著者
河村 太郎 堺 敬一 宮沢 文雄 和田 裕 伊藤 誉志男 谷村 顕雄
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.12, no.5, pp.394-398, 1971-10-05 (Released:2010-03-01)
参考文献数
3
被引用文献数
6 6

Secondary amines are known as one of the precursors of nitrosamines which are potent carcinogenic compounds for human being and animals. Distribution and the contents of secondary amines in commercial foods, several kinds of meat, meat products and dairy products were described. Comparing the amounts of secondary amines in raw oods with the amounts in cooked or processed foods, it was proved that the contents of secondary amines in the cooked or processed foods increased markedly. So far as meats were concerned, whale meat showed the highest content of dimethylamine, while the meats of mutton, chicken, pork and beef contained less amount of dimethylamine with trace of diethylamine. Sausage showed larger amounts of dimethylamine than the contents in bacon and ham, because the materials of sausage consisted of pork, whale, mutton and tuna. In dairy products, modified powdered milk showed about five times as much dimethylamine as milk, while the contents in butter and processed cheese were trace. In the case of mackerel and cuttlefish, it was observed that boiled, roasted, canned or dried samples contained more amount of secondary amines than raw samples.
著者
角田 光淳 井上 典子 青柳 康夫 菅原 龍幸
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.153-160_1, 1993-04-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
15
被引用文献数
4 4

ベニテングタケによる食中毒防止の観点から, 言い伝えられている保存法や調理加工法に準じてイボテン酸 (IBO) 及びムシモール (MUS) の消長を調べた. IBOは容易に脱炭酸されてMUSになり, それが幻覚を引き起こすことが知られている. 本研究の結果, 1) 乾燥するとIBOは減少するがMUSが増加し, MUSによる生理作用は強まるものと思われる. 2) 乾燥保存中のIBO及びMUSは安定で, また短期塩漬保存では両者の変動はわずかで, その生理活性を失うことはないと思われる. 3) 10分程度の加熱調理では, 両者の変動はわずかで, 無毒化を期待することはできない. 4) 湯がきや水さらしにより, 両者の含量は大きく減少したが, 実際には個体差, 喫食量及び他成分の影響等を考えるとこれらの処理は推奨される調理方法とはいえない.
著者
西島 千陽 千葉 剛 梅垣 敬三
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.169-176, 2022-10-25 (Released:2022-11-03)
参考文献数
20
被引用文献数
1

サプリメント利用による臨床検査値悪化の頻度を調べるため,全国オンライン調査を実施し,特に肝機能指標に着目して解析した.過去1年以内のサプリメント利用者73,010名の中で,臨床検査値の悪化者は0.5%,肝機能指標の悪化者は0.2%と推定された.臨床検査値の悪化は軽微なものが多いと推定され,その経験者のほとんどがその情報をどこにも報告していなかった.サプリメント利用による下痢や皮膚症状と比較すると,臨床検査値の悪化者は,男性の比率が高く,毎日の利用と長期間の利用が多く,利用製品が特定できない者の割合が高いという特徴があった.肝機能指標の悪化者は多くはなく,大部分が軽微と推定されるが,その影響を利用者自身では判断しにくいことから,利用製品名と利用状況を記録するという対応が重要である.
著者
局 伸男 渕 祐一 森崎 澄江 溝腰 利男 首藤 真寿美 藤井 幹久 山田 謙吾 林 薫
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.27, no.5, pp.561-564_1, 1986-10-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
5
被引用文献数
1

大分県内のフグ料理専門店において行われていたフグ肝臓調理方法の除毒効果について調査した. トラフグ及びカラスの有毒肝臓 (最低62MU/g, 最高1,270MU/g) 21例の調理後の毒力はすべて5MU/g未満にまで減少していた. また, 各例とも調理工程における毒性減少の傾向が類似していた. 除毒のメカニズムは, 溶出除去を主としたものと考えられるが, 加熱処理によるフグ毒の分解とその無毒化も関与しているものと推測された.
著者
千葉 雄介 藤原 茜
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.129-135, 2022-08-25 (Released:2022-08-30)
参考文献数
18

ヒスタミンは食品中のヒスタミン産生菌により産生されるため食中毒予防には微生物学的制御が求められる.ヒスタミン産生量は温度に影響を受けるため,食品の保存温度は4℃以下が推奨される.しかし実際には常に4℃以下を保つことは難しいことから,本研究ではヒスタミン産生菌7菌種について10℃でのヒスタミン産生能の評価を行った.緩衝液中でヒスタミン産生量の経日変化,菌数とヒスタミン産生量の相関,培地中での増殖速度について検討した.緩衝液中において増殖がない一定の条件下において5日保存してもほぼ一定量のヒスタミンを持続的に産生した.菌数とヒスタミン産生量は比例関係にあり,決定係数は0.97以上であった.また,10℃1日の保存により200 μg/mLのヒスタミンを産生するのに必要な菌量は4×107-4×108CFU/mLと算出された.また,培地中において初期菌量が102-103 CFU/mLであった場合,107 CFU/mL以上となるのに低温細菌で2, 3日,中温細菌で4日以上を要した.以上の結果から,ヒスタミン産生菌のヒスタミン産生能,増殖速度を把握することが食中毒の予防に重要であると考えられた.
著者
辻 澄子 柴田 正 小原 一雄 岡田 直子 伊藤 誉志男
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.504-512_1, 1991-12-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
31
被引用文献数
11 19

