著者
加藤 元宣
出版者
Japanese Association of Electoral Studies
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.154-170,207, 2002-02-28 (Released:2009-01-22)
参考文献数
13

本論文の目的は,2000年衆院選の選挙結果について都市部と農村部で明確な違いが存在したこと,小選挙区当選者の属性データと地域特性の間に少なからぬ関連性が認められたことの2つの仮説を検証することである。本論文は人口,産業などを代表する26の変数を用いて主成分分析を実施し,地域特性に基づく小選挙区の分類を行った。そして,析出された都市対農村の軸を尺度として2000年衆院選を分析した。その結果判明したことは,第1に都市部における民主党の局地的大勝•自民党の局地的大敗という特徴が明確に浮かび上がったこと,第2に農村部に対する都市部の投票者比率が2000年には急激に増加しており,そのことが選挙結果に少なからぬ影響を与えたこと,第3に当選者の属性を比較したとき都市部と農村部で明確な差異が認められ,代議士の構成について微かではあるが変化の兆しが見られたことである。
著者
増田 正
出版者
Japanese Association of Electoral Studies
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.217-225,275, 1998-02-28 (Released:2009-01-22)
参考文献数
15

We usually choose one of two kinds of data on analyzing voting behavior in a certain area. One is survey data which is collected by researchers. The other is aggregate data which is prepared by using statistics. We know quite well the advantages of each. And selecting each data naturally leads to fixing some procedures and variables in many cases.I intended to use both, and feed all 9 variables into a computer.In this paper, I have aimed to predict an election in terms of three categories, that is, characters, local political activities, and political environment of the French deputies. I judged the most effective factors of these, which had controlled each other.I calculated the following result of a logistic regression analysis: z=-1.6875+0.6308 (passed)+2.7082 (left)-0.1767 (long)+1.3034 (mayor)-0.9164 (prefect)+0.5869 (community)+0.4133 (decent.)-0.5868 (activity)-0.1108 (money) And r=0.2143 (passed), 0.1668 (mayors), 0.1370 (left), etc.From these figures, it appears that the most important factors are characters of the French deputies. Compared with other elections, the 1997 French legislative election is not special. I think that we can apply this implication to other legislative elections in France.
著者
石間 英雄
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.47-57, 2018 (Released:2021-07-16)
参考文献数
39

なぜ,政党は議会提出前に法案の実質的な審議をするのだろうか。本論文では,日本とオーストラリアの主要政党を題材に,議会政党による法案の事前審査を,対称的な二院制のもとでの調整メカニズムとして捉え,その説明を試みる。具体的には,対等な二院制による制約のため,議会内でなく政党内政策組織で議員間の調整が行われると主張する。対等な二院制である両国の政党の活動を調査したところ,議会提出前に政党が法案を審査しており,党内の政策委員長に上院議員も就任していた。加えて,日本の自民党の部会活動を分析したところ,野党議員が参議院の委員長職に就いた場合,委員会と対応する部会の活動が増加することが明らかとなった。以上の結果からは,上院の存在が政党組織に影響を与えており,旧来の下院中心的な政党観を脱する必要が示唆される。
著者
逢坂 巌
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.44-59, 2011 (Released:2017-06-12)
参考文献数
10

2009年総選挙におけるテレビの選挙報道を振り返ると,報道時間は少なかったものの,マニフェストが多く採り上げられていたということがわかった。しかし,マニフェスト報道で採り上げられていた争点が,民主党が設定したものに近似していたこと,また,政策が「全体像」においても個別争点においても厳しく問われず,取材VTRに写る困窮する人々の姿(イメージ)が中心的に伝えられたことで,結果として,報道全体が民主党のパブリシティに化していた。民主党は,テレビの議論においても政権獲得後の「全体像」を正面から問いかけることはなく,CMでは人々の「不安」や「不満」に訴えるキャンペーンに回帰した。それは流動化する選挙市場への適合という面もあったが,選挙後の政策の「引渡」の段階での困難を準備するものだった。
著者
境家 史郎
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.5-17, 2010 (Released:2017-03-31)
参考文献数
12

本稿の目的は,候補者レベルの選挙公約が決定されるメカニズムについて,現代日本政治の保守化の問題と関連させながら論じることである。1990年代後半以降,国旗国歌法制定,首相の靖国神社参拝,防衛「省」昇格,教育基本法,国民投票法制定など保守的傾向の強い政策実施が目立つが,こうした日本政治の保守化傾向を説明する要因のひとつとして選挙過程が機能しているというのが筆者の立場である。すなわち,近年の「小選挙区制+左翼政党候補の出馬+公明党の自民候補推薦」という選挙競争の文脈において,自民党,民主党候補が「選挙民の選好分布とは独立に」より保守的な公約を訴えるインセンティブを持つことを理論的に示し,実証するのが本稿の主題である。
著者
秦 正樹
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.45-55, 2016

