著者
三浦 収
出版者
高知大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

社会性を持つ二生吸虫は、繁殖を担うカーストと繁殖個体を敵から守る兵隊カーストに分業することで効果的にコロニーを維持している。本研究では、これらの2つのカーストの比率がどのような要因により決定されているのかを検討した。その結果、二生吸虫のカースト比率は外敵との競争圧の影響をあまり受けていないことが明らかになった。おそらく、コロニー内の個体密度や栄養状態または遺伝的要因等の他の要因がカースト比率に影響を与えているものと考えられる。
著者
及川 佑介
出版者
東京女子体育大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

李想白の活動は組織的関与と技術的関与に別けてみることが出来る。彼は大日本バスケットボール協会を1930年に設立し、その運営の中心を担い、李想白の組織的関与は多岐に及んでいた。彼の技術的関与は、自チームの指導のほか、『指導籠球の理論と実際』(1930)、協会の機関誌『籠球』などの執筆活動を通して技術や戦術の紹介を行っていた。李想白は先のことを見据えながら活動していたことがわかる。そして、彼の組織的関与と技術的関与により、当時の我が国の発展はなるべきしてなったと考えられる。しかし、競技的なバスケットボールが急速に広まった裏には、遊戯的なバスケットボールの姿が薄れて行ったことを忘れてはならない。
著者
萱島 知子
出版者
佐賀大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の目的は、ローズマリー成分のカルノシン酸が精神的ストレスによるガン進行に与える影響を明らかにすることである。その結果、卵巣腫瘍細胞においてストレスホルモンにより増大した細胞増殖や血管新生促進因子の発現を、カルノシン酸が抑制することが明らかになった。カルノシン酸が、精神的ストレスによるガン進行の重要なターゲットとされている血管新生の抑制を介して、ガン進行を抑えることが示唆された。
著者
角田 世治
出版者
地方独立行政法人青森県産業技術センター
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

可視光に応答するオキシ水酸化鉄(FeOOH)に着目し、その高活性化を目指し、結晶多形、粒子形状と光触媒活性の関連性を調べた。まず、FeOOHの4種の多形のうち、α-FeOOHが光照射下で最も高い有機物分解活性を有することが判明した。次に、α-FeOOHの粒子形態と活性の関連から、{021}面が高い光触媒活性を有し、この面が多く露出した形態の粒子は活性が高いことを明らかにした。そして、この表面特性に立脚した粒子形態制御により、高活性なα-FeOOH光触媒を得ることに成功した。本研究により、表面特性を考慮した材料設計が、高活性光触媒材料の開発の上で重要な柱になることが示された。
著者
榊原 佳織
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、ミトコンドリアを選択的に処理するマイトファジーの分子機構解明を目指した。酵母を用いた遺伝学的手法によって、マイトファジー制御に関与する新規分子として、リン脂質PC合成に関与するリン脂質メチル基転移酵素(Opi3)を見いだした。マイトファジーが誘導されると、ミトコンドリアを処理する過程で隔離膜が形成されるが、その膜の形成にはリン脂質PEと結合するAtg8が必要である。我々はOpi3とAtg8との関係を調べ、リン脂質代謝が関与するマイトファジー制御機構の解明を試みた。これまで我々が行った解析では、opi3欠損細胞ではマイトファジー効率が極端に低下し、Atg8の過剰な蓄積を認めていた。そこで、opi3欠損細胞内におけるAtg8を精製し、質量分析よりAtg8に結合するリン脂質を同定した。その結果、opi3欠損細胞ではPEではなく、PC合成過程に産生される中間産物PMEがAtg8に結合していることを見いだした。次に、in vitro解析より、Atg8はPEと同様にPMEとも結合することが確認できた。通常、Atg8-PEはシステインプロテアーゼであるAtg4で切断され、Atg8がリサイクルされることが膜の形成に重要であることが知られているが、我々の解析によってAtg8-PMEはAtg4 による切断効率が極端に低下することが分かった。また、opi3欠損細胞内におけるAtg8の局在を観察したところ、マイトファジー誘導後に液胞に運ばれるべきAtg8が、液胞外に集積していることが認められた。以上の結果から、リン脂質メチル基転移酵素であるopi3の欠損によって、Atg8はPMEと結合することが分かった。PMEと結合したAtg8はAtg4による切断を受けにくくなり、リサイクルされないAtg8は蓄積し、隔離膜形成が効率よく行われず、マイトファジー効率が極端に低下したと考えられる。
著者
勝瀬 大海
出版者
横浜市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

