著者
稲田 浩子
出版者
久留米大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1997

子どものターミナルケアを行うにあたっては、患児自身・家族、医療スタッフの協力体制が最も要求される。それをふまえてターミナルケアの方針作りを行った。1. 家族と医療スタッフ間のコミュニケーション;様々な治療法が開発された現在、どの時点で支持療法に切り替えるのか、治験的な治療を進めるのか、選択も難しい。時間をかけて、時にはsecond opinionも聞きながら、納得行くまで話し合う必要がある。2. スタッフ間のミーティング;患児・家族への最良の対応を、話し合いながら検討していく。スタッフ自身の死生観を確立することも重要である。3. 患児の痛みの軽減;モルヒネ等を用いて、積極的に除痛することで、安心を与える。4. 子どもへのdeath education;現代社会は、死と直面する機会が少ない。日常の教育の中に、生と死を考える時間をもうけるべき。また、ターミナルステージにいる子どもに死を尋ねられたとき、医療スタッフは嘘をつかずに応える準備をしておくべき。5. 患児の要求をかなえる; 「家に帰りたい」という希望は誰にでもある。地域の訪問看護システム等を利用した在宅ケアも、お互いの充分な理解と協力があれば可能となる。頻回に話し合いの機会を持ちながら、できるだけ希望にそえるよう努力していく。病院の規則も緩和し、家に似た環境づくりを心がける。6. 家族・兄弟への支援;患児中心の生活から、家族の輪に歪みができることも少なくない。お互いの立場を尊重し、兄弟にも患児の状況を隠さず伝え、話し合う必要がある。7. 旅立ちの時;苦しみだけを延長させるような処置は避け、家族に見守られて穏やかに旅立つような状況をつくれるようにする。8. 患児死後の家族支援;受容までに通る5段階の感情を表出させ、苦しみを分かち合う機会を作る必要がある。私達が行っている追悼の会は、意義深いものとなった。
著者
石原 陽子 三宅 真美 大森 久光 長谷川 豪 中尾 元幸
出版者
久留米大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

北東アジアからの越境輸送物質の健康影響が問題視されている。本研究では、偏西風によってもたらされる越境輸送物質の発生源および通過地域のモンゴル、中国と久留米のPM2.5の大気及び個人暴露量とその成分及び健康影響について調査研究を行った。その結果、PM2.5の重量と成分には大気と個人暴露で相関性や地域特性を認め、黄砂飛来時には成人慢性呼吸器疾患有症者の呼吸器症状の増悪や精神生理的活動性の低下が見られた。従って、今後の疫学調査では、この点を加味した研究デザインが必要であることが示唆された。
著者
宗岡 嗣郎
出版者
久留米大学
雑誌
久留米大学法学 (ISSN:09150463)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.89-113, 2001-12
著者
小嶺 徹
出版者
久留米大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1996

近年,抗ヘルペスウイルス剤の普及により症状の軽減及び期間の短縮がはかられてきた.しかし、抗ヘルペスウイルス剤の投与は抗体の産生にとって不利になると予想される.そこで,久留米大学医学部口腔外科を受診した(1987年1月から1995年4月)初感染と考えられるHSV-1感染症患者のうち,ペア血清の得られた43名の血清(抗ウイルス剤投与群37名,非投与群6名.)でIgG・IgM抗体並びに中和抗体価を測定した.すなわち,エンザイグノスト単純ヘルペスIgGおよびIgMはELISAでまた,中和抗体価の測定はマイクロ法によった.回復期の中和抗体で有為な上昇が認められなかったものは11症例であった。このうち,抗ウイルス剤を投与したものが11例中9例で、投与群全体に占める割合は、38例中9例の23.6%であった。また、未投与であったものは2例で未投与群での割合は、5例中2例の40%で抗ウイルス剤の投与が抗体産生を阻害しているという結論は得られなかった。そこで、15才未満の小児(7例)と成人(36例)に分けてみると、成人での抗体上昇の見られなかったものは、36例中10例の27.7%、逆に小児は、7例中1例の14.2%で,成人例で抗体価が上がりにくい傾向が伺えた。また抗ウイルス剤の投与を行なった初感染2症例の潜伏ウイルスの再活性と抗体価の変動についての長期経過観察によると,小児例は約2カ月後,成人例では約6カ月後に中和抗体価の有意な上昇を示しており,従来の2週後には上昇を示しておらず,これも抗ウイルス剤投与の影響と考えている.
著者
岡村 尚昌 津田 彰 石井 洋平 矢島 潤平
出版者
久留米大学
雑誌
久留米大学心理学研究 (ISSN:13481029)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.105-114, 2006

