著者
和達 三樹
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.36, no.11, pp.786-793, 1981-11-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
18

"解けるモデルは皆同じである." 古典論においても量子論においても, ソリトン系は無限個の保存量を持ち, ソリトンの振舞には共通の性質がある. また, 古典論において成功を収めた逆散乱法は量子場の理論にも適用でき, さらには格子系の統計力学における転送行列の方法をより簡単な形にする. "解けるモデルは皆同じである" という標語は, 完全積分可能系の「普遍性」とソリトン的自然観を提示しているのである.
著者
中山 康之 伊藤 真
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.38, no.10, pp.787-793, 1983-10-05 (Released:2008-04-14)

原子を形づくる原子核と電子の間の空間には何が存在するだろうか. そこにはもはや他の分子や原子が入り込めないことを我々はよく知っている. そこにはどんな物も存在し得ない, まさしく虚とか空とか言えそうな場所である. 我我の物理学ではその空間は負のエネルギーをもった電子で満たされていると解釈し, それを真空と呼ぶ. この真空は外からエネルギーを与えれば簡単に確認出来るが, 原子番号が173をこえるような超重原子では外からエネルギーを与えなくても, 真空から自発的に電子-陽電子対が発生して真空が崩壊する. これは真空中に実在の電子が出来ることを意味し, 真空の全く新しい側面である. こんな理論的予測を実証しようとする実験が永い間続けられている.
著者
上原 正三
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.40, no.8, pp.627-634, 1985-08-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
33

重力を含む相互作用の統一理論について, 最近の超重力理論及び超弦理論を中心に解説する. カルツァ・クライン理論の解説からはじめて, その考え方が現在精力的に研究されている超重力及び超弦理論に用いられていることを見る. 重力理論では常に問題となる紫外発散についても, これらの新しい理論では解決されるのではないかという期待が高まっている.
著者
中西 秀 市川 正敏
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.71, no.7, pp.480-483, 2016-07-05 (Released:2016-10-04)
参考文献数
5

話題―身近な現象の物理―コーヒーの湯気:水面に浮遊する微小水滴のダイナミクス
著者
菅野 礼司
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.20, no.12, pp.799-801, 1965-12-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
23
著者
上野 豊 浅井 潔 高橋 勝利 佐藤 主税
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.57, no.8, pp.568-574, 2002-08-05 (Released:2011-02-09)
参考文献数
21

単粒子解析は, 単離されたタンパク質などの生体高分子を電子顕微鏡で直接観察し, 3次元像再構成によって立体構造の解析を行う手法である. 膜タンパク質などの結晶化が困難なタンパク質の構造解析だけでなく, 構造変化や分子集合体の構造研究に活用されている. ここでは, 計算機による画像処理を駆使した手法について解説し, 最近の構造解析の紹介と, 解析における課題について議論する.
著者
金 鮮美 寺井 弘高 山下 太郎 猪股 邦宏
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.77, no.12, pp.805-810, 2022-12-05 (Released:2022-12-05)
参考文献数
32