まず、前頭葉側頭葉変性症(FTLD)様の症状を呈した非定型な症例として3例のNasu-Hakola病とハンチントン舞踏病に神経線維腫症Ⅰ型を合併した1例について臨床病理学的特徴をまとめ報告した。次に66例のFTLDについて臨床病理学的特徴をまとめた。その結果、FTLD-TDPの臨床症状は多様だが亜型によって症状が異なる傾向がみられた。さらにFTLDの原因タンパクの1つであるFUS proteinは神経細胞の核内や樹状突起の後シナプスに存在し、FUS顆粒の量が増加していることが病態と関連しているのではないかと考えられた。
著者
細田 耕
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

平成14年度は,昨年度整備した実験装置により実験を行い,提案手法の有効性を確認した,また,センサに自由度がある場合についても検討を行い,実験を進め,その有効性を調べた.実験装置の整備提案する手法を実験的に示すための実験装置の整備を行い,自由度発見機構,および自由度の凍結,解放のためのプログラムを作成した.製作した実験装置は,7自由度のロボットアームに視覚センサを備えたものである.実験による検証視覚センサに与えられた作業に必要な自由度を自律的に発見することができることを製作した実験システムにより検証した.多数のセンサを備えたロボットの作成ロボットの持つアクチュエータの自由度だけではなく,センサが複数つくことによるセンサの自由度をどのようにうまく利用できるかについても,モータの場合と同様に考察するために,多数のセンサを備えたロボットを作成し,基礎的な実験を行うことによって,多数のセンサがある場合についての,その自由度間の拘束を自律的に発見できる枠組みを示した.
著者
新妻 実保子
出版者
中央大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究課題では、人とロボットの長期的なコミュニケーションを目指して、人と犬の関係に着目し、ロボットの行動モデルを構築した。特に、犬の人への愛着行動は人と犬の社会的関係を築く上で基礎的な振る舞いであると考え、犬の愛着行動をモデル化し、ロボットへ適用した。また、犬の行動特性の要因となるパラメータ(人へのなつき度と不安への感受性)を導入し、異なる行動特性を示すロボットの愛着行動モデルを構築した。また、人とロボットの直接的なインタラクションとしてボール遊びや誘導行動の実現に取り組んだ。人はロボットの振る舞いを適切に解釈できるか、インタラクションの頻度がどのように変化するか、という点から評価を行った。
著者
吉田 成仁
出版者
帝京平成大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

前十字靭帯(ACL)損傷の予防方法を開発することを目的として、筋活動とACL損傷リスクとの関連性を検討した。接地直前50msにおいてつま先接地(FFS)は踵接地(RFS)に比べて腓腹筋(GL)、半腱様筋(ST)、大腿二頭筋(BF)の筋活動量が有意に大きかった。また、接地直後50msではFFSはRFSに比べてBFとGLの筋活動量が大きく、前脛骨筋の活動量が小さかった。このことからFFSによる動作では、接地前後のハムストリングスの筋活動が高く働くことが示唆され、FFSによるカッティング動作はRFSによるカッティング動作に比べ、ACL損傷リスクの低いカッティング動作であることが明らかとなった。
著者
佐川 享平
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

【研究目的】本研究は、日本炭鉱労働史の民衆史的検討を目的とする。より具体的には、記録作家である上野英信が残した「筑豊文庫資料」の調査・整理・分析を通じて、戦前から戦後に至る時期の炭鉱(労働)史を、民衆史的・社会史的視座から把握すべく構想されたものである。【研究実施計画】本研究では、(1)直方市が所蔵する「筑豊文庫資料」の調査・整理作業、ならびに、(1)の成果に基づく、(2)日本炭鉱労働史の民衆史的視座からの再構成、(3)資料論的アプローチに基づく上野英信の再評価、という3つの課題を設定し、課題(1)・(2)を〈基幹的研究〉として、課題(3)を〈発展的研究〉に位置づけている。本年度はこのうち、〈基幹的研究〉の課題(1)を継続的に実施した。【研究成果】本年度は、直方市と継続的に協議する場を設け、「筑豊文庫資料」の整理方法や方針について検討を行い、作業の手順や方針についての覚書を取り交わすとともに、資料整理の準備作業を進めた。また、課題(1)の一環として、「筑豊文庫資料」に含まれる音声テープ資料(主として炭鉱関係者に対するインタビュー)について、オープンリールから媒体変換された音声データの提供を受け、その一部の文字起こしを行い、資料の内容把握を行った。加えて、上野英信と「筑豊文庫資料」の関係者・関係機関への調査も行い、「筑豊文庫資料」の性格や来歴の確認に努めたが、これは次年度以降に取り組む課題(2)・(3)の前提ともなる作業である。
著者
谷口 隆晴
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究では,ハミルトン偏微分方程式に対するエネルギー保存型数値解法を導出する新たなフレームワークを提案した.提案したフレームワークでは,エネルギー保存型数値解法は方程式を定めるラグランジアンの時間対称性から導出される.この方法は既存の方法と比べ,様々な対称性を用いることで他の保存量を保存する数値解法を導出できるなど,応用範囲が広い.また,このフレームワークの拘束をもつ系への拡張や,局所保存則を保った数値解法の導出法の創出,離散微分形式の理論との連携なども行った.
著者
宮武 勇登
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

