著者
中道 久美子 中村 文彦
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.867-872, 2014

南米コロンビアの中規模都市であるメデジン市では、所得格差とスラム街形成、自家用車やオートバイの増加といった都市交通問題を抱えていたが、約20年間で都市再生と都市交通システムの戦略的整備に取り組み、革新的な成長を遂げた。本論文では、メデジン市の現代都市交通システムの動向について、現地ヒアリング調査に基づいてとりまとめ、今後の都市交通戦略のあり方について示唆を得ることを目的とする。具体的には、高架鉄道、ロープウェイ、BRT、LRT、自転車シェアリング、エスカレータ等の現代的な都市交通システムに関して、現地自治体へのヒアリングや利用者へのインタビューを通して、動向をまとめるとともに、南米のその他の都市との体系的比較も行った。それらの結果から、機動力のある実働的な自治体組織、低費用かつ論理的に矛盾のない導入順序、市民が誇りを持つよう重視していることなどの特徴が見られ、途上国の交通戦略やわが国の地方都市の交通問題解決に際しての知見を得た。
著者
劉 暢 赤崎 弘平
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集
巻号頁・発行日
vol.40, pp.793-798, 2005

本研究は北京緑化隔離帯の計画及びその実現可能性に着目した。具体的には、計画策定の流れ、計画内容及び緑化隔離帯として指定された地域の実態を把握した。そして形状、計画内容、実現手法についてロンドン、東京のグリーンベルトとの比較により、北京緑化隔離帯の問題点及びその実現に向けて、ロンドンと東京の事例から参考すべき点を探り出す。本研究から得られた結論は以下の通りである。1、ロンドングリーンベルトと北京第二緑化隔離帯は「都市構造」のひとつであることに対して、ロンドンのグリーン・ガードル、東京の環状緑地、北京の第一緑化隔離帯は形状、位置から見れば「都市基盤施設」として位置づけることができ、道路、公園などと同じレベルの都市施設であり、レクリエーション機能が重要でる 2、北京では、「第一緑化隔離帯」は都市構造としてのグリーンベルトと認識されたため、レクリエーション機能が重視されず、林地の建設と農地・農村の保全が行われた。 3、しかし実際に建設された林地は景観・レクリエーション機能が果たせずに孤立し、農地・農村の保全は後追い的な関連法は効果がなく、市街地化及びスラム化が進行した。
著者
増山 篤
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.43.2, pp.41-49, 2008-10-25 (Released:2017-01-01)
参考文献数
8

都市計画で用いられるデータのうち、ポイントデータは少なからぬ割合を占める。また、ポイントの空間分布パターンを判別する代表的な分析方法としては、最近隣距離法と方格法がある。この論文は、最近隣距離法および方格法による判別結果が、一般的にどの程度まで一致し、相互に従属な関係にあるのか明らかにすることを目的とする。まず、第一に、二つの分析方法による判別結果が完全に一致するための条件を示す。第二に、モンテカルロシミュレーションによって、この条件が満たされることがあるかどうかを検討する。第三に、二つの分析方法による判別結果は、いくらかは相互に従属な関係にあるが、しばしば異なる判別結果を与えることを示す。第四に、二つの分析方法による判別結果が相互に従属である程度を計量化する指標を考え、この指標は非常に低いものであることを示す。最後に、この論文をまとめ、今後の課題を述べる。
著者
垣内 恵美子 奥山 忠裕 寺田 鮎美
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.44.3, pp.403-408, 2009-10-25 (Released:2017-01-01)
参考文献数
8

社会的便益を過小評価されがちな美術館活動について、その受益者及び社会的便益をある程度客観的に推計することにより、その社会的便益にふさわしい適切な支援のあり方を検討することを目的として、岡山県倉敷市にある大原美術館を事例として取り上げ、CVM(仮想評価法)を用いた市民調査を実施した。結果として、大原美術館が、近隣地域(倉敷市及び岡山市)の市民に与える総便益は年間約6億円と推計され、将来世代のためといった遺贈価値、他の人が利用しているからといった代位価値、誇りに思うといった威信価値、都市の魅力を高めるなどの非利用価値が大きいことがわかった。また、WTP(支払意志額)に影響する変数は、大学院レベルの学歴及び所得、大原美術館への総訪問回数となった。また半数を超える市民が支払意志を有することから地方自治体による一定程度の支援は正当性を有すると考えられるが、同時に、相対的に高いWTPを有する一部の市民が存在することから、別途これらの人々の支援を得るスキームを考えることも必要であろう。
著者
井上 芳恵 中山 徹
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.739-744, 2002-10-25 (Released:2017-11-07)
参考文献数
2

