著者
鎌田 博行
出版者
宮城教育大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究は、コンパクト複素曲面におけるスカラー平坦不定値ケーラー計量(自己双対な不定値ケーラー計量)の存在問題に端を発す。その研究過程の中で、板東・カラビ・二木の障害と呼ばれるスカラー曲率が一定な正定値ケーラー計量の存在に対する障害を、不定値の場合に一般化する必要があり、その障害のケーラー類に対するwell-defined性は、正定値の場合に比べて、幾つかの余分な条件が仮走することによって保証される。具体的には、ケーラー類と正則ベクトル場に対する次の条件(i)(ii)が要請された:(i)「ケーラー類が有理的であり、正則線束の第一チャーン類の実数倍として実現される。」(ii)「(i)の正則線束上に正則ベクトル場が正則に持ち上がる。」これまでこの障害を用いて、スカラー平坦不定値ケーラー計量、さらにスカラー曲率一定の不定値ケーラー計量の存在問題を考察してきたが、特に、ヒルツェブルフ曲面と呼ばれる有理曲面におけるスカラー曲率が一定な(不定値)ケーラー計量の存在に対する必要十分条件として、そのランクが0、即ち、複素射影直線の直積に双正則でなければならないことを示した。その際、有理的とは限らないケーラー類に対して板東・カラビ・二木の障害をさらに一般化する必要があったが、今年度は、不定値の場合へ板東・カラビ・二木の障害を一般化するために仮定した幾つかの条件について、それらの役割などを精査することにより、これまでの結果の高次元化を考察した。これらについては、先に述べたヒルツェブルフ曲面に対する結果と共にプレプリントとしてまとめてある。
著者
内田 毅
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、シトクロムcという原核生物から真核生物までほぼすべての生物が有するタンパク質の成熟化を行うタンパク質群であるCcm(Cytochrome c maturation)の作用機構を明らかにすることを目的としている。シトクロムcはミトコンドリアの呼吸鎖における電子伝達タンパク質と機能する他、細胞死であるアポトーシスの引き金となるタンパク質であることから、生成及びその品質管理を理解することは重要であると共に、CcmはC型ヘムを有するタンパク質を大腸菌や無細胞系で発現させる時には必須である、その効率の点で未解明な部分が多く、Ccmの理解はタンパク質工学的にも重要な課題の一つである。本研究の共同研究者であるOxford大学のFerguson教授らの研究により、8個存在するCcmタンパク質の中でもCcmEがヘムをシトクロムcに引き渡し、チオエーテル結合の形成という翻訳後修飾を行うことが生化学的に報告されていた。我々はこの機構を詳細に検討することを試みた。Ferguson教授らは細菌(Hydrogenobacter thermophilus)由来のシトクロムcを用いていたが、今回、ホ乳類であるウマ、及び酵母であるSaccharomyces cerevisiae由来のシトクロムcを用い、翻訳後修飾過程を検討したが、翻訳後修飾は形成されなかった。これは、CcmEによるシトクロムcの選択性を表している。CcmEとこれらのシトクロムcの相互作用を表面プラズモン共鳴装置により解析したが、全く相互作用しなかった。以上のことから、CcmEはシトクロムcのある特定の部位を認識し、ヘムの受け渡しを行っていることがわかった。今後はH. thermophilus由来のシトクロムcの認識部位を明らかにすることを試みる。それにより、CcmEを利用したより広汎なC型ヘムをもつタンパク質の翻訳後修飾につながり、外来タンパク質の発現における有用な情報が得られると期待される。
著者
高根沢 均
出版者
神戸山手大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、中央空間および聖性の焦点であるアプシスと周歩廊の機能的関係を明らかにした。中央空間に対して環状列柱は間接的な接触を提供しつつ、列柱の幅と意匠によって中央空間への「入口」を示しており、アプシスに対して斜めに位置する会堂入口から円環状の動線を経て中央空間の「入口」へ誘導する機能があった。この関係はアナスタシス・ロトンダ(4世紀)の影響を受けたと推測される。一方、初期中世以降、バシリカ式のアプシス後背の周歩廊は、聖遺物崇拝を機能的に解決する手段として導入が進んだ。北イタリアにみられる上下に重なった周歩廊は、バシリカ式の典礼機能と集中式の周回礼拝の機能を同時に内包する構成といえる。
著者
鈴木 俊太郎
出版者
信州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

