著者
山田 理絵
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
pp.20180515029, (Released:2018-10-29)
参考文献数
53

目的:看護師の直観に基づく意思決定に関する研究の動向を整理し,今後の研究課題を明らかにする。方法:PubMed,MEDLINE,CINAHL,医学中央雑誌Web版を用いて“intuition(直観)” “intuitive” “decisionmaking(意思決定)” “nursing(看護)” “nurses(看護師)”をキーワードに2017年9月までに発表された論文を検索し22件をレビューの対象とした。結果:22件の文献を分析した結果,【直観に基づく意思決定と経験】【看護実践における直観に基づく意思決定】【直観に基づく意思決定を育むストラテジー】の3つのカテゴリーが抽出された。介入研究は見当たらず,探索的研究と記述的研究のみであった。結論:今後は直観に基づく意思決定の思考プロセスの探究のため,他の学問分野と協働しその構造を具体的で簡潔に提示する必要がある。
著者
山田 光子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.1_85-1_91, 2015-04-20 (Released:2016-01-07)
参考文献数
27

目的:入院中の統合失調症患者のセルフスティグマと自尊感情の関係性を明らかにする。対象と方法:Y県3個所の精神科病院に入院中の統合失調症患者約104名に,セルフスティグマ尺度(PDD),自尊感情尺度(SE),抑うつ尺度(CES-D)を用い調査を行った。結果:有効回答は97名(93.3%)で,男性51名(52.6%)女性46名(47.4%),就業経験のある者91名(93.8%),平均年齢52.9(±13.5)歳,平均発病年齢27.5(±11.5)歳,平均罹病期間25.0(±14.7)年,平均入院期間6.1(±7.2)年だった。各尺度の平均合計得点はPDD 30.5(±8.7)点,SE 31.9(±8.9)点,CES-D 14.3(±10.3)点であった。パス解析の結果,セルフスティグマは抑うつ状態と自尊感情の関連性があることを示した。結論:セルフスティグマは,自尊感情に直接的に影響を及ぼさず,抑うつ状態を介して自尊感情に影響を及ぼすと示唆された。
著者
田中 久美子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.1_127-1_137, 2015-04-20 (Released:2016-01-07)
参考文献数
31

本研究は,日本の専門看護師(certified nurse specialist:CNS)が役割を獲得するまでの内面的成長プロセスを明らかにすることを目的に行った。研究協力を得られた11名のCNSを対象に半構造化面接を行い,その内容を質的に分析した。 その結果,対象者のCNSとしての内面的成長プロセスは,時間軸に沿って,①コンフリクトの時期,②精製の時期,③創出の時期,④発展の時期の4段階に分類することができた。対象者は,当初曖昧な役割認識のなかで悩み,周囲に支えられながら,自分自身のCNSとしてのあり方を深くかえりみる作業を繰り返し,やがて役割獲得の感覚を得ていた。そこまでにおおむね3年の月日を要していた。その後も経験と努力を積み重ね,6~10年という時間をかけて,自分なりの確固としたCNSの役割を獲得していた。 この成長プロセスを通して,CNSの大学院教育のあり方の検討,初任者のCNSに対するサポートの必要性,組織とCNSの関係の構築の必要性に関して看護の示唆を得た。
著者
友岡 史沙 前田 ひとみ
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.5_869-5_875, 2020-12-20 (Released:2020-12-20)
参考文献数
48

目的:国内外の文献から医療事故後の当事者サポートについて考察し,日本における効果的な当事者サポート体制への示唆を得る。方法:医中誌Web版を用い「医療事故」「サポート」「対応」をキーワードに抽出した和文献16件,CINAHL,MEDLINE,PubMedを用い「second victim」「support」「medical error」をキーワードに抽出した英文献26件を分析した。結果:当事者は同僚や先輩によるインフォーマルなサポートを求めており,当事者の安寧や成長に繋がっていた。欧米では同僚によるサポートプログラムの研究が進んでいたが,日本では管理者によるサポート研究が主であった。結論:医療事故後のサポートとともに組織の文化的背景が当事者に与える影響も大きかった。同僚であるスタッフへの当事者サポート教育や,組織の文化背景へアプローチするサポート体制が求められる。
著者
田中 美智子 長坂 猛 矢野 智子 小林 敏生 榊原 吉一
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.4_59-4_65, 2008-09-01 (Released:2016-03-05)
参考文献数
18

