著者
戸辺 義人
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J90-B, no.8, pp.711-719, 2007-08-01

無線センサネットワークは,センシングと無線ネットワークを融合させることにより,様々な技術課題を生み出している.こうした課題はハードウェアとしての実装から信号処理,ソフトウェアアーキテクチャにまで広がっていて,ネットワーク単独での特殊性をとらえることが難しくなっている.しかし,無線センサネットワークには,センシングデータを配送することを目的とすることに伴う特徴があり,ネットワークアーキテクチャ設計の考え方にも影響を与える.本論文では,これらの特徴から導かれるMAC(Media Access Control)プロトコル,位置情報を利用するルーチング,データセントリックネットワークの研究成果を中心に,ネットワークにかかわる技術的な課題を解説する.
著者
山下 玲 今給黎 薫弘 岡本 聡 山中 直明
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J102-B, no.4, pp.310-318, 2019-04-01

データセンタネットワーク(DCN)における消費電力増加に伴い,電気パケット交換と光回線交換/光スロット交換を併用するハイブリッド型DCNが注目されている.ハイブリッド型DCNでは,DCN内を流れるフローをサイズや継続時間によって分類し,電気パケット交換網と光回線交換網/光スロット交換網のどれに流すべきかを判断する必要がある.本論文では,フロー分類手法として,Hadoopのジョブ特性を用いたアプリケーション駆動型手法を提案する.提案手法では,HadoopのShuffleデータ量とジョブ継続時間を推定することで,電気パケット交換網と光回線交換網/光スロット交換網のうちより省電力な網を選択することを可能とした.コンピュータシミュレーションにより,従来手法と比較して約15.8%のスイッチング消費電力削減効果を確認した.
著者
小杉 智 上原 宏 神成 淳司
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J103-B, no.1, pp.1-10, 2020-01-01

本論文では,土壌,農地,気象など農業関連のデータをクラウドデータベースに集約した農業データプラットホーム'農業データ連携基盤(WAGRI)'のサービス,及びアーキテクチャを述べる.耕作放棄地の増大,担い手不足に直面する日本の農業では,農家の経験を代替するデータ農業への期待が高まっているが,始まって間もないこれらの取組みにおいて,サービス要件は極めて流動的である.こうした背景から農業データ連携基盤では,今後発生する様々なデータサービス要件に対して,ソフトウェアの追加開発を極力抑えてサービス実装できるアーキテクチャ'Dynamic API'を考案した.Dynamic APIによれば,ユーザ自身が新たなサービスを実装することも可能である.本論文では,Dynamic APIアーキテクチャによって実現した各種のデータサービスを述べるとともに,このアーキテクチャが新たに発生するサービス要件に対してプログラム開発を伴わずにサービスを提供する仕組みについて,事例を交えて述べる.
著者
石島 巖 国吉 孝 鈴木 潔
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:03736105)
巻号頁・発行日
vol.J70-B, no.3, pp.346-354, 1987-03-25

本写真電送方式は昭和59年ロスアンゼルスで行われたオリンピックの際に,試験的に用いられた電子スチールカメラと電子式ファクシミリ送信機によるもので,電送されたカラー写真は新聞に掲載され,報道写真としての即時性と実用性が証明された.電子スチールカメラは,スチールビデオフロッピーディスクを記録媒体とする走査方式のカメラであり,撮影した情景を即時にCRT上に映像化できる,銀塩フィルムを用いないカメラとして話題となった.供試の装置はフロッピーディスクの記録データをディジタル処理して電送する,ハードコピーの要らない送画システムであり,撮影から新聞掲載までの時間の短縮を目的として開発されたものである.
著者
白崎 博公 石原 藤夫
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:03736105)
巻号頁・発行日
vol.J69-B, no.7, pp.715-721, 1986-07-25

二つの直線テーパ導波管およびカットオフ導波管からなるカットオフフィルタについて理論的に解析し,反射透過係数を数値計算により求めている.解法はテーパ導波管内の基本モードに対して成立する微分方程式を,導波管接続部での各境界条件を満足させるように,基本モード関数をclosed formで求めることなく,ルンゲクッタ法を用いて解くという方法で求めている.そして,Xバンドを用いた実験結果と良く一致することが示されている.
著者
白崎 博公 石原 藤夫
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:03736105)
巻号頁・発行日
vol.J70-B, no.4, pp.470-475, 1987-04-25

