著者
早川 正士
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J89-B, no.7, pp.1036-1045, 2006-07-01

近年地震に伴って各種の電磁気現象が発生することが報告されている.すなわち,地圏から直接放射する電磁気現象や地震に伴う大気圏や電離圏のじょう乱などである.本論文では,地震の短期予知の観点から極めて注目されている二つの観測項目;(1) ULF電磁放射(地圏から直接放射される極低周波電磁放射);(2)電離層じょう乱(VLF/LF送信局電波の伝搬異常として検出)を取り上げ,その計測手法や最新の成果までをレビューする.
著者
大石 晴夫 矢守 恭子 張 成 田中 良明
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J105-B, no.1, pp.1-13, 2022-01-01

複数の通信方式を組み合わせて通信ネットワークを構築するコグニティブネットワークや異種混合ネットワークにおける利用者の協調による効用,コスト削減,インセンティブメカニズムが研究されている.一方,多様な通信方式のサービスが一般に普及している中で,社会環境の変化に対応した協調行動を取り入れ,これらを統合して利用者にサービス提供するフレームワークは提案されていない.本論文では,交通分野におけるサービス提供の概念であるMaaS (Mobility as a Service)に注目し,MaaSのコンセプトを取り込んだSHaaS (Sharing framework for Heterogeneous network as a Service)を提案する.SHaaSにおける事業者と利用者の間のリソース共有により,利用者の効用と事業者の収益の向上を目指す.SHaaSのアーキテクチャ,料金モデルを提案し,モデルに基づくシミュレーションにより有効性を評価した.従来のサービス提供形態と比較して,特にリソース不足の条件下における高い有効性を示した.
著者
山本 高至 白戸 裕史 内田 大誠 北 直樹
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J104-B, no.12, pp.963-973, 2021-12-01

無線通信の大容量化に伴い,周波数資源の潤沢なミリ波帯以上の周波数活用の検討が進められている.このような高周波数帯では送受信点間が人体によって遮蔽された程度であっても,従来の移動通信等で用いられてきたUHF帯や低SHF帯に比べて大きなレベル低下を生じるために,基地局-端末間の見通しの確保が重要になる.複数の人が動き回るような環境では,複数の基地局やアンテナによって,いずれかの基地局(アンテナ)と端末間に見通しを確保するためのサイトダイバーシチやスペースダイバーシチ等を目的とした分散アンテナシステムが有効である.アンテナ間の離隔は遮蔽状態の相関に依存するが,これまで遮蔽状態の相関については経験的な検討に留まっていた.本論文では,高周波数帯を用いる通信の人体遮蔽に関して,人体を一様なポアソン点過程と仮定した確率幾何解析により,遮蔽率,ハンドオーバによる回避率,遮蔽の発生有無に関する自己相関関数を導出する.加えて,多数の分散アンテナに対する等価見通し率を示すとともに,解析結果に基づくアンテナの設置法について幾つかの例を示す.
著者
柳瀬 裕輝 西 正博 新 浩一 吉田 彰顕
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J94-B, no.2, pp.176-184, 2011-02-01

現在筆者らは,UHF帯テレビ放送波に着目し,全国4箇所にてその伝搬損変動特性を昼夜連続観測している.本論文では,瀬戸内地域において海上伝搬したテレビ放送波の伝搬特性について述べ,その伝搬損を推定する新たな方法を提案する.瀬戸内地域では,直接波と海面反射波の2波の伝搬が支配的であり,大気屈折率と潮位の変化を考慮することで2波モデルにより任意の周波数の伝搬特性を推定できる可能性がある.大気屈折率の指標として等価地球半径係数Kが一般に用いられるが,従来Kを推定するにはラジオゾンデで上空の気象データを取得する必要があった.しかし,ラジオゾンデを有する気象観測点は限られており,特に瀬戸内地域においてはその観測点が存在せず,これまでKを推定することは困難であった.そこで本研究では,UHF帯電波の伝搬特性を推定する新たな試みとして,2波モデルに基づき伝搬損の実測値からKを推定する方法を考案した.1年間の実測値からKを推定した結果,Kの累積確率50 %値は冬季に1.4~1.5,夏季に1.6~1.7となり,その変動幅は夏季に増加する傾向を確認した.また推定したKから異なる周波数の伝搬損を推定し実測値と比較した結果,累積確率の1 %値において6 dB以内の精度で伝搬損を推定できた.
著者
永野 航太郎 長尾 勇平 尾知 博
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J104-B, no.10, pp.772-782, 2021-10-01