超伝導量子ビットは,電子や原子,イオンや光子といった微視的粒子からなる量子ビットとは異なり,巨視的な電気回路上に発現する量子力学的重ね合わせ状態やエンタングルメントの制御を可能とした「人工原子」の一種である.これは主にアルミニウム(Al)ベースのジョセフソン接合により構成され,回路設計の改良や作製プロセスの改善・工夫など様々な研究を経て,コヒーレンス時間は20年程かけて当初のそれよりも約5桁向上した.しかしながら,超伝導量子ビットの心臓部であるジョセフソン接合には,酸化絶縁膜として非晶質酸化アルミニウム(AlOx)が含まれるため,そこに存在する欠陥二準位系がデコヒーレンス源として作用することが懸念されている.したがって,さらなるコヒーレンス時間の改善に向け,ジョセフソン接合材料の改良が必要不可欠と考えられる.このようなジョセフソン接合材料の筆頭候補となり得るのが,窒化物系超伝導体である窒化ニオブ(NbN)と絶縁膜となる窒化アルミニウム(AlN)の組み合わせである.エピタキシャル成長技術によって作製される全窒化物NbN/AlN/NbNジョセフソン接合では,絶縁膜として機能するAlNも結晶化しているため,非晶質AlOx中に存在するような欠陥二準位系に起因するデコヒーレンスの抑制が期待される.また,NbNの超伝導転移温度は約16 Kであり,Alのそれ(約1 K)と比較して一桁高いことから,Alベースの超伝導量子ビットよりも高温動作が期待できること,さらに,デコヒーレンス源の一つである準粒子の励起に高いエネルギーが必要となるため,その要因となる熱や赤外光に対する外乱に強固になると予想され,より安定動作可能な超伝導量子ビットの実現が期待できる.異種材料間におけるエピタキシャル成膜技術では,格子定数がほぼ等しいという条件が前提となる.つまり,NbN/AlN/ NbN接合を基板上にエピタキシャル成長させるためには,NbNとほぼ同じ格子定数を持つ酸化マグネシウム(MgO)基板を用いることがこれまでの定石であった.ところが,MgOは高周波領域における誘電損失が大きく,MgO基板上のNbN/AlN/NbN接合を用いた超伝導量子ビットでは,コヒーレンス時間が0.5 μs程度とMgO基板の誘電損失に大きく制限される結果となっていた.我々は,今回,この問題を解決するためにTiNバッファー層を用いることでシリコン基板上に全窒化物NbN/AlN/NbN接合からなる超伝導量子ビットを実現し,平均値としてエネルギー緩和時間(T1)16.3 μs,位相緩和時間(T2)21.5 μsのコヒーレンス時間を達成した.これはMgO基板上に作製された従来の全窒化物超伝導量子ビットと比較して,T1は約32倍,T2は約43倍と一桁以上の飛躍的な改善を示す結果である.窒化物系超伝導体薄膜のエピタキシャル成長技術と積層型ジョセフソン接合作製プロセスは,斜め蒸着によるAlベースのジョセフソン接合作製プロセスでは実現不可能な三次元積層構造も比較的容易に作製可能となり,高度な半導体プロセスとの相性も良いことから,量子回路の設計に大きな自由度と可能性をもたらすことが期待される.
著者
船木 靖郎
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.77, no.9, pp.602-610, 2022-09-05 (Released:2022-09-05)
参考文献数
46

有限個の核子(陽子と中性子)が強く自己束縛した系である原子核は,核子が空間的に十分詰まった密度の飽和性を示す一方で,核子間2体力が良い近似で平均場に繰り込まれることも知られている.フェルミ粒子である核子が次々にエネルギー軌道を占有した殻模型構造は,この平均場構造の代表例であり,基底状態に代表される飽和密度領域での原子核構造の基本的性質として理解されてきた.そのような通常の飽和密度領域から離れ,より低密度領域で起こる主要な現象の一つが,クラスター化である.核子の媒質中で複数の核子集団が束縛状態を作りサブユニットとして析出する現象である.このようなクラスター化現象は,原子核,無限個の核子からなる核物質系を問わず,核子多体系一般に低密度領域で普遍的に存在することが知られている.そのようなサブユニットとしての安定な最小単位はα粒子(ヘリウム原子核4He)である.α粒子はボーズ統計に従うことから,核物質系でのαクラスター化は同時にボーズ–アインシュタイン凝縮という観点からも注目を浴びることになった.原子核でのαクラスター構造は,古くは1930年代から調べられてきたが,2000年代になり核物質系での研究に触発される形で,αクラスターのボーズ凝縮という観点から研究されるようになった.その結果特に,有名なホイル状態や16O核の4α分解しきい値近傍の励起状態で,核子すべてがαクラスターとして分解し,かつそれらがすべてガスのように互いの相関無く自由に運動し,同一の最低エネルギー軌道を占有するというα凝縮状態が実現されていることが分かってきた.一方で,このようなα凝縮状態は,原子核中に出現する数多くのクラスター構造状態の中では特別な状態であると考えられた.クラスターが空間局在し,その平衡点周りにゼロ点振動しているようなもの,というのが他の大多数のクラスター構造状態に対する基本的理解であった.この典型例は,20Neの16O+αクラスター構造状態,α直線鎖状態等であり,20Neの16O+αクラスター状態では,対応する正負パリティの回転帯スペクトルが観測されており,それらを正しく再現するためには,まさにクラスターの空間的局在化が必須条件であった.それにもかかわらず2010年代に入り,α凝縮状態のようなクラスターのガス的構造に立脚した,非局在型クラスター模型波動関数が,16O+αクラスター構造を完璧に記述することが示されたのである.串刺し団子のような形態と考えられてきたα直線鎖状態に対しても同様であった.これは一次元上でのガス的α凝縮という新奇な構造を示すものである.これらの事実が明らかになるにつれ,α凝縮構造からその他多数のクラスター構造を統一的に記述するための重要なパラメータの存在が浮かび上がってきた.核子の殻模型構造を持った基底状態に対し,そこに埋め込まれたクラスタ―間の相対自由度が励起され,新たにクラスターによる平均場が形成される.このクラスターポテンシャルは,あたかも構成クラスターを内包する「器」のように解釈でき,その「器」の形状こそが重要なパラメータであることが分かってきた.そして基底状態から出発し,α凝縮状態へと至るクラスター構造形成発展の道筋は,この「器」の膨張発展として記述できる可能性が示唆されている.
著者
作道 直幸 酒井 崇匡
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.77, no.8, pp.535-540, 2022-08-05 (Released:2022-08-05)
参考文献数
29
被引用文献数
1

