著者
松井 敏幸 飯田 三雄 末兼 浩史 富永 雅也 八尾 恒良 櫻井 俊弘 瀬尾 充 岡田 光男 野見山 祐次 渕上 忠彦 中野 元 吉永 一彦
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.90, no.2, pp.134-143, 1993 (Released:2007-12-26)
参考文献数
25
被引用文献数
6

潰瘍性大腸炎症例のうち10年以上経過例124例の長期予後を分析した. 最近数年間の臨床経過より長期予後を良好, 中等, 不良の3段階に分けると, その比率は約2:1:1であった. 初発時より経年的に活動年を有する頻度をみると, 次第に減少する傾向が観察され, 長期予後3群別にみると, 3群間に有意差がみられた. また初回治療前未治療期間の長いこと, 初発時重症度が重いこと, および高齢発症は予後不良の因子であった. 手術例は26例 (21.0%) あり, 発症10年後の累積手術率は16.5%で, 10年以後も手術率は上昇した. 悪性腫瘍併発例は3例, 異型上皮巣併発例は1例にみられた. 死亡例は6例であった. 累積生存率は期待生存率と有意差がなかった.
著者
本郷 道夫 本郷 道夫
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.79, no.10, pp.1883-1891, 1982-10-05 (Released:2007-12-26)
参考文献数
24
被引用文献数
1

Ca拮抗剤は,Caイオンの細胞内流入を抑制することにより平滑筋弛緩をおこすものである.本研究では食道下端括約圧(LESP)に対するCa拮抗剤の影響について基礎的ならびに臨床的検討を行った.麻酔犬を用いた実験では、nifedipine, verapamil, diltiazemは,安静時LESPを低下させtetragastrin, bethanecholによるLESPの上昇も抑制した.臨床的にはCa拮抗剤のLESP低下作用をLESP亢進状態であるアカラシアに対して応用することを考え,舌下投与の可能なnifedipineについて検討を行つた.その結果,nifedipineはアカラシア患者のLESPを低下させ,また症状の改善をもたらした.したがつて,nifedipineはアカラシアの内科的治療の手段となり得ると思われる.
著者
小林 拓
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.118, no.3, pp.229-234, 2021-03-10 (Released:2021-03-10)
参考文献数
35

炎症性腸疾患の診断や治療方針の決定において内視鏡はgold standardであるが,より非侵襲的なモニタリングの手法としてバイオマーカーが注目されている.便中カルプロテクチンは,炎症性腸疾患の診断,内視鏡的重症度との相関,治療効果判定,再燃予測など,さまざまな場面においてその有用性が報告されている.大腸癌スクリーニングに汎用されている便潜血反応検査も,特に潰瘍性大腸炎の内視鏡的活動性をもよく反映することが示されているほか,近年では血清leucine-rich glycoprotein(LRG),尿中プロスタグランジンE主要代謝産物(PGE-MUM)などの有用性も報告されている.
著者
藤井 俊光 渡辺 守
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.112, no.7, pp.1251-1258, 2015-07-05 (Released:2015-07-05)
参考文献数
34

クローン病診療においてはリアルタイムな病態把握とそれに呼応した治療戦略の構築が必須である.近年クローン病においてさまざまな画像評価法が進化している.しかしクローン病の病態評価に用いるモダリティーは精度が高いだけでなく,疾患の性質上より非侵襲的である必要がある.MRIを用いて消化管の評価も可能としたMR enterography(MRE)/MR enterocolonography(MREC)は,クローン病の腸管病変のみならず腸管外病変も同時に診断が可能で侵襲もなく,疾患モニタリングに最適なモダリティーと考えられる.読影医の育成など解決すべき問題も残されているが,今後多くの施設へ広がることが期待される.
著者
大橋 真也 武藤 学
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.113, no.11, pp.1857-1867, 2016-11-05 (Released:2016-11-09)
参考文献数
66