無線センサネットワーク等におけるノード間の高精度な時刻オフセット推定及び同期は,正確なデータ解析のための重要な課題である.一方,従来の高精度時刻同期手法は,無線センサネットワーク等の膨大なノードが参加するネットワークにおいて時刻同期のために大量の情報通信を要したり,同期を主導する時刻同期サーバが必要とされたりする問題がある.本論文では,時刻同期のための同期通信パケットを削減し,無線LANにおける高精度な時刻オフセット推定及び同期をソフトウェアにより実行する手法を提案する.具体的には,APから定期的に送出されるビーコンパケットに含まれるTSF (Timing Synchronization Function)タイムスタンプ値の増分に対して,各ノードが自身のローカルクロック増分値との近似回帰直線を算出し,マスタノードから回帰直線係数を送信する.また,提案手法について,計算機シミュレーションによりその精度と有効性を評価する.加えて市販無線LANアクセスポイント等を用いた実機実験により,従来手法よりも少ない情報量・通信でサブマイクロ秒オーダの時刻同期精度を実現できることを示す.
著者
篠原 真毅
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J96-B, no.9, pp.881-893, 2013-09-01

19世紀末にPoyntingにより証明され,Teslaが夢見た「コードレスで電気が届く」世界が近づいている.理論的技術的には古くから実現可能であった無線電力伝送は,ユーザが要求するシステムと低コストを実現することがこれまでできず,商用化の展開は21世紀まで待たなければならなかった.無線電力伝送のキー技術の一つはアンテナ技術である.電磁誘導や共鳴(共振)送電ではコイルや共振器を用いるが,アンテナも広い意味では共振器であり,同様に考えられる部分も多い.本論文では電磁波を用いた無線電力伝送や共鳴(共振)というよく用いられる技術区分ではなく,受電整流回路との関係も考慮しながら,送電距離ごとに分け無線電力伝送の理論と技術を解説する.
著者
田所 幸浩 山里 敬也 田中 宏哉 荒井 伸太郎 中島 康雄 平岡 真太郎
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J102-B, no.6, pp.445-458, 2019-06-01

確率共鳴(Stochastic resonance: SR)とは,系の雑音強度の増大に対して系の応答が向上する非線形現象のことである.従来,雑音は工学的には邪魔なものとしてフィルタ処理等を駆使して積極的に取り除かれてきた.しかし,確率共鳴では異なるアプローチをとる.すなわち,雑音を積極的に利用することで,系の応答を改善する.例えば,生態系は雑音を巧く信号処理に活かすことで,雑音に埋もれた微弱な信号であっても感知できるしくみを有している.このしくみを情報通信に応用することができれば,従来の系では感知できないような微弱な信号を用いた情報通信システムの構築が期待される.そこで本サーベイ論文では,まず確率共鳴現象についての初期の検討から現在に至る研究動向を俯瞰し,確率共鳴現象を支える基礎理論についての概説を試みる.次に,確率共鳴現象の情報通信への応用を促すため,1bit A/D変換器による多レベル信号の復調,仮説検定においても一定の条件下で信号検出確率を改善できるなど,具体的な応用例について概説し,読者の現象応用の手助けとしたい.
著者
生川 菜々 小川 晃一
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J103-B, no.2, pp.79-89, 2020-02-01

