著者
鍋師 裕美 菊地 博之 堤 智昭 蜂須 賀暁子 松田 りえ子
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.415-418, 2013-12-25 (Released:2013-12-28)
参考文献数
2
被引用文献数
4 5

平成23年3月の福島第一原子力発電所事故後,牛肉から高濃度の放射性セシウムが検出されたことから,暫定規制値を上回る牛肉が市場に流通しないよう全頭検査が実施された.しかし,検査の過程で同一個体の部位間で放射性セシウム濃度が異なる例が明らかとなり,検査結果の信頼性に疑問が生じる事態となった.そこでわれわれは放射性セシウムを含む同一個体由来の5部位の肉を用いて測定部位間の放射性セシウム濃度の違いについて原因の解明を試みた.その結果,検討した3個体すべてにおいて,脂肪含量が高い部位ほど放射性セシウム濃度が低下することが判明し,部位間の放射性セシウムの濃度差が脂肪含量に起因することが明らかとなった.さらに,筋肉組織は平均して脂肪組織の7倍以上の放射性セシウムを含んでいたことから,ウシの個体検査で放射性セシウム濃度を測定する場合には,脂肪の少ない筋肉部を用いた検査が適当であると考えられた.
著者
杉山 広
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.285-291, 2010-12-25 (Released:2011-01-07)
参考文献数
32
被引用文献数
1 2
著者
千葉 剛 佐藤 陽子 小林 悦子 梅垣 敬三
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.96-106, 2017-04-25 (Released:2017-05-09)
参考文献数
9
被引用文献数
10

平成27年4月に事業者の責任により機能性表示ができる機能性表示食品制度が施行された.施行後1年が経過した時点における機能性表示食品の認知度および利用実態について消費者2,060名,医師515名,薬剤師515名を対象にアンケート調査を行った.機能性表示食品を認知している人は消費者81%,医師93%,薬剤師98%であった.しかしながら,その特徴を正しく理解していた人は消費者16%,医師23%,薬剤師44%であった.機能性表示食品を利用したことのある消費者は12%であり,治療目的に利用,通院中,医薬品を併用している人がいたが,医師・薬剤師へ相談している人は僅かであった.一方,医師・薬剤師において,患者から機能性表示食品の利用について相談を受けたのは約8%であり,利用が原因と思われる健康被害の相談を受けたのは約2%であった.
著者
小林 悦子 佐藤 陽子 梅垣 敬三 千葉 剛
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.107-112, 2017-04-25 (Released:2017-05-09)
参考文献数
12
被引用文献数
5

高齢者においては健康食品の利用率が高く,利用による被害を避けるためにも適切な情報提供が重要である.近年,情報提供手段としてインターネットが活用されているが,高齢者に対する健康食品の情報提供手段としてインターネットが適切であるか検討した.インターネット調査では,健康食品の情報源,入手経路のいずれにおいてもインターネットの利用率が高かった.一方,紙媒体調査では情報源,入手経路のいずれにおいてもインターネットの利用率は低く,テレビ,新聞,雑誌などメディアに加え専門職や友人などの情報の利用が高く,知人などを介して入手している人も多かった.これらの結果より,普段インターネットを利用していない高齢者に対しては,専門職などとのコミュニケーションを介した情報提供が必要であると考えられた.
著者
石崎 睦雄 上野 清一
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.447-451_1, 1989
被引用文献数
5

天然及び合成食品添加物21品目のDNA損傷活性をDNA修復試験 (Spore rec-assay) で検討した. その結果, 天然添加物のアーモンド油, スターアニス油, セイボリー油, ディル油及び合成添加物の安息香酸ナトリウム並びに合成添加物のカリウム塩である安息香酸カリウム, クエン酸一カリウムの7品目には, 弱いながらDNA損傷作用が認められた. また, クエン酸三ナトリウム (二水和物) とそのカリウム塩クエン酸三カリウム (一水和物) は明瞭な陰性を示したが, 残り12品目は, 最高用量においてもなおM45, H17両株に増殖阻害が観察されず未確定陰性であった.
著者
宮下 振一 貝瀬 利一
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.71-91, 2010
被引用文献数
6

ヒ素の毒性が高いことはこれまでに起こったさまざまな殺人事件や事故を通じて周知の事実となっている。すでに古代ギリシアやローマではヒ素が殺人や自殺に用いられていたと言われており、またわが国でも森永ヒ素ミルク中毒事件や和歌山毒物カレー事件などのヒ素中毒事件を経験している。その一方で、われわれが呼吸や飲食物の摂取を通じて日常的にヒ素を体内に取り込んでいることはあまり知られていない。実はわれわれは空気中に存在する超微量のヒ素や、飲食物中に種々の濃度で含まれるヒ素を無意識のうちに取り込み、これらを代謝および排泄しながら生活している。また通常の環境下で摂取されるヒ素の多くは、呼吸器や皮膚からの吸収よりもむしろ飲食物の摂取に由来することが知られている。そのため体重70kgの成人の体内には常に約7mgのヒ素が普遍的に存在すると言われている。本報では、日本人における主要なヒ素摂取源である海産物、特に他の国民と比べて多食していると考えられる海藻および魚介類に焦点を当て、含有されるヒ素の化学形態や生体への影響、ならびに生体内における代謝に関して最近の知見を交えて紹介してみたい。なお、本報では触れないヒ素の化学形態別分析法については多くの総説にまとめられているので参考にされたい。またこれまでに報告された海洋環境におけるヒ素の化学形態および動態についてはいくつかの総説にも詳しくまとめられているので参照されたい。
著者
天川 映子 鎌田 国広 斎藤 和夫 鈴木 助治
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.304-308_1, 1999-08-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
6