食道扁平上皮癌は,飲酒や喫煙などに含まれる有害な化学発がん物質の摂取が原因で発症し,特に世界では東アジア・東アフリカに好発する.飲酒と喫煙は食道発がんの最も重要な環境因子であるが,近年はそれに加えいくつかの遺伝的要因,すなわちアルコール関連代謝酵素およびたばこに含まれる化学物質に対する代謝酵素の遺伝子多型が食道発がんに深く関与することが明らかとなっている.つまり,有害な化学発がん物質に対する解毒作用の低下した体質の人がこれらの摂取を続けると,食道にさまざまな遺伝子異常を生じ発がんに至るリスクが高まると考えられる.このように食道扁平上皮癌は外因的,内因的な要因に基づく化学発がんにより生じる疾患であるといえる.
著者
柿崎 暁 鈴木 秀行 市川 武 佐藤 賢 高木 均 森 昌朋 湯浅 圭一朗
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.106, no.10, pp.1488-1493, 2009 (Released:2009-10-15)
参考文献数
14

症例は46歳,女性.自己免疫性肝炎治療中の肝機能増悪の原因が,プレドニゾロンの先発医薬品からジェネリック医薬品への変更と考えられた.肝炎の増悪で入院.退院後の外来通院に際し,プレドニゾロンを先発品から後発品へ変更したところトランスアミナーゼの再上昇を認めた.先発品に戻したところ,同量でトランスアミナーゼは改善した.無論,後発品の多くは有効であるが,変更の際,留意すべき症例もあると考え報告する.
著者
島谷 智彦 井上 正規
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.110, no.6, pp.979-988, 2013 (Released:2013-06-05)
参考文献数
69

胃食道逆流症(GERD)による睡眠障害の治療には,強力な夜間の胃酸分泌抑制が必要である.プロトンポンプ阻害薬(PPI)はヒスタミンH2受容体拮抗薬(H2RA)より強力に胃酸分泌を抑制することから,ガイドラインでも第一選択薬として推奨されている.しかしながら,常用量のPPIの1日1回投与では夜間の胃酸分泌抑制が十分でない場合があり,PPIの投与のタイミングを変更する,PPIの種類や投与量を変更する,H2RAや消化管運動機能改善薬を併用する,PPIを1日2回投与するなどの工夫が必要となる.食後3時間以内に就寝しない,就寝時に上半身を30°挙上させる,肥満の解消などの生活習慣の改善も並行して行う.
著者
木村 佳人 山下 幸政 三上 栄 小野 洋嗣 板井 良輔 松本 善秀 山田 聡 高田 真理子 住友 靖彦
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.110, no.2, pp.271-281, 2013 (Released:2013-02-05)
参考文献数
9
被引用文献数
1

症例は48歳,男性.血液検査で肝胆道系酵素と好酸球数の上昇を認めた.画像検査上は当初明らかな胆管病変を認めず,肝生検でも特徴的な所見に乏しかったが,何らかの自己免疫疾患を疑いステロイドを投与した.一旦は軽快したがステロイド減量にともない再増悪を認め,画像上も胆管に原発性硬化性胆管炎類似の広狭不整像が広範に出現した.再度肝生検を施行したところ門脈域に密な好酸球浸潤を認め,好酸球性胆管炎と診断した.
著者
渡邉 隆 青柳 邦彦 船越 禎広 山本 智文 江口 浩一 山口 真三志 冨岡 禎隆 二村 聡 向坂 彰太郎
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.108, no.3, pp.464-469, 2011 (Released:2011-03-07)
参考文献数
28
被引用文献数
1

症例は59歳,男性.元来,愛煙家であり,25本/日,35年間の喫煙歴があった.左肺巨大嚢胞を認めたため禁煙を開始したところ,1カ月後より水様性下痢と血便が出現し,当科受診となった.下部消化管内視鏡検査にて全大腸にびまん性の発赤粗造粘膜と血管透見像の消失を認めた.除外診断を行い,特徴的な下部消化管内視鏡と生検組織所見,および再燃寛解を繰り返す臨床経過より潰瘍性大腸炎と診断した.本症例は,禁煙を契機に発症したと考えられ,喫煙と潰瘍性大腸炎の関連を考察するうえで興味深い.中高年発症の潰瘍性大腸炎症例では,喫煙歴は重要な因子であると考えられ報告した.
著者
横山 顕
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.109, no.9, pp.1518-1525, 2012 (Released:2012-09-05)
参考文献数
30
被引用文献数
1

