著者
岸本 麻子 井野 千代徳 多田 直樹 井野 素子 南 豊彦
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.101-110, 2010 (Released:2011-05-01)
参考文献数
4

日常診療でしばしば遭遇する疾患であるにもかかわらず、それを主訴として受診することはまれである口角炎について、医師として何を診るベきかを細菌検査などより検討した。口角炎は年齢によって受診する主訴、病原菌が異なることが分かった。29 歳以下の年齢では、口内ないし咽喉頭異常感症に随伴し病原菌は主疾患の病原菌と同じであることが多い。30 歳以上では、口内乾燥症、ストレス性疾患である口内ないし咽喉頭異常感症に多く見られた。細菌検査結果で 60 歳以上の症例ではカンジダ属が 35.1%に、MRSA が 19.3%に検出されたことが特徴的であった。口角炎はビタミンB2、B6などの欠乏で発症しやすくなる。欠乏の原因とし胃腸障害、抗生剤の服用、ストレス、肝障害などがあり、口角炎は、眼前の患者の背景を読むヒントとなり得るものと考えた。
著者
高野 信也 森川 敬之
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.249-256, 2009 (Released:2010-11-01)
参考文献数
17
被引用文献数
1

自律神経薬を鼻粘膜に負荷し、鼻粘膜微細血管構築の変化を自然光および NBI で観察した。(1)エピネフリン負荷で 13 例全例において平均 1.8 分で血管収縮が始まり、平均 4.4 分で血管拡張が始まった。(2)硫酸サルブタモール負荷で、アレルギーを認めない症例では反応を認めない。(3)硫酸サルブタモール負荷で、鼻汁型アレルギー症例の 25%で負荷後 5 分に血管拡張を認めた。(4)硫酸サルブタモール負荷で、鼻閉型アレルギー症例全例において平均 4.0 分で血管拡張が始まった。(5)鼻閉型アレルギー症例において、β-アドレナリン刺激剤はロイコトリエン等に対しては促進的に働き、鼻閉を出現させている可能性がある。(6)抗コリン薬負荷で、アレルギー性鼻炎症例の 85.7%で血管拡張を認めた。(7)アレルギー性鼻炎症例において、ムスカリン受容体での過剰反応が起きている可能性がある。
著者
山野 貴史 宮城 司道 樋口 仁美 梅崎 俊郎 中川 尚志
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.206-211, 2010 (Released:2011-09-01)
参考文献数
11

気管内挿管による合併症の一つである披裂軟骨脱臼を診断する上で喉頭ストロボスコピー、喉頭 3D-CT が有用であった。当科での症例は全 6 例すべてが前方脱臼であり、新鮮例では喉頭直達鏡下整復術、陳旧例では音声治療を行うことにより良好な成績を上げることができた。また、受傷後できるだけ早い時期に対応できるように他科医師にも当疾患について積極的な啓蒙が必要と考えた。
著者
梅﨑 俊郎
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.80-83, 2014-03-20 (Released:2015-03-01)
参考文献数
13
著者
浅井 正嗣 渡辺 行雄 二谷 武
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.351-353, 2003-09-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
10

哺乳時に著しい呼吸障害を来した新生児の1例を経験したので報告する。出生後に哺乳開始するも、喘鳴、チアノーゼ、鼻腔へのミルクの逆流が認められたため、経口哺乳が困難となった。胸部レントゲン、心エコー、頭頸部MRIなどでは、明らかな異常は認められなかったが、鼻咽腔ファイバースコープ検査で上咽頭がやや狭いように思われた。おそらくこのために、授乳中に努力性の鼻呼吸が行われ、下顎と舌を中心とする嚥下運動のリズムが障害されて誤飲したものと考えられた。日数の経過とともに、この障害は徐々に改善した。
著者
藤井 まゆみ
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.125-130, 2019-09-20 (Released:2020-09-20)
参考文献数
12