現代科学の多くの分野で,長時間スケール数値計算の需要が高まっている.そのためには,微分方程式の数理的/物理的性質(例えばエネルギー保存則)を活用した構造保存数値解法が適切だが,計算機パワーのハード面の成長に伴い,現場のニーズも多様化・大規模化している現在,精度と計算コストのギャップといった問題がこれまで以上に顕著化している.これらの問題に対して,現状では,各分野の専門性や経験によって解決案が研究されているが,本研究では,より数理的/分野横断的な立場から,汎用性の高い高速かつ高精度な並列構造保存数値解法を開発することを目的とする.本年度はこの目的に対して,主に,微分方程式を離散化した際にあらわれる線形方程式の性質やその解法に関して研究を行った.不連続Galerkin法は比較的容易に高精度な離散化を行える一方,離散化後にあらわれる線形方程式の性質(条件数など)が悪くなることがある.この問題に対する先行研究として,離散化の際に人工的なパラメータを導入するアイデアが知られており,本研究では,構造保存不連続Galerkin法への展開を考え,実際にいくつかの散逸系に対しては有用性を確認できた.ただし,保存系に対してはこのアイデアの素直な適用は難しく,また散逸系に対しても,ほとんど効果の見られない問題例も存在する.その他にも,線形方程式を数値計算するための反復解法についても研究を行い,新しいタイプの適応型SOR法を導出した.
著者
高安 亮紀 大石 進一 久保 隆徹 松江 要 水口 信
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

世の中の自然現象を数学問題にモデル化すると偏微分方程式と呼ばれる未知関数の微分に関する関係式が頻出する。これを数学的・数値的に解いて未知関数を特定することが自然科学の分野での研究対象となる。本研究では、固体燃料の燃焼理論や生物増殖の数理モデルなどで現れる非線形放物型方程式と呼ばれる偏微分方程式のクラスに対して、その初期値境界値問題の解が数値計算で得られた近似解の近傍に存在する、あるいは存在しない事を、数値計算によって証明する計算機援用手法を開発した。これは精度保証付き数値計算と呼ばれ、微分方程式の数学解析に対する現代的なアプローチとして注目を集めている。
著者
荻田 武史
出版者
東京女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究の目的は、数値線形代数におけるロバストな行列分解アルゴリズムの体系を構築することである。数値線形代数は科学技術計算の基礎であり、そのための高い安定性を持つアルゴリズムを開発することは、非常に重要である。これを達成するためには、様々な行列分解に対して、個々のアルゴリズムの詳細よりもメタなレベルにおいて共通の枠組みを創造しなければならなかった。そこで、理工学の多くの分野に応用がある実対称正定値行列に対して、高い安定性を持った行列分解アルゴリズムの開発に成功した。さらに、多くの応用がある固有値問題や特異値問題に対しても、高い安定性を持った数値計算法を提案した。
著者
江角 智也
出版者
島根大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

多くの植物で花成を誘導するフロリゲン遺伝子(FT)は、カキとブドウにおいては、果柄(穂軸)と果実で強く発現していた。一方、FTと拮抗する働きを示すTFL1遺伝子の発現は、結果枝に形成される芽において強く発現していた。ブドウでは、有核果を着果させた結果枝と無核果の結果枝とで、それら遺伝子の発現レベルに違いがみられた。また、隔年結果の原因シグナルとして考えられているジベレリンの合成やシグナル伝達に関与する遺伝子の発現についても、有核果の結果枝と無核果の結果枝とで、一部の器官において発現レベルの違いがみられた。果実着果、種子形成と花芽形成の関係における、花成関連遺伝子の関与について知見を得た。
著者
桂 有加子
出版者
総合研究大学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、有袋類のオスがどのように遺伝的に決められるのかについて明らかにすることを目的として、これまで有袋類でのオス決定遺伝子SRYの進化・機能、オス精巣で発現する遺伝子の網羅的同定等を行ってきた。本研究の成果から、有袋類(ワラビー、コアラ等)SRYの配列は真獣類(ヒト、マウス等)のものと異なるが、有袋類SRYの機能は真獣類のものと類似していることが示唆された。以上の結果成果から、有袋類の性決定遺伝子は、SRYである可能性が高いことが示唆された。
著者
福田 亜希子
出版者
芝浦工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

