著者
畑 雅恭 井手口 哲夫 安川 博 内匠 逸 奥田 隆史 北村 正 足立 整治 山口 栄作 田 学軍
出版者
中部大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1999

1.大気環境で計測される放射電磁波の一部は、地殻からの放射である事が観測と研究を通じて明らかになった。高感度な観測機器システムを開発し、北海道釧路から九州熊本まで中部日本を中心に約40個所の観測点を配置し、3軸磁界6秒毎の観測を24時間体制で実施し、地震・火山噴火活動に対応した電磁波前兆を検出し、事象との対応の調査と取得データの解析を行った。2.2000年夏の三宅島火山噴火活動、2001年春の静岡県中部地震活動、秋から暮れにかけて富士山低周波地震活動、2002年春より伊勢湾周辺の潜り込むフィリピン海プレート境界での地震の多発、2002年2月中旬より宮城県北部や県沖での地震活動、2003年初めより東海道沖地震活動など多くの地殻活動イベントが発生したが、それらに対応した特異な電磁放射を観測でき、多くのデータを収集した。大規模な平成15年5月の三陸南地震M7.0では、宮城県北部で約1年3ヶ月の長期の電磁波前兆が観測され、事態の推移をフォローした。観測点周辺の地殻異常の判断が正しかったことと、1年程度の事前放射異常の存在が確認された。観測事象のネットワーク公開も平成13年秋より実施し多数の閲覧を得ている。3.電磁波の放射状態から地殻歪の集積状態やその移動・推移状態が推定できれば、事態を予測する上で意義が高い。音響学的解析により、放射特徴量の抽出とパターン化、およびそのデータベース化を行った。地震の前に標準パターンからの偏移異常が発生したことを確認した。また、デジタル信号処理による独立成分解析によって熱帯雷放射雑音の分離除去が可能となった。また主成分解析によって前兆放射の特徴抽出、電磁放射領域の特定について評価し成果を得ることができた。4.活動の予測される地域を垂直電磁放射波の検出範囲である約20kmメッシュ毎に詳細観測すれば、地震・火山噴火の規模と活動域のほか事態の推移について多くの情報が得られることがわかった。今後、関東南部、東南海等の活動の予測される地域において、電磁波前兆観測の性能と限界を評価する必要がある。
著者
野中 泰二郎 高畠 秀雄 谷村 真治 梅田 康弘 河西 良幸 井元 勝慶 坪田 張二 中山 昭夫
出版者
中部大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1999

1.最近発生した地震の現地調査と地震波形記録にもとづく破壊過程の検討から、キンデイオ地震では小さな破壊開始の約1秒後に大きな破壊があったこと、第2の大きな破壊がアルメニア市を直撃し、1000人を超える死者が生じた大きな被害を引き起こしたこと、30,000人が犠牲になったコジャエリ地震では100kmを超える断層が現れ、断層の近くでは最大加速度は水平方向で407Gal、上下方向で260Galに達したこと、鳥取県西部地震ではふたつの異なったフェイズが観測され、この地震の破壊は連続的に進展したのではなく、別途の破壊が新たに進行したと考えられ、大破壊によってせん断応力が開放されところに「地震のブライトスポット」が形成されたことなどがわかった。2.記録地震波と実構造に近い三次元連続体モデルの有限要素による弾塑性動的数値解析を遂行した結果、激しい直下地震の場合などでは初期の過渡応答過程がその後の動的挙動に支配的な影響を及ぼすこと、またそれは、構造物の大きさや形、支持・境界条件と初期地震動のプロファイルによって著しく異なる事がわかった。これらの現象は構造物中を伝わる応力波の影響を考慮することで把握できる。3.兵庫県南部地震で構造物に発生した顕著な被害箇所は急激なエネルギーの変化と密接に関係している。特に、高層鋼骨組の極厚断面主柱の破断が特定の階の段落し部分での溶接部に多発した原因が明らかにされた。4.この地震で高層骨組のブレースと柱の接合部が一体となって破断した原因は、剛接ブレースに作用している軸方向力と剪断力とから生じる鉛直成分の力によって、ブレースが上向きに引っ張られて破断し、次に、柱の破断を誘発した。5.骨組構造において、塑性ヒンジが初期に集中して発生する階では構造物の損傷を受けやすく、塑性ヒンジが発生していない階では被害は顕著でない。塑性ヒンジが集中的に作用する事を避ける必要がある。6.既存木造家屋を外部から耐震補強する工法を開発し、外部補強の支持部の水平載荷実験と3次元弾塑性解析によってその効果を評価確証した。7.衝撃速度を変えたシャルピー衝撃試験の結果、衝撃速度が大きいほど吸収エネルギーが大きくなる、すなわち、破壊靭性が増加することがわかった。8.塑性歪履歴を受けた鋼材を用いたシャルピー衝撃試験から、塑性歪が鋼材の脆性破壊発生に大きな影響を及ぼすこと、予ひずみが大きいほどエネルギー吸収能力が低くなり、予ひずみ材は衝撃荷重を受けると破壊し易いことなどを明らかにした。
著者
山田 邦夫
出版者
中部大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は、花弁肥大成長の仕組みを明らかにし、つぼみからの花弁の成長つまり開花現象を解明することにある。さらにそのメカニズムを制御し、切り花などのつぼみから開花に至る過程を人為的にコントロールすることを目標としている。バラ切り花の開花にはエクスパンシンやXTHが重要であることが、遺伝子やタンパク質の発現量変動を調べることで明らかとなった。また、XTH活性に対する阻害剤であるXG9という糖の効果について、比較的高濃度のXG9を切り花に処理すると花弁の成長を促進し、低濃度で処理すると逆に開花を阻害することが分かった。さらに、バラ切り花がつぼみから開花する際、一日のうちでも明期が始まった数時間しか花弁の成長が起こらず、それ以外の時間帯はほとんど成長していないことが明らかとなった。
著者
三輪 錠司
出版者
中部大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