本研究では,参加の同意の得られた健康な大学生94名(男性53名,女性41名,平均年齢18.6±1.0歳)を対象に,気分プロフィール検査(POMS),日本版状態一特性不安尺度(STAI)そして日本版精神健康調査票(GHQ-28)を用いて日常生活における気分の質や強度と,唾液から定量した唾液精神神経内分泌免疫学的(PNEI)反応[3-methoxy-4-hydroxyphenylglychol(MHPG)含有量,コルチゾール分泌量および免疫グロブリン(lg)A抗体産生量〕との関連性について検討した。PNEI反応と自記式質問紙によって評価した気分との相関分析を行った結果,男性の唾液free-MHPGは,不安・緊張,抑うつなどのネガティブな気分と関連が認められたが,女性では関連が認められなかった。唾液s-IgAに関しては,男女いずれの不安に関する項目と関連が認められた。唾液コルチゾールでは,男女ともに敵意一怒りや不安に関する項目と関連が認められた。また,PNEI指標を目的変数気分の下位尺度項目を説明変数とした重回帰分析の結果,free-MHPG,コルチゾール及びs-IgAが日常生活の気分の中でも特に不安,緊張状態を反映する客観的指標として有用であることが明らかとなった。以上の結果は,日常生活場面におけるネガティブ気分や心身の不定愁訴の自覚が唾液中のPNEI反応に反映されてくることを明らかにした。また,唾液のPNEI指標の反応を分析する際には,性差を考慮することの必要性も明らかにした。
著者
桑野 栄治
出版者
久留米大学
雑誌
久留米大学文学部紀要. 国際文化学科編 (ISSN:09188983)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.61-105, 2004-03

本稿ではまず、『高麗史』礼志を手がかりに高麗における名節の賀礼を俯瞰する。ついで対象時期を一四世紀後半の高麗末期にしぼりこみ、朝鮮初期に実施された対明遥拝儀礼の原型を元・明交替期に求むべく追跡調査した。高麗の王都開京では一一世紀半ばまでには朝賀礼→賜宴とつづく正朝・冬至の国家儀礼が実施されていたが、宋・遼(契丹)に対する遥拝儀礼は確認できない。それゆえ、当時の東アジアにおける国際環境にあっては高麗と宋・遼が垂直の君臣関係にあったとはいいがたい。一三世紀後半になると、元帝の女婿となった忠烈王は正朝に「群臣を率いて遥かに正旦を賀う」儀礼を実施し、正月朔望と聖甲日(本命日)には元帝に対する仏教儀礼を寺院にて執り行った。しかし、忠烈王は正朝を元の大都で迎えることが多く、元干渉下の高麗社会にこれらの儀礼が定着することはなかった。遥拝儀礼の画期となるのが明の太祖洪武帝の即位、そして高麗国王の冊封体制への参入である。一三七二年冬至に恭愍王は明帝を遥拝する儀礼を実施し、王宮では万歳三唱ののち、百官は朝賀礼を実施して盛大に祝った。これこそ朝鮮王朝開創直後に開城で実施された対明遥拝儀礼の原型であり、洪武帝が「蕃国の礼」として制定した「聖節・正日丁冬至に蕃国が闕を望みて慶祝するの儀」の受容と実践である。中華帝国の礼制が高麗における外交儀礼のあり方まで規制したことを意味する。恭愍王の死後、しばらく高麗政府は北元と明との外交政策をめぐって揺れ動いたが、高麗最末期の恭譲王代には対明遥拝儀礼→朝賀礼→賜宴の順に国家儀礼が執り行われた。そしてまもなく王朝交替を迎える。
著者
金 惠鎮
出版者
久留米大学
雑誌
久留米大学外国語教育研究所紀要 (ISSN:13406175)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.55-70, 2006-03-31

最近韓国と日本の相互文化交流が活発に行われていて日本での韓国語学習者も増加している。日本では韓国語学習者の学習到達度に対する社会的評価を提供し、学習意欲を高める目的で1992年10月9日に「ハングル能力検定協会」が設立された。「ハングル能力検定試験」は12年が経った現在(2005年7月)まで総24回の試験が実施され、今まで総91,464名が試験を受けた。久留米大学では外国語科目として韓国語I,II,IIIの講義が行われていて、韓国語の授業を受けている学生数は急激に伸びている。さらに、韓国語授業を受けている学生たちの中では自分の韓国語の実力を確認するために「ハングル能力検定試験」を受ける学生も大勢いる。本稿では2005年6月19日(日)に実施された第24回「ハングル能力検定試験」5級を受けた久留米大学学生たちの採点結果を分析して、各問題の得点傾向と出題問題の類型による得点の高低を分析した。その結果全体的には正解率が約80%という高い数値があらわれた。さらに、出題問題を類型別に区分してみると、語彙と挨拶表現では特に高い正解率であることがわかった。しかし、日本語と韓国語の類似しながらも誤用しやすい助詞と文法の面では正解率が低下していることが調査の結果で明らかになった。また「ハングル能力検定試験」を受けた学生たちにアンケートも実施して、韓国語の検定試験勉強と韓国語の学習意欲とはどのような関わりをもっているのかについても分析した。
著者
原田 二朗
出版者
久留米大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