健康成人女性11名を対象とし,腹式呼吸を行っている間に,循環反応や自律神経系がどのような反応をするのかに加え,ストレス時に見られるホルモンの分泌が抑制されるか,また,覚醒感に関与しているセロトニンの分泌は促進するのかという点を検討する目的で行った。腹式呼吸時の循環反応は通常の呼吸と同様の経過を辿った。実際の心拍数は経過とともに減少し,血圧の上昇を示したが,有意な変化ではなかった。RR間隔の時系列データを周波数解析すると,腹式呼吸時は副交感神経優位となった。尿中セロトニン濃度は腹式呼吸及び通常の呼吸で変化が認められなかったが,腹式呼吸では尿中のノルアドレナリン濃度,アドレナリン濃度及びコルチゾール濃度の有意な低下が認められた。腹式呼吸はコントロール実験として行った通常の呼吸と同様,生体に対してストレッサーにはなっておらず,リラックスした状態を維持できる呼吸法であると考えられた。
著者
中木 高夫 谷津 裕子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.5_95-5_103, 2011-12-01 (Released:2016-03-05)
参考文献数
23

本研究の目的は,《体験》(ドイツ語の《Erlebnis》の日本語訳)を自己の哲学の鍵概念としているドイツ語圏の哲学者たちが用いる《体験》という語の哲学的意味を明らかにし,日本の質的看護研究において使用する「体験」と「経験」を考察することである。 Dilthey,Husserl,Heidegger,Shütz,Gadamerの文献を検討した結果,質的看護研究が追究しようとする《体験》の多くは,Diltheyがいうところの〈心的生〉であり,かつ研究の対象となる患者・家族や看護師が,自らの体験を反省的な眼差しによってとらえなおした〈有意味な体験〉であると考えられた。さらに,そうした研究は,その理論的基盤をDiltheyからHusserl,Heidegger,Shütz,Gadamerに引き継がれてきた生の哲学や解釈学に置いていることが示唆された。
著者
猪下 光 内海 滉
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.4_17-4_23, 1992-09-01 (Released:2016-03-31)
参考文献数
26

1) 裸眼への光刺激の人体に与える影響を色覚正常な健康成人女性15名の皮表における微小循環血流量の変化にて観察した2) 光刺激の強度を,黄色光刺激の100ルクスの場合と,同じく600ルクスの場合とで比較すると,前者は後者に比して,その変動は大であった。3) 色彩別光刺激による血流変化量は,刺激となる光の波長に関係し,赤・黄・緑・青の順であった。4) 顕在性不安尺度(MAS)を用いて不安のレベルより観察すると,同一色彩,同一強度による光刺激の負荷においても血流変化量は異なり,高不安群は低不安群に比して,緑を除き大なる変動を示していた。
著者
小笠原 みどり 松岡 淳夫
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.1_98-1_102, 1987-04-01 (Released:2016-03-31)
参考文献数
10

臨床で広く用いられているディスポーザブル注射針は,プラスチックフィルムと紙を使用したブリスター方式のものが大半である。 注射準備における無菌性への考慮は重要であるが,ディスポ針の開封方法には統一されたものがない。臨床において作業上,能率的で多く行われているのは,針基部を紙部分に押しつけて,つき破る方法で,指定場所からフィルムを剥す方法は,あまり行われていないようである。そこで,この開封方法と汚染との関係を明らかにする目的で,包装紙面に菌液塗布による汚染を施し,上述の二方法で開封したのち,取り出した注射針について無菌試験を行った。 実験成績は,つき破り法ではめくり法の約9倍の汚染率で,しかも包装汚染の菌濃度と相関をもって,汚染されることが明らかとなった。以上より,完全な無菌が要求される場合には,つき破り法で開封し針を取り出すことは危険である,という結論を得た。
著者
中村 百合子 山崎 登志子 糠信 憲明 大沼 いづみ
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.4_41-4_48, 2008-09-01 (Released:2016-03-05)
参考文献数
32

本研究の目的は,統合失調症患者のSOCの特徴を理解し,生活環境の違い,年齢,婚姻の有無,生活満足度,喫煙などが,SOCにどのように関連するかを明らかにすることである。対象者は,慢性期にある入院患者90名とデイケア通所中の統合失調症患者72名,合計162名である。調査方法は,基本属性,日本版SOCスケール13項目,健康水準,生活満足度の自記式質問紙調査を使用し分析を行った。その結果,統合失調症患者のSOC総得点は低値で,入院群の方がデイケア群よりSOC総得点は高かったが,有意差は認められかなった。このことから,生活環境の違いはSOCの影響要因ではなかったことが考えられる。重回帰分析の結果,統合失調者症患者のSOCに関連していた要因は,健康水準,生活満足度,年齢であった。以上のことからSOCを高めるには,日常生活動作の自立や拡大,心身面への健康度等の健康水準を高める援助が必要である。
著者
菅原(阿部) 裕美 森 千鶴
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.4_11-4_22, 2011-09-01 (Released:2016-03-05)
参考文献数
41