背景 : ブナ科花粉症の研究は少ない。天城山のブナ林に近い伊東市内でブナ科花粉の豊凶を調べた。さらに天城山での調査とアレルゲン抗体検査も実施した。患者を発見し予防を促したい。方法 : 2001 年から伊東市内でダーラムサンプラーを用い空中樹木花粉を計測した。2018 年 5 月に天城山中にワセリン塗布のスライドグラスを吊るし、空中樹木花粉を計測した。スギ・ヒノキ属花粉症で症状が長引く患者にアレルゲン抗体検査を実施した。結果 : 天城山のブナ属花粉は伊東市に届いていない。伊東市の空中ブナ科花粉はほとんどがコナラ属とクリ・シイ属であった。スギ・ヒノキ属の花粉症で症状が長引く患者の約半数がブナ・コナラ属共に陽性であった。結論 : 伊東市のブナ科花粉症の主な原因はコナラ属の花粉であった。コナラ属、クリ・シイ属の花粉飛散期の予防を促し、ブナ林を散策する季節は注意させたい。また、ブナ目樹木の花粉はバラ科の果実と交差反応があるので、口腔アレルギー症候群に気をつけるよう指導したい。
著者
宮之原 郁代 松根 彰志 大堀 純一郎 黒野 祐一
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.31-38, 2009 (Released:2011-08-01)
参考文献数
25
被引用文献数
2

スギ花粉症患者 29 例を対象に、プランルカストによる初期療法の有用性について初期療法群と飛散後治療群の 2 群に分類し比較検討した。初期療法群で、飛散開始期ではすべての鼻症状が、そして medication score、symptom medication score は、飛散開始期と最盛飛散期で有意に抑制された。また、quality of life (QOL) では、戸外活動、社会生活、睡眠において、シーズンを通して初期療法群のスコアが有意に低く、初期療法におけるプランルカストの有用性が示された。さらに、花粉飛散開始日までに 1 週間程度の初期療法の期間があれば、十分な効果が認められた。一方、プランルカスト初期療法が有効なグループと効果が出にくいグループがあることも示唆された。よって、プランルカストは、スギ花粉症に対する初期療法薬として、鼻症状全般に効果があり、特に夜間の鼻閉を改善させ、QOL を改善させる効果が期待できる。ただし、実際の使用に際しては、対象症例をある程度選択することが必要と思われた。
著者
酒井 昇 酒井 博史 神谷 正男 秋田 久美 白峰 克彦
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.178-183, 2003-05-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
13

口蓋扁桃アニサキス症の1例と原因幼虫の病理を報告した。症例は35歳女性でボラ生食後咽頭異物感を来し、右口蓋扁桃中央の陰窩に寄生虫が迷入しているのが認められた。摘出した虫体は病理学的にPseudoterranova decipiensの第4期幼虫と判明した。アニサキス症で胃や腸などの消化管以外の異所寄生の報告は時にみられるが、耳鼻咽喉科領域でも口腔、咽頭の症例が少数報告されている。扁桃のアニサキス症はこれまで4例報告されているのみで、いずれも原因幼虫はアニサキスであり、記載不明の1例を除いた3例に急性扁桃炎が伴っていた。本症例では原因幼虫が口蓋扁桃で最初の報告となるPseudoterranova decipiensであり、また扁桃の炎症症状が全くみられなかったが、その理由としてシュードテラノーバ幼虫は感染力が弱く組織侵入が少ないことが推測された。
著者
藤 賢史
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.158-161, 2014-07-20 (Released:2015-07-01)
参考文献数
15
著者
高瀬 文武
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.12, no.Supplement1, pp.52-75, 1966 (Released:2013-05-10)
参考文献数
46

Studies of the pharynx and soft palate, in connection with respiration, deglutition or articulation, have been greatly performed from the viewpoint of comparative anatomy or embryology; however, there are few topographic studies on the pharynx of the human adults. For this reason, the author investigated, macroscopically in principle and histologically in part, of the muscular, vascular and nervous system in both pharyngeal wall and soft palate, and considered physiological functions of the pharynx on the basis of the results obtained. Then a schematic diagram of the pharynx has been established from the anatomico-surgical point of view.Either the tongue, pharynx and larynx isolated en masse from the reserved 45 cadavers or the capital and cervical portions isolated in the mass from 2 cadavers were the material for the study. These materials were cut sagittally, and the states of blood vessels, nerves and muscles were observed from the inner surface of the pharynx under binocular stereomicroscope (10×, 24×and 60×). The results are as follows.1. It is concluded that Passavant's ridge is an elevation of the mucous membrane of the posterior pharyngeal wall produced by the contraction of the superficial portion of M. palatopharyngeus.2. In plastic surgery for cleft palate, a breaking of the hook of the pterygoid process in addition to a sufficient detachment of its basal portion may be necessary for decreasing the mechanical tension in the palatal region.3. In palato-pharyngoplasty (Schonborn-Rosenthal's method ), the superior based pharyngeal flap is significantly more effective in preventing atrophy than that from the inferior based pharyngeal flap, taking account of the site of entrance of blood vessels, because in the former not only the acquisition of the transplant with a stalk is easier but preservation of the blood vessels is better.
著者
調 賢哉 調 信一郎
出版者
耳鼻
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.52-56, 2000