コーヒー中の過酸化水素 (H2O2) をTLCで確認し, 酸素電極法及び改良4-アミノアンチピリン法を用いて定量することにより, その生成要因を検討した. コーヒー浸出液からはH2O2を検出したが, 生コーヒー豆からはH2O2を検出しなかった. ドリップ式ろ過器で浸出あるいは溶解したものはコーヒーメーカーで浸出あるいは溶解したものに比較してH2O2含量は高かった. また, コーヒー豆のばい煎度が深くなるに伴いH2O2の生成量が増加した. 焙り豆中のH2O2の生成は光及び温度の影響を受けた. コーヒー豆の成分であるショ糖, クロロゲン酸, グリシン, カフェイン, コーヒー酸及びキナ酸からH2O2は検出されなかった. また, これらの成分を混合し, コーヒー豆と同様に, ばい煎して浸出した液からH2O2が検出された. 特にばい煎したコーヒー酸からのH2O2の生成率が他の成分よりも高かった.
著者
寺谷 清香 紀 雅美 村上 太郎 高取 聡
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.158-162, 2022-08-25 (Released:2022-08-30)
参考文献数
19

育児用の調製液状乳は,常温で一定期間保存でき,育児負担の軽減や災害時の利便性から平成31年3月に国内での製造・販売が開始された.AFM1は発がん性を有するカビ毒であるアフラトキシンB1 (AFB1)の代謝産物であって,AFB1に汚染した餌を摂食した家畜の乳に含まれる.現在,調製液状乳はもとより乳児用粉ミルク(調製粉乳)では基準値が設定されておらず,乳児では体重あたりの乳製品摂取量が多いため,摂取量には留意が必要である.本研究では,乳幼児の摂取量の多い乳製品についてのAFM1含有量の実態調査を行った.調査の結果,検出された乳製品のAFM1は0.001~0.005 μg/kgとなり,これまでに報告されている乳製品中のAFM1と比較して,極微量であった.乳幼児の栄養は乳製品に依存し,成人より多く摂取する可能性が否めないため,継続して調査を行う必要がある.
著者
青木 奈穂 笠原 帆乃佳 佐藤 吉朗
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.175-179, 2021-12-25 (Released:2021-12-25)
参考文献数
16

食品には,本来感じられないにおいが感じられることがある.我々はこのにおいをオフフレーバーと呼んでいる.牛乳においても,餌あるいは乳牛の体調によりヘキサナールのようなオフフレーバーが感じられることはよく知られている.我々はすでに市販牛乳からオフフレーバー物質として2-ヨード-4-メチルフェノール(以後2I4MPと略称する)を初めて発見し,その構造を明らかにした.今回,以下の3点について検討した.第一にどのような化合物を出発物質として2I4MPが生成されたのか.この問題は有機合成手法を用いて推定し,候補物質としてp-クレゾールを挙げた.第二に牛舎内でどのようにして2I4MPが発生したのか.牛から排泄された牛糞にヨウ素を作用させることによって2I4MPが発生のすることを確認した.第三に,2I4MPがどのようにして生乳に移行したのか.デシケーターを用いたモデルを作成して移行推定を実施し,2I4MPが牛舎内で生乳に移行する可能性を示した.この結果から,2I4MPを牛乳中に混入させないための方策を提案した.すなわち,搾乳時に乳房殺菌に使用されるヨウ素系殺菌剤を他の殺菌剤に代替する,あるいはヨウ素系殺菌剤を牛糞や床敷きに落下させないようにする.以上を守ることが重要である.
著者
伊藤 澄夫 武田 寿 小林 昭彦 桜井 裕之 多田 善彦 青木 岳 細貝 猛 山中 崇彰 石綿 肇
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.254-256_1, 1993

輸入ウオッカ中のフタル酸ジブチル (DBP) の簡易で迅速な分析法を開発し, 応用を試みた. DBPは試料から<i>n</i>-ヘキサンで抽出, 直接FID付キャピラリーカラムガスクロマトグラフで定量した. 0.5~5.0ppmのDBPを試料に添加したときの回収率は92.7~98.5%であった. 検出限界は0.1ppm, 所要時間は約30分であった. ロシア産ウオッカ15試料について定量を行ったところ, 2試料から0.1及び0.2ppmのDBPが検出された. これらに付いてはGC/MSで確認を行った.
著者
大仲 賢二 小林 直樹 内山 陽介 本田 三緒子 三宅 司郎 小西 良子
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.148-156, 2021-10-25 (Released:2021-11-02)
参考文献数
43

