著者
近藤 一成 坂田 こずえ 加藤 怜子 菅野 陽平 武内 伸治 佐藤 正幸
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.144-150, 2019-10-25 (Released:2020-01-17)
参考文献数
17
被引用文献数
1 3

日本国内で食中毒事例が多いクサウラベニタケと考えられてきたきのこは,3種類の近縁種から構成される.これら近縁種を特異的に感度よく検出できるリアルタイムPCR法を開発した.有毒と考えられるクサウラベニタケ近縁3種および食用のウラベニホテイシメジに特異的なプライマーおよびプローブ(FAM,VIC,Texas Red,Cy5標識)を用いて検討した.クサウラベニタケ近縁3種とウラベニホテイシメジITS全領域を有する標準プラスミドを用いた検討から,いずれの検出系も12.5コピーまで検出可能あり,目的以外の標的には反応しなかった.本法を用いて中毒事例から回収した検体を分析したところ,PCR-RFLP法では十分解析できない検体でも確実に種の同定検出が可能であることが分かった.食中毒の防止および中毒発生時の原因種特定に役立つと考えられる.また,北海道内におけるクサウラベニタケ近縁種は,本州のものとは異なりEntoloma eminensまたはEntoloma sp.であることを同時に明らかにした.
著者
観 公子 牛山 博文 新藤 哲也 斉藤 和夫
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.127-132, 2005-06-25 (Released:2009-01-21)
参考文献数
29
被引用文献数
7 10

東京都において,ヒスタミンを原因とする食中毒などは,ここ20年間においてほぼ毎年発生しており,いわし,さば,あじなどの赤身魚によることが多い.そこで,ヒスタミンをはじめ5種の不揮発性アミンについて市販の魚およびその加工品637検体について調査をした.また,ヒスタミンの生成は細菌が関与することから水分活性などを測定した.その結果,ヒスタミンが66検体から5~340 mg/100 gの範囲で検出され,その大半はいわし類の干物であった.同時にチラミンが5~51 mg/100 の範囲で43検体,プトレシンが5~42 mg/100 の範囲で26検体,カダベリンが5~180 mg/100 の範囲で64検体およびスペルミジンが5~8 mg/100 の範囲で5検体から検出された.また,ヒスタミンが検出された干物試料の水分活性は0.68~0.96であった.
著者
角田 光淳 井上 典子 青柳 康夫 菅原 龍幸
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.18-24_1, 1993-02-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
18
被引用文献数
6 7

生殖世代期のベニテングタケ中あイボテン酸 (IBO) 及びムシモール (MUS) の濃度 (平均x: ppm) は菌傘部 (IBO x: 519, MUS x: 30) が最も多く, 菌基部 (IBO x: 290, MUS x: 20), 菌柄部 (IBO x: 253, MUS x: 17) の順で, 全体では (IBO x: 343, MUS x:22) であった. 両物質の濃度は子実体の成熟に伴って, 菌傘部は増加後減少し, 菌栖部は漸次減少, 菌基部は増加傾向を示し, 全体ではほぼ一定であった. 孤立子実体中及び群生子実体中の両物質の濃度及び成熟に伴う濃度変化は同じ傾向を示し, 採取地による違いは認められなかった. また子実体の大きさによる濃度への影響も認められなかった. 濃度変動は生育環境による固体差と考えられた. 子実体の重量は成熟に伴い, 菌基部の約5~7倍に増加したが, IBO濃度はほぼ一定であった.
著者
日高 利夫 桐ヶ谷 忠司 上條 昌彌 木川 寛 河村 太郎 河内 佐十
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.267-273_1, 1992-06-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
5
被引用文献数
10 16 6

浸漬液中の次亜塩素酸ナトリウム (NaClO) の濃度を変えて, もやし及びキャベツ中の残留塩素とクロロホルム (CHCl3) の生成量を調べた結果, 残留塩素, CHCl3ともにNaClO濃度が高くなるにつれて増加した. しかし, キャベツにおけるCHCl3の生成量はもやしより少なかった. NaClO溶液で処理したもやし及びキャベツをガラス製容器に保存し, 残留塩素及びCHCl3生成量を経時的に調べた結果, 残留塩素は低温保存の場合に損失が少なく, CHCl3は塩素の残存している間は増加した. また, 温度の異なるNaClO溶液にもやしを浸漬して調べた結果, 処理温度が低いほどCHCl3の生成量は少なかった. したがって, 野菜をNaClO溶液で処理する場合, CHCl3の生成の少ない低温処理が望ましいことが分かった.
著者
竹林 純 高坂 典子 鈴木 一平 中阪 聡亮 平林 尚之 石見 佳子 梅垣 敬三 千葉 剛 渡辺 卓穂
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.63-71, 2020-04-25 (Released:2020-04-27)
参考文献数
9
被引用文献数
1

