著者
斎尾 直子 真藤 翔 石原 宏己
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.933-938, 2014-10-25 (Released:2014-10-25)
参考文献数
12
被引用文献数
4

近年、少子化に伴う18歳人口減少傾向とは逆行した大学数の増加、それによる大学全入時代への以降、そのような動きと並行して、大学教育やキャンパススタイルの多様化、2002年工場等制限法廃止以降の都心キャンパス整備拡大の動き等、大学経営の観点からキャンパスの新設・撤退と拡大・縮小の動きが活発におこなわれてきた。このことは、大学キャンパスが長年立地してきた自治体や、キャンパス周辺地域にとっては都市の衰退・再生に大きく影響する変革であり、その動向の特長と課題を把握しておくことは重要であると捉えられる。本研究は、首都圏に立地する全4年制大学382キャンパスを分析対象とし、過去30年間の新設・撤退の年代ごとの傾向・変化を把握。その動向を踏まえ、特に撤退事例に着目し、撤退後の跡地利用の実態及び課題抽出をおこなっていくことにより、今後の大学キャンパス立地・移転計画、大学と地域との連携施策のための基礎的知見を得ている。
著者
山本 幸 柿本 竜治 山田 文彦
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.45.3, pp.553-558, 2010-10-25 (Released:2017-01-01)
参考文献数
11
被引用文献数
1

本研究の目的は、筆者ら提案する災害リスクマネジメントのフレームの汎用性を検証することにある。山都町菅地区での山間地域の防災力向上への取り組みにPDCAサイクルに基づく災害リスクマネジメントのフレームを適用することで、8回に亘る継続的なWSと2回の避難訓練の運営を効率的に行うことが出来た。また、PDCAサイクルを巡回させることで、防災学習の取り組み内容を地域全体の防災から災害時要援護者の支援へとスムーズに発展させることが出来た。WSを通して、地域の災害リスクの認知、世帯カルテの整備、災害時要援護者の確認、地域のソーシャル・ネットワークの確認が行われ、災害時に地域や行政が特に配慮しておくべき世帯等が絞られた。避難訓練を通して、地域の防災連絡体制の強化と集落間の協力関係の強化が図られ、避難時間が40分短縮されるなどの効果が見られた。また、WSでの議論により、地域ニーズと地域特性に応じた雨量観測システムと安否確認システムが構築され、実装された。最後に、本取り組みを通じて、地域防災学習のWSを継続していくにあたっての留意点を明らかにした。
著者
中島 直人
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.42.3, pp.403-408, 2007-10-25 (Released:2017-02-01)
参考文献数
25

本論文は石川栄耀による都市計画の基盤理論の探求の特徴を把握することを目的としている。石川の主著書である『都市計画及び国土計画』は1941年に初版が出版された後、1951年に改定版、1954年に新訂版が出版された。先ず、初版出版に至るまでの過程の分析により、石川が都市計画の基盤理論構築のための都市学の確立を強く望んでいたことが明らかになった。石川は『都市計画及び国土計画』では、独自の基盤理論である「都市構成の理論」で都市計画を体系化してみせたのである。また、2度の改訂内容の分析からは、石川が「生態都市計画」と呼んだ新しい都市計画の姿を目指して、「都市構成の理論」に都市動態の理論を組み込もうとしていたことが明らかになった。こうした都市計画の基盤理論を探求する姿勢は、石川の同時代の誰よりも先進的であり、かつ現代的意義も有している。
著者
長谷川 淳一
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.517-522, 1999-10-25 (Released:2018-03-01)
参考文献数
33

The 1940s has been regarded as an epoch in the history of British town planning. Among other things, many imaginative plans were prepared by famous planning consultants, such as Tomas Sharp and Patric Abercrombie. Behind the scenes, however, there was a growing concern among these planners and the government about the present as well as the future of planning and planners. This led to the setting up of the committee on qualifications of planners, which aimed to introduce a new breed of planners, with little avail.
著者
秋本 福雄
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.41.3, pp.887-892, 2006-10-25 (Released:2018-06-26)
参考文献数
50

