著者
白川 誠 石川 陽 渕上 拓朗 田中 恵
出版者
一般社団法人 日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.104, no.7, pp.351-362, 2022-12-28 (Released:2023-01-21)
参考文献数
61

都市近郊二次林における外生菌根菌(以下,菌根菌)の種多様性を明らかにするために,東京都青梅市のコナラを優占樹種とする二次林において,ラインセンサスおよびプロットサンプリングを実施し,子実体436個,菌根327根端,菌核3個の計766サンプルを採取した。形態分類およびrDNA-ITS領域を対象とした分子生物学的解析の結果,23科41属159 MOTUの菌根菌が同定され,林内にはテングタケ属,イグチ科,カラハツタケ属,ベニタケ属,ロウタケ属,ラシャタケ属が広く分布していることが確認された。一方で,ショウロ属やヌメリイグチ属など,センサスルート上やプロット内の各所において局所的に分布する菌種も多数確認された。これらのことから,人為的攪乱を受ける比較的小面積の二次林においても多様な菌根菌種が生息していることが明らかになった。また,プロットから得られた菌根菌を対象とした階層クラスター分析では,各プロットは共通の頻出群を有するものの,局所的に分布する科によって特徴づけられた。樹種構成の相違や人為的攪乱,林内に存在する多様な微地形といった要因が群集組成に影響を及ぼしていることが示唆された。
著者
山本 優一 石川 陽介
出版者
関西病虫害研究会
雑誌
関西病虫害研究会報 (ISSN:03871002)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.17-21, 2018-05-31 (Released:2018-09-01)
参考文献数
14
被引用文献数
10 6

2015年に大阪府内においてバラ科樹木の害虫として世界的に知られているクビアカツヤカミキリ(Aromia bungii)が発見された。そこで,2015年から2017年に大阪府域において本種の宿主であるバラ科樹木を対象に被害状況を調査した。調査地において被害木は年々増加し,いくつかの被害木はおそらく本種の加害が原因で枯死した。サクラにおいては根元周が大きな木ほど被害を受けていた。一方で,同じ被害程度のサクラを根元周別に比較すると,大きな木ほど樹勢への影響を受けにくく,小さな木ほど枯損しやすい傾向にあった。被害木の被害部位の最高地上高は,大部分の被害木が地上から 2 mより低かった。また,被害を受けてからの年数が経過した被害木ほど被害部位の最高地上高は高かった。
著者
佐々木 均 石川 陽司 助廣 那由
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.311-315, 2009-12-15 (Released:2016-08-06)
参考文献数
17
被引用文献数
2

The tabanid fly fauna and their seasonal prevalence were surveyed with a mosquito-net and NZI traps baited with 2kg of dry ice at 2 municipal pastures in Shibetsu and Rumoi, of north-western Hokkaido, Japan from June to September in 2005 and 2006. A total of 467 flies of 10 species in 5 genera were captured at Shibetsu, and 956 flies of 13 species in 6 genera at Rumoi. At Shibetsu, Tabanus nipponicus was the dominant species followed by Hybomitra distinguenda and T. trigeminus. Tabanus nipponicus was also the dominant species at Rumoi, followed by T. rufidens and T. chrysurus. Hirosia sapporoensis was abundantly captured in Rumoi but not collected in Shibetsu. The fly numbers showed a peak in late July at Shibetsu. In Rumoi, 2 peaks were observed in late July and late August probably due to the effects of rain fall during the collection day in early August.
著者
齋藤 彰 石川 陽子 宮村 友輔 十河 健司 中島 匡貴 赤井 恵 桑原 裕司 平井 義彦
出版者
公益社団法人 日本表面科学会
雑誌
表面科学 (ISSN:03885321)
巻号頁・発行日
vol.28, no.8, pp.414-420, 2007-08-10 (Released:2007-08-18)
参考文献数
32
被引用文献数
2 1

