著者
谷脇 徹 興津 真行 岸 洋一
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.86, no.2, pp.158-163, 2004-05-16
被引用文献数
1

マツノマダラカミキリの羽化脱出頭数を野外網室と25°C恒温条件の恒温室で0,4,8,12,16,20時の4時間ごとに調査した。環境条件が変動しない恒温室では,羽化脱出のピーク時間帯はみられなかった。野外網室では8〜12時と16〜20時にピークがみられた。羽化脱出頭数を目的変数,気温,降水量,日照時間を説明変数とした重回帰分析により,8〜12時の羽化脱出は過度に高い気温,過度に多い日照,降水に抑制され,16〜20時の羽化脱出は日中から日没頃にかけての気温が高いと促進されると考えられた。気温は羽化脱出の日周期性に最も影響する気象要因であると推察された。羽化脱出頭数の最多時間帯と次に多い時間帯の組み合わせには5パターンがみられ,気温条件により異なった。野外における羽化脱出の日周期性には,内的要因である羽化脱出リズムの寄与程度は小さく,外的要因である気温を主とする気象要因の寄与程度が大きいと考えられた。
著者
山本 千秋
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.9, pp.311-319, 1981-09-25

ローソンヒノキを雌親とし, サワラ, ヒノキおよびヌマヒノキを雄親とする種間交雑をおこない, 球果, タネおよび苗木のできかたの違いから, 用いた樹種間の交雑の可能性を検討した。結果率, 1球果あたりのタネ数および真正発芽率については, 種内他家交雑と各種間交雑との間に差異はなかった。タネの充実率は, ローソンヒノキ×サワラが雌親の種内他家交雑の4分の1から半分という値を示した。これは, 従来のヒノキ属の種間交雑としては高い値である。ついで, ローソンヒノキ×ヒノキが比較的高かったが, ローソンヒノキ×ヌマヒノキはほぼ完全な交雑不稔性を示した。結果率, 1球果あたりタネ数および充実率は交雑年度間に差があり, 結果率をのぞく他の2形質は雌親間にも差がある傾向が認められた。成苗率は, ローソンヒノキ×ヒノキで相対的に高い値を示したが, ローソンヒノキ×サワラ苗では, 発芽個体の85%以上が黄子(致死)であったため最も低かった。総合的にみて, 雑種の作出が相対的に容易な組合せはローソンヒノキ×ヒノキであると判断された。
著者
佐藤 姚子 関谷 敦 浅輪 和孝
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.77, no.4, pp.353-357, 1995-07-01
被引用文献数
3

ヒラタケの菌床栽培において、培地中に添加した殺菌剤、チアベンダゾール(TBZ)の子実体による吸収について調査した。試験区は対照区のほか、それぞれの培地中に常用量(1区)、その10倍量(2区)そして50倍量(3区)のTBZを添加した。これらの培地でヒラタケを栽培し、2回にわたり発生した子実体を採取した。子実体試料のほか菌掻き時に採取した菌糸体および培地についても残留分析を行った。分析は農薬登録保留基準ハンドブック等に従い抽出、精製後、螢光検出器付きの高速液体クロマトグラフで定量した。その結果、TBZを添加した区で発生した子実体試料のすべてにおいてTBZが検出されたが、その検出値は常用量区においては、環境庁による野菜(きのこ類を含む)の農薬登録保留基準値を超えなかった。また、子実体での検出量は一次発生と二次発生とに大きな差はなかったが、柄部での検出量は傘部の2〜4倍量であった。一方、採取した子実体には2区では若干の、3区ではかなりの、柄部の短小化や傘部の変形等の品質低下と収量の減少が見られた。
著者
小岩 俊行
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.84, no.1, pp.9-15, 2002-02-16
被引用文献数
2

日林誌84:9〜15,2002カラマツ根株心腐病菌の生態を明らかにするために,36〜41年生の3林分で腐朽伐根調査を行った。調査林分では,カイメンタケとハナビラタケが病原菌として多く分離された。病原菌の子実体は梅雨期から初秋まで発生し,胞子の飛散は比較的長期間にわたると推察された。腐朽伐根の掘取り調査を行ったところ,腐朽伐根には約10本の主根がみられ,そのうち1〜2本に侵入口となった傷がみられた。侵入口の種類は,5タイプに分けられ,開口・大型の傷,根切れ・根腐れタイプが多かった。侵入口の形成部位は根株と主根が大半を占め,いずれの場合も深さ30cm以内の浅い位置であった。侵入口の年輪調査によって,病原菌の侵入時期は,樹齢7年〜31年生と推察された。侵入口となった伐根の傷は,石レキあるいは風が原因と推察された。
著者
中村 好男 藤川 徳子 山内 克典 田村 弘忠
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.80-88, 1970-03-25
被引用文献数
3

