著者
大塚 敬義 内海 彰 奥村 学
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. TL, 思考と言語 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.101, no.61, pp.19-26, 2001-05-11
被引用文献数
3 2

文章の自動要約を行う際に脱落した先行詞を補完することは, 文章の結束性を保つ上で重要である. 本研究では要約文中に出現する「この」「その」「あの」などのコソア系列の連体詞形態指示詞を取り扱う. 新聞の解説記事を対象とした自動要約の過程で, 脱落した先行詞を文単位でなく語句単位で推定して補完処理を行うことにより, 要約文の結束性を維持しつつ文字数を抑えることに成功している. 具体的には先行詞の候補となる形態素を複数取り出し, 表層的表現を手がかりとし, またシソーラスを用いて先行詞となる最適な名詞を選択する. その名詞に係る直前の要素が, 体言か用言かに応じて複数の形態表を結合させた先行詞句を生成する.
著者
前川 喜久雄 槙 洋一 吉岡 泰夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. TL, 思考と言語 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.353, pp.9-16, 1999-10-15
被引用文献数
1 1

筆者らは1996年以来日本語熊本方言を対象として発話の丁寧さの知覚におよぼす語彙的要因と韻律的要因の関係について実験的検討をくわえてきた.前半でこれまでの研究成果を概観した後,後半では最新の実験結果に基づいてデータに観察される社会差について新規に検討をくわえる.われわれは従来,比較的若い年代の被験者による実験結果に立脚して丁寧さの表出に果たす語彙と韻律の貢献はほぼ同程度であると推定していた.しかし被験者の年代を高年層と中学生にまで拡大した結果,高年層では語彙の果たす役割が大きく韻律が果たす役割が小さいこと,そして年齢が低下するにともなって,この関係が逆転してゆくことが発見された.
著者
坂口 琢哉 石崎 俊
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. TL, 思考と言語 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.100, no.697, pp.9-16, 2001-03-15
被引用文献数
3

本研究では人間が持つ記憶,特に概念とその関係の構造について,連想概念辞書とパルスニューラルネットワークによるモデルを構築した.また本モデルの自然言語処理への応用として,比喩を理解するシステムを構築した.そしてこれを評価する為,人間の比喩理解に関するアンケートを実施し,本システムの出力結果との比較を行った.
著者
城 綾実 細馬 宏通
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. TL, 思考と言語 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.313, pp.25-28, 2010-11-20

複数の人が同時に同じ形状のジェスチャーを産出する(ジェスチャーが同期する)現象を詳細に分析することで,ジェスチャーの同期は偶然ではなく,参与者たちがそれぞれの発語や動作からどのような形状のジェスチャーをどのタイミングで産出するのかを予測しながら達成される現象であることを示す.本稿では,ジェスチャーの各フェーズが産出されるタイミングに着目して,ジェスチャーの同期に必要な手がかりについて論じる.
著者
天白 成一 三木 睦明 岸田 大輔 中林 稔堯
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. TL, 思考と言語 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.486, pp.73-78, 2007-01-19
参考文献数
4

自閉症児向けに開発したコミュニケーション支援ツール「ピクチャーエイド」について研究開発の背景と使用例に関して報告する.
著者
岩垣 守彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. TL, 思考と言語 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.320, pp.7-12, 2011-11-19
参考文献数
28
被引用文献数
1

「言語情報」は【単位情報(名詞+動詞)】の連結体であるが,「単位情報配列法(unit-information syntax)」の観点から見ると,【単位情報(unit-information)】の連結の方法には,大別すると「内的連結(inner connections)」と「外的連結(outer connections)」の二種類ある.「外的連結」は,日本語ではJ1[「単位情報」+「連結辞」+「単位情報」]であり,英語の場合は情報の比重(了解情報・未了解情報)によって, E1[「未了解情報」+「連結辞+未了解情報」]かE2[「連結辞+了解情報」+「未了解情報」]のどちらかである.これらは「単位情報」の前や後ろに「連結辞」を加えるという操作をするだけなので,日本語と英語との対応が容易である.ところが,「内的連結」の場合,一つの単位情報の中の名詞・代名詞をもう一つの単位情報と共有するという形になるので,符牒配列が違う日本語と英語とでは連結の方法が異なる.日英両語を等価的に変換するには,それぞれの言語の異なる内的連結に関する対応関係を確立させなければならない.今回は「内的連結」における日英両語の等価的対応関係を考察する.
著者
辰巳 格
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. TL, 思考と言語 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.316, pp.19-24, 2004-09-10
参考文献数
17
被引用文献数
1

成人の言語能力の加齢変化に関しては、知能研究が引用されることが多い。知能は、言語性知能と動作性知能とに大別され、言語性知能は、かなり高齢になるまで低下しないことが知られている。しかし、言語性知能は言葉を介する知識についての能力であり、必ずしも言語そのものの能力ではない。本発表では、成人の言語機能の加齢変化に関する研究を、失語症などの障害との比較も含めて紹介する。
著者
山田 玲子
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. TL, 思考と言語 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.503, pp.41-46, 2004-12-11
参考文献数
25