本研究は,統合失調症者の病識のレベルを高める看護介入をするために,統合失調症者の病識に影響を与える関連要因を明らかにすることを目的とした。 統合失調症者を対象者として病識評価尺度(SAI-J),服薬態度,HLC,病気・服薬に対する知識,病気・服薬に対する体験,精神症状,治療内容,主治医からのインフォームド・コンセント,自己効力感について調査した。このほかに半構造化面接を実施し,分析の結果,病気の認識,服薬経験,感情,受け止めなどが抽出された。各尺度の合計点とカテゴリについて共分散構造分析を行い,病識のパスモデルを作成した。「病的体験の客観視」がSAI-J,服薬体験に影響を与えており,服薬に関する感情が生じて服薬態度尺度の合計点に影響を与えていた。 このことから,病的体験を客観視できるようにかかわり,服薬体験の表出を促すことが病識のレベルを高める看護であると考えられた。
著者
水田 真由美
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.1_91-1_99, 2004-04-01 (Released:2016-03-31)
参考文献数
25

本研究では、新卒看護師のリアリティショックと回復に影響する要因を分析した。病院に勤務する新卒看護師116名に対し,就職後3ヶ月と6ヶ月にアンケート調査を行った。結果,就職後にリアリティショックに陥っていると思われる者は3ヶ月時65.2%,6ヶ月時46.4%であった。また,新卒看護師の予期せぬ苦痛について因子分析を行った結果,6因子を抽出した。これらの苦痛因子はショック反応と正の相関を示し,「職場の人間関係に関する苦痛」が3ヶ月時に最も影響し,「勤務形態に関する苦痛」が6ヶ月時に最も影響していた。さらに,リアリティショックの改善した群は,6ヶ月時に「看護技術に関する苦痛」「患者および家族への対応に関する苦痛」「勤務形態に関する苦痛」が有意に軽減し,ソーシャルサポートの知覚が有意に増加した。これらの結果は,リアリティショックからの回復のための支援の資料となり,効果的な教育への示唆が得られた。
著者
加納 友香 石橋 知幸 土居 礼佳 藤井 沙紀 野口 佳美 森本 美智子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.4_1-4_10, 2014-09-01 (Released:2016-03-05)
参考文献数
37

目的:大学生を対象に生活上のストレスや神経症傾向,不眠へのこだわりが睡眠の質にどのように関係しているのか,精神的健康までのモデルを構築し,その関連性について検討した。方法:A大学に在学する253名を分析対象者とした。睡眠の質にはピッツバーグ睡眠質問票日本語版(PSQI-J)等を用いた。探索的なモデルの検討を行い,採用したモデルに対して共分散構造分析を行った。結果:PSQI-J総合得点には生活上のストレス体験,不眠へのこだわりが直接的に関連し,不眠へのこだわりは中程度の関連性(β = .411,p< .001)を示していた。PSQI-J総合得点は,神経症傾向,不眠へのこだわり,生活上のストレス体験の3つの変数で30.5%説明されていた。睡眠の質は,弱いものの精神的健康に直接的に影響を与えていた。結論:睡眠の質を高めるためには,ストレスによる覚醒度や不眠へのこだわりに対する方策を検討する必要性があり,そうすることで精神的健康も高まることが示唆された。
著者
近藤 由香 渋谷 優子 坂井 水生 大木 友美 奥山 貴弘
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.1_101-1_107, 2005-04-01 (Released:2016-03-31)
参考文献数
10

本研究は看護系大学院修士課程学生の入学志望動機と入学目的およびその関連要因を明らかにした。 1.学生は看護系4年制大学を卒業し,看護師実務経験のある未婚者が多かった。 2.入学志望動機は,勉強の必要性を感じた者が多かった。 3 .入学志望動機の比較においては,「仕事に疑問を感じた」は,30歳以上に,「親・友人から勧められた」は30歳未満に有意に高率であった。 4 .実務経験の有無による入学志望動機の比較においては,「幅広い視点で看護を見直したかった」,「仕事に疑問を感じた」は,実務経験有りに,また「親・友人から勧められた」は,実務経験無しに有意に高率であった。 5.入学目的においては,「研究能力を身につけること」や「博士課程への進学」は,修了後,教員・研究職を希望する者に多くあげられ,「専門領域を深めること」や「専門看護師の資格を取得するため」は,臨床等現場で働くことを希望している者に多くあげられた。
著者
川上 祐子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.4_37-4_45, 2015-09-30 (Released:2016-02-28)
参考文献数
19