本研究では,2017および2018年に実施した食品の栄養成分検査の技能試験について報告する.2017および2018年調査では,それぞれ65および73機関の参加が得られ,参加機関の70%以上は栄養成分表示に関する収去試験を担当しうる公的機関であった.調査試料の食品形態は畜肉ソーセージであり,調査項目はタンパク質,脂質,灰分,水分,炭水化物,熱量,ナトリウム,食塩相当量,カルシウム(2018年のみ),鉄(2018年のみ)であった.義務表示項目である熱量,タンパク質,脂質,炭水化物,食塩相当量の1つ以上について報告結果が不適正と考えられた機関は,2017年調査では全機関の11%および公的機関の9%であり,2018年調査では全機関の15%および公的機関の13%であった.機関間の報告値のばらつきを示す指標であるRSDrは,タンパク質=2%,脂質=3%,灰分=2%,水分=0.5%,炭水化物=9%,熱量=1%,ナトリウム(食塩相当量)=4%,カルシウム=7%,鉄=7%程度であった.特に,炭水化物のRSDrが大きく,炭水化物の表示値が数g/100 g以下の食品の収去試験においては,無視できない機関間差が生じる可能性を考慮する必要がある.
著者
片岡 洋平 竹内 温教 小林 尚 菊川 浩史 佐藤 恭子 穐山 浩
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.72-76, 2020-04-25 (Released:2020-04-27)
参考文献数
11

2018年にわが国の市場から購入したミネラルウォーター類(MW) 155製品中の六価クロム濃度をポストカラム誘導体化法を用いたイオンクロマトグラフィーにより実態調査した.実態調査の分析と併行して行った155製品の添加試料の分析から95~106%の範囲で回収率が得られ,規格値への適合判定を行うための分析が適正に実施されたと評価した.調査した155製品のうち54製品から六価クロムが定量下限値(0.0001 mg/L)を上回る濃度で検出され,検出率は35%となった.また,検出された濃度の最小値は0.0001 mg/L,最大値は0.045 mg/L,中央値は0.0003 mg/Lであった.0.0001~0.0002 mg/Lの範囲で六価クロムが検出される製品数が最も多かった.現状の食品衛生法により設定されているMW中の規格値(0.05 mg/L)を超過する濃度で検出された製品はなかった.
著者
鈴木 一平 熊井 康人 多田 敦子 佐藤 恭子 梅垣 敬三 千葉 剛 竹林 純
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.53-57, 2020-04-25 (Released:2020-04-27)
参考文献数
7
被引用文献数
1

加工食品にはビタミンDとして食品添加物のエルゴカルシフェロール(D2)およびコレカルシフェロール(D3)が使用されており,加工食品中の含有量把握のため検証された分析法が必要とされる.本研究ではD2とD3を分離定量する方法として,栄養成分分析に用いられる日本食品標準成分表2015年版〈七訂〉分析マニュアルのビタミンD分析法(マニュアル法)の加工食品中のビタミンD分析への適用性について検討を行った.検討の結果,マニュアル法にいくつかの課題が認められたため,マニュアル法に改良を加えて加工食品への適用性を検討した.野菜ジュース,豆乳,コーンフレークを用いた添加回収実験の結果,改良マニュアル法は推定方法定量下限(EMLOQ)相当量での回収率(相対標準偏差)がD2で103~112%(4.7~12.6%),D3で102~109%(2.4~21.8%),EMLOQの10倍量添加ではD2で100~110%(4.0~7.4%),D3では102~105%(3.8~4.8%)であった.この結果から,改良マニュアル法は加工食品中のD2,D3分析に適用可能な真度および精度を有すると推察された.
著者
新矢 将尚 紀 雅美 山口 之彦
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.58-62, 2020-04-25 (Released:2020-04-27)
参考文献数
16
被引用文献数
1

指定外着色料の一つであるパテントブルーVによる,輸入食品の食品衛生法違反は後を絶たない.パテントブルー色素の名称で市販されているものには,化合物名が異なるものがある一方,複数の異なる化合物がパテントブルーの名称で市販されている場合もあるため,注意が必要である.パテントブルー色素と推察される市販色素9品について,TLC,HPLC,LC-MS/MSで分析したところ,いずれの方法でもパテントブルーV,アズールブルーVX,イソスルファンブルー,アルファズリンAの4種に識別され,製品情報が不明瞭な試薬も同定された.パテントブルー群については,命名法を統一することで誤認の可能性を軽減できると考えられる.
著者
半田 彩実 川鍋 ひとみ 井部 明広
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.1-6, 2020-02-25 (Released:2020-04-24)
参考文献数
15