ゼラチン液が固まりゼリーになる,豆乳が固まり豆腐になる,牛乳が固まりヨーグルトになる.これらの現象は,ゲル化と呼ばれる.ゲル化は,溶媒中に分散する高分子がつながり,大量の溶媒を保持する巨大な高分子網目構造からなる固形物である「高分子ゲル」を形成することで起こる.高分子ゲルは,やわらかくウェットで,生体軟組織に近い性質を持つ.そのため,食品だけでなく,ソフトコンタクトレンズ・紙オムツの吸水剤・止血剤・癒着防止剤など,生体に接触して用いられる医用材料としても幅広く利用される.高分子ゲルを食品や医療に応用する際,保水力や吸水力を決める浸透圧が重要となる.例えば,ヨーグルトを作ると,ホエー(乳清)と呼ばれる水分が染み出る.この現象は,ゲル化の進行によって系の浸透圧が低下したために起こる.ゲル表面からの水の染み出し(離水)は,食品の食感に大きく影響するだけではなく,摂食・嚥下障害者(口の中のものを上手く飲み込めない障害)用の嚥下食において,食べ物の誤嚥により細菌が気管支や肺に入ることで発症する致命的な誤嚥性肺炎の要因になる.そのため,ゲルの浸透圧の理解・制御は,応用上も大きな需要がある重要な問題である.ところが,意外なことに「ゲル化の進行に伴う浸透圧の低下を決める物理法則は何か?」という基本的な問題について,実験結果を定量的に予測できるほどの理解はされていなかった.そもそも,ゲルの物性について定量的に理解されていることは驚くほど少ない.その理由は,通常のゲルは,作製プロセスに依存して決まる不均一な高分子網目構造を持つために実験の再現性が低く,網目構造の制御も不均一性の影響の評価も困難なためである.我々は極めて均一で制御可能な網目構造を持つ高分子ゲル(テトラゲル)を用いることで,この不均一性の問題を克服した.また,動的なゲル化の進行過程を模倣した「静的なレプリカ」を系統的に作製することで,ゲル化の進行に伴う浸透圧の低下を高い精度で測定することに成功した.我々は得られた大量の精密な測定データを元に「ゲル化の進行に伴う浸透圧の低下を説明する物理法則はなにか?」という問題に取り組んだ.この問題を解く鍵は,直鎖(つまり,枝分かれの無い)高分子溶液の浸透圧における状態方程式の普遍性(ユニバーサリティ)であった.浸透圧の普遍性は,1970年代から80年代にかけて,多くの実験および理論研究により確立された.その発端となったのは,磁性体の磁気相転移を想定したIsing模型(n=1)・XY模型(n=2)・ハイゼンベルグ模型(n=3)などのO(n)対称なスピン格子模型において,n→0の極限は,高分子鎖の格子モデル(自己回避ウォーク)に対応するという事実であった.ドゥジェンヌ博士はこの高分子・磁性体対応を用いて,溶媒中の高分子鎖の臨界指数をくりこみ理論で解析した.その後,臨界指数のみならず,直鎖高分子溶液の浸透圧についても普遍的状態方程式で説明できることが理論と実験で示された.我々は,高分子ゲルが「大量の溶媒に高分子網目が溶けたもの」であることから,高分子溶液の普遍的状態方程式は,ゲル化の進行過程でも成り立つと着想した.そして,ゲルの浸透圧の測定データに基づいて,ゲル化の進行に伴う浸透圧の低下を,普遍的状態方程式で説明することに成功した.極めて均一で制御可能な網目構造を持つテトラゲルを用いて,浸透圧のみならず,弾性,膨潤ダイナミクス,破壊などの様々な高分子ゲルの物理が解明されつつある.高分子ゲルの基礎物理の全貌が明らかになる日も近いと期待される.
著者
梅原 さおり 吉田 斉
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.77, no.8, pp.514-522, 2022-08-05 (Released:2022-08-05)
参考文献数
42