The brilliant blue luster of Morpho butterflies is produced by their scale that does not contain a blue pigment. The origin of the coloration can be attributed to an optical effect on a specific nano-structure, which can explain both of the high reflectivity and the mystery that the blue appears from wide angle despite an interference effect. We have successfully reproduced the Morpho-blue by fabricating nano-structure by extracting the principles of the coloration. The reproduced Morpho-type materials are expected to serve to various industrial applications. However, the process to fabricate the nano-structure spends too much time and cost using conventional lithography. To solve this problem, nano-imprint lithography was applied to fabricate the nano-structure. As a result, Morpho-color was replicated successfully in low cost and short time. Its optical properties were estimated by optical measurements, and found to show the basic characteristics of the original Morpho-blue.
著者
阿保 勝之 秋山 諭 原田 和弘 中地 良樹 林 浩志 村田 憲一 和西 昭仁 石川 陽子 益井 敏光 西川 智 山田 京平 野田 誠 徳光 俊二
出版者
日本海洋学会 沿岸海洋研究会
雑誌
沿岸海洋研究 (ISSN:13422758)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.101-111, 2018 (Released:2020-02-12)
参考文献数
27
被引用文献数
4

1972~2013年の約40年間にわたる浅海定線調査データをもとに,瀬戸内海における栄養塩濃度などの水質や海洋環境の長期変化傾向を明らかにした.水温は温暖化の影響で上昇しており,特に秋季の上昇率が高かった.透明度は,大阪湾を除く瀬戸内海では1990年代以降,大阪湾では2000年以降に上昇した.瀬戸内海の栄養塩濃度は減少傾向であった.DIN濃度は,大阪湾を除く瀬戸内海では1970年代に急激に低下した後,2000年代以降に再び低下が見られた.大阪湾では,1970年代の低下は見られなかったが,1990年以降に大幅な低下が見られた.DIP 濃度は,1970年代に高かったが1980年頃に低下し,大阪湾を除く瀬戸内海ではその後は横ばい,大阪湾の表層ではその後も低下を続けた.栄養塩濃度の低下については,陸域負荷削減が大きく影響しているが,底泥や外海からの供給量低下や近年の全天日射量の増加も栄養塩濃度の低下に影響を及ぼしていると考えられた.
著者
石川 陽介 桑山 健二
出版者
関西病虫害研究会
雑誌
関西病虫害研究会報 (ISSN:03871002)
巻号頁・発行日
vol.62, pp.47-53, 2020-05-31 (Released:2020-09-01)
参考文献数
15

Haplothrips nigricornis Bagnallは,我が国では,2019年現在,京都府,大阪府,兵庫県,和歌山県の数種のキク科雑草で発生が確認されている。本種は,詳しい生態が明らかとなっていないため,今後の研究の基礎的資料とするため,発生状況調査を実施した。大阪市において,キク科植物を対象にアザミウマ類の個体数調査及び本種の発生消長調査を実施し,併せて,本種の食性及び植物への加害性を調査するため,同地域において7科23種の植物を対象に放虫調査を実施した。調査の結果,クダアザミウマ科1属及びアザミウマ科6属が採集された。本種は最も多く採集され,ナルトサワギクから特に多く見つかった。本種の発生消長は,ナルトサワギクの開花率と連動している傾向が見られた。また,アザミウマ科の種と比較して,飛翔による移動性は高くないことが示唆された。本種は,ナルトサワギクを好適寄主としており,どのキク科植物でも繁殖できるとは限らず,主として本植物の花上で生活環を完結していると推察される。また,対象としたいずれの植物においても本種による植物への明確な加害は確認されなかった。
著者
石川 陽介 森下 一樹 寺島 裕雅 山城 真里子 木村 州作 片山 幸広 出田 一郎 平山 統一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48101276, 2013