いじめ予防プログラムの基盤となる「ポジティビティ・フォーカスト・アプローチ」について、前年度の理論研究を踏まえて、実際のカウンセリング場面、心理教育場面に利用できるように手続きや方法論を明確にする作業を行った。ポジティブ心理学の中でも肯定的感情側面に焦点を当てたB.Fedricksonらの研究成果を基盤に、対人コミュニケーション場面において、自身の肯定的感情が、認知的枠組みを拡大・再構築していくというプロセスを、教育プログラムとして実行できるように調整している。最初は、カウンセラーとクライエントという特殊な2者関係、つまりカウンセリングの一場面でこのプログラムを想定し、そこでパイロットスタディを踏まえて、集団場面、教育場面での応用が可能な形にブラッシュアップを図っていった。プログラムは大きく分けて2つのフェーズから構成され、1.ポジティブ感情喚起フェーズ、2.認知再構築フェーズの2段階に分けられる。それぞれのフェーズでは、一定のタスクが参加者に課される。例えば、1.のフェーズでは、過去の失敗経験と成功経験を同時に想起してもらい、成功経験のみについてその後詳細に事実を説明してもらう。このような作業を行うと、次いで思い出してもらった失敗経験の記憶が想起しずらくなる、価値が低下するなどの効果が見込める(検索誘導性忘却という現象を利用したトレーニング)。また、これと並行して、ここまでの研究成果を学会発表という形で公表し、他の研究者からプログラム実施に関して様々な意見をいただき、ブラッシュアップを図った。遂行過程で大幅な改変の必要性や手続きの補強、倫理的配慮をご指摘いただき、考慮に入れることとなったため、年度内で予定していた実際に施行するプログラム開発まで至ることは難しかった。なお、この遅れについては、年度をまたいで、次年度の計画施行スピードを調整することでも解消可能と考える。
著者
利部 慎
出版者
長崎大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、世界的にも新しい年代トレーサーであるクリプトン85(85Kr)を用いた湧水・地下水の年齢を、従来の測定システムの改良により、高い時間分解能で推定することに成功した。熊本地域や都城盆地などの複数の研究地域で現地調査を実施し、一連の分析手法の確立と85Kr法の実用化に成功した。さらに他の年代トレーサーと同時に用いて年代推定のクロスチェックを実施することで、85Kr法の有効性の検証も行うことができた。地下水の流動過程における弱点のない85Kr法の確立により、年代測定分野に新たなインパクトを与える研究となった。
著者
北岡 祐
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

運動により、骨格筋においてミトコンドリア新生に関わる遺伝子の発現が高まることが知られている。本研究では、DNAのメチル化状態の変化が運動による骨格筋の適応に重要な役割を果たす可能性について検討した。DNAメチルトランスフェラーゼのタンパク質量は、トレーニングによる変化はみられなかった一方で、除神経によって増加したことから、DNAのメチル化は不活動による骨格筋の適応に関与する可能性が示唆された。
著者
勝村 聖子
出版者
鶴見大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、種々の犯罪資料における迅速かつ信頼性の高いDNA検査法の開発を目的に施行された。複数男性が関与する強姦事件を想定して作製した男女混合試料から、精子を単独回収した。そこから得られたmitochondrial DNA(mtDNA)について検討した結果、特定男性の関与の有無を判断できた。皮膚に付着した唾液などに対しても有効であることが示され、犯罪捜査における鑑定法となることが期待される。
著者
宮野 加奈子
出版者
国立研究開発法人国立がん研究センター
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

現在、満足できる疼痛コントロールができているがん患者は多くなく、より効果的な鎮痛薬の開発が求められている。近年、一次知覚神経に発現するtransient receptor potential (TRP) superfamilyであるTRPV1およびTRPA1が疼痛伝達に重要な役割を果たすことが明らかとなっている。さらに、局所麻酔薬リドカイン誘導体のひとつであるQX-314がTRPと電位依存性ナトリウムチャネル(Nav)を発現した神経のNav活性を遮断することが報告された。そこで、本研究はTRP発現神経特異的遮断候補薬としてリドカイン誘導体に着目し、リドカイン誘導体の薬理作用を解析した。
著者
山村 朝雄
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