本研究は、大型店撤退の特徴を分析すること、及び大型店撤退への行政の対応策を把握することを目的とする。本研究より得られた結果は以下の通りである。1.半数以上の自治体で大型店の撤退が見られ、半数以上の事例では撤退により消費者の買物行動や周辺の小売業に影響を及ぼしている。大型店撤退後の跡地の利用状況は約3割はまだ未定である。2.大型店撤退に対する行政の対応策は今のところ情報収集が中心であり、法的な対応策はほとんど取られていない。
著者
五島 寧
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集
巻号頁・発行日
vol.33, pp.265-270, 1998

This study clarified about Shrine City Plan and HUYO Shinto Shrine in Huyo (PUYO; at present) under Japanese colonized era. Present PUYO city had been formed by Shrine City Plan. In The Plan, established urban district and historic site had not been considered, and entity of HUYO Shinto Shrine was the most important matter. The purposes of city planning in Korea of those days were "control of expanding suburbs" or "creation of industry base". The Plan was remodeling of established urban district. In Korean peninsula under Japanese rule, city planning was also enforced to express the rule order concretely.
著者
加嶋 章博
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.219-224, 2013-10-25 (Released:2013-10-25)
参考文献数
14

スペイン植民都市の空間構成には強い共通性が指摘されるが、スペイン植民地法であるインディアス法には、都市の具体的な計画尺度に関する法規範は意外に数少ない。しかし「都市計画」に言及した1573年の「フェリーペ2世の勅令」のように、都市核となる広場の計画に関して具体的な尺度を示した計画規範も見られる。本稿は、都市計画という用語が用いられることがなかったスペイン植民初期(16世紀)において、土地区画に関する植民地の規範に着目し、土地の区画に対する考え方がどのように規範化され、どのような尺度で都市計画が捉えられて行ったのかを明らかにしようとするものである。結果として、スペイン国家は都市の全体像を誘導することはなかったが、「整然とした(orden)」都市空間の秩序ある計画を早期から強く主張したことや土地区画の単位の統一化といった規範の整備がなされたことが読み取れた。また、140~150バラ程度の街区の区画が都市計画の具体的な尺度であった傾向が窺えた。こうしたことが、本国とは異なるスケールによるグリッド・パターンという植民都市の共通性を創出する要因となったことが示唆された。
著者
渡部 大輔 鳥海 重喜 田口 東
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.1341-1348, 2017-10-25 (Released:2017-10-25)
参考文献数
15

本研究では,東京オリンピック・メインスタジアムへの観戦客の入場に際し,新宿御苑を活用した動線計画の提案を行い,時間拡大ネットワークに基づいた徒歩流動モデルにより計画の妥当性について評価した.まず,既存研究や先行事例から動線計画と入場管理の調査を行った.そして,徒歩流動モデルとして,新宿駅の各路線のホームから御苑を経由し,メイン会場までの平面ネットワークを設定し,所要時間と待機時間をコストとして表現した時間拡大ネットワークを構築した上で,容量制約付き最小費用流問題により観戦客の配分を行うモデルを構築した.そして,本モデルにより,駅構内や御苑内に滞留する人数を把握することで,セキュリティチェックのゲート数やゲート通過時間等の影響を分析し,御苑内のセキュリティチェックに必要な設備や面積の検討を行った.その結果,今回想定した観戦客の移動需要(約25,000人)と条件設定に対して,円滑な入場を行うために必要なゲートの数と面積を見積もることができた.
著者
明石 達生
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.525-530, 2013-10-25 (Released:2013-10-25)
参考文献数
8

本稿は、通勤鉄道の混雑緩和という現象を題材に、東京大都市圏の1990年代から2010年に至る都市構造の大局的な変化を明らかにしたものである。通勤鉄道の最混雑区間の混雑率は、近年大部分の路線で200%を十分に下回っている。東京大都市圏の従業者の分布は、この20年間において、0-20km圏で約80万人減少し、20-40km圏で約100万人増加するという量で、都心部から郊外部へシフトした。この結果、周辺地域から特別区部への流入通勤人口が約30万人減少したが、通勤混雑の緩和にはそれ以上に鉄道輸送力の増強が寄与している。一方、東京都心部では、再開発により膨大な面積の事務所床供給が行われたが、事務所で働く従業者の人数は逆に減少した。従来、事務所床の増大は通勤交通の負荷を増大させると解釈されてきたが、この事実から、近年の事務所床の大量供給は、通勤ラッシュの悪化にはつながらず、大局的には従業者1人当たり床面積の大幅な拡大を意味している。
著者
金森 亮 森川 高行 倉内 慎也
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.45.3, pp.853-858, 2010-10-25 (Released:2017-01-01)
参考文献数
22

