1 0 0 0 OA 蝸電図検査

著者
原 晃 和田 哲郎
出版者
日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.45-53, 2008-02-28 (Released:2010-08-05)
被引用文献数
1

音刺激により生じた内耳及び蝸牛神経由来の電気的反応を, 鼓室内あるいは外耳道深部に電極をおいて検出する方法が蝸電図検査 (Electrocochleogram, ECochG) である。誘発される電気現象の構成成分として蝸牛マイクロホン電位 (CM), 加重電位 (SP), 蝸牛神経複合活動電位 (CAPまたはAP) があり, 音刺激からおおよそ3msec以内に認められる。聴性脳幹反応 (ABR) に比べ, 電極留置にやや煩雑な面はあるものの, より蝸牛近傍の情報が得られ, 病態の理解・診断に有用である。本稿では蝸電図検査の意義, 検査法, 適応について概説した。
著者
大原 卓哉 泰地 秀信 守本 倫子 本村 朋子 松永 達雄
出版者
Japan Audiological Society
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.289-294, 2011

Auditory neuropathy spectrum disorder (以下ANSDと略) は, 耳音響放射が正常であるにもかかわらずABRが無反応あるいは異常となる病態であり, 聴力に比し語音聴取力が低いことが特徴とされている。ANSDの遺伝的原因の解明が近年進んできており, 遺伝的原因として<I>OTOF</I>遺伝子変異などの報告がある。ANSDに対する根本的治療は確立されておらず, 人工内耳の効果や適応などについてまだ意見の一致がみられていない点が多い。今回我々は<I>OTOF</I>遺伝子変異を認めるANSDの乳幼児3症例に対し人工内耳埋込術を施行し, その臨床経過, 装用効果について検討したので報告する。3症例ともDPOAE両側正常, ABR両側無反応であり遺伝子検査にて<I>OTOF</I>遺伝子変異を認めた。補聴器装用効果は不十分であったが, 人工内耳装用により良好な聴取能が得られており言語も発達してきている。
著者
三上 純一
出版者
Japan Audiological Society
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.764-771, 1993

補聴器誘導コイル入力の周波数特性はマイク入力特性と差があり, 特に低音域感度の低い傾向がある。 低音部の増幅を必要とする難聴者の中には磁気ループを使用すると音質の違いに不快を感じる者も多い。 そこで, 感度不足を補正できるよう低周波数帯域の磁波を大きくできる磁気ループ回路を開発し, 誘導コイル入力の周波数特性をマイク入力特性にそろえる実験をした結果, 多くの器種が満足できる範囲内に補正できることを確認した。 応用例として試作した磁気ループ内蔵電話機と小型磁気ループを平均聴力レベル80dBから105dBまでの難聴者 (年齢5歳以上で, 補聴器を十分に活用し会話音域を広範囲に聞き取れている者) に試した結果では, 音質とS/Nの良さが確認された。 回路にトリマーを加えた小型磁気ループでは, 聴きたい音源ごとに磁波特性の微調整が可能で従来では考えられなかった性能も確認できた。
著者
松田 圭二 牛迫 泰明 春田 厚 東野 哲也 安達 裕一郎 深江 陽子 堀之内 謙一 森満 保
出版者
Japan Audiological Society
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.187-192, 1992
被引用文献数
1

騒音レベル80-100dB (A), 中心周波数250Hz-4kHzの某新聞社輪転機室就業員24人の聴力レベルの変動を8年間にわたり追跡した。 24人中21人は聴力レベルに大きな変化なく, 年齢による生理的聴力損失にほぼ添う経過であった。 3人にc<sup>5</sup> dipがみられたが, 難聴の発現, 進展時期に関しては個人差が大きく, 一定の傾向はなかった。 4kHzと8kHzの聴力レベルは, c<sup>5</sup> dipのある者で各年ごとのばらつきが大きく, 聴力正常な者ではばらつきが小さかった。 また, 2例にc<sup>5</sup> dipの深さに左右差があった。 これらはこの個体が 「c<sup>5</sup> dipが始まり固定するまでの期間内」 にあること, 言い換えれば内耳損傷がなお現在進行していることを示すものと思われた。 また, 耳栓使用で騒音性難聴発生が抑制できることが改めて確認できた。
著者
田中 美郷
出版者
Japan Audiological Society
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.383-384, 1993
被引用文献数
2
著者
鯨井 和朗 大西 信治郎 小河原 昇 中川 千尋 小川 克二
出版者
日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.133-137, 1983 (Released:2010-04-30)
参考文献数
8