われわれの調査の目的は森林生態系の中で土壌動物が果たしている役割の解明にあるが, その手始めとして, 札幌市と定山溪の中間に位置する天然林(混交林)と人工林(トドマツ林とドイツトウヒ林)の土壌動物相とその季節変動を調べた。土壌動物相は, 天然林において最も豊富であった。小型土壌動物では線虫類が多く, そのうち菌食性線虫が優勢であった。ササラダニではEniochthonius minutissimusが, 大型土壌動物ではヤスデ類が, アリ類ではMyrmica ruginodisが最優占種であった。天然林の調査結果から次のような事実がわかった。線虫数は土壌中よりも落葉層に極端に多かった。ササラダニ相はササの密度により多少の差異がみられた。大型土壌動物はA層に最も多く, 深くなるにしたがい種類数が減少した。ムカデやセミの幼虫はB層の20〜40cmの所に生息していた。アリの営巣場所は腐朽した切株や, 落葉落枝の堆積物の下に集中していた。個体数の季節変動は, ほとんどが中秋に最も多くなった。季節変動の型は次の三つに大きく分けられた。A.変動の型が各調査地において同じであった。(トビムシ, ササラダニ以外のダニ, クモ, ヤスデ, コガネムシ, ササラダニの3種Eniochthonius minutissimus, Steganacarus striculus, Oppia nova)。B.2種の人工林においては同じ型であったが, 天然林では変動の型が異なった。(ミミズ, ムカデ, アリ類, ササラダニの2種Eohypochthonius sp., Phthiracarus japonicus)。C.変動の型が3か所それぞれ異なった。(ササラダニの2種Phthiracarus sp., Eremaeus sp.1)
著者
谷口 真吾 橋詰 隼人 山本 福壽
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.85, no.4, pp.340-345, 2003-11-16
参考文献数
17
被引用文献数
1

鳥取大学蒜山演習林のトチノキ林において,果実の成熟過程における落果時期と内部形態の解剖学的な観察をもとに,発育途中における未熟果実の落下原因を調べた。未熟果実は6月中旬から7月下旬までの間に全体の80〜90%が落下した。未熟落果の形態として,「虫害」タイプ,「胚珠の発育不全」タイプ,「種子内組織の崩壊」タイプ,「胚珠の発育不全」タイプの四つが挙げられた。虫害による未熟落果は6月と7月下旬以降に多く発生した。6月の虫害は果肉摂食型幼虫によるもの,7月下旬以降の虫害は子葉摂食型幼虫によつものであった。「胚珠の発育不全」タイプの落果は主に6月にみられ,受粉・受精の失敗によって胚珠が種子に成長しなかったことが原因として考えられた。「種子内組織崩壊」タイプの落果は7月上旬以降にみられ,種子内の組織が死滅して内部が空洞化していた。「胚の発育不全」タイプの落果は7月下旬以降にみられ,胚の発育が途中で止まったものであった。トチノキの未熟落果の大部分を占める「胚珠の発育不全」と「種子内組織の崩壊」は,落下果実の内部形態から判断して,「胚珠の発育不全」タイプは受粉・受精の失敗が主要因であり,「種子内組織の崩壊」タイプは資源制限による発育中断が主要因である可能性が高いと考えられた。
著者
大庭 喜八郎 岡田 幸郎 塩田 勇 武藤 淳 岡本 敬三
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.10, pp.363-371, 1965-10-25