LRTは自動車依存からの脱却、環境負荷低減、中心市街地活性化、都市景観向上などの導入効果が期待されるが、客観的計測が困難な要素も多いことから、合意形成が難航することが多い。本研究では、統合型交通需要予測モデルを適用することで、LRT導入による交通状況変化に加えて、中心市街地活性化への貢献を定量的に把握する。名古屋市を対象とした複数のLRT計画を評価したところ、中心市街地内での自動車利用減少と自転車・徒歩による移動増加、来訪者の滞在時間や立ち寄り箇所数の増加が確認でき、LRT導入による中心市街地活性化の観点からも定量的指標を基に議論できることを示した。
著者
村山 健二 石川 幹子
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.45.3, pp.403-408, 2010-10-25 (Released:2017-01-01)
参考文献数
40
被引用文献数
2

本論文は、海苔養殖で栄えた大森の地先海面利用を歴史的に分析することを通じ、地先海面の地域的な共同利用がどのように成立していたのかを「空間」・「人(組織)」・「法」の観点から明らかにする。その方法として、大森の地先海面の歴史を概観した後、さらに詳細に、漁家分布、漁場の位置、河岸の分布と使われ方、地先海面を共同利用するための組織、の分析を行った。結論として、大森の海苔養殖における地先海面利用では、利権の私的な独占に対し、共同性と持続性を目的とした利用システムの調整が、1.堀・河岸などのインターフェース空間の創出、2.漁業組合における公平性を旨とする分配の仕組みの導入、3.有限な資源を管理する法の運用等により、持続的に行われてきたことを明らかにした。
著者
川崎 興太 大村 謙二郎
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.43.3, pp.271-276, 2008-10-25 (Released:2017-01-01)
参考文献数
23

本研究は、長期間未整備の都市計画道路をめぐる都市計画訴訟、具体的には都市計画制限に基づく建築不許可処分の取消訴訟及び都市計画制限に対する損失補償訴訟の判例について考察することを目的とするものである。都市計画の存立基盤は、原理的には、長期的安定性・継続性と可変性・柔軟性との緊張関係の上にありながらも、実際には建築自由の原則を尊重する観念の反対論理として、ひとたび都市計画決定を行って財産権に制限を課したならば、その後の都市計画の運用は慎重に行うべきだとの思考に固執するあまりに時間の観念が稀薄になり、いかに社会経済情勢や環境諸条件等が変化しようとも、既決のものは所与不変の事実として自明視され、適切に見直しが行われなかった場合が少なくなかったように思われる。これは、本質的には都市計画の効力が持続することについての実体的かつ手続的な合理性の問題だと考えられる。本研究では、こうした観点から、今後の都市計画道路の整備及び見直しを進める上での検討課題として、都市計画変更義務の的確な遂行と事業期間明示型都市計画制度の導入、都市計画基礎調査の内容の充実、都市計画提案制度の活用要件の拡充を提起している。
著者
川崎 興太
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.50-61, 2012-04-25 (Released:2012-04-25)
参考文献数
11
被引用文献数
1

本研究は、平成12年に創設された市町村指定の準都市計画区域と平成18年の法改正後における都道府県指定の準都市計画区域の実績を分析し、都道府県の準都市計画区域制度等に関する認識を明らかにした上で、九州北部3県による構造改革特区の提案とこれに対する国土交通省の回答をもとに準都市計画区域に関する法制度上の問題点について考察することを通じて、準都市計画区域の指定実績と法制度上の問題点に関する知見を得ることを目的とするものである。本研究を通じて、(1) 市町村指定の準都市計画区域は、4区域(4市町村)の実績にとどまったが、都道府県指定の準都市計画区域は大規模集客施設の立地制限を主たる目的とするものを中心として44区域(9道県)となっていること、(2) 都道府県は、少なからず「土地利用規制が課されるばかりで、都市計画事業が行われないことなどから、住民の理解を得ることが困難であること」や「用途や規模の違いにかかわらず接道義務規定等の集団規定が一律的に適用され、既存不適格建築物などが発生すること」などを準都市計画区域制度のデメリットとして認識していること、(3) 準都市計画区域に関する法制度上の問題点は、(1)都市計画区域外における原初的な都市的土地利用規制の不在、(2)市街地外において緩くなる都市的土地利用規制の論理構成、(3)都道府県の全域を対象とした都市計画に関する基本方針の欠如にあることが明らかになった。
著者
鶴田 佳子 陣内 秀信
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.901-906, 2002-10-25 (Released:2017-11-07)
参考文献数
11