本稿は,18・19歳の新有権者における政治関心の形成メカニズムについて,サーベイ実験を通じて明らかにした。若者の政治行動に関する先行研究では,主として政治的社会化理論を背景に議論される。しかし先行研究では,初期社会化と後期社会化の効果を独立に検証するがゆえに,各社会化の相互の影響については明らかにされていない。そこで本稿では,初期社会化が含意する政治規範の伝播と,後期社会化における政治利益の追及に関するシナリオを用意し,それぞれの情報が,新有権者(若年層)と既存有権者(年長層)に与える影響を明らかにすべくサーベイ実験を行った。実験結果より,新有権者は政治規範にのみ,逆に既存有権者は政治利益にのみ反応して政治関心を高める傾向が示された。以上の分析結果より,新有権者は利害に関わらず,政治システムそのものの在り方に関心を向ける傾向にあることが示唆された。
著者
三船 毅 中村 隆
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.83-106, 2010

衆議院選挙投票率が1996年以降に低水準で推移してきた一因を究明する。戦後日本の衆議院選挙投票率は1993年から急激に低下して1996年に最低投票率を記録した。その後の2000年,2003年の選挙でも投票率は低水準で推移しており,2005年の郵政選挙では有権者の関心も高く投票率は若干上昇したが,この間の投票率は1990年以前の水準とは大きく乖離している。投票率が1996年以降に低水準で推移した一因として,有権者のコウホート効果の存在が考えられ,コウホート効果の析出を行った。分析方法はコウホート分析における識別問題を克服したベイズ型コウホートモデルを用いた。使用したデータは,1969年から2005年までの総務省(自治省)による「衆議院選挙結果調」における年齢別投票率と,明るい選挙推進協会の「衆議院議員総選挙の世論調査」から集計した年齢別投票率である。分析結果から,およそ1961年以降の出生コウホートから投票率を低下させるコウホート効果の存在が確認された。
著者
日野 愛郎 山崎 新 遠藤 晶久
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.31-43, 2014 (Released:2018-01-05)
参考文献数
23

本稿は,人々が世論調査に回答する際に視覚的情報によってどのような影響を受けるのかという疑問を解明することを試みる。具体的には,順序効果,特に先に提示される選択肢が回答されやすくなるとされる初頭効果が生じる条件を検討し,アイトラッカー(視線測定器)を用いて回答者の視線を観察することを通して検証する。選択肢の提示順序を含む調査回答データとアイトラッカーから得られる視線追跡データの双方を分析した結果,回答者にとって事前知識があり選択肢が対立項目から構成される政党支持の質問においては初頭効果が生じない傾向にあることが明らかになった。一方,一般的に事前知識がなく選択肢がいずれも望ましい合意項目から構成される価値観を測定する質問においては,初頭効果が生じやすいことが確認された。以上の結果は,質問の内容によって順序効果の発生メカニズムが異なるとする本稿の仮説を首肯するものであった。
著者
松本 俊太 松尾 晃孝
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.84-103, 2011 (Released:2017-06-12)
参考文献数
37

本稿はこれまで研究が手薄であった,国会議員個人の委員会での発言を分析する。 委員会の研究は,議事手続の一部としての観点や,与野党の対決の場としての観点からのものが中心であったが,本稿は,議員個人にとっての委員会という観点を追加し,委員会で発言することは議員の再選・党内での出世・専門性の発揮にとって有用であることを論じる。このことを実証するために,まず,Perlスクリプトにより衆議院の各常任委員会の会議録を解析し,議員の発言量を委員会ごとに測定し,議員発言のデータ・セットを作成した。次に,その発言量の決定要因についてTobit modelによる計量分析を行う。分析の結果,議員個人,政党政治,議員の専門性の活用という3つの側面が発言の量を決定する要因として重要であることを示す。併せて,1994年の小選挙区比例代表並立制の導入に伴っ て,議員の発言量のパターンが変化していることも示す。
著者
小林 良彰
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.15-25, 2012 (Released:2017-09-29)
参考文献数
18
被引用文献数
1