The results of survey of tinnitus in hearing impaired children of primary and junior high school pupils in Yokohama City are reported. The questionaires were obtained from teachers of 6 special classes for training of the hearing impaired pupils.58 children with 75dB of the mean hearing level in the primary (6 to 12-year-old) and the jounior high (12 to 15-year-old) schools were inquired about tinnitus. In a sample of the children aged 6 to 8, tinnitus was found in only one patient because of the difficulty to make them understand about tinnitus. In the other sample, 11 patients with tinnitus (31%) were found. Among the 12 cases, only 2 cases had constant tinnitus and the remainder had intermittent tinnitus. Tinnitus were expressed as /pi:/ by 8 cases. Many children claimed the tinnitus was annoying.
著者
水越 治 斉藤 等 浅野 登
出版者
日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.16, no.5, pp.265-266, 1973 (Released:2010-04-30)
参考文献数
4
被引用文献数
1
著者
朝隈 真一郎
出版者
Japan Audiological Society
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.156-161, 2006
被引用文献数
2

急性低音障害型感音難聴の病因と内耳に起こっていると思われる病態について, この疾患の特徴をもとに推理した。病因としては, 我が国の経済の破綻による社会全体を覆う不安と緊張, それによるストレスが原因ではないかと推察した。内耳に起こっているであろう病態については, 内リンパ水腫による基底板振動の変化, 内耳液の浸透圧の変化, および蝸牛第2回転の外放射状動脈の血行障害の可能性を挙げた。これらの病因と病態をもとに, 治療に用いられるべき薬剤を示唆した。1987年から2004年までの18年間に著者の医院を受診した本疾患の患者数の変遷, 治療成績の動向を示した。現在我が国の経済は立ち直りつつあり社会の混乱は落ち着きを取り戻しつつある。しかし本疾患の患者はなお増加し続けている。先に推理した病因とは別に, より根の深い社会病理学的な問題が介在している可能性についても言及した。
著者
山川 卓也 芳川 洋 安藤 一郎 市川 銀一郎
出版者
Japan Audiological Society
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.284-290, 1995
被引用文献数
1

剣道愛好家の中に, 難聴者が多いと言われている。我々は剣道難聴の原因を検討するために, 面打ち時の竹刀の打撃音, 頭部の衝撃 (振動加速度レベル), 及び両者の周波数分析を行った。また実験には当大学剣道部員 (三段) 2名の協力を得て, 竹刀の打撃時の強さ, 部位をなるべく一定にするよう練習をした後に行った。その結果, 竹刀の打撃音圧は面紐を強く縛った場合が120dB以上で最も大きく, エアークッションをいれるとやや小さくなった。また振動加速度レベルも面紐を通常よりも強く縛った場合が77dB以上で最も大きく, エアーや羽毛のクッションをいれた場合に振動の抑制が著明であった。以上より, 竹刀による打撃により難聴が発症する可能性が十分に示唆され, 今回我々の推奨した緩和材を用いれば打撃音圧と衝撃が減少させることが可能であった。
著者
菅 文朗
出版者
Japan Audiological Society
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.138-144, 1972

Comparative studies of congenitally deaf human and white cats with partial albinism of the eyeball were made. Pathology of inner ear lesion in man was explained by electrophysiological and histopathological data obtained from the deaf white cat. Absence of the endocochlear resting potential in the deaf white cat indicated an ionic alternation of endolymph. A cochleo-saccular degeneration of Scheibe's type which observed in the white cat may be produced by this ionic change. Cochlear lesion in the deaf human was attributed to the same pathology. Majority of the human cases had canal paresis while the histopathologic observation of the deaf white cat demonstrated normal structures of the semicircular canals and the utricle. Reasons of this discrepancy have not been explained. Inheritance of deafness in the white cat was a dominant autosomal mode while majority of the human cases did not show the dominant inheritance.