低い値を示した.一方, 接着界面のSEM像から, コントロール試料においては約0.5μmの樹脂含浸層が確認されたが, 仮着材を作用させた後の接着界面には樹脂含浸層が生成されていなかった.
著者
藤島 昭宏 宮崎 隆 藤島 由香里 芝 [アキ]彦
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.218-226, 1997-05-26 (Released:2018-12-22)
参考文献数
17
被引用文献数
1

レジン前装チタンクラウンを製作する基礎的研究として, ノンリテンションビーズ法を想定した, 被着体としてのチタンの表面性状に及ぼすサンドブラスト処理の影響について, コバルトクロム合金と比較した.実験には平均粒径50, 110, 250μmの3種類のアルミナ粉末を用いて, 金属の板状試験片に対し処理圧力0.25〜0.45 MPaで5〜30秒間サンドブラスト処理を施し, その表面性状の変化を計測した. サンドブラスト処理による試験片の重量損失は, 処理時間の増加とともに単調に増加したが, アルミナ粒径の相違による影響は小さかった. チタンの重量損失は, コバルトクロム合金と比較して顕著に小さかったが, 体積損失に換算するとほぼ同一の値を示した. 反射電子(BSE)像から, 試験片表層にはサンドブラスト処理に用いたアルミナ粒子が明瞭に観察され, BSE像の画像解析から面積比の概算値で54〜61%のアルミナがチタン処理面上に存在していた. X線微小分析の結果, 10秒間のサンドブラスト処理でチタン上には33〜45 wt%, コバルトクロム合金上では22〜42 wt%のアルミナが検出された. また, 処理に用いたアルミナ粒径が小さくなるほど, アルミナの存在量は大きくなったが, 処理時間, 圧力の影響は小さかった. チタンでは処理圧を低下させることにより, 試験片の変形量は顕著に減少したが, 表面粗さの低下は小さかった. これらの結果から, チタンに対するサンドブラスト処理は, 他の非貴金属合金に対するよりも低圧力, 短時間の処理を行うほうが好ましく, またサンドブラスト処理によるアルミナ汚染の影響が避けられないため, サンドブラスト処理面に対する接着は, 金属だけではなくアルミナに対する接着性も考慮する必要性が示唆された.
著者
林 純子 金子 和幸 井上 豊仁 下村 和則 横瀬 勝美 廣瀬 英晴 西山 實 黒田 隆
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.279-286, 2004-07-25 (Released:2018-04-28)
参考文献数
9
被引用文献数
1

市販石膏溶解剤12製品を組成分析(IR, WDX, TG-DTA)して主成分を同定するとともに,石膏浸漬前後での溶解剤のpH変化,浸漬時間による溶解量を測定した.石膏溶解剤の主成分はN-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン-N, N', N'-三酢酸三ナトリウムである可能性が高かった.溶解剤の固形分含有率は10.4〜31.8%であった.未使用の石膏溶解剤のpHは,10製品で8〜9を,2製品で13以上を示した.普通石膏硬化物の溶解率は,浸漬時間の増加に件い増大し,pH8〜9の10製品では浸漬2〜3時間で100%を示したが,pH13以上の2製品では浸漬3時間で14.3〜37.4%であった.
著者
齊藤 仁弘 升谷 滋行 塩田 陽二 廣瀬 英晴 平野 進 西山 實
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.216-220, 2005-04-25 (Released:2018-04-28)
参考文献数
10
被引用文献数
3

可視光応答型酸化チタン光触媒含有塗料の義歯床用レジンに付着したカレー食品に対する洗浄効果について検討した.試験体は, 可視光応答型酸化チタン光触媒含有塗料を義歯床用レジンにコーティングしたのち, カレー溶液中に8時間浸漬した.浸漬後, 可視光線重合器を用いて試験体に20および60秒間光照射した.試験体の色差は, 光照射前後の色調を測定して算出した.L∗値は, 同様の値であったが, 照射時間の延長にともないa∗値は増加し, b∗値は減少した.また, 光照射前後の色差は, 照射時間の延長にともない増加した.これらのことから, 可視光応答型酸化チタン光触媒含有塗料を用いた義歯洗浄の有用性が示唆された.
著者
宮川 修 渡辺 孝一 大川 成剛 中野 周二 塩川 延洋 田村 久司
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.4, no.6, pp.645-656, 1985-11-25