1910年代、地域計画という用語がイギリスに登場し、間もなくアメリカに紹介され、1920年代、両国で広範に普及した。最近の研究は、地域計画運動の初期の段階について焦点をあてるようになった。しかし、地域計画の概念がどのように形成されたか明らかになっていない。この論文は、19世紀の末から1920年代までの、ハワードの社会都市、パトリック・ゲデスの地域調査、パトリック・アーバークロンビーの地域調査、トマス・アダムスの地域計画、ルイス・マンフォードの地域都市を含む、都市計画家の考えを解析し、地域計画の概念の諸要素がどのように形成されたかを明らかにし、それらの対立点を吟味している。
著者
秋本 福雄 阿部 正隆 梶田 佳孝
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.44.3, pp.871-876, 2009-10-25 (Released:2017-01-01)
参考文献数
31
被引用文献数
4

地域計画は英国に登場し、1920年代、アメリカ及び英国で都市計画法の中に制度的に組み込まれた。日本へは、飯沼一省が1923年の米欧外遊の後、紹介したが、都市計画法は、今日なお、地域計画に関する条項を持たない。この研究の目的は、その理由を日本における地域計画の導入期を解析することにより明らかにすることにある。飯沼は、地域計画という用語にアメリカで遭遇し、英国で地域計画の概念を把握し、ハワードの田園都市、C. B. パーダムの衛星都市の図式の強い影響を受けた。飯沼は都市計画法の都市計画区域を批判したが、都市計画法を根本的に組み立て直すには至らなかった。
著者
宮脇 勝
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.691-696, 1997-10-25 (Released:2018-05-01)
参考文献数
16

The history of Italian Master Plans can be analized from the the activities of the planner and their generation. The first generation, L. Piccinato (1899-1974) and P. Marconi (1893-1974), created the foundation for the modern city planning. The second generation, G. Sasmona' (1898-1983), the urbanization and applied the city planning theory to many cities. the third generation, G. C. Venuti (1926-) modificated the plans and proposed sustainability as the Landscape Plan by Galasso Act.
著者
坪原 紳二
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.125-136, 2012-10-25 (Released:2012-10-25)
参考文献数
19
被引用文献数
1

自転車は環境にやさしい乗り物として注目される一方、日本では歩行者・自転車間の事故が増加しており、自転車の走行空間を整えることが大きな課題となっている。そこで本論文は、そのための知見を得るために、自転車先進国と言われるデンマーク及びオランダの自転車走行空間の計画論を、両国で出されているデザインマニュアル、及び自治体(オーデンセ市とフローニンゲン市)の計画書を通じ分析した。その結果、両国の相違点として、オランダの方が自転車走行空間の整備手法を包括的・具体的に検討しており、また、自転車走行空間のネットワークを形成することをより重視していることが判明した。一方、日本にとって参考になる共通点として、両国とも、自転車が並走できるだけの幅員を確保しようとしていること、日本で一般的な歩道と同一平面を走らせることには慎重なこと、さらに歩行者専用商店街で自転車の走行を認めることに積極的なことが分った。
著者
雨宮 護 樋野 公宏 小島 隆矢 横張 真
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.116, 2007