私たちは日常幾多の有害物質に曝されている。また生体内では代謝によって活性酸素などの有害物質が必然的に生成されている。これらは解毒酵素によって無害化され体外へ排泄される。本研究の目的は有害物質が体内で無毒化されていく経路を分子レベルで解明することである。モデル動物C.elegansを使った実験の結果、XREP-1/XREP-3が無毒化に極めて重要な働きをしていることを発見した。XREP-1/XREP-3は、ヒトなどのKeap1/Nfr2と酷似しており、C.elegansでの結果はヒトにも当てはまると期待できる。
著者
松井 孝雄
出版者
中部大学
雑誌
人文学部研究論集 (ISSN:13446037)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.181-189, 2008-01

空間認知研究において,地図の記憶にもとづいて方向判断などの空間課題を遂行した場合には方向によって結果が異なるのに対し,移動経験にもとづく場合にはそのような性質はみられないとされることが多かった(Evans & Pezdek,1980; Presson & Hazelrigg,1984など)。しかし松井(2006)では,大学キャンパス内の地点を用いた方向判断課題の結果を参加者の描いた手描き地図の向きを基準に分類したところ,手描き地図での上方向と課題の基準方向が一致していると誤反応が少ない傾向があるという整列効果がみられ,移動経験による記憶でも異方性が生じることが示された。本研究では規模の異なる大学を用いて同様の実験を行ない,この現象に再現性があることを示した。
著者
松下 富春
出版者
中部大学
雑誌
中部大学生命健康科学研究所紀要 (ISSN:18803040)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.79-85, 2008-03

骨の損傷を治療する場合に用いられる人工骨は種々あるが、骨の力学的および生物学的特性に類似の特性をもつ人工材料は存在しない。純チタン粉末を用いて作成した焼結チタン多孔体は気孔率を適正に調整すれば、強度や弾性率が骨の力学的特性に近づき、また生体活性処理を施すと骨伝導能や骨誘導能が発現することから、人工骨材料として有望である。
著者
小林 猛 大塚 隆信 河合 憲康
出版者
中部大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