【はじめに】大動脈瘤に対する手術療法においてステントグラフト内挿術(endovascular aneurysm repair;以下、EVAR)は2006年7月に腹部用、2008年3月に胸部用が薬事承認となった。EVARは低侵襲の手術であり、術後リハビリテーション(以下、リハビリ)介入が必要ない場合も多く存在するという見解もある。しかし、大動脈疾患患者は虚血性心疾患患者と比較し、高齢でしかも併存症、合併症を有していることが多いという報告もある。また、我々が調べ得た範囲では本邦でのEVAR 術後のリハビリに関する報告は散見されるのみであった。当院でのEVAR術後のリハビリの現状をまとめ、理学療法介入の必要性について検討した。【方法】2011年10月1日から2012年9月30日までの間に当院にて腹部大動脈瘤(abdominal aortic aneurysm;以下、AAA)又は胸部大動脈瘤(thoracic aortic aneurysm;以下、TAA)に対するEVAR目的に入院された患者で、術後リハビリ依頼があった連続48例(男性36例、女性12例、平均年齢78.85±5.72歳)とした。当院でのEVAR術後の設定在院日数(術当日含む7日間)の1.5倍である11日以上を要した例を遅延例とし、それ以外の例を順調例とし、診療録より後方視的に検討した。【倫理的配慮、説明と同意】当院では、倫理的配慮として入院時に御本人、又はその御家族に個人情報保護に関する説明をしており、個人が特定されないことを条件として院内外へ公表することに同意を得ている。【結果】EVAR 48例中、手術部位別ではAAA38例(男性30例、女性8例、平均年齢78.66±6.15歳)、TAA10例(男性6例、女性4例、平均年齢79.60±3.53歳)であった。順調例は43例(AAA37例;平均年齢78.49±6.14歳、TAA6例;平均年齢80.33±3.45歳)であり、遅延例は5例 (AAA1例;年齢85歳、TAA4例;平均年齢78.50±3.35歳) であった。入院前ADLはBarthel Index(以下、BI)が100点を自立、95点以下をADL低下とし、順調例は自立39例(AAA33例、TAA6例)、ADL低下4例(AAA4例、TAA0例)、遅延例は自立2例(AAA1例、TAA1例)、ADL低下3例(AAA0例、TAA3例)であった。離床開始日は全体2.17±0.75日で、順調例2.07±0.25日(AAA37例;2.05±0.23日、TAA6例;2.17±0.37日)で、遅延例3.00±2.00日(AAA1例;2日、TAA4例;3.25±2.17日)であった。術後平均在院日数は全体8.96±5.08日(中央値8.00日)、順調例7.84±0.83日(中央値8.00日)、遅延例18.60±11.76日(中央値12.00日)であった。遅延理由としては、術後合併症(仮性動脈瘤、下肢虚血による大腿切断等)や転院調整によるものであった。転帰は自宅復帰39例(AAA34例、TAA5例)、転院9例(AAA4例、TAA5例)で、転院率はAAA10.5%、TAA50.0%であり、TAA患者の転院率が高かった。転院の理由としては継続加療(リハビリ)目的が2例、療養目的が7例であった。入院前ADLが低下していたAAA4例 (術後平均在院日数8.00±0.71日)の転帰は自宅復帰2例、転院2例であり遅延例は認めなかった。一方、TAA3例(術後平均在院日数22.00±14.14日)は全て遅延例であり、転院していた。【考察】EVARは低侵襲な手術であり、術後リハビリ介入が必要ない場合も多く存在するという見解もある。本研究においては特にTAAの患者で入院前ADLが低下している症例では術後在院日数の長期化や自宅復帰困難な症例を多く認めた。一方、AAAは術後順調例が多く、殆どの症例が自宅復帰可能であったが、少数の症例では入院前ADLが自立しているにも関わらず、術後在院日数が長期化する症例も存在していた。EVAR 術後におけるAAAの多く(38例中34例;89%)は自己完結型の治療が可能であるが、TAAには転院を必要とする例(10例中5例;50%)が多いため、TAAにおいては地域完結型の包括的心臓リハビリを提供する必要性があり、TAAでは術前を含めたより早期かつ密接な理学療法介入が必要であると考えられた。AAAにおいては入院前ADL状況から術後経過を予測することは困難であり、希に合併症などにより在院日数の長期化も認めるため、手術部位に関わらず理学療法介入は必要である。【理学療法学研究としての意義】EVAR術後は手術部位に関わらず、全ての症例に対してより早期かつ密接な理学療法介入によって適切なアウトカムの設定や円滑な地域完結型の包括的心臓リハビリの提供が出来る可能性が示唆された。
著者
石川 陽一郎 巳波 敏郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.277-279, 1960-02-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
8
被引用文献数
1