イスラーム地域の都市の中心部にはバーザールと呼ばれる商業空間が広がっている。商業空間には、商業機能だけでなく多様な機能が含まれ、活気あふれる都市の核をなしている。こうした都市の核となる商業空間の構造を分析することによって、イスラーム地域、とりわけトルコの都市の特徴を把握することが本稿の目的である。本論で対象とするトルコの3都市は、いずれも緑豊かな木造文化圏に属す都市であり、城壁の内側に高密、かつコンパクトに形成されたアラブ都市に比べると、建物と建物の間の隙間や前庭、外庭、広場といったオープンスペースが多くとられ、全体としてゆったりとした景観を見せていることが特徴として抽出された。
著者
村中 大輝 雨宮 護 大山 智也
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.357-364, 2016-10-25 (Released:2016-10-25)
参考文献数
15
被引用文献数
1

近年,地方自治体による公共空間への防犯カメラの大規模設置事例が報告されているが,こうした事例は萌芽期にあり,方法論は様々である.こうした状況下で,先進的に事業に取り組む自治体の事例を把握し,現時点での評価を加えることは,将来普及が見込まれる防犯カメラの設置・運用方針の検討に向け重要である.本研究では,一度に100台以上の規模で防犯カメラの設置事業を行った8自治体へのヒアリングから,事業の方法論を明らかにし,さらに,犯罪統計や市民アンケートの結果も加えて,事業の評価を行うことを目的とした.その結果,以下が明らかとなった.1)防犯カメラの設置過程は,事業を主導する主体や市民への広報に対する考え方等の面において自治体により大きく異なる.2)現在の防犯カメラ設置過程には,防犯カメラの設置規模や設置箇所の決定過程や市民への説明の機会の面で,問題がある可能性がある.3)防犯カメラ設置から5年が経過した一事例では,防犯カメラが車両関連犯罪を減少させ,市民にも受容された可能性が高いと考えられる.以上の結果に基づき,最後に本研究では,自治体が設置する防犯カメラの設置・運用方針について議論した.
著者
坂本 壮 森本 章倫 大門 創
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.774-779, 2015

人口減少フレームにある我が国では,人々が徒歩や自転車、公共交通を中心として生活が可能な都市機能集約型のまちづくりであるコンパクトシティが地方都市で進められている.富山市では,LRTなどの公共交通を軸とした拠点集中型のまちづくりが進められており,LRT沿線地域への居住を推進している.そこで,LRT導入都市の人口変動に着目し,都市の人口とLRT沿線の人口の2つの観点から,今後のコンパクトシティ戦略におけるLRT導入の必要性を検討する.本研究では,欧州のLRTが運行している27都市について,LRT導入前後での都市人口の変動を分析した.さらに,その中の4都市に着目し,LRT沿線の人口分布を詳細に分析することで,LRT導入が人口変動にどのように影響しているかを考察する.
著者
浜田 麻里奈 後藤 春彦 山村 崇
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.783-788, 2014-10-25 (Released:2014-10-25)
参考文献数
8

地縁に基づいたコミュニティの崩壊を受け、既存のネットワークとは異なる形で地域活動を維持することの重要性が高まりつつある。本研究では、地域活動の拠点となりうるコミュニティカフェ(以下、C.C.)の中でも、さらに地域外部との交流拠点ともなりうる、特有のテーマ性を持ったC.C.(以下、テーマ型C.C.)に着目する。その上で、テーマ型C.C.の運営者および関係を持つ団体にヒアリングを行い、持続的な地域活動における役割とそのメカニズム明らかにすることを目的とする。以下の点が明らかとなった;(1)テーマ型C.C.は地域周辺と良好な関係を形成した場において、地域活動の拠点となる。(2)地域活動を通してネットワークを形成した結果、関連団体は主体的に活動へ参加する意向が見られた。これは、テーマ型C.C.が、テーマに基づいた活動の経験や人材を地域側に紹介し、新たな活動が展開されたためである。(3)テーマ型C.C.は地域活動の拠点、および地域外部団体間との経験や人材を提供する役割を担う。これは、テーマ型C.C.が多目的の活動拠点を整備し、特有のテーマ性を有していたため可能であった。
著者
楊 慶雲 花岡 利幸 大山 勲
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集
巻号頁・発行日
vol.37, pp.799-804, 2002

中国成都市の府南河総合整備事業は1992-1997年の5カ年の短期間に実施された都心大規模再開発事業である。この事業は(1)洪水防止、過密人口移転、歴史資源復元、公園・緑地整備、道路整備、下水道整備を目標とする総合整備事業であり、事業区域面積357haに及ぶ都市中心部の再開発事業である、(2)この事業は10万人の移転事業を含み、5年という短期間に行った、(3)民間投資を中心とする資金調達で財源を賄っている、などの特徴を持つ。本論は、中国成都市の都市計画が、都心大再開発事業において如何にその実行可能性を確保したかを、実例を基に都市計画制度、総合計画策定、資金調達、実施体制の視点から分析したものである。