劣化ウランは全世界で120万トンを超える膨大な保管量があり、その有効利用法の開発は重要な課題である。ウランはIII価とIV価、V価とVI価の組み合わせにおいて電極反応が可逆であることは、アクチナイド固有の化学的性質である。このことを利用すれば、実用化しているバナジウム電池を超えるエネルギー効率を持つレドックスフロー電池の構築が期待できる。バナジウム電池では、正極反応VO2++e→VO2+は酸素の脱着を伴う遅い内圏反応であるため、電流密度70mA/cm2での充放電サイクルにおいてエネルギーの16%が活性化過電圧により失われる。これに対してアクチナイドでは両極反応は高速であり、活性化過電圧によるエネルギー損失はネプツニウムの場合2%にとどまる。このようにエネルギー効率の高いウラン電池の構築により、風力発電等の再生可能エネルギーの出力平滑化に資することを目指している。平成16年度には、ウラン電池セルを実際に構築し、U(V)を正極液、U(IV)を負極液とするウラン電池の動作を確認し、展示用モーターの回転に十分な電圧・電流を得られることが確認できた。その一方で、放電状態におけるウラン(V)錯体、充電状態におけるウラン(III)錯体の濃度は数時間程度の半減期で自然に減少し、ウラン錯体の安定性が十分とは言えないことも明らかとなった。そこで、平成17年度には、ウラン(V)およびウラン(III)錯体の検討を進め、半年を超す半減期をもつウラン(V)錯体溶液を調製することに成功した。また、ジアミドを配位子として有するウラン(III)錯体の調製と磁気的性質、分光的性質の検討に成功し、溶液中のIII価状態の半減期が11時間と短いことが判明した。しかしこの時間内に、U(IV)/U(III)の電極反応の検討を行うことに成功した。
著者
新妻 実保子
出版者
中央大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

(1)角度比較による時系列データの分類位置座標に依存しない時系列データの分類について検討した。初期姿勢が類似度計算に影響を与えないよう,初期姿勢補正を考慮した類似度計算手法を提案し,人の歩行経路の分類,及び手の動作の分類に適用し,位置の近さではなく形状の類似度に基づく分類を行い,その有用性を示した。(2)地図による活動内容の記述とその分類環境地図,及び活動履歴を階層に分けて,選択的にデータを更新・利用できる仕組みを提案した。人,物の移動履歴として,移動度合いを移動頻度,及び移動速度に基づいて算出し,グリッド地図として表現する手法を提案した。(3)持続的な観測のための観測システムの実装RTミドルウェアによるシステムのコンポーネント化を行い,ロボティクス技術の埋め込まれた住宅実証環境へ統合・実装した。活動モデルの構築と活動内容の推定を行うためのプラットフォームを整えることができた。
著者
松崎 慎一郎
出版者
独立行政法人国立環境研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

在来ナマズ属3種の地域集団および遺伝的構造を明らかにするために、日本全国およびアジア諸国からナマズ類を採集し、ミトコンドリアDNA調節領域の塩基配列に基づく系統地理解析を行った。ビワコオオナマズでは1集団(琵琶湖)、イワトコナマズでは2集団、ナマズでは3つの大きく分化した地域集団が国内に存在することが明らかとなった。イワトコナマズについては、これまで琵琶湖固有種とされてきたが、近畿・中部地方に別の地域集団が存在することが分かった。また、次世代シーケンサーを用いてマイクロサテライトマーカーを開発し、遺伝的多様性の評価が可能となった。
著者
清水 雅仁
出版者
岐阜大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

我々は本研究で、インスリン抵抗性、IGF/IGF-1受容体シグナルの過剰活性、アディポカインの不均衡、慢性炎症状態の惹起等、肥満や糖尿病に関連した様々な病態・分子異常が、大腸および肝発癌に深く関与していること(発癌高危険群のスクリーニングに有用であること)、また分岐鎖アミノ酸製剤等の薬剤投与や栄養学的介入によって、これらの分子異常を改善・制御することが、肥満や糖尿病合併患者の大腸および肝発癌予防に繋がる可能性を明らかにした。
著者
藤野 寛
出版者
麻布大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