定数不均衡が代議制民主主義の中でどのような歪み,すなわち機能不全をもたらしているのかを明らかにした。第一に,定数不均衡により,運輸・通信,農林水産,一般行政,地方自治などの予算増額が過剰代表され,社会福祉や生活保護,教育・労働などの予算増額及び後期高齢者医療制度や年金制度見直しの主張が過少代表されていた。第二に,定数不均衡により,当選後の国会における防衛や農林水産,国土環境などに関する言及が過剰代表される傾向をみてとることができた。第三に,定数不均衡が予算や歳出などの政策にもたらす歪みを分析した結果,特別交付税及び農林水産業費と普通建設事業費について,定数不均衡との間に関連がみられた。最後に,こうした定数不均衡の問題を解決するための提言を提示した。
著者
三浦 麻子 楠見 孝
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.49-59, 2014 (Released:2018-02-02)
参考文献数
8

本研究では,投票を高度な意思決定過程を伴う社会的選択行動としてとらえ,個人的態度との関連を検討した。有権者を対象とした2波のオンラインパネル調査を実施し,次の2点,すなわちまず,投票の有無や投票に際しての熟慮,正確な投票行動(Correct voting)の自己認知と批判的思考態度の関連を,政治意識や他の心理社会的要因をふまえて検討した。また,選挙ごとの投票先の記憶と実際の投票先の一致・不一致にもとづいて同定した主体的Swing voterの特徴に注目して検討した。Correct voting認知に対する批判的思考態度の正の影響や主体的Swing voterにおけるリスク回避傾向の低さなど,投票行動やそれについての認知と個人的態度の関わりの一端が明らかとなった。
著者
松本 正生
出版者
Japanese Association of Electoral Studies
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.39-50,214, 2006-02-28 (Released:2009-01-22)
参考文献数
17
被引用文献数
2

1995年統一地方選の「青島•ノック現象」を嚆矢とする無党派の時代も,ようやく終焉を迎えつつある。93年政変からはじまる連立政権期の十数年間に,有権者レベルでは,政党支持の質的変化が生じていた。旧来の政党支持の退場による,「潜在的支持」層化の進展である。すなわち,特定の支持政党を持たないという前提の上で,そのつど政党を選好する新しい政党支持の時代の到来だ。「そのつど支持」層(contingent voters)は,政党を横並びで比較し,政党本位の選択を行う。「政党」支持から政党支持への変容と表現することもできよう。いずれにせよ,無党派層と政党支持層との間の区分は,もはやあまり意味をもたない。無党派を政党支持の残余カテゴリー(残りの部分)と捉えるのは,そろそろ終わりにすべきだろう。「無党派層の反乱」に象徴される政党を否定した時代から,相対化して比較する時代へと変わった現在,無党派層という呼称もやめた方がよいかもしれない。
著者
柳瀬 昇
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.74-87, 2009

2003年7月に行われた5例目の電子投票による選挙では,電子投票機の異常により 投票が中断するなどの大規模なトラブルが発生し,選挙人から行政不服申立てや選挙無効訴訟が提起されるに至った。名古屋高等裁判所は,2005年3月,投票機の異常によって選挙の結果に異動を及ぼすおそれがあったとして選挙を無効と判示し,最高裁判所も,その判断を支持した。 本稿では,この岐阜県可児市電子投票事件について,事件の概要,選挙人からの行政不服申立てとそれに対する市・県選管による判断および裁判所の判断を概観したうえで,電子投票を用いた選挙の手続の瑕疵をただす方途について検討しつつ,各機関による法的判断について評釈を行った。
著者
河村 和徳
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.78-88,182, 2001-02-28 (Released:2009-01-22)
参考文献数
20

1999年に実施された愛媛県松山市長選挙は,相乗り候補に対して政党の支援を受けない候補者が当選したという点で注目に値する選挙であった。この松山市長選挙を分析した結果,相乗りに批判的な態度をとる有権者が必ずしも新人候補者を支援していたわけではなく,また政治不信も有権者が新人を志向することとは直接的な関連性はなかったことが,明らかとなった。一方,県議選挙直後における現職知事の新人支持発言とそれに伴う自民党愛媛県連の推薦見送りは,現職志向の有権者の態度変容を促す結果となっていた。その傾向は,政治的関心が高く地方の政治に不満を有していた有権者に顕著にみられた。本稿の分析結果は,相乗り候補者に対して草の根候補者が対抗するためには不信と投票方向を結びつける媒介変数が必要なことを示唆している。

3 0 0 0 OA 書評

出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.77-93, 2016 (Released:2019-12-01)
著者
上ノ原 秀晃
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.116-128, 2014