日本語母語話者を対象とした英語音声の知覚、生成、語彙などに関する実験から、母語にない外国語の音韻は知覚・学習が困難であるが、音に着目した訓練を行うことにより、成人でも新しい音韻カテゴリーを形成できることが明らかになった。学習実験を研究手法として用い、訓練の他ドメインや他処理階層への般化効果(転移)を調べた。一連の実験結果、次のことが明らかになった。(1)知覚と生成の間には関連があり、子音では訓練効果が互いに転移する。(2)訓練刺激として視聴覚情報が与えられた場合、聴覚情報を主たる手がかりとして使用する。(3)文章の意味的文脈は、音韻知覚を促進する一方、意味的文脈性の高い文章を使った音韻知覚訓練は知覚能力が上昇しない。(4)音韻の混同が単語の意味の混同を引き起こしている。(5)単語翻訳学習課題において音声刺激を対呈示しても、翻訳成績、学習効果共に促進されない。これらの結果から、第二言語の音声学習における音声情報の重要性が示唆されると共に、意味的文脈ばかりに頼った学習は音韻知覚学習を阻害すること、音韻知覚の能力が音声単語の認知処理のボトルネックとなっていること、などが示唆された。本稿では、これら基礎研究の結果を紹介するとともに、外国語学習支援システムヘの応用の可能性を探る。
著者
平松 裕子 島田 文江 伊藤 篤 佐藤 文博
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. TL, 思考と言語 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.320, pp.13-18, 2011-11-19

ユビキタス社会の中では子どもも情報の波の中で生活する.身体的直接的なコミュニケーションが他者との関係をつくり,具体的な対象理解が中心である小学生に通信によるコミュニケーションの学習は可能か.インターネット上でどのような場をつくることができるのか.小学4年生の短歌学習実証から,言語使用にみられる子どもの認識の変化など,目的を持った使用の有効性,教育効果,子どもの認識を考察する.
著者
源 翔三郎 竹内 孔一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. TL, 思考と言語 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.227, pp.33-37, 2011-10-03

テキスト中から専門用語を自動的に抽出する用語抽出システムの比較を行う.比較の対象となる手法は統計的学習モデルとルールベースモデルに基づく手法である.比較には感染症の用語を人手で同定したテキストデータが存在することから,これを正解データとして扱う.統計的学習モデルでは正解データを元にCRFによって学習を行うことで用語抽出システムを構築する.またルールベースモデルでは規則ベースのパターン抽出用言語としてSRLを利用した抽出システムを用いる.用語抽出実験の結果から正解データが多く存在する場合は統計的学習モデルによる用語抽出,分野依存がある場合はルールベースモデルの用語抽出を行うとよい結果が得られることを明らかにした.
著者
原田 康也 鈴木 正紀
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. TL, 思考と言語 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.63, pp.21-25, 2010-05-21
被引用文献数
1

日本が国際情報社会になるにつれて、「英語が使える日本人の育成」が緊急の課題と認識されているようになってきた。文部省・文科省の定める学習指導要領では1990年代以降は外国語科目(英語)の授業において「コミュニケーション」を重視することとなっており、2006年度以降の大学センター試験で英語リスニング試験が導入されるなど、日本人英語学習者の英語口頭運用能力に一定の変化・改善が見られてもおかしくない状況にある。一方、こうしたカリキュラム上の改変にもかかわらず、中学・高校における英語学習・英語指導の中核が大学入試に向けての訳読式学習にあり、口頭英語の運用能力の向上は見られないという感想も根強い。大学で英語を担当する教員からは、英語に限らず大学生の一般的な学力低下を嘆く声が年毎に強まっているが、高校卒業時・大学入学時の英語運用能力の経年的変化に関する信頼できる資料はあまり公開されていない。著者たちは2006年度から2008年度までの科研費基盤研究(B)『学習者プロファイリングに基づく日本人英語学習者音声コーパスの構築と分析』と2009年度から2013年度までの科研費基盤研究(B)『属性付与英語学習者発話コーパスの拡充と分析:大学新入生英語発話能力の経年変化調査』の交付を受け、大学新入生を対象とする英語授業の中で共創的な学習活動における学生の英語での発言・応答・相互作用をできる限りそのまま、可能な範囲でデジタル化して記録しようという試みを継続している。その一環として、大学入学時点での新入生の英語力、特にオーラルコミュニケーションに直接関係のある口頭英語運用能力ついても継続的にデータ収集を行っている。今回の発表では、2006年から2009年まで毎年4月に行っているVersant Enghsh Testのスコアについて報告する。
著者
佐良木 昌
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. TL, 思考と言語 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.428, pp.35-40, 2012-01-28

イオニア散文は、単文・並位構造・接続小辞による文連繋の文章構成が特徴である。アッティカ散文は長い複文・従位構造・抽象名詞が特徴である。前者のヒポクラテス・コーパスには、導入部・論議展開・結論という構成を備えるテキストが含まれており、後世の科学的論文体の先駆けである。後者のトウキュディデスの『戦史』は、前五世紀後半の代表的史書であり、分詞構文と接続小辞からなる長文で知られている。
著者
大町 真一郎 岩村 雅一 内田 誠一 黄瀬 浩一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. TL, 思考と言語 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.613, pp.67-72, 2006-02-17