ボルナウイルスのN遺伝子が内在化した内在性ボルナウイルス様N因子(EBLN)は多くの動物で見つかっており、特にジュウサンセンジリス由来の EBLN(itEBLN)はBDVの感染を抑制することがわかっている。そこで、本研究ではその抑制機構を解明するために欠損体を作成しBDVに対する影響を確認した。共免疫沈降法及び蛍光抗体法によりitEBLNとBDVタンパク質との結合性を確認した。その結果itEBLNはBDVのNタンパク質に結合してBDVのmRNA発現を抑制させることでウイルスの感染を阻害している可能性が示唆された。
著者
江口 みなみ
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

ナチス政権が崩壊し終戦を迎えた時、ドイツに住む人々の生活は完全に破壊されていた。人々に課されたゼロからの復興の出発点は、しばしば「零時Stunde Null」と呼ばれるが、日本美術の研究拠点もまたゼロからの復興を強いられた。本研究課題では、終戦直後のドイツにおける日本美術研究の状況と、その復興について調査・検討を行った。事例研究として、日本美術史家ディートリヒ・ゼッケルの戦後の活動および西独で1950年代初頭に開催された日本美術の展覧会をとりあげ、さらにドイツ人芸術家ハンス・リヒターと洋画家長谷川三郎の米国における交流について、戦後の日独美術交流が断絶した状況下で生じた事例として分析した。
著者
野島 高彦
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

蛋白質やペプチドなどの生体分子を固体表面に保持するための手法を開発することを本申請課題の目標とした.そのための第一段階として,ペプチドをプローブとして保持したチップ上において,ペプチド-蛋白質相互作用を行うための分析手法を開発した.ここではペプチドをオリゴヌクレオチドとのコンジュゲートとして調製することによって,疎水性ペプチドであっても水溶液中において取り扱い可能となることを期待するとともに,先行するDNAチップ技術を取り込むことを目論んだ.また,オリゴヌクレオチドコンジュゲートの二重鎖置換能を利用することによって,新しい概念の生体分子間相互作用検出法を実現することも目標とした.リガンドをオリゴヌクレオチドと共有結合することによって,分子間相互作用の特異性が損なわれる恐れがある.そこでオリゴヌクレオチドと共有結合したリガンド分子と,水溶液中のリガンド分子とによる競争標的蛋白質結合実験を行い,生体分子間相互作用能を維持した状態でのリガンド固定法を実現するための基礎的知見を得た.続いて,オリゴヌクレオチド分子が可逆的に二重鎖を形成および解離する性質を利用して,リガンド分子を固体表面上において可逆的に着脱する分子操作法確立を試みた.分子鎖置換における熱力学的最適条件の検討を含め,基礎なデータを収集し,オリゴヌクレオチド分子がコードする情報を用いて生体分子間相互作用の有無を検出する,新しい概念の分析手法を実現した.さらに,リガンド-情報分子コンジュゲートをマイクロリアクター内に導入し,微小空間内における分子鎖置換反応を達成するための予備的検討にとりくんだ.約1cm四方のDNAチップ上にマイクロ流路を組み合わせたマイクロ流体デバイスを作製し,これを用いた生体分子ハンドリングに関する基礎的知見を得た.
著者
松本 礼子
出版者
一橋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は、旧体制末期のパリにおいて、民衆を含めた住民による反王権的な言動一般(「悪しき言説」)に着目し、都市統治全般を意味するとともに秩序維持を担う「ポリス」との関連においてそれらを分析し、これまでの世論研究では捉えきれなかった旧体制末期の政治文化の変容を包括的に解明することを目標としている。既存の権力行使のあり方に対する異議申し立てが、あらゆる社会層において顕著になる1760年代以降において、「悪しき言説」へのポリスの取り組みがいかなる変容を迫られたのかを解明し、旧体制末期の社会と文化の理解に新しい光を当てることを課題とする。研究代表者は、平成27年度および平成28年度にフランス国立図書館および国立文書館で「悪しき言説」をめぐる事例の資料発掘と収集を行い、国立図書館・アルスナル分館所蔵の「バスティーユ文書」コレクションからコーパスを確定しているが、平成29年度の第一四半期は、平成28年度に引き続き、特に現場のポリス担当官の報告書や、彼らを統括する警視総監との書簡の精読を主として行い、18世紀後半に固有の都市統治の技術を明らかにすることに注力した。その成果を平成29年5月に開催された『社会経済史学会』第86回全国大会で報告し、そこで得たフィードバックを反映させた論文が、平成29年12月に公刊された論集『地域と歴史学―その担い手と実践』に収録された。
著者
癸生川 陽子
出版者
横浜国立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