アルカリ溶液中でのメチルエチルケトンとホルムアルデヒドの反応を動力学的に研究するため,メチルエチルケトンに対するホルムアルデヒドの第1段,ならびに第2段付加反応の速度定数をそれぞれ測定し,後者が前者よりも約4倍の大きさをもつことをあきらかにした。その結果反応生成物の中でもっとも重要なβ-メチル-γ-ケトブタノールを収量よく得るためにはホルムアルデヒドに対し, 大過剰のメチルエチルケトンを使用することによってジメチロール化合物の生成をおさえることが必要であることがわかった。
著者
齋藤 彰 宮村 友輔 石川 陽子 村瀬 淳一 赤井 恵 桑原 裕司
出版者
一般社団法人 日本真空学会
雑誌
Journal of the Vacuum Society of Japan (ISSN:18822398)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.218-223, 2009 (Released:2009-05-29)
参考文献数
29
被引用文献数
3

Conspicuous metallic blue of Morpho butterflies is well known and attract interest because it is a brilliant luster of natural beings. The blue is produced by their proteins, which are almost transparent without pigment. The origin of the coloration with high reflectivity (>~60%) is then attributed to an interference effect based on a periodic structure. However, the interference contradicts the blue that is maintained in too wide angular range (>±40° from the normal). This mystery has recently been explained with a specific multilayer, which is a fine combination of regular and random structures at nanometer scale. We proved this hypothesis successfully by emulating the 3D structures by deposition of multilayer film on a nano-patterned substrate. Such artificial structural color can be applied to various industries, because it makes colors qualitatively impossible by pigment, and resistant to fading due to chemical change over longtime. Also we developed a high throughput nano-patterning process by use of nano-imprinting method, and succeeded in controlling the optical properties both in angular and wavelength distribution.
著者
奥島 美夏 永井 史男 金子 勝規 池田 光穂 石川 陽子
出版者
天理大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本年度は引き続きASEANにおける看護・介護人材の調査を中心に進めた。まず、奥島はマレーシア、ブルネイ、インドネシア、ベトナムで現地調査を実施した。本プロジェクト初のマレーシア・ブルネイの調査では、保健省・看護師協会・大学などを訪問し、政策方針、外国人看護師の受け入れ状況、看護教育、卒業後の進路などについてインタビューを行った。両国はインドネシアと同じマレー語圏だが主に受け入れ国であり、しかし近年は現地看護師のシンガポールや中東への流出にも苦しんでいることがわかった。金子はタイ、カンボジアにおいて現地調査を実施し、医療政策や病院経営などについて調査を進めた。また、インドネシアにも奥島の調査に合流し、地方部(東カリマンタン州)における保健医療の現状を探るため、保健所(地域保健センター)、助産院、看護学校、現地民の自宅介護などについて参与観察・インタビューした。地方部では海外就労の機会は少ないが、結婚・出産・育児などのライフステージに合わせて大学や大学院への進学や、昇進にむけたプロモーション(地方勤務)などを行い、長期的な勤務を続けていくことが可能であることがわかった。永井は金子、および研究協力者の河野あゆみ教授(大阪市立大学看護学部)と、タイにおいて共同調査を実施し、医療政策や看護教育のほか、介護制度の普及と自治体の役割について調査した。なお、同教授には次年度の成果論集にて、主に看護教育面に関する報告・執筆などでも協力を依頼する予定である。さらに日本国内では、石川がEPA看護師や所属機関関係者へのインタビュー、池田は多様な保健医療の在り方と今後の動向について講演を行った。
著者
奥島 美夏 池田 光穂 石川 陽子 鈴木 伸枝 永井 史男 高畑 幸 服部 美奈
出版者
天理大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-11-18

本研究は保健医療人材の国際移動に関する学際共同研究であり、日本・東南アジア間で2008年より開始した経済連携協定(EPA)による外国人看護師・介護福祉士候補の送り出し・受け入れを軸として、送出諸国(インドネシア・ベトナムなど)の保健医療・教育・移住労働を先進モデル国であるフィリピンと比較つつ課題を分析した。送出諸国は、1990年代の中東・英米での受け入れ開放政策や2015年末のASEAN経済統合をうけて人材育成・学歴引き上げを急ぐが、受け入れ諸国との疾病構造や医療・教育制度の相違などから必ずしも即戦力にはならず、ポストコロニアル的紐帯が薄い日本では職場適応・定住化にも困難があるとわかった。