本論文では,32×32 MIMO (Multiple Input Multiple Output)・AOA (Angle of Arrival)複合アンテナに関し,MIMO・AOAアンテナ間の電磁結合による到来波推定機能の位相摂動を緩和させるため,リアクタンス素子の装荷を図り,測角精度の改善方法ついて検討した.32×32 MIMOシステムの位相モノパルスAOAアンテナは多数のMIMOサブアレーに囲まれているため,電磁結合が生じ到来波方向推定が困難になる.この問題を解決するため,負荷インピーダンスのリアクタンス値を制御する方法を提案し,高精度な到来波方向推定が可能となることを示した.解析結果より,負荷インピーダンスを最適化することによって,0.2度以下の推定角度誤差が得られた.直接波レベルが小さいKファクターが-10dBのライスフェージング環境下においても5度以下の測角精度が達成できることを明らかにした.更に,負荷インピーダンスを装荷し,ライスフェージング環境下のOTA (Over-The-Air)実験を行った.その結果,リアクタンス負荷を装荷することにより測角誤差を低減できることを確認した.更に,測角誤差低減メカニズムを素子上の電流分布から考察した.
著者
上原 一浩
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J100-B, no.9, pp.693-704, 2017-09-01

1980年代,軍用通信への応用を目指してソフトウェア無線の研究開発がスタートし,DSPやFPGA等の急速な性能向上と低価格化も進み,民生機器への展開に向けた研究開発が本格化した.また,1990年代には,ソフトウェア無線機を適応的に制御し利用するためのコグニティブ無線の概念が提唱され,その応用として高度な電波利用の実現に向けた技術開発が加速した.無線装置及び無線ネットワークの機能や性能を動的かつ適応的に変更可能とするソフトウェア無線・コグニティブ無線を実現するためには,信号処理技術やシステム制御技術,ネットワーク技術,広帯域フロントエンド技術や無線機構成技術,スペクトルのセンシング・可視化・管理・共用技術,セキュリティ技術など,ベースバンド部からRF部に至るまで,ハードウェア・ソフトウェアの両面で,様々な基盤技術の開発が必要である.本論文では,このソフトウェア無線・コグニティブ無線技術の研究開発に関し,特に無線アクセスシステムへの応用を目指した我が国における基盤技術開発を中心に,これまでの主要な取り組みについて概説する.更に,主要な実用化事例と,2020年代のIoT時代に向けた将来展望についても述べる.
著者
高野 祐輝 安藤 類央 宇多 仁 高橋 健志 井上 朋哉
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J97-B, no.10, pp.873-889, 2014-10-01

DNSアンプ攻撃はDNSオープンリゾルバを踏み台として利用したDDoS攻撃であり,その増幅率は数十倍にのぼるため,少ないネットワーク帯域でも効果的に攻撃を行うことができるため大きな問題となっている.そこで我々は,DNSアンプ攻撃に利用されるオープンリゾルバの実態を調査するために,広域なアクティブ検索,サイレントモニタ運用,実オープンリゾルバ運用という三つの多角的な視点から観測を行った.我々が行ったアクティブ検索の結果,インターネット上に3,000万以上のDNSサーバが存在することが明らかとなり,そのうちの2,500万以上ものDNSサーバがオープンリゾルバであることが明らかとなった.また,サイレントモニタ運用,実オープンリゾルバの運用により,DNSサーバ探索にはAレコード問い合わせが,攻撃にはAレコード及びANYレコードの問い合わせが多く利用されることが明らかとなり,更に,これら情報とBGP情報を組み合わせることで,DNSアンプ攻撃の攻撃者が存在するネットワークを特定することが可能であることを示す.
著者
後藤 忠広 ホビガー トーマス 雨谷 純 李 還幇
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J97-B, no.4, pp.363-370, 2014-04-01

GPSやGlonassなどに代表される衛星測位システムは,国際原子時決定の手段としても重要な役割を担っている.しかし,市販の受信機の多くは測量目的のため,時刻比較に使用できる受信機の種類は限られており,価格も測量のみを目的としたものに比べると高価である.筆者らは,汎用のA/D変換器とソフトウェア無線技術を使用することで,時刻比較目的に使用できるGPS受信機の開発を行った.開発した受信機は,新しい測距信号であるL2C信号を受信することで電離層の影響を相殺した高精度な時刻比較を可能とする.ソフトウェア受信機と市販受信機の組合せによる,国内基線での時刻比較結果では10-13乗台の比較が行えることを実証した.また,衛星双方向方式との比較により2 ns以内の一致を得た.
著者
岩佐 絵里子 入江 道生 金子 雅志 福元 健 上田 清志
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J97-B, no.1, pp.19-30, 2014-01-01