ぬか漬には,不揮発性アミン類であるヒスタミン(Him)およびチラミン(Tym)を含有するものがあり,これらは発酵過程中に微生物が関与し生成されたと推察される.そこで,HimおよびTymを含む市販のキュウリのぬか漬からHimおよびTym産生菌の探索を試みたところ,それぞれ産生菌を単離し,Him産生菌はRaoultella ornithinolytica,Tym産生菌はLactobacillus curvatusと同定した.これらの産生菌をぬか漬の原材料である米ぬかを含む培地中でそれぞれ培養したところ,それぞれの培地中からHimおよびTymの産生が認められた.しかし,各産生菌がぬか漬中に存在しても,必ずしもHimおよびTymが産生されるわけではなく,ぬか漬製造において,その産生量は前駆アミノ酸の量や共存する他の細菌によって影響を受けることが示唆された.
著者
吉田 絵美子 渋谷 孝博 黒川 千恵子 井上 豊 山本 善彦 宮崎 元伸
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.216-222, 2009-10-25 (Released:2009-11-07)
参考文献数
14
被引用文献数
1 6

テトラサイクリン系抗生物質はカルシウムなど2価の金属イオンとキレートを形成するため,厚生労働省通知の動物用医薬品一斉試験法を適用して定量することは困難であった.本研究では,エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA-2Na)を用い,カルシウム除去を行うことによって,一斉分析法においてテトラサイクリン系抗生物質を同時に定量する方法の検討を行った.試料からの抽出時にEDTA-2Naを加えることで,テトラサイクリン系抗生物質が一斉分析で測定可能となり,乳で65成分,ヨーグルトで70成分,生クリームで59成分,チーズで67成分,アイスクリームで60成分の動物用医薬品が回収率70~120%,変動係数 25% 未満,定量下限値は0.01 μg/g (S/N≧10) で定量可能だった.
著者
小島 彩子 佐藤 陽子 千葉 剛 梅垣 敬三
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.80-88, 2018-04-25 (Released:2018-04-25)
参考文献数
41

病者が健康食品を摂取している状況から,健康食品と医薬品の併用による有害事象の発生が懸念されている.そこで過去の有害事象を症状の重篤度と医薬品の薬効の視点で分析し,注目すべき事項を検討した.事例は,『健康食品』の安全性・有効性情報(HFNet)の収載論文64報,その中の患者71名を対象とした.その結果,症状としては肝障害,医薬品としては抗てんかん剤,抗悪性腫瘍剤,不整脈用剤,血液凝固阻止剤等のハイリスク薬が,健康食品と医薬品の相互作用において注目すべき事項であることが明らかとなった.また,論文中の健康食品の素材・成分に関する情報が曖昧で不十分な点が,相互作用の影響を検討する際の障害となることが示唆された.
著者
久高 潤 糸数 清正 平良 勝也 仁平 稔 岡野 祥 中村 正治 岩永 節子 富永 正哉 大野 惇
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.11-15, 2008
被引用文献数
2 14

海ぶどうの細菌学的汚染状況を把握し,効果的な衛生対策を確立するために調査・研究を行った.沖縄県内16か所の養殖場で各生産段階や製品など11か所における腸炎ビブリオおよび海洋細菌の汚染実態調査を実施した.調査の結果,養殖海水中の海洋細菌数は,養殖により平均10<sup>3</sup>から10<sup>6</sup> cfu/mLまで増加した.一方,海ぶどうの海洋細菌数は母藻から出荷の段階,あるいは出荷7日後まで平均10<sup>7</sup> cfu/gと高い菌数で推移した.腸炎ビブリオは使用海水56%,母藻25%,製品19%から検出されたが,<i>tdh</i> は増菌液,分離株のいずれからも検出されなかった.今回の調査結果を踏まえ,今後,各養殖工程に適した具体的な消毒方法,殺菌装置の評価・改良等についてさらなる検討が必要である.
著者
角田 光淳 井上 典子 青柳 康夫 菅原 龍幸
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.153-160_1, 1993
被引用文献数
4 4

ベニテングタケによる食中毒防止の観点から, 言い伝えられている保存法や調理加工法に準じてイボテン酸 (IBO) 及びムシモール (MUS) の消長を調べた. IBOは容易に脱炭酸されてMUSになり, それが幻覚を引き起こすことが知られている. 本研究の結果, 1) 乾燥するとIBOは減少するがMUSが増加し, MUSによる生理作用は強まるものと思われる. 2) 乾燥保存中のIBO及びMUSは安定で, また短期塩漬保存では両者の変動はわずかで, その生理活性を失うことはないと思われる. 3) 10分程度の加熱調理では, 両者の変動はわずかで, 無毒化を期待することはできない. 4) 湯がきや水さらしにより, 両者の含量は大きく減少したが, 実際には個体差, 喫食量及び他成分の影響等を考えるとこれらの処理は推奨される調理方法とはいえない.
著者
伊永 隆史
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.197-204, 2010
被引用文献数
1 1