環境中の文字をディジタルカメラを入力デバイスとして高精度に認識するために,文字画像と同時に認識補助のための付加情報を提示する方法が検討されている.付加情報は,幾何学的変換に対してロバストに抽出できることが要求される.本報告では,面積比を利用した付加情報提示手法を提案する.面積比はアフィン変換に不変であり,アフィン変換を受けた環境においても誤りなく抽出されることが期待される.実際に付加情報を埋め込んだ文字パターンを作成し,提案手法の有効性と可能性について議論する.
著者
石井 健一郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. TL, 思考と言語 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.657, pp.85-89, 2004-02-13

近年の情報技術の進展は,人間のコミュニケーション行動そのものに大きな変革をもたらした.しかし,我々の前には依然円滑なコミュニケーションを妨げる様々な壁が立ちはだかっている.コミュニケーション研究はこのコミュニケーションの壁を突破し,感動までも共有できる理想的なコミュニケーションの実現を目指している.本稿はコミュニケーション研究に関する様々な課題と期待について述べた.
著者
山川 恵子 伊藤 憲治 湯本 真人 宇野 彰 狩野 章太郎 加我 君孝
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. TL, 思考と言語 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.656, pp.19-24, 2004-02-12

縦書き・横書きの表記形式の単語、シンボル、ラインを中心視野に提示し、視覚誘発脳磁場の比較を行った。全頭および左右側頭部の被験者全員分のRMS(Root Mean Square)を算出し、およそ5ms毎に縦・横×刺激の種類(2×3)の分散分析を行い、条件ごとの反応に有意差がみられるかを検討した。単語の処理においてのみ出現する反応として、(1)180-200ms、(2)250msあたり、(3)370msあたりをピークとする三つの成分(N180、RP、P300)が共通して確認された。どの成分においても単語刺激では縦書きの反応が横書きよりも一貫して強く、縦書き文字の処理は横書きに比べ何かしらの高度あるいは困難な過程が含まれることが示唆された。縦書き・横書き文字の脳内の認知処理における本質的な違いが示唆され、これまでの研究で議論されてきたような読みにおける縦書きの効率の悪さは、サッケードや眼球運動によってのみ起因するものではない可能性が示された。
著者
Wydell Taeko N.
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. TL, 思考と言語 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.237, pp.57-64, 1999-07-26

In the English speaking world, the dyslexics form a substantial minority group-up to 10% of the population in English speaking countries fall into this group. The hypothesis postulating that dyslexia can be characterized as a core phonological deficit or delay has gained particular prominence in recent years, and many empirical studies have shown to support this. In contrast, a nation-wide survey by Kokuritsu-Tokushu-Kyoiku-Sougou-Kenkyujyo (1995) revealed less than 2% of children (between 7 and 12 years old) having difficulty in reading and writing. Possible reasons why this discrepancy between the two different languages will be discussed with reference to Wydell & Butterworth' s (1999) case study of an English-Japanese bilingual with monolingual dyslexia.
著者
鈴木 賢一郎 坂野 鋭 大塚 作一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. TL, 思考と言語 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.740, pp.7-10, 2005-03-11

本報告において, 我々は日本語テロップの縁取りに着目した文字認識手法を提案する.日本語テロップには可読性の向上のために黒い縁取りがなされている.この縁取りと文字領域の輝度勾配は比較的安定していると考えられることから, このエッジをSobelフィルタで検出し, 加重方向ヒストグラム特徴と同様の方法でヒストグラム化する特徴抽出系を設計した.認識実験の結果, 位置, サイズが完全に正規化された人工データでは100%, また, 評価用映像データベースに現れるテロップでは約70%の認識率が得られ, 提案手法の有効性を確認した.
著者
〓 瑩 小野 創 酒井 弘
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. TL, 思考と言語 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.138, pp.29-34, 2007-07-07

英語など主要部前置型言語を用いて統語的プライミング効果(Syntactic Priming; SP)を検討した先行研究では,活性化伝搬に基づいた説明モデルが提案されている.本研究は,文完成課題を用いて日本語受動文の産出におけるSPを実験的に検証することを通して,主要部後置型言語においても同モデルの適用が可能であることを確認した.さらに、主要部後置型言語の処理における予測メカニズムという観点から,日本語における文産出メカニズムに対して結果がどのような含意を持つか検討した.
著者
芦澤 充 乾 敏郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. TL, 思考と言語 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.353, pp.7-12, 2008-12-06
被引用文献数
2

我々は,心的回転を自己中心座標で表現された物体の心的イメージが,自己の仮想的な運動によって回転される認知過程であると仮定し,神経メカニズムの解明を試みている.最近の研究では,頭頂葉のCIPおよびAIPと呼ばれる領域が,それぞれ対象の自己中心的立体表現,視覚と運動の統合に重要な役割を果たしていると考えられている.本研究では,これらの知見を踏まえた神経回路モデルを提案し,提案モデルが三次元心的回転を部分的に再現可能であることを示す.