約13年前より幼小児副鼻腔炎に対し、積極的に中鼻道よりキリアン氏上顎洞洗浄管使用による上顎洞洗浄を行って、治療効果を上げてきた。最近は二者併用療法 (上洗+ニューマクロライドおよびアゼプチン投与) を行っているのでその治癒率はさらに向上している。幼小児副鼻腔炎に対する上顎洞洗浄の適応としてはまず、最近、ニューマクロライドのみで治療され治らぬ症例が多いが、いずれにしても保存的療法で治らぬ難治型症例の他に、第一は高熱を伴う薬物療法で治らぬ急性副鼻腔炎であり、第二は頭痛症例である。第三には、いわゆる「副鼻腔気管支症候群」およびその亜型ともいえる膿性鼻漏と頑固な咳嗽、咳払いを伴った症例であり、いずれも軽快治癒した。その第四は、難治な滲出性中耳炎の合併例であるが、いずれもチューブ挿入術を行わず上顎洞洗浄のみで治癒した。第五に発作を起こす難治な気管支喘息で副鼻腔炎を伴った症例にも上顎洞洗浄は著効があった。なお、麻酔法としてコカインの適切な使用は必須であると述べた。
著者
藤島 一郎
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.55, no.Suppl.2, pp.S129-S141, 2009 (Released:2010-12-01)
参考文献数
47
被引用文献数
2
著者
西山 和郎 澤津橋 基広 梅﨑 俊郎
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.128-135, 2016

舌骨は舌骨上筋群、舌骨下筋群の付着部位、咽喉頭のフレームとして嚥下や気道の開存に重要な機能を果たしているが、その解剖学的特徴のため舌骨骨折の報告は少ない。今回、われわれは嚥下機能評価が可能であった舌骨骨折の 1 例を経験した。症例は 35 歳、男性。工事現場の足場から転落し、前頸部を強打した。約 15 cm の横裂創と舌骨上筋群、舌骨下筋群の断裂を伴う舌骨骨折を認めたため、断裂した筋肉の修復を含む舌骨の外科的整復を行った。術後に嚥下評価を行い、後遺障害を残さずに軽快した。本邦および海外におけるこれまでの報告では、舌骨骨折の治療については、基本的には保存的加療を行い、下咽頭−喉頭に穿孔がある症例や、骨片が突出するなどして嚥下や気道が傷害される症例には外科的治療を検討するべきと報告されている。これに加えて、本症例の経験から、舌骨骨折に舌骨上下筋群の損傷断裂を認める症例には、早期の筋断裂の修復と舌骨の位置整復が重要であると同時に、その修復の際に、上喉頭神経内枝の温存に留意することが必要であると考えられた。
著者
村上 彰
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2Supplement4, pp.555-562, 1979-05-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
6
著者
山田 卓生 蓑田 涼生 三輪 徹 増田 聖子 兒玉 成博 鮫島 靖浩 湯本 英二
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.283-289, 2011 (Released:2012-11-01)
参考文献数
24
被引用文献数
5

当科で施行した人工内耳埋込術 72 例について、「人工内耳埋込術後に何らかの追加の治療・処置を必要とした症状」を術後合併症と定義し、術後の合併症の有無について診療録の記載より調査を行った。72 例中 9 例(12.5%)に術後合併症を認めた。保存的治療もしくは経過観察のみで対処可能であった合併症(軽度合併症)は 4 例、観血的治療を必要とした合併症(重度合併症)は 5 例であった。軽度合併症の内訳は、味覚障害が 2 例、遅発性顔面神経麻痺が 1 例、人工内耳埋込部の感染が 1 例であった。また、重度合併症は、インプラント故障が 2 例、人工内耳埋込部の感染が 2 例、インプラントの露出が 1 例であった。このうち埋込部感染を認めた 2 例は、基礎疾患との関連が考えられた。インプラント故障を認めた 2 例においては、頭部打撲が原因であった。インプラントの露出を来した 1 例については、人工内耳埋込部と耳掛けの体外部との接触が原因と思われた。
著者
加藤 栄司 東野 哲也 森満 保
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5Supplement2, pp.761-765, 1996-09-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
11