食のグローバル化に伴いさまざまな輸入食品が安価に手に入るようになったが、国内で禁止された農薬・消毒剤の使用やBSE(牛海綿状脳症)などで安全性への懸念が高まり、ここ数年消費者の国産食品指向が高まっている。植物やそれを餌とする動物の水素・酸素安定同位体比は天然水の安定同位体比を反映することが知られ、気候変動に関連した生態系解析などに用いる先行研究がいくつか報告されている。しかし、このような有機物の安定同位体比を精密測定できる質量分析法は、かつてはごく一部の先端的研究者だけが扱える特殊な測定技術とされていたが、近年の同位体比質量分析装置(IRMS)の発展普及により汎用性が高まり、食品の産地鑑別研究へ展開可能な実施環境が整いつつある。
著者
新間 弥一郎 田口 脩子
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.28-34, 1961-03-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
6

イシナギ肝臓による食中毒が, 単なるA過剰症によるのか, あるいは他の特異な毒物によるのか検討するために, 東京築地市場に入荷した3尾のイシナギの肝臓を試料とし, それぞれの脂質を分析したのち, 人間およびシロネズミに対して, これら3個の試料から分離した抽出油, 抽出残留物, 肝臓エキスおよび調理した肝臓を与えた結果, シロネズミでは抽出残留物および肝臓エキスは全く中毒症状を現わさず, 抽出油中にはよりA毒性の強い物質を認めなかった.人間では3個の試料のうち, 含油量22.3%, 油中のA濃度117万IUの肝臓を調理して食した場合に, 皮膚落屑を伴う特有の中毒症状が現われたが, 摂取した肝臓中のA量から予想されたよりも, 中毒症状は激しく, かつ長期にわたり, 単なるA過剰症とは断定できなかった.
著者
武田 由比子 河村 葉子 山田 隆
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.178-183_1, 1998-06-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
19
被引用文献数
4 7

アルミホイルから各種食品擬似溶媒へのアルミニウム溶出について検討したところ, 溶媒により溶出挙動は大きく異なった. 水への溶出は少なく, 水道水では超純水よりわずかに高かった. 4%酢酸及び0.5%クエン酸溶液では, 水道水の25~200倍であった. また,4%酢酸へは0.5%クエン酸溶液の2倍以上の溶出量であった. 酸性溶媒への溶出は温度及び時間に相関して増加した. 一方, アルカリ性溶媒への溶出は, 2時間以内に急激に増加し, その後はほぼ一定の状態となった. 市販アルミ箔製品10種類の溶出調査を行ったところ, 95℃30分で超純水への溶出は0.1-0.2μg/cm2, 0.5%クエン酸溶液では4.4-14.6μg/cm2, 4%酢酸では24.4-37.6μg/cm2であった.
著者
宗村 佳子 木本 佳那 小田 真悠子 奥津 雄太 加藤 玲 鈴木 康規 齊木 大 平井 昭彦 秋場 哲哉 新開 敬行 貞升 健志
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.260-267, 2017-12-25 (Released:2017-12-28)
参考文献数
35
被引用文献数
6

2017年2月,東京都内で食中毒が4事例発生した.患者は10の学校にわたり,このうち7校および1校では,それぞれ別の共同調理場で調理された給食を提供されており,2校では自校で調理した給食を喫食していた.全事例に共通して提供されていたものは,同一業者が2016年12月に製造した刻みのりであった.喫食者4,209名のうち,1,193名(28.3%)が胃腸炎症状を呈し,リアルタイムRT-PCRによる検査の結果,4事例の患者265名中207名(78.1%)からノロウイルス(NoV)GIIが検出された.刻みのり31検体が検査に供されたが,このうち7検体(22.6%)がNoVGII陽性となった.刻みのり7検体と4事例に由来する患者20検体のNoV ORF1/2ジャンクション領域302塩基の配列は一致し,その遺伝子型はGII.17であった.また,次世代シークエンサーによる解析により,患者検体からほぼ全長(7,420塩基)のNoV塩基配列が得られたが,同株は系統樹解析でHu/GII/JP/2015/GII.P17_GII.17/Kawasaki308株と同じクラスターに属した.これらの結果から,今回の4事例は同一刻みのりを感染源としたNoVGII.17によるものであると断定された.刻みのり検体の水分活性は0.119~0.129であり,NoVは乾燥状態でも2か月間は感染性を失わないことが疫学的に示された.本事例の解決を発端として,刻みのりが関連したNoVGII.17による大規模なdiffuse outbreakの国内発生が明らかとなった.