著者
松田 由利 橘 秀樹 石井 聖光
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.35, no.11, pp.609-615, 1979-11-01
被引用文献数
33

The propagation characteristics of solid-borne sound in building structures are studied by field measurements on three standing buildings and scale model experiments using a simplified building structure. Both in the field measurements and the scale model experiments, vibration acceleration levels(V. A. L. )at a number of widely distributed points in the structures are measured as one point of the structure is excited. From the results of the scale model experiments, it is revealed that the relative V. A. L. at any point is determined by its distance(r)from the excitation point via the shortest route in the structure, regardless of the propagating direction. It is assumed that the variation of V. A. L. (L_r)in buildings can be expressed as, L_r=P_0-Nlog r-Mr(P_0 depends on the strength of excitation)and the value N and M are examined from the results of measurements. From the results of the scale model experiments, the value of N is determined to be 20, regardless of frequency. Using this value, the M value in each octave band is determined from the results of the measurements taken on the standing buildings. The result shows that the M value is approximately proportional to the square root of the frequency.
著者
野呂 雄一 井 研治 久野 和宏
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.44, no.10, pp.741-746, 1988-10-01
被引用文献数
3

正弦波信号を用いて、線形システムの伝達関数を測定するには、その出力信号である正弦波の周波数、振幅、位相の三つのパラメータを正確に測定しなければならない。しかし、実際の測定においては、信号の周波数は既知な場合も多い。本論文では周波数が既知である場合、これを利用してデータのサンプリングを信号に同期させて行い、得られたデータにDFTを適用して振幅と位相を高精度に測定する手法について述べている。そして、高調波歪の除去法や測定精度について詳しく考察する。特に測定精度についてはデータ数とSN比との関係を数学的に明らかにし、データ数が多い場合やSN比が高い場合に振幅と位相の測定誤差が同一の近似式で与えられることを導出した。また、最後に、本手法を用いた測定例として吸音材の音響インピーダンス測定の結果を示した
著者
久野 和宏 倉田 勤 野呂 雄一 井 研治
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.318-326, 1991-05-01
被引用文献数
2

幾何音響学に基づき直方体室内の音線を斜め波、接線波及び軸波にグループ分けし、各グループに含まれる音線と室表面との衝突周波数の分布について考察した。残響場における音響エネルギーの時間減衰は衝突周波数の分布の母関数で表され、そのレベル波形は衝突周波数の分散及び室表面の吸収率が大きくなるにつれ湾曲することを示した。すなわち、残響特性のいわゆる曲がりは、グループ間及びグループ内の音線の特性のばらつきに由来することを示した。また、定常場における各グループのエネルギー分担率と室形状及び吸収率との関係について検討を行った。
著者
荒井 隆行 岡崎 恵子 今富 摂子 吉田 裕一
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
Journal of the Acoustical Society of Japan (E) (ISSN:03882861)
巻号頁・発行日
vol.18, no.6, pp.297-304, 1997-11
被引用文献数
1

Palatalized articulation (PA) is frequently observed in speech uttered by postoperative cleft palate patients. Provided the acoustical and perceptual cues of PA can be found, speech therapists will be able to use these cues to diagnose PA non-invasively and objectively. We tested human perception of certain synthetic sounds to verify the cues of the PA of /s/ in Japanese. To synthesize the fricatives, we modified the center frequency and the bandwidth of a complex-conjugate pole pair of an all-pole filter obtained from the linear predictive analysis of the PA of /s/. First, we shifted the center frequency from 1,000 to 3,000 Hz, while the relative bandwidth, or Q factor, was fixed at 10. Subsequently, we shifted the Q factor from 1 to 10, while the center frequency was fixed at 1,800 Hz. The results of a perceptual experiment involving nine speech therapists were conclusive that fricatives having a peak between 1,600 and 2,400 Hz tend to be identified as the PA of /s/, and fricatives having a peak at 1,800 Hz with the Q factor &gt5, tend to be identified as the PA of /s/. The two-tube model also showed that a peak around 2 kHz characterizes the PA of /s/.
著者
梶田 将司 小林 大祐 武田 一哉 板倉 文忠
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.337-345, 1997-05-01
被引用文献数
31

人間が音声として知覚する音がその他の音とどのように異なるのかを探求するため, 本研究では, ヒューマンスピーチライク(HSL)雑音を導入し, HSL雑音に含まれる音声的特徴を分析する。HSL雑音は, 複数の音声を加算的に重畳して作られるバブル雑音の一種で, その重畳回数に応じて音声的な信号から音声の長時間スペクトルを反映した定常雑音へと聴感は変化する。まず, この聴感上の変化を主観評価実験により定量化する。そして, HSL雑音に含まれる音声的特徴を振幅分布のガウス性, スペクトル微細構造の時間的変動性, スペクトル包絡の時間的変動性の三つの観点で分析した。その結果, HSL雑音の差分信号のガウス性及び, HSL雑音のスペクトル包絡の時間的変動が音声的特徴に大きく寄与していることが分かった。
著者
朝倉 昭
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.28, no.8, pp.438-443, 1972-08-01
著者
岩瀬 昭雄 伊積 康彦
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.52, no.6, pp.411-419, 1996-06-01
被引用文献数
20