我々の宇宙はなぜ反物質がなく物質でできているのか? 物質はどこからきたのか? これは,「物質優勢宇宙の謎」と言われる我々がまだ解明できていない大きな謎である.この謎を解明するかもしれない鍵が,「ニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊」という原子核の崩壊事象にある.この「反物質」とはなにか? 我々の身の回りの物質は,粒子で構成されている.陽子,中性子,電子はいずれも粒子である.一方,我々の宇宙に存在する粒子には,同じ質量,電気的に反対の性質を持つ反粒子もある.反物質は,この反粒子から構成されるものをいう.さて,宇宙初期には,粒子と反粒子が同量存在していたはずである.ビッグバン直後の高温高密度状態で,莫大なエネルギーは粒子反粒子ペアを生成し,またそのペアは対消滅してエネルギーとなるからである.しかし,その後,何らかの物理法則により,粒子と反粒子の量のバランスが崩れた.そして粒子反粒子ペアは対消滅し,エネルギーになる.結果,現在の宇宙は物質から成り立つ世界となっている.この「何らかの物理法則」が何か,はまだ解明されていない.多くの理論研究者が,この謎を説明できるシナリオを研究している.その中でも有力なシナリオの一つが,レプトン数生成(レプトジェネシス)というシナリオである.ここでは,物質と反物質の量が同量でなく非対称であることを,素粒子の一種レプトンを用いて説明している.このレプトンと反レプトンが同量でなく非対称になったから,現在の物質と反物質が非対称になった,とするものである.「ニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊」は,レプトンと反レプトンが非対称になる条件(レプトン数保存則の破れ)を満たすときに起こりえて,かつ,現在の世界で観測できる事象である.さて,この「ニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊」は1939年に提案された.当時は「物質優勢宇宙の謎」と関わりがあるとは考えられておらず,一つの非常に稀な原子核崩壊事象として研究された.この事象を観測するべく,鉱物中の元素の同位体比を測定する地球化学的観測が始まった.その後,放出される電子のエネルギー観測による測定も,原子核素粒子研究者によって試みられた.そして宇宙素粒子論の観点からも前述のレプトジェネシスが提案されることで,「レプトン数の破れ」を検証するこの事象の重要性が認識された.素粒子物理分野からも,この事象の観測によってニュートリノの質量の絶対値を得られることから,研究対象として重要視されてきた.このように,原子核研究から始まった二重ベータ崩壊測定は,素粒子研究,宇宙物理研究へ広がり,大きく進展した.日本でも,世界の二重ベータ崩壊測定を現在リードしている「キセノンを用いた二重ベータ崩壊実験」をはじめとして,次世代二重ベータ崩壊測定の研究が進められている.これまでに半減期の下限値として1026年程度の実験結果が得られており,さらに次世代実験計画では1028年の感度を実現できる見込みである.広い分野の研究者を虜にするこの「二重ベータ崩壊」.提案されて80年以上,未観測のままできているが,もうあと2–3年で観測されるか,遅くとも10年程度で観測される兆しが見つかるのではないか,と,今,さらに研究者の注目を集めている.
著者
神部 勉
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.156-164, 2006-03-05 (Released:2022-05-31)
参考文献数
52

独自性のある研究をテーマにして,マクロ物理学の発展の100年を顧みるとき,独創的でしかも国際的にその影響が萎えることのない研究がいくつもある.個人レベルの研究に加えて,大型プロジェクト研究も大きな役割を果たしてきた,わが国での「物理学一般」の研究の展開をみてみる。
著者
川崎 恭治
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.63, no.10, pp.769-774, 2008-10-05 (Released:2017-08-04)

モード結合理論(MCT)が成立した事情について筆者の個人的経験を中心に述べる.以下の記事は主として筆者の記憶に基づいている.したがって記憶違いということもあると思われるがその際はご容赦ねがいたい.
著者
今村 洋介
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.68, no.7, pp.442-449, 2013-07-05 (Released:2019-10-17)
参考文献数
8

M理論は弦理論を統合する基本的な理論と期待されており,M2ブレーンと呼ばれる膜状の物体を基本的構成要素として含む.M理論はいまだその量子論的な定義が知られておらず,M2ブレーンの振る舞いについても理解されていないことが多い.AdS/CFTと呼ばれる双対性を用いることで,N枚重ねたM2ブレーンの自由エネルギーがO(N^<3/2>)に比例することが以前から知られていたが,最近になってようやくこの予言がM2ブレーン上の低エネルギーの励起を表す模型として提案されたABJM模型によって確認された.M2ブレーン,ABJM模型,そして自由エネルギーの計算に用いられる局所化の方法について解説する.