隕石に含まれる有機物は,隕石母天体である小惑星の熱履歴の情報を保持していると考えられている。本研究は,隕石中の有機物の「脂肪族炭素の減少」及び「芳香族化度の増加」の2つの独立した指標を用いて,小惑星の熱履歴を推定することを目的とする。まず,芳香族化度の増加から熱履歴の指標とするために,あまり加熱を受けていない隕石の加熱実験を行い,ラマン分光法によりスペクトルの変化を調べた。しかし,精度よく速度論パラメータを決めるために十分な測定点がまだ得られていないため,今後も継続して実験を行う必要がある。また,比較的短期間の加熱を受けたと考えられている2種類の隕石について,暫定的に加熱温度・時間を求めた。
著者
白川 理香
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

今年度は眼瞼下垂手術前後のヒトの瞼板およびマイボーム腺形態について観察を行った。眼瞼下垂症に対する挙筋腱膜縫着術では縫合糸が瞼板内に恒久的に留置されるが瞼板やマイボーム腺に対する影響はわかっていない。眼瞼下垂症に対する挙筋腱膜縫着術の眼瞼およびマイボーム腺に対する影響について調査した。眼瞼下垂症手術を受けた31例47眼(男性 5例、女性26例、平均年齢74.3歳±9.0歳)に対して、術前の挙筋機能(mm)、術前、術後6か月の瞳孔上眼瞼距離MRD (mm)、瞼裂高(mm)、上下マイボスコアおよび術後6か月での上眼瞼翻転の可・不可および翻転時の瞼板形態を記録した。結果は、術前の挙筋機能は平均10.9㎜と保たれており、術前と術後6か月を比較するとMRD、瞼裂高は有意に増加した。術後19%が上眼瞼翻転不可になり、術後55%が上眼瞼翻転時に瞼板のひきつれを生じた。マイボグラフィー撮影できた上眼瞼36眼では術前後でマイボスコアに変化を認めなかった。以上より眼瞼下垂症手術で瞼板に通糸を行ってもマイボーム腺の形態変化は起きない可能性が示唆された。また術後上眼瞼の翻転が不可能になる症例があり、注意を要することが分かった(日本眼科学会総会2018年、ARVO2018)。また、緑内障手術後濾過胞を有する眼に対する眼瞼下垂症手術についての安全性、有効性についても検討した。18名19眼を観察し、眼瞼下垂症手術後に有意にMRD、瞼裂高が改善し、術後眼圧上昇を認めず、濾過胞関連の合併症も認めなかったことより、安全性、有効性が確認された(日本眼科学会総会2018年、ARVO2018)。
著者
李 政元
出版者
関西学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究の目的は、公開されている児童虐待刑事裁判例に計量的分析を施し、児童虐待発生の背景にある要因を探索することである。51件の判例データ(テキスト・データ)を形態素に分解し、類似形態素毎にカテゴリー化を行い、カテゴリー間の共機関係をカテゴリカル主成分分析およびクラスター分析により検討した。その結果、51件の児童虐待事案については、致死に至る場合には、片親および無職者の有無が関連していることが示唆された。
著者
河北 秀世
出版者
京都産業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、太陽系の化石とも呼べる彗星(始原天体)に含まれる化学組成比を元にして、私たちの太陽系のもととなった物質を探ることを主眼にしている。本研究では多数の破片に分裂したシュバスマン・バハマン第3彗星の観測を元に、もともとの彗星核に内在していた非均質性について議論した。その結果、彗星核は非常に均質であり、原始太陽系円盤内での微惑星の動径方向移動はあまり顕著ではなかったのではないかという結論に達した。また、その他の彗星についても、近赤外線高分散分光観測を多数実施し、その統計的性質に迫った。その結果、従来提案されているような単純な分類では不十分であることを明らかにした。