本論文では,大規模分散処理技術を適用したクラスタ構成の高可用システムにおける動的構成変更方式について示す.動的構成変更とは,サーバの動的な追加や削除によってシステム構成を変更することである.通信事業者の提供するネットワーク内の高可用システムでは,高い信頼性を確保すること,リアルタイム処理が保証されることが必要があり,動的構成変更時においても,これら2要件が満たされる必要がある.本論文では動的構成変更に伴う処理を通常処理に影響を与えない範囲に抑制することを目的に,新たに追加されるサーバがデータを引継ぐ処理による負荷を抑制する2方式及びデータの再配置・再冗長化を通常処理に影響のない範囲に抑制し実施する方式を提案し,それらの特性を実験環境にて評価する.評価結果から,提案方式により高可用システムに求められる要件を満たしながら,動的構成変更が実現できることを確認する.
著者
林 大貴 相河 聡
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J95-B, no.8, pp.980-984, 2012-08-01

近年,モバイル無線LANルータに代表される移動性のある無線LANネットワークが広まりつつある.無線LANのAPとなるルータ自体に移動性があるため,同じチャネルを選ぶ端末の接近が避けられず,スループット低下を引き起こす.本論文ではモバイル無線LANルータの動的なチャネル変更を提案し,シミュレーションにより手法の評価を行う.
著者
上野 貴弘 宮嶋 照行
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J95-B, no.7, pp.898-906, 2012-07-01

スパース通信路はそのインパルス応答が非常に少数の非ゼロタップをもつものであり,様々な通信環境において観測されている.本論文では,OFDMシステムにおけるスパース通信路のブラインド推定について検討している.通信路推定は,パイロット信号を用いない非ゼロタップ検出と,その検出結果を用いたタップ係数推定の二段階で行われる.提案するブラインド非ゼロタップ位置検出法はサイクリック・プリフィックスの性質を利用した統計的な手法によりタップ係数の大きさを求め,しきい値判定により非ゼロタップを検出する.この非ゼロタップ検出結果を従来のSIMOシステムにおけるブラインド通信路推定法に組み合わせる方法を検討している.推定すべきタップ数が減少するため,通信路推定性能が大幅に向上することが期待できる.計算機シミュレーションにより,提案法により通信路が既知の場合と同等のビット誤り率特性が得られることを示している.
著者
上 芳夫
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J90-B, no.11, pp.1070-1082, 2007-11-01

環境電磁工学(EMC)分野における伝送回路理論の基礎は,伝送線路と電磁波の結合を表す変形された電信方程式である.まず,二つの定式化モデルとその関係について概説している.次にこの解方程式を伝送線路からの放射問題に展開する考え方,非平行な伝送線路間の結合問題を回路網表現へ発展させる手法を提案している.更に,通常の電信方程式を拡張することによって表現される多線条線路の解析手法や高速電力線搬送通信(PLC)でのEMC問題に適用し,解析に有効なモード回路網を提案し,PLCモデムと電力線配線の取扱法を提示している.
著者
谷本 茂明 島岡 政基 片岡 俊幸 西村 健 山地 一禎 中村 素典 曽根原 登 岡部 寿男
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J94-B, no.10, pp.1383-1388, 2011-10-01

全国大学共同電子認証基盤(UPKI)プロジェクトでは,大学間PKI連携及び構築コスト削減等を実現するキャンパスPKI共通仕様を新たに開発した.本仕様が,PKI連携とコスト削減を同時に満足し,キャンパスPKI普及促進に寄与することを示す.
著者
島岡 政基 片岡 俊幸 谷本 茂明 西村 健 山地 一禎 中村 素典 曽根原 登 岡部 寿男
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J94-B, no.10, pp.1246-1260, 2011-10-01