アカマツ、12母樹と8産地およびクロマツ、4産地の種子を施肥量の異なる播種床に直播し、幼苗の生長を調査した。播種床には120×120×18(cm)3の木製枠を用い、底にビニール・シートをしき、放射線育種場構内のアカマツ林地のB層の土壊をつめた。肥料は化成肥料(魯スーパー1号)を使用し、1m2あたり、それぞれ600、300、150および0gを元肥として施肥した。播種約5ヵ月後、幼苗を地際から切りとり、胚軸長、上胚軸長、地上部乾重を測定した。これらの測定値から幼苗単位の平均値を計算し、分散分析をした。母樹別種子のOK・アカマツでは上胚軸長、乾物重について、播種密度、施肥量ともに有意であった。さらに、母樹と施肥量との間に有意な交互作用があった。また産地別種子のProv.アカマツでも上胚軸長、乾物重について、産地と施肥量との間に有意な交互作用があった。しかし、胚軸長については、両アカマツ群とも母樹または産地と施肥量との間の交互作用は有意でなかった。クロマツではいずれの生長形質においても産地と施肥量との交互作用はなかった。これらは直播した幼苗での結果なので、これらの生長反応と樋子重との関係を検討した。胚軸長、上胚軸長および乾物重について、各処理区ごとの繰返し区の平均値と同区内の各子供集団平均値との回帰直線を計算した。この母樹別、産地別の子供集団の回帰係数は各子供集団の肥料反応をしめすものと考えられ、回帰係数が大きいほど肥料に対し鋭敏に反応するとしてよい。そして、回帰係数の信頼限界が互いに重複しない子供集団があった。各子供集団の胚軸長、上胚軸長および乾物重の肥料反応をしめす回帰係数とそれぞれの種子1、000粒重との回帰直線を計算し、回帰係数の検定をしたところ、OK・アカマツの胚軸長および乾物重にのみ種子重が有意にはたらいたことが判り、上胚軸長にみられる母樹、または産地と施肥量間の交互作用には遺伝的な要因が関与しているものと推定される。
著者
鈴木 和夫
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.87, no.1, pp.90-102, 2005-02-01
被引用文献数
6

生研機構「新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業」として取り組まれた「森林生態系における共生関係の解明と共生機能の高度利用のための基礎研究」(平成8∿12年度)の概要と, とくに学問的に関心の高い外生菌根菌マツタケに焦点をあてて論述した。まず, マツタケTricholoma matsutakeの識別として, rDNAのITS領域を用いて設計されたマツタケ特異的プライマーによって, マツタケ菌糸の有無を数mg以下の試料から確実に同定する方法を確立した。また, わが国のマツタケの多様性は, rDNAのIGS1領域を用いて8タイプに分けられ, Aタイプが広範囲にわたって優占していた。ヨーロッパおよび北アフリカに分布するマツタケの近縁種T. nauseosumは分子生物学的には同種であることが否定できなかったが, 今後, 生物学的種の観点からの検討が必要である。「マツタケは外生菌根菌であるのか?」についての疑念は, 形態的にも生理的にも典型的な外生菌根菌であることが, ハルティッヒネットの構造やATPaseの分布様式から示された。そして, マツタケ菌根の迅速人工合成法が確立され, マツタケ菌糸の親水性を高めて迅速な菌糸体の大量培養が可能となり, マツタケの人工シロの誘導が可能となった。
著者
金澤
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, 1949-04-30
著者
服部 希信
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
林學會雑誌
巻号頁・発行日
vol.13, no.7, pp.506-520, 1931-07-10
著者
石井 正典 嘉村 多聞 室岡 良伸
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.80, no.2, pp.98-104, 1998-05-16
被引用文献数
1

本研究では, 夏期(7〜9月)の河川流量と降水量, 平均気温および森林蓄積の関わりを調べた。1.降水量の増加, 気温の降下および森林蓄積の減少は河川流量の増加に影響することがわかった。2.平均流量に対する3変数の寄与は, 降水量, 気温, 森林蓄積の順であるが, 降水量の寄与は大きく, 気温と森林蓄積は降水量の1〜2割と小さい。3.河川流量が大きいとき(豊水時流量)は降水量の寄与が大きい。4.河川流量が小さいとき(渇水時流量)は降水量に加えて, 気温および森林蓄積の寄与も大きくなる。5.降水量の減少, 高温および森林蓄積の増大は水枯れの原因となるから, 更新に伴う森林の伐採は, 少なくとも, 研究対象流域では水枯れ防止に役立つものと推察される。
著者
野口 琢郎 大谷 慶人 服部 力 阿部 恭久 佐橋 憲生
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.89, no.3, pp.225-229, 2007-06-01
被引用文献数
1 3

熊本県阿蘇地方におけるスギ人工林の根株腐朽被害の原因となる菌を明らかにするため40〜83年生の12林分で腐朽伐根から菌株を分離し,主要な分離菌の諸性質について調査した。調査林分では,形態的特徴の異なる8種の担子菌が分離され,そのうち2種の担子菌(担子菌Aと担子菌B)が主要なものであった。担子菌Aは南小国町1の林分で比較的高い頻度で分離された。担子菌Bはすべての調査林分で高い頻度で分離されたことから,阿蘇地方で広範囲に分布しているものと推察された。腐朽力試験の結栄,担子菌A,Bはともに木材腐朽力を有することが明らかとなった。これらのことから,阿蘇地方におけるスギ根株腐朽被害には,少なくとも担子菌Aと担子菌Bが関与していると考えられた。
著者
真宮 靖治
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.176-183, 1980-05-25
被引用文献数
14