音響管を用いた多孔質材料の伝搬定数計測では, 試料を剛壁に密着状態と背後に1/4波長の空気層を設けた状態での2回のインピーダンス測定を行う方法が代表するように, 試料背後の空気層確保が必須条件で, 柔らかな材料の形態を変えないで上記2条件を実現する困難な課題に大きな努力が注がれてきた。本研究ではこの方向とは考えを異にした背後空気層を全く不要とする, 試料前後の伝達関数分析のみによる極めて単純な計測法を考案し, 有効性を検証した。その検証過程で, 多孔質試料には音響管壁で支持される共振振動が生じて大きな計測誤差を生むことが初めて明らかにされ, その回避が音響管を用いた計測法に共通する新たな問題として提起された。
著者
藤沢 望 尾畑 文野 高田 正幸 岩宮 眞一郎
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.62, no.11, pp.774-783, 2006-11-01
被引用文献数
1

音を表す言葉である擬音語は,その表現が音の特徴と密接に関連している。本論文では,文字表記された2モーラの擬音語からイメージされる音の印象と擬音語表現の関係を明らかにし,擬音語から印象を予測する手法を示した。SD法による印象評価実験の結果と林の数量化理論第I類分析により,擬音語の子音や母音,濁音といった音韻的特徴が印象に与える影響をカテゴリ数量として求めた。2モーラの擬音語に対する印象は,各カテゴリ数量の和で予測でき,"キン"のようにカ行の子音及び母音/i/を含む擬音語からは「かたい」印象の音がイメージされ,"ブー"のように濁音を含む擬音語からは「きたない」印象の音がイメージされる。
著者
大久保 朝直 藤原 恭司
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.52, no.12, pp.957-966, 1996-12-01
被引用文献数
14

ソフトな表面を持つ円筒をエッジ部分に取り付けた防音壁の遮音性能について検討を行った。まず, 断面が水車のような形状の円筒を用いて, ソフトな表面を持つ円筒の実現を試みた。検討の結果, 水車型円筒は近似的にソフトな表面を実現することが確認された。次に, この水車型円筒を半無限障壁に取り付け, 円筒の有無による障壁の遮音性能の差を測定した。結果によると, 遮音性能が低下してしまう帯域もあるものの, 水車型円筒表面付近の音圧が極小になる帯域では遮音性能が非常に大きく向上することが確認された。
著者
河原 達也 李 晃伸 小林 哲則 武田 一哉 峯松 信明 伊藤 克亘 伊藤 彰則 山本 幹雄 山田 篤 宇津呂 武仁 鹿野 清宏
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.175-180, 1999-03-01
被引用文献数
39

「日本語ディクテーション基本ソフトウェア」は, 大語彙連続音声認識(LVCSR)研究・開発の共通プラットフォームとして設計・作成された。このプラットフォームは, 標準的な認識エンジン・日本語音響モデル・日本語言語モデルから構成される。音響モデルは, 日本音響学会の音声データベースを用いて学習し, monophoneから数千状態のtriphoneまで用意した。語彙と単語N-gram(2-gramと3-gram)は, 毎日新聞記事データベースを用いて構築した。認識エンジンJULIUSは, 音響モデル・言語モデルとのインタフェースを考慮して開発された。これらのモジュールを統合して, 5,000語彙の日本語ディクテーションシステムを作成し, 種々の要素技術の評価を行った。本ツールキットは, 無償で一般に公開されている。
著者
永井 明人 北 研二 花沢 利行 川端 豪 鹿野 清宏 森元 逞 嵯峨山 茂樹 榑松 明 鈴木 忠 岩崎 知宏 中島 邦男
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.50, no.9, pp.723-729, 1994-09-01
被引用文献数
1

本稿は、大語彙の連続音声認識を実時間で処理するための、HMM-LR連続音声認識装置の設計、処理性能について述べる。HMM-LR法は、一般化LR構文解析により入力音声データ中の音素を予測し、予測された音素の存在確率をHMM音素照合により調べることで、音声認識と言語処理を同時進行させる方式であり、高精度で効率的な処理系を構成することができる。処理量が極めて大きな継続時間制御付きトレリス計算を伴うHMM-LR連続音声認識を実時間で実行するために、本装置は種々の高速化手法を33個のDSPを用いて実現した。その結果、連続文節発声の入力音声に対し、入力文の長さに依らずに、発声終了後から2〜3秒ですべての認識処理を終了する処理速度を達成した。
著者
平井 啓之 竹本 浩典 本多 清志 党 建武
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.216-228, 2008-04-01
被引用文献数
1

3次元MRI動画と音声を用いて高品質な合成音声の生成を可能にする声道断面積モデルのパラメータ推定手法の提案を行う。始めに,複数話者のMR画像より計測された声道断面積関数を用いて,複数の話者,複数の音素の声道断面積関数を表現できる声道断面積モデルを構築する。次に,単語発声時の3次元MRI動画の声道形状から作成した声道断面積モデルを初期値として,モデルから計算された伝達関数が同じ単語を発声した時の音声のスペクトル包絡と一致するようにシミュレーテッドアニーリングを用いてパラメータの補正を行う。複数の単語に対してパラメータの推定実験を行い,合成音声と実音声とを比較することにより本方式の有効性を確認した。