国立情報学研究所(NII)では,平成17年度より大学間連携のための全国共同電子認証基盤(UPKI)の構築を行ってきた.UPKIは,コンピュータや学術コンテンツ等を大学間で安全・安心かつ効果的に共有し活用するための基盤として,PKI(公開鍵認証基盤)を中軸に利用者や利用機関の認証とサービスの認可の機能を提供する.本論文では,学術機関における認証の必要性と制約,対象とするサービスの多様性,既存の各種認証基盤との整合性などを考慮して設計した3層(オープンドメイン層,キャンパス層及びグリッド層)のPKIからなるUPKIの基本アーキテクチャについて解説するとともに,設計方針に基づく各層の実装及び連携方法などについて述べる.
著者
伊藤 真 見越 大樹 源田 浩一
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J107-B, no.1, pp.23-37, 2024-01-01

ネットワーク内を流れる急激なトラヒックの増減を起因とした輻輳の発生を抑制することは重要な研究課題である.トラヒックエンジニアリングは,このようなトラヒックを制御し,ネットワーク資源を効率的に利用するための技術である.優れたトラヒック制御のためには,複雑な計算を行う必要があり,計算時間の問題を無視することはできない.このような経路設計における諸問題に対して,機械学習技術を適用する研究がある.しかし,従来の機械学習を用いた経路設計法は,拠点間の経路最適化は行える一方で,複数の拠点間を考慮した経路最適化は著しく精度が低下することが分かっている.本論文の目的は,機械学習を用いた輻輳制御のためのネットワーク全体を見通した集中管理型の経路設計法を提案することである.このとき,学習モデルは入力されたトラヒック情報から,全ての拠点間経路全体を出力する必要がある.そこで,本論文では機械学習モデルと教師信号の構成を設計し,実験により性能を評価する.性能評価では,教師信号にDijkstra法を用いて学習し,経路設計成功率と帯域使用率,計算時間,トポロジーの変化に対する汎化性能の観点から,Dijkstra法と比較し,その有効性を示す.
著者
村本 充 石井 望 伊藤 精彦
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:09151877)
巻号頁・発行日
vol.J78-B2, no.6, pp.454-460, 1995-06-25

移動体通信端末のアンテナは形状と共に小さくなり,その電気的特性は著しく劣化している.小形かつ高性能な携帯機を実現するためには,アンテナを高効率化することが重要となる.その際,重要なパラメータとなるのが放射効率であり,Wheeler法を用いて簡易に放射効率の測定が可能である.この手法は,アンテナをラジアン球程度の大きさのキャップで覆うと入力電力が損失電力に等しくなるという仮定に基づいて実施される.しかし,この仮定が成立しなければ,計算されるWheeler効率は正確な放射効率とならない.実際にWheeler法を用いた放射効率の測定を行うと,測定値は理論的な値と異なる落込みを生じることがある.本論文では,キャップをワイヤグリッドで近似し計算機上でWheeler法のシミュレーションを実現している.そこで,問題の落込みが測定方法に起因するものではないことを明らかにし,その原因として,キャップをかぶせたとき内部のリアクティブな電磁界が変化しないというWheeler法適用の前提条件が成り立っていないことを示している.また,Wheeler法に使用するキャップの大きさがラジアン球より大きい場合でも十分適用可能であることを示し,その適用限界について検討している.
著者
佐藤 啓介 大島 一郎 中野 久松
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J106-B, no.12, pp.797-804, 2023-12-01

本論文は,28 GHz帯用の高利得マルチビーム誘電体ロッドアンテナシステムを提案している.本アンテナは,扇形に配置された四つの誘電体ロッド部と,4素子リニアパッチアレーによる励振部とから構成されている.4方向高利得マルチビームの27 GHz~29.5 GHzにおいてVSWR = 2以下,利得19 dBi以上のアンテナ特性が得られるように設計する.試作機のVSWRと指向性はシミュレーションと良く一致する特性を示している.