一定速度で被削材を送り, 与えた工具の切り込みにたいしてくりかえし研削で得られる実研削量によって研削工具の性能を評価する試験装置を試作した.これにより13%Cr-Ni合金を被削材として研削試験を行ない, CBN電着ホィールの研削性能を市販のビトリファイド系アルミナホィール2種と比較した.ホィールの振れまわりが影響して, 22, 000rpmの高速回転と18, 000rpm以下の低速回転とで異なった研削挙動が現われた.高速回転では, 研削面のうねりが激しく, 最終研削量も設定した切り込み量を越えた.低速回転では, 研削面のうねりは比較的小さかったが, 設定した切り込み量が完全に削りきれなくなる傾向がみられた.その上, 送り速度を大きくすると一定量を削るまでに何回も何回も研削をくりかえすことが必要になり, 削り残しも大きくなった.振れまわりの影響を考慮して, CBN電着ホィールは低速回転についてのみ実験した.それでもなおこれは, 送り速度が大きい場合でも優れた研削性能を示した.
著者
畦森 雅子
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.274-279, 1985-05-25
被引用文献数
8

Na_3PO_4, Na_2SO_4が石こうの水和反応に及ぼす影響について, X線回折, 走査型電子顕微鏡観察, 硬化時間の測定を行い検討した.石こう練和水へのNa_3PO_4の少量の添加は, 石こうの水和反応を抑制し, 生成した二水塩結晶の形態を変化させた.このNa_3PO_4の石こう水和反応に与える影響は, Na_2SO_4に比べ著しく大きかった.Na_3PO_4水溶液で練和した石こう泥を, 滲出液中にリン酸分を含まない, アルジネート印象材と同様に親水性である寒天印象材上で硬化させると, Na_3PO_4の添加量が増加するに従い表面あれは大きくなった.以上の結果から, アルジネート印象材による石こう表面のあれの原因の一つは, 印象材滲出液中のリン酸分であると推断することができる.
著者
小島 克則 門磨 義則 今井 庸二
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.6, no.5, pp.702-707, 1987-09-25
被引用文献数
23

含イオウ機能性モノマーの研究の一環として, 6-(4-ビニルベンジル-n-プロピル)アミノ-1, 3, 5-トリアジン-2, 4-ジチオン(VBATDT)を合成し, 歯科用貴金属合金との接着性を検討した.VBATDTで貴金属表面を処理した後, MMA-PMMA/TBBO系レジンで金属同士を接着させて, その接着強さの耐久性を調べた.表面処理を行わなかった場合, 熱サイクル試験2, 000回後では, 歯科用合金は実用に耐えられない程の接着強さとなり, また純金属ではいずれも接着強さは0となった.しかしながら, VBATDTを使用した場合は熱サイクル試験2, 000回後でもいずれの歯科用貴金属合金についても耐久性のある46〜54MPaの接着強さが得られた.この値は, 先に報告したMPMA(23〜29MPa)や4-META(7〜35MPa), 4-MET(0〜11MPa)の接着強さに比べてはるかに大きかった.
著者
中村 元弘
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.4, no.5, pp.551-567, 1985-09-25
被引用文献数
1

前報において, 白金箔によって仕切られた同一鋳型内に同時に異種合金を鋳造, 接合させるテクニックを紹介し, 20K金合金, 白金加金および金銀パラジウム合金における接合部付近の組織構造について報告した.今回は, 陶材焼付用金合金, 金銀パラジウム合金およびNi-Cr合金での接合領域を光学顕微鏡と走査型電子顕微鏡で観察するとともに, X線マイクロアナライザーにて分析した.陶材焼付用金合金では, 前報で観察した20K金合金, 白金加金に近く, ほとんど拡散していないような像を呈していた.拡散の見られた元素はAuで, その深度は1μm程であった.金銀パラジウム合金では, 前報同様白金箔に対し偏析を示した.拡散していた元素はCuであり, その深度は6μm程度であった.Crown-Bridge用Ni-Cr合金も白金箔に対し著明な偏析を示し, Mnを中心にCuやNiが最大18μmの拡散を示した.また白金箔側からの拡散も見られ, その値は最大で100μm程に及ぶものもあった.
著者
楽木 正実 小村 隆志 大土 努 祖父江 鎮雄
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.100-105, 1988-01-25
被引用文献数
7

本研究では, リン酸カルシウム系の4CPセメントおよびα-TCPセメントの物理化学的性質について, 硬化液を45%クエン酸水溶液, 粉液比を1.5の条件で比較検討し, 以下のような結果を得た.セメントの酸性度を調べるために, セメント表面に滴下した蒸留水0.5mlのpHを測定した.4CPセメント, α-TCPセメント, リン酸セメントおよびカルボキシレートセメントの中で, セメント練和泥表面のpHは, 4CPセメントが最も高かった(pH4.75〜5.23).α-TCPのpH(pH4.02〜4.22)は, 最もpHの低かったリン酸セメント(pH3.29〜3.62)より高く, カルボキシレートセメント(pH4.14〜4.62)よりやや低かった.このことから, 4CPセメントは歯髄をほとんど刺激しないことが推察された.4CPおよびα-TCPセメントの破砕抗力は, 各々50.0と74.9MPaであり, カルボキシレートセメントのADA規格No.61を満たしたが, 崩壊率は, 1.8と4.0%であり規格を満たさなかった.生体内でのセメントの経時的変化を推察するために, リン酸緩衝塩類溶液中にセメント硬化体を浸漬した場合, 崩壊率は蒸留水中よりやや大きかったが, 浸漬期間中破砕抗力の低下はなかった.
著者
工藤 貴也
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.525-544, 1988-07-25
被引用文献数
5 2