TLC及びHPLCを用いた食品中のアリテームの分析法を検討した. アリテームは水-アセトニトリル (8:2) 混液で食品から抽出した. 糖分の多い試料の場合は, DEAE-セファデックスカラムを用いたクリーンアップが必要であった. TLCでアリテームが検出された場合は, HPLCにより定量した. TLC条件: TLCプレート, RP-18F254S (5×10cm); 展開溶媒, 0.02mol/Lリン酸二水素カリウム溶液 (pH 4.6)-メタノール (4:6) 混液; 発色液, 0.3%ニンヒドリン溶液. HPLC条件: カラム, Lichrosorb RP-18-5; 移動相, 0.02mol/Lリン酸二水素カリウム溶液 (pH 4.6)-アセトニトリル (8:2) 混液; 検出波長, 210nm; カラム温度, 45℃; 流速1.0mL/min; 注入量, 10μL. 市販食品での回収率は99.0~104.2%, 検出限界は20μg/gであった.
著者
佐々木 久美子 辰濃 隆 中村 宗知 金子 正堅 後藤 修宏 近藤 安昭 高畑 薫 三浦 嘉巳 豊田 正武
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.210-214, 2001-06-25
参考文献数
7
被引用文献数
1 2

殺ダニ剤酸化フェンブタスズ(FBTO)及びシヘキサチン(CHT)の告示試験法評価のために6分析機関で共同実験を行った.玄米など6作物からのFBTO回収率の平均値は85.2~96.5%,CHTのそれは大豆を除いて83.5~89.2%であった.FBTO回収率の併行再現性及び室間再現性の相対標準偏差はそれぞれ2.3~9.4%,3.9~12.6%,CHTのそれらは3.2~6.3%,8.3~12.9%であった.検出限界は0.015~0.05μg/g(FBTO),0.005~0.02μg/g(CHT)であった.
著者
加藤 友香里 寺田 久屋
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.162-166, 2014
被引用文献数
4

超高速液体クロマトグラフ–タンデム型質量分析法を用いたキャッサバ製品およびシアン化合物を含有した豆類中のリナマリンの迅速で簡便な定量法を開発した.リナマリンをアセトニトリル–水(3 : 1)で抽出後,アミノ固相抽出カラムで精製し,超高速液体クロマトグラフ–タンデム型質量分析計により定量した.キャッサバに,リナマリンを10 μg/gおよび100 μg/g添加したところ,回収率は96.1%(RSD: 2.6%)および95.3%(RSD: 1.4%)であった.また,タピオカにリナマリンを1 μg/g,10 μg/gおよび100 μg/g添加したところ,回収率は81.1%(RSD: 3.3%),91.9%(RSD: 5.4%)および97.1%(RSD: 2.1%)であった.本法を適用してキャッサバ14検体,タピオカ9検体およびシアン豆4検体について実態調査を行ったところ,キャッサバは11検体から0.1~245 μg/g,タピオカは5検体から0.1~0.5 μg/g,シアン豆は全検体から4,950~5,590 μg/gのリナマリンが検出された.本法による定量下限値は0.1 μg/g,検出限界値は0.03 μg/gであった.
著者
田端 節子
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.129-138, 2012-06 (Released:2013-10-08)
著者
菊池 正行 玉川 勝美 広島 紀以子 相原 良之 三島 靖子 関 敏彦 角田 行
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.25, no.6, pp.534-542, 1984-12-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
33
被引用文献数
3 5