防犯まちづくりが各地で急速に推進されるなか、それに対する批判的な言説も発表されるようになってきた。防犯まちづくりが今後もまちづくりの一種として定着していくためには、こうした批判論とも向き合いつつ、その考え方を再構築することが求められる。本研究では、既存の学術雑誌や評論誌のレビューをもとに、わが国の防犯まちづくりへの批判論を体系的に整理すること、アンケートの分析をもとに、批判論に対する一般市民の態度を明らかにすることを目的とした。まず、121の文献から抽出された142の批判論を分類した結果、それらは 3つの大カテゴリのもとで、「警察国家論」、「監視社会論」、「要塞都市論」などの10の論点で整理された。次に、各論点への賛否を尋ねたアンケートの分析の結果、批判論には、市民の賛同を得ているものとそうでないものがあること、犯罪不安の高まりに伴って、今後賛同を得ることが予測されるものと逆に軽視されるようになっていくものがあることが明らかとなった。今後の防犯まちづくりにおいては、市民の賛同を得る批判論に応えるだけでなく、とくに軽視される批判論に対して一定の配慮が加えられる必要があると考えられた。
著者
中川 貴裕 笠原 知子 齋藤 潮
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.43.3, pp.535-540, 2008-10-25 (Released:2017-01-01)
参考文献数
13

横浜旧居留地である中区山下町に位置する、横浜中華街は、その隣接地区と対照的な都市景観を形成している。建物用途と敷地規模は都市景観を特徴づける基礎的な要因であり、この2地区の差異を形成していると考えられる。そこで、本研究では、両地区の空間的差異の形成過程を明らかにする。1916年から1960年における山下町の土地台帳を用いて、土地所有や敷地分割・統合の変化を追跡した。その結果、2つの事柄が2地区の空間的差異を形成したことが明らかになった。第一に、関東大震災後の土地区画整備事業である。これによって土地の分割が進んだが、現在の中華街の外側である、山下町北部の海側で見られ、ほとんどが法人所有地や官有地となった。第二に、第二次大戦後の接収を中華街が免れたことである。これによって、中華街の辺りで土地の分割と個人所有化が進んだ一方、接収を受けた隣接地区は敷地が凍結された。これによって、空間的差異の原型が形成された。
著者
藍谷 鋼一郎 有馬 隆文 高山 達也 松山 加菜古
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.589-594, 2012-10-25 (Released:2012-10-25)
参考文献数
11

阿波踊りは、もともとは徳島に伝わる盆踊りであったが、今では徳島市から徳島県全域に広がるだけでなく、関東圏を中心に商店街の振興イベントや町おこしの起爆剤として全国的に拡がっている。祭りは一時的な賑わいを生み出し、都市の重要な要素となっている。徳島市においては開催期間の4日間に、延べ130万人もの来訪者があるという。来訪者の数においては本場徳島を凌ぐ勢いのものが関東の三都市における阿波踊り、高円寺阿波踊り、南越谷阿波踊り、神奈川大和阿波踊りである。本研究では、四都市における阿波踊りの運営組織や運営方法を比較分析し、それぞれの運営方法と祭りの空間特性や持続性について明らかにし、継続的なイベントとして成功させる知見を見いだす。
著者
西川 亮 中島 直人 中林 浩 西村 幸夫
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.365-372, 2017-10-25 (Released:2017-10-25)
参考文献数
28

本研究は西山夘三の観光計画論を明らかにするものである。具体的には、1) 西山の観光論を西山の意識の変化と共に詳細に捉えること、2) 計画者としての立場から見た西山の計画論を明らかにすること、3) 西山の関わった計画を通じて理論と計画の関係性を見ることである。戦前から西山夘三はレクリエーションの延長として観光に関心を寄せていたが、戦災復興期は、観光施設の建設による観光地整備を考えており、それは建築家としての一面を示すものであった。しかし、戦災復興期から高度経済成長期に移行し国民の消費を促す観光開発による自然破壊が目立つようになると、生活リズムを高めるための観光を主張し、国土スケールで観光資源の保存と開発を両立する計画論を提示するようになっていく。その理論を計画に適用させたのが京都計画や奈良計画等の構想計画であった。西山の、生活リズムを高めるものとして観光を捉える視点は、現代において1)地域が観光客から得る利益だけでなく、観光客が地域から得る利益を考える視点、2) レクリエーションと観光の総合的な空間計画の必要性、3) 適正な観光地創出に行政関与の必要性を提起する。
著者
岡本 淳 後藤 春彦 李 彰浩 関口 信行 植田 竜司
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集
巻号頁・発行日
vol.40, pp.150, 2005