過去5年間に当科外来を受診し, 原因を特定できない感音難聴506症例のなかに剣道有段者13例が含まれていた. オージオグラムを検討した結果, 閾値異常を示した25耳の中に, 4kHz-dip型6耳 (24%) と全く同数の2kHz-dip型聴力像を示す感音難聴が含まれていた. また, 2, 4kHz障害型5耳 (20%), 2, 4, 8kHz障害型6耳 (24%) 認めたことより, 剣道による感音難聴が2kHz-dip型と4kHz-dip型に由来する聴力障害が複合した形で進行するものと推定された.同対象感音難聴症例506例のオージオグラムの中から2kHz-dip型聴力像または2, 4kHz障害型オージオグラムを抽出すると, 2kHz-dip型が43耳, 2, 4kHz障害型が18耳認められた. これらの症例の中に難聴の原因としての頭部外傷が明らかな例は認められないが, 問診上, 剣道, 交通外傷, 衝突, 殴打, 転倒などによる頭部打撲の既往があるものが半数以上を占めた.以上の結果より, 剣道による2kHz-dip型感音難聴発症の機序として竹刀による頭部の強い衝撃が関与していることが示唆された.
著者
西田 之昭 周防屋 洋
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.264-270, 1964-12-15 (Released:2013-05-10)
参考文献数
21

The resistance and the efficiency of the glottis as the generator of voice production are important factors, but it has been impossible to measure them, because we have no practical measuring method of the subglottic pressure except in the patients with a tracheostoma.The intention of this paper is to offer the measuring method of the subglottic pressure in normal persons and to develop the investigation of the regulation mechanism of voice.The relation between the intraesophageal pressure and the subglottic pressure was examined and a new interruption method was tried.The change of the intraesophageal pressure during the phonation has a close relation with the expiratory level and it is not parallel with subglottic pressure. But both pressures have equal deviations and synchronized changes only in the beginning or the stopping of voice. Van den Berg's intraesophageal method-measuring the pressure deviation at the abrupt stop of voice, with the relaxed diaphragm and thorax and the open glottis-is certified as an almost accurate method. In this method, it is not always easy to swallow the esophageal balloon, and the complicated technique is required.The interruption method-at first devised to measure the alveolar pressure in the respiration- was examined.The examiner let the subject put on a mask, which is airtight and connected with shutter and pneumotachograph. During the phonation, the pressure elevation was produced in the mask by the momentary interruption of the air-flow by means of the shutter. This pressure elevation was equal to the subglottic pressure. This fact was ascertained in the patient with a tracheostoma and the interruption of air-flow gave little effect to the subglottic pressure. This method was painless and easily performed.As is stated, we have two methods concerning the measurement of the subglottic pressure. The interruption method is better for the measurement of the resistance and the efficiency of voice production, and the intraesophageal method is better for the observation of the changes of subglottic pressure in the beginning of phonation or in the production of consonants in which the change of the expiratory level is little.
著者
飴矢 美里 西窪 加緒里 三瀬 和代 本吉 和美 兵頭 政光
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.52, no.6Supplement4, pp.S249-S255, 2006-11-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
11

本研究では嚥下機能の加齢に伴う生理的変化について、健常高齢者47名 (男性10名、女性37名;年齢60-87歳、平均68.9歳) を対象として検討した。自己記入式問診票では、「飲んだり食べたりする際にむせることがある」が30%、「飲み込もうとする前にむせる」が23%、「以前と比べて食べたり飲んだりしにくい」が13%などであり、高齢者では潜在的な嚥下障害の存在が示唆された。嚥下内視鏡検査では喉頭蓋谷・梨状陥凹の唾液貯留、声門閉鎖反射・嚥下反射の惹起、3nteの着色水嚥下後の咽頭クリアランスを0-3の4段階にスコア化して評価した。その結果、スコア2および3の嚥下機能低下を示した例がそれぞれ19%、13%、25%に認められた。嚥下造影検査では、舌骨および喉頭挙上距離には加齢による変化がなかったものの、咽頭通過時間および喉頭挙上遅延時間が延長した。これらの変化は70歳以上の高齢者において、より顕著であった。以上より、高齢者では咽頭期を主体とする嚥下機能が低下することが示された。
著者
安田 宏一
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.25, no.6, pp.1427-1439, 1979-11-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
31