飲酒は口腔・咽頭・食道・大腸がんの原因であり,エタノールとアセトアルデヒドに発がん性がある.少量飲酒で赤くなるALDH2欠損型と,多量飲酒の翌日に酒臭いADH1B低活性型は,飲酒家の食道・頭頸部がんリスクを高める.赤くなる体質と飲酒・喫煙・食習慣によるリスク評価は食道がん検診に活用できる.濃い酒の空腹摂取は胃粘膜障害をおこしやすい.ワインはH. pyloriの自然除菌を促進するかもしれない.大酒家や食道がん患者ではH. pylori感染を背景に萎縮性胃炎の進行が速く胃がんも多い.胃切除後の飲酒は急峻な血中濃度上昇を招きアルコール依存症のリスクを高める.飲酒と大腸がんとの関連は日本人で特に強い.
著者
大科 枝里 小林 正典 金城 美幸 中川 美奈 大塚 和朗 赤星 径一 田邉 稔 松木 裕子 小林 大輔 岡本 隆一
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.119, no.7, pp.683-691, 2022-07-10 (Released:2022-07-11)
参考文献数
24

52歳,女性.胆道閉鎖症にて生後120日で胆囊十二指腸吻合術が行われた.反復する胆管炎に対して内視鏡治療を行った際の胆汁細胞診でClass Vが検出された.マッピング生検で胆囊管肝管合流部に癌を確認し,肝外胆管切除術,胆管空腸吻合術を行った.胆管癌はBilIN-3までの粘膜内癌でR0切除であった.胆道閉鎖症に対する胆囊十二指腸吻合術はまれで,術後長期の胆管癌合併の報告はなく,文献的考察を加えて報告する.
著者
仁科 惣治 日野 啓輔
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.109, no.4, pp.563-570, 2012 (Released:2012-04-05)
参考文献数
38

鉄はFenton反応により活性酸素種を産生し酸化ストレスを惹起する.そのため肝臓の鉄沈着は酸化ストレスを介した肝発癌促進因子とされている.臨床的にも肝内鉄過剰と肝発癌との関連性が指摘されている.典型例としては古くからヘモクロマトーシスと肝発癌の関係が知られているが,より日常的に遭遇する疾患としてC型肝炎,アルコール性肝障害,非アルコール性脂肪性肝炎においても鉄代謝異常が存在することが報告されている.鉄代謝異常の分子機構として鉄吸収のnegative regulatorであるhepcidinの関与なども明らかにされているが,いまだ不明の点も多く,また肝発癌に対するインパクトも今後の研究課題である.
著者
大阿久 達郎 山田 展久 池田 佳奈美 山根 慧己 竹村 圭祐 堀田 祐馬 世古口 悟 磯崎 豊 長尾 泰孝 小山田 裕一
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.117, no.1, pp.72-77, 2020-01-10 (Released:2020-01-15)
参考文献数
15

症例は76歳男性.粘血便を主訴に受診し,下部消化管内視鏡検査および便汁鏡検でアメーバ性大腸炎と診断した.メトロニダゾール静注開始24時間後より手袋靴下型の感覚低下が出現し,投与開始2日後からは足部の疼痛が出現した.同薬中止により徐々に症状は改善し3カ月後には消失した.長期間投与で発症するとされてきたメトロニダゾールによる末梢神経障害が投与開始後早期に発症したまれな症例であり,報告する.
著者
八隅 秀二郎 工藤 寧 栗田 亮
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.115, no.4, pp.338-349, 2018-04-10 (Released:2018-04-10)
参考文献数
48

膵癌診療ガイドライン(2016年版)で,長期予後が期待できる早期の膵癌とは腫瘍径が1cm以下と記載された.小膵癌をみつけるのに,画像検査で“腫瘤を探す”から,明らかな腫瘤が出現する前に微小な腫瘍による二次的変化である“膵管の異常を拾い上げる”にシフトし,さらなる画像検査と病理診断を行う流れが全国的に構築されつつある.早期膵癌発見に有効なバイオマーカーが存在しない現状では,小膵癌の臨床学的特徴を踏まえて対象者を囲い込んでいくスクリーニング戦略が求められている.最近の膵癌バイオマーカーに関しての論文も合わせて紹介する.
著者
森田 慎一 杉谷 想一 小林 由夏 原 弥子 野中 雅也 藤原 真一 堀 高史朗 飯利 孝雄
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.104, no.4, pp.573-578, 2007 (Released:2007-04-05)
参考文献数
10
被引用文献数
1