本研究は、広告物の掲出が多い渋谷駅ハチ公前広場を対象に、広告物が人の視線を集めるための効果的な掲出の仕方と「賑わい・活気」を創出する広告物の集積の仕方について明らかにすることを目的とする。まず、室内でアイマークレコーダーを用いた注視実験を行い、広場空間において人の視線がどのように移行するのかを考察した。その結果、水平方向の移行に大きく依存し、水平方向の移行が大きくなるほど垂直方向の移行は小さくなることが明らかになった。次に広告物の注視率と見かけの大きさ(見かけ面積率)の関係をもとめた。この関係から大きくずれる広告物もあり、周辺の建築物や広告物との相互関係で注視率に影響がでることも明らかになった。次に印象評価実験を行い、「賑わい・活気」を創出する広告物群に含まれる広告物に関して分析を行った結果、それらの特徴として見かけ面積率が小さく同規模のものが集まっており、注視率も全体の平均値を下回るものが多いことが明らかになった。
著者
栗田 治
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.145-150, 1997-10-25 (Released:2018-05-01)
参考文献数
9

The formulae to estimate the length of roads in an arbitrary region are to be concerned in this paper. First, we introduce the formula which Koshizuka derived by use of integral geometry. It implies that the length is proportional to the square root of the area of the region multiplied by the number of crossings. Koshizuka's formula is theoretically elegant and easy to use. However, it has been considered to be applicable only if the region is convex. The objective of this study is to argue that Koshizuka's formula is applicable even if the region is non-convex and non-connected. To do so, we introduce the thickness function in geometric probability.
著者
内海 麻利
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.535-540, 2012-10-25 (Released:2012-10-25)
参考文献数
22

近年、日本では、地方分権を背景として、地域の実情に即して、資源、人材や組織を活かしながら観光政策や都市マネジメントを推進していくことが重要になってきている。とりわけ、基礎自治体を重視した公共団体間の役割分担の明確化や、公共団体と民間主体が協調し、民間が力を発揮できるために、各主体の法制度上の位置づけが課題とされている。一方、フランスでは、1980年代以降の地方分権改革に伴い、制度・機構改革が行われてきており、これまで地域振興や観光政策を担ってきた非営利団体等やその活動を、基礎自治体が公認する「公定化」の仕組みが制度上整えられてきている。そこで、本研究では、フランスの観光政策の主体に着目し、観光政策にかかわる法制と政策主体の活動実態を「地方分権」「公定化」という観点から考察することで、各主体の役割や制度上の位置づけを明らかにし、都市マネジメント主体のあり方を示唆する。
著者
岩下 和弘 鶴田 佳子 坂本 淳
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.435-442, 2017-10-25 (Released:2017-10-25)
参考文献数
25

本研究の目的は郡上市の107集落について中山間地域での居住地としての持続可能性の検討を試みるものである。人口統計、アクセシビリティ、土地利用、財政のデータを用いた。107集落についてクラスター分析を行った結果、“中心市街地区”、“住宅団地区”、“中心市街地周辺地区”、“居住基盤良好地区”、“多雪地区”、“土砂災害危険地区”、“過疎地区”の7つに分類された。今後は雇用の場としての産業振興と地域活動の場という視点からも拠点の設定を重視する予定である。
著者
福井 のり子 力石 真 藤原 章正
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.209-219, 2017-10-25 (Released:2017-10-25)
参考文献数
35
被引用文献数
1