1. MCLとサーモトロンRF-8を用いた温熱療法における免疫誘導効果(小林)MCLとサーモトロンRF-8を用いた温熱療法をマウスのメラノーマモデルで実施し、Heat Shock Proteinが関与する癌細胞特有の免疫誘導があることを確認した。2. MCLとサーモトロンRF-8を用いた温熱療法の臨床研究(小林)前年度に実施したMCLの安全性試験の結果を基にして、中部大学にてGMP基準に準拠した患者用MCLの調製を行った。倫理委員会の審査体制が整った戸畑共立病院がん治療センターにおいて、MCLとサーモトロンRF-8を用いた温熱療法の臨床研究を開始した。喉頭部に直径7cmもの腫瘍がある患者に、最初は通常のサーモトロンRF-8による温熱治療を行い、腫瘍部位の温度は42.1℃までしか加温されないことを確認した。6日後にMCLを腫瘍部位に投与してからサーモトロンRF-8による温熱治療を行った所、44.3℃まで腫瘍部位が加温されることを認めた。さらに、in vitroの細胞実験で、42.1℃と44.3℃の加温を30分間行い、癌細胞の死滅率は44.3℃の方が10,000倍も高いことを確認した。現在、この患者の経過観察中である。3. MCLを使用した温熱療法のための倫理委員会への提出書類の整備(大塚および河合)名古屋市立大学において、大塚は整形外科領域の骨肉腫などに対するMCLの投与方法や投与量の設定根拠などを定めた。同様に、河合は前立腺がんなどを対象とした場合のMCLの投与方法や投与量の設定根拠などを定めた。
著者
中村 光一 櫻野 仁志 角 紳一 安井 晋示 酒井 英男 鵜飼 裕之
出版者
中部大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

冬季自然雷の落雷電流とその大地・接地系への分流電流、さらに電気設備系、通信装置系への伝播サージ電流の測定を行った。観測地は石川県内灘風力発電所地内と同県加賀市山麓の北陸放送ラジオ送信局の2個所である。前者では100m級の高構造体への直撃電流とその大地への分流、後者ではいわゆる逆流雷による雷サージ電流の観測に成功した。同軸型接地電極の基礎的な研究を併せて行った。国際会議(4件)、電気設備学会全国大会(7件)で研究報告を行った。
著者
鈴木 康夫
出版者
中部大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

現在、アジア、中近東、ヨーロッパ、アフリカにまで拡大と世界12力国においてヒトへ伝播した高病原性トリインフルエンザウイルスのヒトへの伝播機構の解明を目的とし、2年間で下記の結果を得た。1)中国およびベトナムでヒトから分離された高病原性トリインフルエンザウイルスは、ヒトの上気道に主に存在するウイルス受容体(シアル酸2-6ガラクトースを含む糖鎖)にも結合できる変異を遂げていることを初めて明らかにした。また、ベトナムの分離株はヒトーヒト感染が可能である臨床的成績を得た。2)抗インフルエンザ薬(タミフル:インフルエンザウイルスノイラミニダーゼ阻害薬)を予防的に服用した患者から分離されたウイルスにはタミフル抵抗性株が含まれることを見いだした。3)ヒトインフルエンザウイルスの機能的レセプターであるシアリル2-6ガラクトースを生成する酵素、ヒトシアル酸転移酵素(ST6Gal)の大量発現系の構築に成功し、これを高発現させた細胞にはヒトウイルスがより効率良く感染増殖することを見いだした。4)高病原性トリインフルエンザウイルスがヒト世界でパンデミックを起こすウイルスに変異するための分子変異シグナルを同定した。すなわち、様々な分離高病原性トリインフルエンザウイルス、その変異ウイルスを用いて、高病原性トリインフルエンザウイルスヘマグルチニン分子内のわずか1〜2ヶ所のアミノ酸置換がヒト気道上に存在するシアロ糖鎖受容体認識に関わることを発見し、そのアミノ酸(182,192,139番目など)を同定した。これらの成果により、パンデミック発生を事前に予知出来ることが初めて可能となった。5)ヒト気道上皮培養細胞にはヒト間で流行しているインフルエンザウイルス(IFV)のシアロ糖鎖受容体(sialy1α2-6Ga1-)の他に、高病原性鳥IFVの受容体(sialylα2-3Ga1-)も存在することを見いだした。6)高病原性トリインフルエンザウイルスのヒトへの伝播を可能とする変異を監視する新しい技術を開発した。本方法は、高価な機器を用いないので、東南アジア諸国でも、現在流行している高病原性トリインフルエンザウイルスのヒトへの伝播を可能とする変異を監視できるものであり、今後の有効利用が期待される。
著者
尾関 修治 小栗 成子 淡路 佳昌
出版者
中部大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