2013年の参議院選挙は,初めての「ネット選挙」であった。近年,インターネットではソーシャルメディアの比重が増しており,海外では選挙運動にも広く利用されている。そこで本論文では,「ネット選挙」解禁に候補者がどう対応し,(代表的なソーシャルメディアである)ツイッターを活用したのかを分析する。具体的には,①どのような候補者がツイッターの利用に積極的であったのか,②どのような内容を投稿したのかを分析する。 分析の結果,小政党の候補者,競合的な選挙区もしくは比例区の候補者がツイッターに積極的であったことが分かった。また,コンピューターによる内容分析の結果,多くの投稿が告知や報告に関わるものであり,政策関連の投稿は少ないことは分かった。いくつかの小政党の候補者はツイッターの双方向機能を活用し,有権者との情報交換に積極的であった。
著者
砂原 庸介
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.43-56, 2011 (Released:2017-07-03)
参考文献数
92

政党システムの分析において,これまで注目されてきたのは,基本的には社会的亀裂と政党システムの存続・変化との関係であり,地方の多様性や新党の存在は,必ずしも注目されてこなかった。しかし,近年の研究においては,地方の多様性や新党の参入を政党システムの存続・変化と結びつけた議論が進められている。本稿では,そのような議論を整理した上で,地方の多様性や新党の参入を含めて政党システムを包括的に捉える政党システムの制度化というアプローチを紹介し,今後の研究においては中央レベルと地方レベルの政党間競争を動態的に捉える観点が重要になることを指摘する。
著者
芦谷 圭祐
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.68-79, 2020 (Released:2023-11-16)
参考文献数
29

地方議員は議会でどのような争点を取り上げているのだろうか。本稿は,量的テキスト分析を用いて,10万件を超える大規模なテキストデータを機械的に解析することにより,地方議員の代表活動の特徴を量的に明らかにする。具体的には,五大市の議会常任委員会における常任委員の全発言に対して,構造的トピックモデルを用いた分析を実施する。明らかになったのは,以下の通りである。第一に,特別に有権者や議員の関心が高い争点を除けば,議員は概ね有権者の関心の高い争点を議会で取り上げている。第二に,争点ごとに積極的に言及する議員は異なっている。女性議員など,特定の属性の議員が取り上げやすい争点もあれば,特定の政党が一体的に取り上げている争点もある。以上の結果からは,議会が多様な属性を有する議員によって構成されるようになると,議会討論もより多様な争点に及ぶものになることが示唆される。
著者
砂原 庸介
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.9-24, 2020 (Released:2023-11-16)
参考文献数
89

本稿では,政府間関係の議論として,地方政府間関係に焦点を当てる。欧米で蓄積されてきた地方政府間の連携についての先行研究を参考にしながら,「なぜ地方政府が他の地方政府と連携を行うか」について,地方政府間の集合行為に注目した説明を行う。次に,日本において地方政府内の対立・地方政府間の競合・国と地方の関係という三つの点について規定する政治制度から,日本における地方政府間関係の特徴について整理する。それを踏まえて,集合行為に注目した説明が,地方政府間の競争を基調として,国が必要に応じて合併を促すという,これまでの実証的な分析が示してきた特徴について整合的に説明できることを示す。さらに地方分権改革以降国と地方の関係が変わる中で,これまでの政治制度の特徴を考慮すれば,今後は都市の中心をめぐる競争と近年の住民投票による民意の表出が制度の議論にとって重要な論点になることを論じる。
著者
善教 将大 木村 高宏
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.86-93, 2021 (Released:2023-11-16)
参考文献数
13

本稿では,注意喚起を目的とする警告メッセージが,サーベイ実験における読み飛ばし行為の抑止や実験結果に与える影響を明らかにする。近年,日本の政治学ではサーベイ実験を用いた研究が増加傾向にあるが,実験結果の妥当性を向上させる方法論については,研究が十分に蓄積されていない。本稿は,図書館の民間委託への選好を推定するサーベイ実験を題材に,先行研究で有効性が示された複数の警告メッセージを取り上げ,これらがサーベイ実験の結果などに与える効果を分析する。実験の結果,警告メッセージはサーベイ実験の処置効果に影響を与えるとはいえないことが明らかとなった。この知見は,警告メッセージにより実験結果の妥当性を向上させるには,メッセージの内容やそれを発するタイミングに注意すべきであること,さらには適切な実験設計が妥当な結果を得る上で何より重要であることを示すものである。