は種後170日目のアカマツ苗に対し, 胚軸の切り込みにはさんだ濾紙片に線虫懸濁液を滴下する方法で接種を行なった。接種直後の樹体内侵入線虫個体数は平均61頭であった。接種後3日目, 線虫は接種点付近に多く, 周辺の樹脂道, 形成層, 篩部, 皮層各組織へ直接侵入していた。6日目, 胚軸の樹脂道における線虫生息, エピセリウム細胞の破壊の進行は, 時間的経過にともなう線虫の生息域拡大を示していた。また, 樹脂道を経路とした形成層, 篩部, 皮層への線虫の移動が観察された。9日目, 接種苗は胚軸横断面による観察で樹脂滲出停止, 皮層, 形成層の一部褐変という明らかな病徴を呈したが, この時期樹体内の線虫個体数の増加は著しかった。胚軸, 根における組織破壊も顕著であった。12日目には線虫生息, 組織破壊の進行は上胚軸にもおよんだ。上胚軸先端の下垂という特徴的な病徴がこのころからあらわれた。針葉の変色, 萎凋は18日目以降に起こった。樹体内の線虫個体数は18日目ごろまでにピークに達したあと減少した。線虫による組織破壊によってできた空洞に, 接種後6日目から観察された細苗集団は病状の進展とともにその存在がますます顕著になった。
著者
森本 桂 岩崎 厚
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.177-183, 1972-06-25
被引用文献数
24

l)マツノザイセンチュウの最も有力な伝播者は, マツノマダラカミキリである。2)大矢野町の枯損木から羽化したマツノマダラカミキリは, 71%がこの線虫を持っており, また1頭当りの持っている線虫数は平均3,146頭, 最高8,783頭であった。3)マツノザイセンチュウは, 耐久型幼虫の形で, マツノマダラカミキリの体表面や上翅裏面に付着しており, また気門(特に腹部第1気門)の中には塊状になってはいっている。4)この耐久型幼虫は, マツノマダラカミキリを高湿度に保つか, 水に浸すと虫体から容易に離脱する。試験管による個体飼育では, 2〜3週目に線虫落下の山がある(20℃, 93%RH)。5)野外では, 耐久型幼虫はマツノマダラカミキリの羽化脱出から産卵を始めるまでの間に, 80%以上が虫体から落ちるものと思われる。6)マツノマダラカミキリの後食部で, 耐久型幼虫は脱皮を行ない, マツ樹体内へ侵入することができる。7)枝の一部を, 羽化脱出直後のマツノマダラカミキリに後食させると, 健全なマツでも枯れてしまい, その枯死木から多数のマツノザイセンチュウが検出できる。8)1939〜'41年にまつくいむしの激害地から採集されたマツノマダラカミキリの標本から, マツノザイセンチュウの耐久型幼虫を検出できたので, 当時のマツ枯損にもこの線虫が関係していたものと思われる。
著者
藤井 真一 海上 道雄
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.7, pp.231-237, 1965-07-25
被引用文献数
1

長野県南佐久郡南牧村野辺山の東京教育大学農学部附属八ケ岳演習林で、1961年5月23日に発生した霜害について、地形・気象とカラマツ幼齢木の被害との関係を調査した。1)調査地区の南端部にある矢出川の流れの低地に強い冷気湖が発生している。この冷気が岡囲にあふれ、被害の地域を広めているものと考えられる。2)被害は、カラマツの葉や頂芽および樹皮に現われた。特に樹皮の凍傷痕は、地上20cmほどの下部に多数みられ、これが幹の全周に及ぶときは、幹の枯損を招く原因になることを認めた。3)矢出川低地に近い地域は被害激甚で、樹皮の被害が多く、霜害発生3年後には全く枯死した。その他の地域では被害程度によって生存木もあるが、その後の生長にかなりの悪い影響が現われている。
著者
清水 裕子 酒井 秀夫
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.113-118, 1996-05-16
被引用文献数
3