歯科材料により細胞増殖に影響を受けた細胞の回復の観点から細胞毒性をしらべるべく, 歯科用非貴金属合金の6組成金属元素(Co, Cr, Ni, Ti, Cu, Fe)について4種類の細胞を培養した.細胞増殖度, 浸漬液のpH値および溶出金属量をしらべると共に, SEMによる細胞形態観察もあわせて行い, 以下の結論を得た.1)Eagle MEMならびにDulbecco's modified Eagle mediumでは, 最も多量にCuの溶出が認められた(100ppm以上).ついで溶出量はCo, Ni, Fe, Crの順に少なくなり, Tiは検出できなかった.2)L-929細胞, HeLa S3細胞, HEp-2細胞, Gin-1細胞の細胞増殖度実験の結果から, Cu, Co, Niの順に細胞毒性は低減し, Cr, Fe, Tiではほとんど細胞毒性が認められなかった.3)L-929細胞, HeLa S3細胞, HEp-2細胞の細胞回復度実験の結果から, 6種類の金属とも細胞増殖度実験と同様の結果を示したが, これに反してGin-1細胞ではCoならびにNiで強い細胞毒性が認められた.4)SEM観察では, Cu, Co, Niは細胞に対して強い障害像を示した.これに反して, Cr, Fe, Tiでは細胞形態観察でもほとんど障害は認められなかった.以上の実験結果から, 細胞回復度からみたデータが歯科材料を含むバイオマテリアルの細胞毒性に関して多面的な情報提供の可能性が示唆された.
著者
西村 文夫 岡崎 邦夫 中村 英雄 野本 直
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.71-77, 1986-01-25
被引用文献数
16

10歳台の女子から抜去した新鮮な第3大臼歯から, 直径0.8〜1.0mm, 高さ0.8〜2.2mmのエナメル質と象牙質の円柱状試片を作製した.純銅製中空ドリルとアルミナペーストを併用し, 回転速度2, 000rpm, 負荷1N(100gf)で切削する方法を開発し, 圧縮試験によって比例限, 耐力, 破断強さ, 弾性係数, 歪などを測定した.試験片は, エナメル小柱や象牙細管などの方向や部位に留意して作製し, 圧縮試験は毎分0.1mmのクロスヘッドスピードで行った.次のような結果がえられた.1.エナメル質の圧縮特性は, 小柱の方向に強く影響を受けるが, 象牙質は影響を受けない.2.エナメル小柱の長軸方向と平行に圧縮した場合の圧縮特性は最小となり, 小柱の鍵穴型の頭から尾を通る軸と平行に圧縮した場合は中間の値となり, 鍵穴型を真横から圧縮した場合が最大の値を示した.3.エナメル質の圧縮耐力は測定できなかったが, 破断強さは270〜440MPaであり, 象牙質の圧縮耐力は210〜220MPaであった.
著者
齋藤 仁弘 金子 和幸 堀江 康夫 小泉 寛恭 大谷 一紀 五十嵐 孝義 塩田 陽二 吉橋 和江 廣瀬 英晴 西山 實
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.124-130, 2001-03-25
被引用文献数
12

フィラー含有量の多い歯冠用硬質レジン(高フィラー型硬質レジン)の4製品, エステニア(EE, ED), アートグラス(AE, AD), ベルグラスHP(BE, BD), グラディア(GE, GD)のそれぞれ2種類(エナメル用, デンチン用)について, それらの曲げ強さ, 曲げ弾性率, ヌープ硬さ, 吸水量および溶解量を測定した. 試験体の作製は, 製造者指示に従い, 測定結果はt-検定(危険率5%)で統計処理を行った. 曲げ強さは96.2〜210.6MPaを示し, エナメル用ではEE>BE>AE>GE, デンチン用では, BD,ED>AD>GDの順に大きな値であった. 曲げ弾性率は6,8〜24.6GPaを示し, エナメル用ではEE>AE, BE>GE, デンチン用ではBD>ED>AD>GDの順に大きな値であった. ヌープ硬さは42.7〜163.8を示し, エナメル用ではEE>BE>AE, GE, デンチン用ではBD>ED>AD, GDの順に大きな値であった. 吸水量は9.7〜28.1μg/mm3を示し, エナメル用ではGE>AE, BE>EE, デンチン用ではGD>AD>BD>EDの順に大きな値であった. 溶解量は0.2〜0.6μg/mm^3を示し, エナメル用およびデンチン用の両者で有意差は認められなかった. 以上の結果から, 高フィラー型硬質レジンは製品ごとの性質を理解した上で, 適切な症例や応用部位に用いるべきであることが示唆された.