多くの農村地域のコミュニティでは,持続可能なコミュニティに向けた取り組みへの一歩が踏み出せない地域住民とそれを後押ししようとする行政の在り方の模索が続いている.本研究では,地域の活性化に向けた初動期において,地域や個人がどのような課題に直面し,またそれをどのように乗り越えていったか,グラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)と複線経路・倒至性アプローチ(TEA)を活用して,その成長プロセスを記述した.具体的には,住民と行政が協働して住民ボランティアによる自治会輸送活動を行うプロジェクトを立ち上げ,2ヵ年に渡り交通の視点から地域活性化に取り組んだ事例を取り上げ,複数回にわたる住民代表者と行政職員との討議録をもとに分析を行った.GTAの分析では,2回の社会実験を通じて,1)行政からの提案,2)組織の課題の浮上,3)将来に向けた地域ビジョンの作成のように,循環型の成長プロセスが存在することが確認できた.さらにTEAの分析では,同様の成長プロセスの過程においても,個人によって異なる社会的ガイドや方向付けが存在することが確認された.
著者
鶴田 一 十代田 朗 津々見 崇
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.723-730, 2017-10-25 (Released:2017-10-25)
参考文献数
33
被引用文献数
1

国内ではカジノ政策の成功例としてシンガポールが取り上げられる事が多いが、同国における合法化検討の歴史とそれに伴う観光政策、都市計画の歴史が同時に考察される事は少ない。同国では2005年にIRという概念の下、カジノが合法化されたが、本研究はその際に具体的な証拠を基に議論がなされたかを検証し、カジノ合法化過程を観光政策、都市計画の歴史と併せて分析することで、3つの要素が各時代にどのような関連性を持つのかを考察する。さらに2005年のリー・シェンロン首相の声明文との整合性を検証し、最終的にIRに関して、観光政策との関連を踏まえながら、都市計画上の知見を得ることを目的とする。分析の結果、シンガポールでは1965年の建国時から合法化を4回否決してきたが、第4回目以降の合法化検討過程において、シンガポールの都市計画、観光政策は類似した内容を打ち出し、実施していくという関連性が見られた。また声明文での、IRにより大型の都市開発を海外からの投資を得て自国の経済的リスクを負うことなく短期間で行えるとの言及は、観光政策と都市計画とを関連させて新しい観光資源を生み出していくという点で有益と考えられる。
著者
堀 龍一 小林 隆史 高原 勇 大澤 義明
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.1335-1340, 2017-10-25 (Released:2017-10-25)
参考文献数
8

本研究の第一の目的はクロフトンの微分方程式を適用して,扇形領域内に一様かつ独立して分布する二点間の直線距離の平均と分散を導出することにある.既存研究では円盤内や円周間でランダムに分布する二点間の平均距離の解析表示が求められているが,これを拡張した.加えて,二つの扇形間直線距離の平均値と標準偏差も解析的に導出した.第二の目的は,災害への備えが必要な我が国において,平時では循環バス,被災時では電源支援の役割を果たす燃料電池バスの移動施設としての効率性について論じることにある.理論的に導いた扇形平均距離の結果を用いて,固定場所からの派遣距離との比較などを通して,被災時における移動施設による電源供給の効率性を求めた.
著者
森 傑
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.45.3, pp.187-192, 2010-10-25 (Released:2017-01-01)
参考文献数
4

本研究は、北海道の過疎地域の郵便局を対象とし、郵便業務以外での地域貢献や地域交流といったボランティアサービスが民営化前後においてどのように変化しているのか、そのような取り組みへの郵政民営化の影響を郵便局側がどのように認識しているのかについて把握し、地域住民の利用実態と郵便局への期待と評価についても詳細に分析することで、郵便局が地域におけるコミュニケーションの接点としてどれほど人々の日常生活に浸透しているのかについて考察し、過疎地域のソーシャル・キャピタルの核としての郵便局の今後のあり方を探求するための基礎的知見を得ることを目的とした。その結果、郵便局員と地域住民が郵便サービスを授受するだけの関係にとどまらず日常の生活においても密接に交流を持っていること、郵便局が地域の公共資産として保持されることが期待されていること、郵便局のあり方は、他の公共施設と公共サービスとの関係の中で郵便局の徒歩圏域の立地特性が重要な意味を持っていること、が明らかとなった。