下刈用作業服の素材として綿と麻を取り上げ, それぞれ半袖と長袖の下刈用作業服(上衣)を試作した。デザインは, 通気性や動作のしやすさを考慮して, 前あきで, オープンカラーとし, ゆとり量を大きくとり, 袖山を低くした。これらの作業服を着用して, 夏季に野外試験を行い, 下刈作業時の衣服内気候を測定するとともに, 着心地に関する調査を行った結果, 以下のようなことが明らかになった。1)晴の日の下刈作業における衣服内温度は, いずれの作業服も上腕部で最も高く, 次に背部であり, 胸部は最も低かった。2)衣服内湿度は首にタオルを巻いていなかった麻半袖の背部を除き, 100%RHに近い湿度になった。3)衣服への汗の吸収量は, 綿作業服着用時の方が大きい。4)着心地についてはいずれの作業服も動きやすく, 涼しく, 風通しがよい, とくに半袖は風通しがよく涼しいと評価された。5)作業服の接触感は, 長袖において肌に直接触れている肩の部分で, 綿では汗による体へのべとつきが示され, 麻ではちくちくするという物理的刺激が示された。6)素材の物理的特性と着用実験結果から, 素材としては, 麻の方が熱伝達性, 水分の吸収・放湿性, 強度の点で, 炎天下の下刈用作業服に適していると考えられる。7)下着の着用は汗の吸収と輻射熱の遮断において大きな効果があり, またかたい麻織物が直接皮膚に接触しないためにも, 作業服の下に下着を着用することが効果的と考えられる。
著者
丸山 温 森川 靖
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.12, pp.499-505, 1984-12-25
被引用文献数
9

ミズナラ, ダケカンバ, ウラジロモミの葉の水分特性の季節変化を調べた。いずれの樹種も, 生育期間中, 全水分量のおよそ15〜20%を失うと, 圧ポテンシャル(Ψ_p)が0になるようであった。Ψ_pが0になるときの水ポテンシャル(Ψ_w^<tlp>)および十分吸水したときの浸透ポテンシャル(Ψ_a^<sat>)は, いずれの樹種も新葉で高く, 新葉の成熟が進むにつれて低下した。夏季の雨の日が続いたあとの成熟葉のΨ_w^<tlp>, Ψ_s^<sat>は, ミズナラ, ダケカンバで高い値を示した。これらの樹種のΨ_w<tlp>, Ψ_s<sat>は, 9月以降徐々に低下した。一方, ウラジロモミのこれらの値は夏季のあいだほぼ一定であったが, 9月以降は徐々に低下した。細胞の体積弾性率(ε)は, ミズナラ, ダケカンバでは新葉で低く, 成熟葉で高かったが, ウラジロモミでは逆に, 新葉で高く成熟葉で低かった。落葉前のεは, ミズナラでは上昇したが, ダケカンバでは低下した。成熟葉の水分特性を樹種間でくらべると, ダケカンバで水分量の低下に対するΨ_pの低下が著しかった。また, ダケカンバのΨ_w^<tlp>, Ψ_s<sat>は最も高く, Ψ_wに対するΨ_pは最も低かった。
著者
高橋 輝昌 添谷 稔 戸田 浩人
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.127-133, 1996-05-16
被引用文献数
12

同一斜面の上下に隣接するスギおよびヒノキ壮齢人工林における元素の垂直的な移動特性を明らかにするために, A_0層, 鉱質土壌層, リターフォール, 林外雨, 林内雨およびA_0層通過雨(スギ林のみ)に含まれる元素量と土壌水中での元素濃度, 土壌中の元素通過量を調査した。スギ林のA_0層量はヒノキ林の2倍の18t ha^<-1>であった。スギ林では鉱質土壌中の全C, N量, 交換性塩基量がヒノキ林よりも多く, 特に交換性Caでは500kg ha^<-1>とヒノキ林の4.2倍であった。スギ林のリターフォール量はヒノキ林の1.2倍の5.2t ha^<-1>であり, 元素含有量も同様にスギ林で多い傾向であった。林外雨から林内雨にかけて, H^+量はヒノキ林で2/3, スギ林では1/3に減少し, それぞれ0.2, 0.1kg ha^<-1>になった。スギ林の林内雨中のN, K, Ca, Mg量は19.4, 22.7, 29.1, 5.0kg ha^<-1>であり, それぞれヒノキ林の0.8, 1.4, 1.3, 1.2倍となった。スギ林のA_0層通過雨のH^+量は林内雨の1/10であった。ヒノキ林の土壌水中ではNO^-_3がほとんど溶存しておらず, Ca^<2+>, Mg^<2+>濃度はスギ林と比較して極めて低かった。土壌深5 cmのN, K, Caの通過量はヒノキ林では林内雨の溶存量とほぼ等しかったが, スギ林では2〜3倍であった。