きのこ中金属の含有実態を有用性と有害性の両面より把握する目的で, 21種32点の食用きのこについて18金属の分析を行った.1. 鉄, カリウム, ナトリウム, マグネシウム, 亜鉛, 銅及びマンガンの必須金属は, 一般の野菜類と同程度の値であった.2. カルシウムの含有量は, 一般の野菜類と比較し低く, 供給源として考えた場合, 著しく有用性に乏しいものであった.3. 鉛, クロム, ニッケル, コバルト, バナジウム, スズ及びアンチモンの有害金属は, 不検出またはこれに近い値であった.4. カドミウムは, ほぼ全試料より検出し, 特にコウタケ( 1.02μg/g) とホウキタケ (0.80μg/) が高い値を示し, 食べる量によっては有害性を示す危険性がある.5. アルミニウムは, 一般の野菜類の10倍以上の含有量が測定されたが, 有害性を示すとは考え難い量であった。6. セレンは, コウタケのみから高い濃度で検出され (6, 10μg/g), 十分に安全な値とは断言できず, 食べる量によっては有害性を示すことが考えられる.7. 各金属の含有傾向を知る目的で, 確率紙を用いた濃度分布の検定を行ったが, マンガン,カリウム及びマグネシウムが正規分布, カドミウムが対数正規分布によい適合を示した.8. 金属間の相関性は, 銅とカドミウム; 鉄とアルミニウム; 亜鉛と銅; アルミニウムとカドミウム; 鉄とナトリウム: 亜鉛とカドミウムと, 危険率1%で有意の相関性を得た.9. 発生場所と金属含有量の差は, アルミニウム, マグネシウム及びカドミウムが, 枯木上に発生するきのこより地上に発生するきのこの方が濃度が高く, 有意水準5%で有意な差を認めた.
著者
近藤 一成 穐山 浩 合田 幸広 豊田 正武
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.412-417_1, 1997-12-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
12
被引用文献数
2

モロヘイヤ (C. olitorius) の各部位及び野菜“モロヘイヤ”, モロヘイヤ加工品である健康茶及び健康食品中の強心配糖体の分析法を開発した. 試料のメタノール抽出液を1mol/L塩酸で加水分解後, 種子は直接, その他の試料は Silica gel カラムで前処理し, 逆相HPLCでストロファンチジン (SP) として分析した. 完熟種子中には強心配糖体がSPとして平均5.43mg/g, その莱には0.24μg/g含まれていたが, 茎, 野菜“モロヘイヤ”, モロヘイヤ加工品である健康茶及び健康食品中には強心配糖体は含まれていなかった. したがって, 日常の食生活に用いられるモロヘイヤ中には強心配糖体は存在しないものと考えられる. また, 完熟種子にはSPをアグリコンとし, 糖部の異なる少なくとも2種の強心配糖体が存在することが明らかになった.
著者
渡邉 敬浩 菊地 博之 松田 りえ子 林 智子 赤木 浩一 手島 玲子
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.69-76, 2015-06-25 (Released:2015-07-08)
参考文献数
6
被引用文献数
1 7

魚介類のメチル水銀濃度には,一部の魚種を除き,食品衛生法により暫定的規制値が設定されている.われわれは,この暫定的規制値への適合判定に用いることが可能なメチル水銀定量法として,フェニル誘導体化を介したGC-MS法を開発し報告した.本論文では,試料の脱脂操作の追加,フェニル誘導体化条件の変更,またPEG200との共注入を主とする大幅な改良を加えることにより,より操作性が高くGC-MSへの負荷が小さな分析法を開発した.改良した分析法の性能は,認証標準試料(4種)ならびに鮮魚(2種)を基材とする添加試料を,2機関に所属する分析者3名が計画的に分析して得た分析値に基づき評価した.その結果,全試料と分析者3名の組合せを通じ,本分析法の真度は85~98%,室内精度(RSD%)は1.6~8.1%と推定され,これらの推定値が厚生労働省のガイドラインに示された目標値を満たすことから,妥当性を確認した.
著者
河村 葉子 米澤 里香 前原 玉枝 山田 隆
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.154-161, 2000-04-25
被引用文献数
5 16

既報のポリエチレン及びポリ塩化ビニル中の添加剤一斉分析法について, ポリプロピレンへの適用を検討した. 84種類の添加剤を分析対象とし, そのうち29種類の添加回収試験を行ったところ, 回収率は63.1~114.1%とほぼ良好であった. 食品用ポリプロピレン製器具・容器包装39検体中の残存添加剤を測定したところ, 酸化防止剤のIrganox 1010が最も高頻度に検出され, 次いでIrgafos 168であった. その他, 酸化防止剤のBHT, 滑剤のオレアミド, ステアミド, エルカミド, ステアリン酸などが検出された. 更に, 界面活性剤のモノパルミチン, モノステアリンや可塑剤のDEHP, BBP, DINP等も検出された. また, 滑剤として添加されたと思われる3種類の脂肪族炭化水素群も見いだされた.
著者
木村 圭介 広門 雅子 安田 和男 西島 基弘
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.70-73, 2000-02-25
参考文献数
10
被引用文献数
14

HPLCによる食品中のコウジ酸の定量法を検討した. 食品中から50%メタノール溶液を用いてコウジ酸を抽出し, 遠心分離後, 上清液を0.45μmのメンブランフィルターでろ過し, ろ液をHPLC用試験溶液とした. カラムにはRP-18を用い, 移動相は0.1mol/Lリン酸二水素ナトリウム-メタノール (97:3) を用いて測定した. 試料からの添加回収率は73~96%であり, 定量下限は, 0.005g/kgであった. 本法を用いて各種食品92検体を分析したところ, カニ1検体から0.03g/kg, 清涼飲料水2検体から0.20及び0.03g/kgが検出された. コウジ酸の確認にはフォトダイオードアレイ検出器を用いて行った.