漬物に使用される伝統的な4種類の生野菜(キュウリ,白菜,大根,ナス)から分離した乳酸菌(LAB)によるアフラトキシン(AFs)に対する暴露低減効果を調査した.最初に,AFM1との結合能を調べ,各野菜から最も結合率が高いLABを1株ずつ計4株選んだ.選んだ4菌株とAFB1,AFB2,AFG1,AFG2およびAFM1との結合率は,キュウリ由来LABで57.5%~87.9%,白菜由来LABで18.9%~43.9%,大根由来LABで26.4%~41.7%,ナス由来LABで15.0%~42.6%であった.また,キュウリ,白菜,大根およびナスから分離されたLABは,それぞれLactococcus lactis subsp. lactis,Weissella cibaria,Leuconostoc mesenteroides,Leu. mesenteroidesと同定された.さらに胃の中を模した酸性条件下で4菌株とAFM1との結合能を測定したところLABの生菌数は減少したが結合能はいくつかの菌株で増加し,これらの菌株はAFsとの結合能を保持していた.動物実験においてキュウリ由来L. lactis subsp. lactisが血清へのAFB1の吸収を有意に阻害することが明らかになった.以上の結果から漬物(浅漬けとぬか漬け)に使用される野菜に生息するLABがAFsと結合能を持ち,AFsに対する暴露低減効果を有すことが示唆された.
著者
川田 十三夫 佐藤 成美 山下 彦王 宅見 賢二 采見 憲男 渡辺 健二
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.9, no.5, pp.358-363, 1968
被引用文献数
1

Cells of <I>Clostridium botulinum</I> type A strain 190 grown in thioglycolate medium (GYPT medium) autolysed after having reached a maximum growth. This strain was dissociated into large and small colony-forming types in semisolid media. The cells obtained from the large colony type autolysed more rapidly than those from small one. Washed cells harvested at logarithmic growth phase lysed in phosphate buffer at 37&deg;C within 2-3 hours. Autolysis rose above pH 6.0 and was optimal near pH 7.0. The potential for autolysis reached a maximum toward the end of the logarithmic growth phase and thereafter the cells became resistant to autolysis. The autolytic activity was destreyed by heating the cells at 60&deg;C for 10 minutes and was slightly affected by cysteine (10<SUP>-2</SUP>M), N-ethylmaleimide (10<SUP>-2</SUP>M) and mercaptoethanol (10<SUP>-1</SUP>M).<BR>During autolysis nitrogen, protein, nucleic acids, reducing sugars, amino sugars and botulinum toxin were released from the cells as the reduction of the turbidity in cell suspension occurred. Electron microscopic observations on the process of autolysis revealed that the partial lysis of walls occurred first at the end of the organism and the cytoplasmic contents were lost through such lesions. The lysis of the wall centripetally spread and finally the morphological entity of the wall was completely lost. From these findings it is suggested that the autolysis may be proceded by auto-digestion of the cell wall at the end of the organism.
著者
河村 葉子 辻 郁子 杉田 たき子 山田 隆
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.170-177, 1997-06-05
参考文献数
11
被引用文献数
4

ステンレス製器具及び食器からの鉄, クロム, ニッケル, 鉛及びカドミウムの溶出について検討を行った. 溶出した鉄, クロム, ニッケルにおいては, 溶出溶媒では水<4%酢酸<0.5%クエン酸, 溶出条件では室温24時間<60℃30分間<95℃30分間<沸騰2時間の順に, 溶出量が多くなった. 市販及び使用中の器具及び食器について, 4%酢酸で60℃又は95℃30分間の溶出試験を行ったところ, 新品では鉄50~1,110ppb, クロム5~28ppbの溶出が認められたが, 使用中の製品では検出頻度, 検出値ともに低く, 繰り返しの使用により溶出量が低下するものと考えられた. また, 鉛は使用中の製品1検体から検出されたが, 25ppbと微量であった. 一方, カドミウム及びニッケルはいずれの製品からも検出されなかった.
著者
大西 貴弘 小原 徹也 新井 沙倉 吉成 知也 小西 良子
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.24-29, 2018-02-25 (Released:2018-05-08)
参考文献数
14
被引用文献数
7 13

カンパチの生食に伴う有症苦情29事例の喫食残品中に含まれるUnicapsula seriolaeの定量を行った.定量リアルタイムPCR(qRT-PCR)を用いて検体中のU. seriolae 18S rDNAを検出したところ,26検体で陽性となった.U. seriolae DNAが検出された事例の潜伏時間は1~12時間付近に集中(77%)していた.事例の発生に明瞭な季節性は認められなかった.患者の主な症状は下痢,嘔吐であった.U. seriolae DNAが検出された事例残品中の胞子数を測定したところ1グラム当たり1.9×105個から1.7×107個だった.しかし,市場で購入したカンパチから定量限界値以上の胞子は検出されなかったことから,事例の発生にU. seriolaeが関与している可能性が示唆された.胞子数とDNAコピー数の相関性は低かったが,胞子を計数できた事例のDNAコピー数は1グラム当たり107コピー以上だった.喫食量が判明している11事例について摂取胞子数を推定したところ,最小で3.8×106個であった.