In his twilight years, painter VINCENT VAN GOGH (1853-1890) was often attacked by paroxysms of illness and he committed suicide after treatment of one and a half years' duration. GOGH'S ailment has been considered as a mental disease but the author, from an otological viewpoint, reviewed his letters, behaviors and works and reached a conclusion that GOGH probably was plagued by MÉNIÈRE's disease.I. The reasons for diagnosing him to have MÉNIÈRE'S disease.1) There was vertigo.In his letters, GOGH often complained that he was frequently having dizzy spells.“Vertigo was felt with me always.”(j'avais toujours des vertiges, W4)“The vertical tremors began attacking me since early this month.”(le tangage, qui a accompagné le commencement de ce mois-ci. 546)“Having so frequent attacks of vertigo, ”(ayant si souvent le vertige, 605)“An attack of vertigo comes on in the long run.”(c'est à avoir le vertige. 638)2) There was a recruitment phenomenon.The following sentence is well describing the existence of recruitment. This explanation was made by GOGH by observing his inmates of the mental hospital but at the same time it can be interpreted as recollecting his own experiences.“The acoustic nerve of the man probably is so hypersensitive that he feels he can even hear voices and words that echo in corridors.”(il crois entendre des voix et des paroles dans l'echo des corridors, probablement parce que le nerf de l'ouis est malade et trop sensible, 592)3) Stomach got upset while attack was on.GOGH often wrote in his letters that due to bad stomach conditions while attack was persisting, he couldn't eat at all (569, 602a, 606). This could be considered as gastric symptoms that occur during an attack of MÉNIÈRE's disease.4) Attacks were of seasonal occurrence and had precipitating causes.The first attack on GOGH began in December 1888 and exactly one year later, that was in December 1889, there was a relapse. Also in July 1889, a severe attack struck him and in July 1890 he killed himself. One of the causes of his suicide was thought to be the recurrence of attacks or its prognostication. In other words, one can see a fairly distinct quality of being seasonal in GOGH'S attacks (Fig. 1). On many occasions fatigue stemming from painting and travelling could be considered as a precipitating cause of his attacks.Attacks having a quality of being seasonal and demonstrable precipitating causes are known to be one of the characteristics of MÉNIÈRE's disease.II. Puzzles involving GOGH that can be explained by MÉNIÈRE'S disease theory.1) Why did GOGH cut his ear lobe?It was a puzzle why GOGH, with his own hands, cut through his ear lobe. However, supposing GOGH was plagued by MÉNIÈRE's disease and he cut it off in trying to escape from distressing symptoms of aural stuffiness, tinnitus and recruitment accompanying attacks, this can be well understood.2) In the center of his painting entitled “The starry night”(212, Fig. 2) are depicted stars as if they are floating from left to right like whirling waves. If the stars can be seen like this, it might have been when an attack of MÉNIÈRE'S disease was on with the occurrence of horizontal-rotatory nystagmus. It is conceivable that GOGH compounded in this painting the impression of the stars he saw when he was struck by the attack.
著者
市川 忠
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.38-52, 1982-01-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
16

Nobody can deny that lubrication is one of the factors which influence the phonetic function of the larynx. However, no notable studies on the mechanism of lubrication have ever been carried out. This study is an effort to clarify how the larynx is lubricated.The first experiments have been carried out in order to observe the mode of the secretive flow the tracheal and subglottic spaces. As the results of the experiments, the secretive fluid on the trachea traveled toward the vocal folds without phonation. And then, at the instance of phonation, the secretive fluid left immediately the subglottic area and appeared in the slit of the vocal folds.The second, the mode of secretive flow was experimentally examined on the vocal folds during phonation. The second experiments indicated that the secretive fluid on the surface of vocal folds was rotating perpendicularilly to the free edge of the folds.The third experiments of the amount of secretive fluid and its quality were also performed. Phonodynamic examinations including subglottic pressure and sound intensity were carried out in addition to acoustical analysis of the sounds. Results obtained in these experiments were discussed and analyzed from the viewpoint of phonodynamics.