二つのn乗コサインテーパ導波管およびカットオフ導波管からなるカットオフフィルタについて理論的に解析し,反射透過係数を具体的数値として求めている.解析はテーパ導波管内の基本モードに対して成立する微分方程式を,導波管接続部での各境界条件を満足させるように,ルンゲクッタ法を用いて解くという方法で求めている.この解析法は,モード関数をclosed formで求める必要がないため,応用範囲が非常に広い.更に,Xバンドを用いた実験を行い,理論値と実験値がよく一致することを確かめ,本方法の実用性を確認している.
著者
小川 晃一 小柳 芳雄 伊藤 公一
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J84-B, no.5, pp.902-911, 2001-05-01

本論文では,人体腹部に近接した150 MHz帯ノーマルモードヘリカルアンテナについて,有能電力に基づいた放射効率を新たに定義することによって,インピーダンス不整合及びアンテナ自身の抵抗による電力損失を考慮した取扱いをし,アンテナの長さやアンテナと人体の距離によって生じるアンテナの実用状態における実効的な放射効率の変化を解析的に求めた.更に,各部の損失電力を求めることによって放射効率低下をもたらしている要因分析を行い,効率低下のメカニズムを明らかにするとともに,その結果に基づいて人体近接時の放射効率改善の可能性について検討した.その結果,人体近傍における放射効率は-20 dB以下になること,その主要な要因はインピーダンス不整合損失であること,人体近接時に常に共役整合の状態を保つことによって10 dB以上の放射効率の改善が可能であることを示した.更にこれらのことを実験的に確認した.
著者
大内 一成 小林 大祐 中洲 俊信 青木 義満
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J100-B, no.12, pp.941-951, 2017-12-01

近年,スポーツ界ではICTを活用したトレーニング,戦術分析の導入が進んでおり,画像認識技術を用いた試みも行われているが,ラグビーでは試合に出場する選手の数が1チーム15人と多く,接触/密集プレーが頻繁に発生するため,画像による分析は技術的にハードルが高く,これまで積極的に取り組まれていない.筆者らは,特徴量設計方式によるボール検出/追跡と,ディープラーニング方式による選手検出/追跡を行うハイブリッド型映像解析により,一つのカメラ映像からボール/選手の移動軌跡を精度良く二次元フィールド上にマッピングする技術を開発した.また,ディープラーニングによる自動的なプレー分類を行い,これまで人手で行われていた主要プレーのタグ付け作業の自動化を検討した.本技術は,ラグビーに限らず様々なスポーツへの活用が可能である.
著者
福井 範行 武 啓二郎 岡村 敦
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J101-B, no.12, pp.1083-1092, 2018-12-01

第5世代移動通信システムでもDual Connectivityが想定され,セカンダリ基地局はビームフォーミングを適用することが考えられる.端末がセカンダリ基地局を切り替えるとき,切替先セカンダリ基地局が端末で特定した1ビームのみを用いて接続動作を行うと,端末移動のため,接続確立に失敗する可能性が高くなる.そこで特定ビームに加え,その隣接ビームも同時使用して接続動作を行うビーム制御を提案する.提案の複数ビーム利用接続確立方式により,特定ビームのみを用いる場合に比べ,端末移動速度30 km/hのときにセカンダリ基地局の切替失敗率を63%以上改善できることを簡易モデル解析とシミュレーションで示している.
著者
鈴木 誠 長山 智則 大原 壮太郎 森川 博之
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J100-B, no.12, pp.952-960, 2017-12-01

実用化に向け行き詰まりを見せていたマルチホップ無線センサネットワークが,同時送信フラッディング(CTF)のもたらした強烈なインパクトにより,全く新たな技術に生まれ変わろうとしている.筆者らは,CTFが提案された当初からその重要性を認識し,全ての通信をCTFで行うセンシング基盤Chocoの開発を進めてきた.また,実フィールドにおけるCTFの有用性を明らかにするため,社会的要請の強い橋梁モニタリングシステムをChocoを利用して開発し,実橋梁において10台〜70台といった規模で実証をも進めてきた.本論文では,CTFが無線センサネットワークにもたらした変化について論じるとともに,CTF利用型センシング基盤Choco,及びChocoを用いた構造モニタリングシステムの開発について述べる.また,実証実験から得られた「シンクノードも含めノードの移動に頑健なため設置が簡易である」「中継ノードを増やせば繋がるため無線に対する深い知識がなくても構築できる」といったCTFの運用時における特性についても示す.
著者
山口 弘純 安本 慶一
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J101-B, no.5, pp.298-309, 2018-05-01