本研究では,看護学生の統計学態度の構成,および教育課程における統計学教育の影響を明らかにすることを目的とし,質問紙法による調査を実施した。その結果,看護学生の統計リテラシーは,学習指導要領の変遷によって,世代間で異なることが示された。したがって,高等学校までに学習しておくべき統計の学習内容を補填することが必要となろう。また,看護学生の統計学態度について因子分析を行ったところ,統計学態度は「効力感」「実用指向」「努力指向」の3因子より構成されることが判明した。さらに,統計理解度やPCスキルの自己評定の高い者は,「効力感」「努力指向」の認識度も高まることが示唆された。加えて,看護大学生に比べ,統計学の必要性を熟知する社会人経験者の多い看護専門学校生のほうが,より実用指向を認識している可能性がある。
著者
小川 朋子 林 智子 井村 香積
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.5_65-5_74, 2016-12-20 (Released:2017-05-18)
参考文献数
25

本研究は,指導看護師が「成長が遅れている」ととらえた看護師の特徴と,行われている教育・支援を明らかにすることを目的として,指導看護師10名に対して半構造化インタビューを行った。その結果から,教育に携わる看護師は【A.学習の積み上げが困難】【B.看護実践に必要なスキルの不足】【C.安全性の欠如】【D.患者・職員との関係形成困難】【E.精神的脆弱さ】【F.看護職員としての自覚と責任ある行動の不足】がみられることを,「成長の遅れ」ととらえていることが明らかとなった。これらの特徴に対し指導看護師は,【①実践での指導】【②学習支援】【③対象理解と対象に合わせた指導】【④社会性の促進】【⑤主体性の促進】を「成長が遅れている看護師」本人に対して行うとともに,【⑥安全性の確保】【⑦環境の改善・調整】という支援で,勤務体制や職場の従来のやり方,自分たちの考え方などを変える取り組みも行っていた。
著者
余傳 節子 國方 弘子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.1_99-1_108, 2020-04-20 (Released:2020-04-20)
参考文献数
37

本研究は,地域で生活する精神障害者が他者や集団との関わりで「自己有用感」を回復するプロセスについて明らかにした。地域で生活する精神障害者10名に半構成的面接を行い,M-GTAを用いて分析した。その結果,1つの【コアカテゴリー】と6つの《カテゴリー》が生成された。地域で生活する精神障害者は,《他者から気にかけられる喜び》《他者とつながる安心感》を持つことで自己の存在を確認し,《他者からの受容感》を得て,自己も受容していた。この体験を行き来しながら《他者と支え合う自負》を感じ,自己の存在への自信を感じ始めていた。さらに,《他者や集団の役に立つ満足感》を得ることで自己の存在意義を確認し,社会に目を向け《社会的価値を模索する責任感》を持ちながら生活していた。以上の「自己有用感」回復のプロセスは,精神障害者が僅かなことから自己の存在意義や存在価値を見出す自分なりの【生きる意味の集積】であった。
著者
後藤 喜広
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.2_245-2_259, 2022-07-20 (Released:2022-07-20)
参考文献数
44

目的:総合病院に勤務する男性看護師が経験するセクシュアル・ハラスメント(以下SHと略す)の内容の類型,およびSHに対する対処行動について類型,分析し,その特徴を明らかにする。方法:A団体に所属する総合病院で働く男性看護師9名を対象に,半構造化面接で得られたデータを質的に分析した。結果:男性看護師が経験するSHの内容は【看護業務が発生に起因する】【男性性が意識されて発動する】【身体が軽々に扱われる】【経過のなかで加害者が複数化する】の4つのカテゴリー,SHに対する対処行動は,【個人のみで行う対処行動】【他者が介在する対処行動】の2つのカテゴリーに分類された。結論:看護師の業務の特殊性および権力構造を背景としたSHが発生していたことから,看護の職場環境においては,性別および被害者,加害者という一義的な立場ではなく,双方的,多面的な立場の理解が得られるような倫理教育の必要性が示唆された。
著者
谷口 初美 山田 美恵子 内藤 知佐子 内海 桃絵 任 和子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.2_71-2_79, 2014-06-01 (Released:2016-03-05)
参考文献数
34

【目的】新人看護師のリアリティ・ショックの現状を理解し,大学から臨床へのスムーズな移行を促す看護基礎教育のあり方を探ること。【研究方法】A大学を卒業後,A大学の附属病院に就職した新人看護師10名を対象に,質的研究の記述的現象学を用い実施した。本研究はA大学医学部とA大学病院看護部の倫理委員会の承認を得て実施した。【結果】新人看護師のリアリティ・ショックの要因として,①求められる能力のハードルが高すぎ,何もできない自己に対するショック,②職場における先輩との人間関係がクローズアップされ,基礎教育のときから臨床現場に即した看護ケア,high riskケアと接遇の必要性が明らかになった。【考察】安全で質の高い臨床実習を保障するため先進国が実施している大学と臨床が協働で取り組むシミュレーション教育のシステム構築の必要性が示唆された。