症例は51歳女性。原発性アミロイドーシスにともなう著明な肝腫大により腹痛が出現。モルヒネの投与を行ったが効果不十分であったため腹腔神経叢ブロックを施行し、有効な除痛を得ることができた。腹腔神経叢ブロックは内臓痛の緩和を目的として施行されるが、手技的に簡便であり重篤な合併症も少ない。腹腔神経叢ブロックは良性疾患および腹部悪性腫瘍にともなう難治性疼痛に対し重要な除痛手段の1つであると考える。
著者
神澤 輝実 来間 佐和子 千葉 和朗
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.113, no.12, pp.1991-1997, 2016-12-05 (Released:2016-12-05)
参考文献数
37

先天性胆道拡張症は,戸谷分類では5型に分類されてきた.最近作成された先天性胆道拡張症の診断基準と診療ガイドラインでは,いわゆる狭義の先天性胆道拡張症は,総胆管を含む肝外胆管が限局性に拡張し,全例に膵・胆管合流異常を合併する戸谷Ia型,Ic型およびIV-A型と定義された.膵・胆管合流異常は,長い共通管を有して膵管と胆管が十二指腸壁外で合流し,乳頭部括約筋の作用が膵胆管合流部に及ばないことより,膵液が胆道系に容易に逆流する(膵液胆道逆流現象).先天性胆道拡張症では,しばしば急性膵炎をおこし,さらに膵液と胆汁の混和液がうっ滞する胆囊や拡張胆管に高率に発癌するので,診断されれば肝外胆管切除が行われる.
著者
斎藤 文彦 岡部 義信 菅 偉哉 渡邉 徹 有永 照子 内藤 嘉記 内田 信治 久下 亨 豊永 純 神代 正道 木下 壽文 鶴田 修 佐田 通夫
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.105, no.10, pp.1509-1514, 2008 (Released:2008-10-08)
参考文献数
17
被引用文献数
3

68歳男性.猪飼育,生食歴あり.糖尿病加療中に好酸球増多と膵体部腫瘍を認め当院紹介.膵腫瘍は画像所見とERP下膵管擦過細胞診で膵癌と診断.肝に多発小結節を認め生検で好酸球性肉芽腫だった.免疫血清学的検査で線虫類抗体が強陽性で内臓幼虫移行症の肝好酸球性肉芽腫を強く疑い,膵癌と幼虫移行症が偶発的に発症したと考え膵体尾部切除を行った.好酸球増多をともなう多発性肝腫瘍の診断には本疾患も念頭におき病歴聴取する必要がある.
著者
福谷 洋樹 宮崎 将之 森田 祐輔 田中 紘介 矢田 雅佳 増本 陽秀 本村 健太
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.117, no.3, pp.270-276, 2020-03-10 (Released:2020-03-10)
参考文献数
29

症例は49歳男性.B型肝炎治療中にCTでS4,S7に腫瘤を指摘.MRIではCTとは異なるS7に腫瘤を認め,S4に腫瘤はみられなかった.2カ月後のMRIではS7/6に新たに腫瘤が出現した.好酸球増多がみられたため寄生虫検査を行い,トキソカラ抗体陽性であった.肝トキソカラ症と診断し,アルベンダゾール内服にて腫瘤は消失した.好酸球増多,多発病変,腫瘤の自然消失は内臓幼虫移行症に特徴的な所見と考えられた.
著者
中村 和彦 井星 陽一郎 伊原 栄吉
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.110, no.11, pp.1889-1899, 2013 (Released:2013-11-05)
参考文献数
71

炎症性腸疾患(IBD)の発症に腸管での過度のT helper(Th)反応が関与している.Th反応はTh1,Th2,Th17からなり,正常の腸管では免疫反応を制御するregulatory T cellとの間でバランスが保たれている.IBD腸管ではその調節機構が破綻しており,クローン病ではTh1,Th17反応の亢進が,潰瘍性大腸炎ではTh17反応の亢進とIL-13発現上昇がみられる.IBD腸管のTh制御機構破綻のメカニズムを明確にすることは,治療のターゲットを明らかにし,新規治療法開発に重要である.IBDにおけるTh反応制御異常に関して最新の知見を含めて解説する.