近年のクラウド集中型アーキテクチャの制約と限界を受けて,ポストクラウドともいうべきエッジコンピューティング環境の構築と未来に関する多数の議論や研究がなされている.現状議論されているエッジコンピューティングアーキテクチャの多くは,従来のクライアントサーバーモデルをエッジサーバーとエッジデバイスのモデルに置き換えることで低遅延並びに帯域の節約を狙ったものであり,クラウドアーキテクチャの自然な拡張といえる.一方で,IoTアプリケーションやサイバーフィジカルシステムなど次世代のITシステムが必要とする「知的データ処理」をエッジコンピューティング環境でどのように行うかについては十分に議論されていない.本論文ではまずエッジコンピューティングに関する現状の動向を俯瞰する.次に,各々が計算機能を有するIoTデバイスやエッジサーバーを連携させ,可能な限りデータやフローの「地産地消」を行い,エッジコンピューティングのような分散計算環境においてもシームレスに知的データ処理のコアサービスを提供する著者らのアプローチを紹介し,今後の展望を述べる.
著者
岩田 淳 下西 英之 小林 正好
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J100-B, no.9, pp.626-637, 2017-09-01

本論文では,ネットワーク業界に20年に1度と言われる革新をもたらしたSDN,NFVにおける研究開発・実証・商用化と本領域の将来の発展の方向性について述べる.現在のインターネットは自律分散制御方式を採用し,個々のネットワーク装置に機能が埋め込まれているため,機能追加・変更が困難な上,装置の機能肥大化を招いている.またデータセンタ等の仮想化が進む環境では,頻繁に生じるサーバやストレージの構成変更に迅速に追随するネットワーク構築・運用が求められるが,自律分散制御に起因する遅延や振る舞いの予測困難性により,迅速,確実なネットワーク変更ができないという課題がある.本課題に対し,筆者らは論理集中型のプログラマブルな制御方式によるネットワークの設計・構築・運用(SDN)と最小限の標準的枠組み(OpenFlow)とによる解決策を提唱し,更にネットワーク装置の仮想化(NFV)と組み合わせ,ネットワークサービスでの高機能化と柔軟性の実証・実用化に成功した.更に,IoTなど実世界のデータをセンシング・解析・最適化する際の広域分散データ解析プラットホームへの本技術の適用へ向け,将来を展望する.
著者
佐藤 寧洋 河合 勇輝 阿多 信吾 岡 育生
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J100-B, no.12, pp.1043-1057, 2017-12-01

Software-Defined Networking (SDN)では,データプレーンとコントロールプレーンを分離し,ネットワーク全体を集中制御することで,柔軟なネットワーク構成を可能にしている.しかし,ネットワーク規模が大きくなるにつれてネットワーク内の機器数が増加するため,集中制御によるネットワーク管理ではスケーラビリティに乏しいという問題がある.そのためSDNコントローラを分散化させる手法が提案されているが,分散コントローラ同士のネットワーク情報の一貫性を考慮する必要がある.本論文では,データベースを用いた一元管理によるSDNの動的構成手法を提案する.ネットワークに関する全ての情報をデータベースで一元管理し,データベースの情報をもとに独立して動作する機能コンポーネントによってネットワーク制御情報を非同期的に生成・更新することを目的とする.非同期処理やトランザクション処理に優れたデータベースシステムを利用することで,ネットワーク設定の一貫性を容易に維持することが可能となる.そのために,基本となるデータベースのデータ構造を設計・構築し,具体的な処理を行う機能コンポーネントを実装する.最後に,OpenFlowネットワークにおけるベンチマーク評価により本提案手法の基本性能を示す.
著者
浅田 峯夫 岡田 敏美
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J89-B, no.7, pp.1318-1324, 2006-07-01

山岳遭難者の探索システムとして,登山者が携帯する400 MHz帯小型発信器(ビーコン)から発信される電波を利用して捜索する方法が提案されている.そこで,遭難時を想定してビーコンを大地付近に設置あるいは積雪中に埋設した場合の伝搬距離と電波の減衰の関係について理論的な検討及び実証実験を行った.その結果,無雪時において400 MHz帯ビーコンを地上高約1.7 λあるいは0.4 λ付近に設置した場合は,大地反射の影響によって電界強度は12 dB/octで減衰し,一方,やや湿った均質な積雪中にビーコンを埋設した場合は約16 dB/octで減衰することを実証し,更に,雪の誘電率,ビーコンの埋設深さなどによって周期的に変動することを見出した.
著者
渡邊 実 佐野 健太郎 高前田 伸也 三好 健文 中條 拓伯
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J100-B, no.1, pp.1-10, 2017-01-01