連続時間および離散時間可積分系がもつ著しい性質に由来する固有値計算等の優れた数値計算アルゴリズム:「可積分アルゴリズム」がこれまでに数多く報告されている。本研究では,超離散可積分系の数理構造に着目した新たな固有値計算アルゴリズムの導出を試みた。qd法の漸化式は離散戸田方程式と一致することが知られており,それを超離散化することで箱玉系の運動方程式に対応する超離散戸田方程式が得られる。本研究ではまず,超離散戸田方程式に関連するMin-Plus代数上の3重対角行列に着目し,トロピカル行列式を用いたMin-Plus代数上の固有多項式の根と超離散戸田方程式の変数との対応を明らかにした。また,3重対角行列を隣接行列とする重み付き有向グラフにおける平均閉路重みと固有多項式の根の関係についても明らかにした。さらに,超離散戸田方程式の解の挙動を調べることで,超離散戸田方程式の時間発展が,Min-Plus代数上の3重対角行列の固有値を計算していることが明らかとなった。このことは,グラフの観点からは,有向グラフにおける最小平均閉路重みを求めていることに対応する。一方,超離散ロトカ・ボルテラ系に対応するMin-Plus代数上の固有値計算アルゴリズムについても検討し,対称な3重対角行列を対象とする固有値計算アルゴリズムが得られた。付随して,超離散戸田方程式,超離散qd型ロトカ・ボルテラ系,超離散ロトカ・ボルテラ系を結ぶ変数変換が得られ,超離散qd型ロトカ・ボルテラ系が,従来知られていた箱玉系のラグランジュ表現に対する別表現を与えることを示した。
著者
元木 英
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

リンパ浮腫は悪性腫瘍治療によるリンパ節郭清や放射線治療などの後に四肢が肥大し、生活の質を著しく低下する慢性の進行性疾患であるが、術後にどのような機序によってリンパ浮腫に至るのか、その発症機序はまったく不明である。リンパ浮腫の発症機構の解析を行った。リンパ浮腫患者のリンパ管では他の炎症性血管疾患同様にリンパ管平滑筋細胞が形質変換し増殖しリンパ管壁を肥厚していることがわかった。さらに私が確立したマウスモデルでは、透過性の亢進した新生リンパ管とリンパ球と単球・マクロファージを主体とした免疫細胞の集積を認めた。炎症プロセスが、リンパ管新生をもたらしている可能性が高いことが示唆された。
著者
河西 秀哉
出版者
神戸女学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、戦後を対象時期として設定し、象徴天皇制の歴史を総体的に解明すること試みようとしたものである。政治的動向のみならず、社会的・思想的な側面も含めて全体を検討し、象徴天皇制を全体として把握することを試みた。特に、皇居という空間への認識、戦争責任論、明仁天皇・美智子皇后という人に焦点を当て、象徴天皇制がどのように展開してきたのかを検討した。その結果、国民の意識に寄り添いながら展開したことが明らかとなった。
著者
藤原 奈津美
出版者
徳島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

高齢者や有病者などの易感染性宿主は、口腔細菌による誤嚥性肺炎の発症リスクが高く重症化しやすい。さらに口腔環境が不衛生になりやすく、日和見感染菌の検出率も高い。緑膿菌の病原因子の一つである、ピオシアニンは、誤嚥性肺炎の病態確立に極めて重要な病原因子であることから、「不衛生な口腔環境下において口腔細菌がピオシアニン産生を促進させ、誤嚥性肺炎の重篤化をもたらす」可能性が考えられる。本年度は、口腔細菌の情報伝達物質や分泌蛋白を含む培養上清を緑膿菌に作用させて、非接触系でのピオシアニン産生促進効果について解析した。Streptococcus mutansなどの口腔レンサ球菌、Porphyromonas gingivalis, Fusobacterum nucleatumなどの歯周病原因菌、日和見感染の原因菌となる、Candida albicans, Staphylococcus aureusなどの口腔細菌の培養上清を添加した条件下で緑膿菌を培養し、ピオシアニンの産生量を測定した。その結果、F. nucleatumの培養上清を添加するとピオシアニン産生量が増加することを確認した。ピオシアニンとは異なる病原因子のピオベルジンにおいても同様の条件下で産生量を検討したが、産生促進の影響は示されなかった。F. nucleatumに着目し、F. nucleatum subspeciesや臨床分離株を用いてピオシアニン産生量の違いを確認した。ピオシアニン産生促進効果を発揮する物質をスクリーニングするために、F. nucleatum培養上清を熱処理しピオシアニン産生量を測定したところ、産生量が減少した。よって、ピオシアニン産生を促進する物質は、F. nucleatumの代謝産物中の、熱に対して不安定なタンパクである可能性が示された。