インターネットの環境を語学教育に活用するために必要なシステム開発と実運用を行った。被験者となる学生の学力データ収集を進めた。また、教育方法の開発について、これまで開発したCMS利用の技術と成果を検討し、教授者と学習者双方の視点からの効果的な学習環境構築を進めた。特に学習者相互がインターネットでコミュニケーションを行いながら英語能力を高めていくために必要なネットワーク環境・ソフトウェアからなる学習支援システムの開発研究を行った。■CMSサイトの運用:教材コンテンツとユーザー管理を行うCMS(Content Management System)であるXOOPSサーバーを運用した。安定性の向上のため、サーバーソフトウェアのバージョンアップを行った。■その他のCMSサイト:Wiki, MovableTypeを活用した教材コンテンツ開発と管理を導入・運用してその成果を測った。■オンライン教材の提供:出版社の許可を得てテキスト教材をベースにWeb自習教材を開発し、専用サイトで運用した。■Web上での添削指導:学生を対象にCGIを利用した英作文添削指導を展開し、データベースと連動した英作文指導・学習システム(WebNotebook)を開発した。■独自のブログサイトを運用し、開発したブログ利用による学習指導方法を実運用した。具体的には,学習者ブログによる英作文成果発表と教授者によるカテゴリー別指導を実施しその成果を測った。■学力データ収集:約1,500名の学生を対象に、統一学力テスト(プレースメントテスト)を行い、集計した。■成果の発表:本プロジェクトの一連のe-learning開発の成果について、FLEAT5(米国ブリガムヤング大)等において発表した。
著者
近藤 暁子
出版者
中部大学
雑誌
中部大学生命健康科学研究所紀要 (ISSN:18803040)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.21-28, 2007-03

大腿骨頚部骨折は、65歳以上の人口が約20%を占めるわが国において社会・経済的な問題である。2002年の患者調査によると大腿骨骨折の患者数は65歳以上で20,000人であり、年々増加の傾向にある。わが国の大腿骨骨折における平均入院期間は2002年の患者調査によると68.4日であり、これは他の先進諸国と比べるとかなり長く、患者は必要以上に安静期間を設けられ、自宅での元の自立した生活への復帰が遅れている可能性がある。また、わが国の人口は米国の約40%であるにもかかわらず、大腿骨骨折による全入院医療費は、米国の約1.6倍である。わが国では人口の高齢化とともに医療費は年々増大し、医療費の削減のために、2003年から、急性期の入院医療に対しても「DPC」(diagnosis procedure combination)という定額払いが導入され、入院期間を短縮しようという動きがある。また近年では、術後合併症を避けるためにも早期離床、早期退院が奨励され、クリティカルパスなどの導入により、退院時のアウトカムを低下させずに入院期間を短縮することは可能であるという報告は多くある。中には人工骨頭置換術の翌日から全体重をかけた歩行訓練を行うことで、入院期間が23.5日まで低下し、かつ退院時に歩行可能であった患者の割合は増加したという報告もある。一方で、わが国の長い入院期間は長期的に見ると必ずしも悪いとは言えない。スウェーデンに比べてわが国の大腿骨骨折による1人当りの医療費は高く(148対63万円)、入院期間は長いが(54対11日)、退院後自宅に帰る患者は多く(72%対65%)、骨折後120日に自立して外出できた患者の割合は高く(58%対45%)、死亡率は低かった(6%対12%)という報告がある。また、米国のように1〜2週間以下など極端に入院期間が短縮した場合は、高い再入院率(16〜32%)が報告されている。わが国の入院期間が短縮した場合、患者の短期的なアウトカムはよいと言えるが、患者の退院後の調査を行った研究はあまりなく、再入院率や、特に入院期間が短縮した場合の長期的なアウトカムは明らかになっていない。したがって、早期に退院した患者の退院後の歩行能力や居住地、再入院率、死亡率など、長期的なアウトカムについて明らかにする必要がある。その研究は年齢、骨折前の歩行能力、術式、依存症、術後日数、病院、家族・社会的サポートの有無、退院時歩行能力など、アウトカムに関連していると考えられる要因を統計的に調整する必要がある。術後の回復を説明する枠組みとしては老化理論が適切であると考えられる。もし早期に退院した患者が長期に入院していた患者に比べて同等、あるいはそれ以上のアウトカムを示していれば、患者は問題なく早期に退院し、骨折前の生活を早期に回復できると考えられる。また、入院期間の短縮により入院医療費の削減につながると考えられる。しかし、もし早期に退院した患者のアウトカムが長期に入院していた患者よりも低い場合は、入院期間の短縮は慎重に行うべきであり、リハビリテーションプログラムの改善も必要である。
著者
柳田 聖山
出版者
中部大学
雑誌
国際関係学部紀要 (ISSN:09108882)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.221-244, 1987-03-01