近年,FPGAは家電製品,自動車,そして宇宙システムと幅広い用途に使用されている.しかし,2000年代前半まで,FPGAはASICと比較して性能が低く,試作,テスト,研究用途に用いられただけで,量産品に対してはコストあたりの性能に秀でたASICが多用されてきた.これが変わるのが2000年代後半であり,FPGAは最先端のプロセスが利用できる数少ない集積回路の一つとなり,高性能な製品を生み出す主役の座に躍り出た.その代表的なものの一つにFPGAを利用したハードウェア・アクセラレータがあり,その有効性については,MicrosoftがBing検索に用いるデータセンターに対してFPGAを用いたサーバーを開発したり,Intel社がXeonプロセッサにFPGAを実装する等,もはや疑う余地がなくなったと言える.そして今日,FPGAベンダーは開発に多大な工数を要したハードウェア記述言語(HDL)の代わりに,C++からFPGAへの回路実装が可能な汎用的な高位合成ツールの提供を開始している.このような皆高位合成ツール時代のFPGA開発において,各企業が他社との優位性を確保するためには,これら万人向けに作られた汎用高位合成ツールやベンダーから提供されるHDL開発環境等を活用するだけでなく,汎用ツールの弱点を補完でき,より高性能な製品をより少ない工数で開発できる特定用途向けのツール群が必要になる.本論文では既に広く有効性が認知された汎用的な高位合成ツールではなく,まだ認知度が低いが日本で独自に開発が進められる「日の丸」ツール群を紹介する.
著者
武藤 佳恭 山本 浩之
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J96-B, no.12, pp.1316-1321, 2013-12-01

本論文は,(1)床発電の研究のはじまり,(2)床発電の実証実験と床発電商品としての実施例,(3)熱海市での温泉排熱を利用した温度差発電,(4)ロウソク熱を使った温度差発電,(5)たき火熱,薪ストーブの廃熱,バイクマフラー廃熱,懐炉(カイロ)廃熱などを利用した温度差発電,(6)自然廃熱を利用したマグマ熱発電まで網羅的に紹介する.エネルギーハーベスティングまたはパワーハーベスティングの研究は,新産業創出に貢献できるものと著者らは期待している.関連する測定技術や性能向上のための技術問題についても簡単に述べる.上記のうち,(1)〜(5)は,実証実験,(6)は日本国が実施すべきマグマ熱発電の概要を説明する.
著者
新田 幸司 大坐畠 智 加藤 聰彦
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J98-B, no.2, pp.141-152, 2015-02-01

ネットワークエミュレーションでは,実システムから送信されるパケットを実時間以内に処理し,通信相手に届ける必要がある.そのため,処理の高速化のため並列・分散処理が可能なエミュレータが開発されてきた.並列・分散処理が可能なネットワークエミュレータでは,各端末の無線エミュレーションを独立した論理プロセス(LP: Logical Process)として分割し,並列に実行することで,性能の向上を実現している.並列・分散処理を行った場合でも,単一でエミュレーションを行った場合と同じ結果を得るため,LP間で影響のあるイベントの実行時に同期が必要となる.並列・分散エミュレーション環境では,無線LANを用いて通信を行う端末の間でフレーム衝突やMAC層の再送のイベントを実行する際,同期をとらずにそれぞれの受信側で独立して実行した場合,エミュレーション結果が端末間で異なる問題がある.本論文では,端末間(LP間)でのエミュレーション結果が異なる問題を改善するために,フレーム送信端末側で情報を付加し,かつ,1ホップ内の全ての受信端末に対して動作決定の判断に必要な情報を事前に共有させておくことで,受信端末に対してのフレームの同時受信・再送のイベントの同期をとる方式を提案する.ネットワークエミュレータEMANEに提案方式を実装し,評価を行う.
著者
苅込 正敞 西村 崇
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J97-B, no.9, pp.738-751, 2014-09-01

移動通信システムの基地局アンテナでは多くの場合,垂直面内指向性の主ビームにチルトをかけてサービスエリアを調整している.そのチルト角はトラヒックの変動に対応して遠隔で,または現場で制御できることが要求される.チルト角を電気的に調整するための移相器は100〜500Wの耐電力で,低損失,低PIM特性が要求され,アンテナレドーム内部に収納できるよう小型・軽量でなければならず,基地局アンテナのキーパーツの一つであると言える.こうした移相器には各種のタイプが開発されており,同軸管型,誘電体装荷型,摺動回転型といったタイプがある.これらの移相器のうちで基地局アンテナに実際に適用されていると思われるタイプについて,その構造を述べ,特徴を考察した.次いで著者らが開発した移相器について,その構造・特性を述べた.更に移相器のみを用いてアレーアンテナ全素子の励振振幅並びに位相を制御する方法と8素子での全素子制御の計算例を示した.