ヘムオキシゲナーゼは、シトクロムP450還元酵素やビリベルジン還元酵素など複数のタンパク質と相互作用し、基質ヘムをビリベルジン、次いでビリルビンへと変換するヘム分解系で働く酵素である。本研究課題では、ヘムオキシゲナーゼに関わる酵素群との相互作用機構を明らかとすることを目的としている。また研究の一環として、新しい手法であるNMR緩和分散測定法が、タンパク質の未知機能探索に有効であることを実証していく。
著者
松石 達彦
出版者
久留米大学
雑誌
産業経済研究 (ISSN:03897044)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.405-428, 2005-12-25
著者
古賀 靖敏 ポバルコ ナターリア 西岡 淳子
出版者
久留米大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

Klotho遺伝子のノックアウトマウス(KlothoKOマウス)では、ヒトの老化に類似した種々の症状を来すことから、老化現象に関わる重要な遺伝子として報告された。我々は、KlothoKOマウスにおける老化現象と正常加齢マウス(CD-1)を比較検討し、老化機構におけるKlotho遺伝子とミトコンドリア機能障害のネットワークを解明するために腎および脳組織における病理学的、生化学的解析を行った。正常加齢マウスでは、腎腫大が診られ、糸球体の減少と総タンパクの低下、ミトコンドリアの酸素消費の低下と電子伝達系酵素活性の全般的な低下が観察された。一方、KlothoKOマウスでは、正常糸球体数の減少と総タンパクの増加を伴う電子伝達系酵素活性の比活性の低下を来した。また、電子伝達系の酵素活性の中で、複合体IIが選択的に早期に低下する事を見いだした。終脳では、正常加齢のマウスでは電顕的なミトコンドリア腫大がみられミトコンドリア電子伝達系低下を伴っていた。KlothoKOマウスでは、その加齢減少に伴い、正常加齢マウスでは診られない、腎と脳でミトコンドリア機能不全を来し、その原因は、異常たんぱくの蓄積によると考えられた。
著者
江田 早紀 日高 三喜夫
出版者
久留米大学
雑誌
久留米大学心理学研究 (ISSN:13481029)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.43-50, 2007
被引用文献数
2

本研究の目的は,対人感受性尺度を作成し,その信頼性と妥当性を検討することである。大学生338名を対象に仮尺度について因子分析を行った結果,第1因子「否定的感受性」因子(27項目,α=0.94),第2因子「肯定的感受性」因子(12項目,α=0.91)の2因子39項目を抽出した(累積説明率42.8%)。さらに,再テスト法により,相関係数を算出した結果,第1因子「否定的感受性」因子はr=0.83,第2因子「肯定的感受性」因子はr=0.70とそれぞれ強い正の相関が見られた。また,日本語版社会的スキル尺度(榧野,1988)を用いて,作成した尺度の併存的妥当性を検討した結果,情緒的感受性尺度との相関係数がr=0.44,社会的感受性尺度との相関係数がr=0.54であり,いずれも中程度の相関が見られた。今後の課題としては,被検者を増やし,様々な年齢層を対象に調査を行うことにより,本尺度の信頼性および妥当性をさらに高めること,尺度の得点範囲について厳密な範囲設定を行うことなどが挙げられる。
著者
橋本 修 上野 隆登
出版者
久留米大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

メチル化カテキンは肝癌細胞株Huh7に対し、in vitroにおいて強いPI3K/Aktシグナル系抑制作用、抗酸化作用をしめすことを示した。さらに、in vivoにおいても、癌移植マウスにおいて腹腔内投与、さらには経口投与(一日7.5mg/Kg)にても腫瘍増殖抑制効果を示した。このことは、メチル化カテキンが抗癌剤への応用につながる可能性を得ることができるという成果を得た。カテキン540mg含有のお茶の飲料品があることを考えるとその副作用はかなり少ないと考えられる。さらに、ある飲料会社がメチル化カテキン高濃度(20%)含有べにふうき茶抽出パウダーを開発していた。それを、当初は無料で条件なしで供与していただけるようになった。現在、カプセル化して一日500mgのメチル化カテキン(250mgのカプセル、10錠を一日)をのんでいただく準備を終了した(3人分30日分)。これら、具体的な製剤の作製は臨床研究へすすむことへの大きな成果である。
著者
石橋 潔
出版者
久留米大学
雑誌
久留米大学文学部紀要. 情報社会学科編 (ISSN:13481010)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.35-46, 2006-03

医療・保健・福祉などの領域では,隣接した領域で様々な対人援助サービス職が専門職化しようとしている.しかし従来の専門論は,専門職化を単独の職種の孤立した現象としてとらえる傾向があるため,隣接しておこる専門職化が抱え込むジレンマを十分に分析できない.特にケアを特徴とする対人援助職,つまり人間への全体的関与を特徴とする専門職は,自らの専門性を明確に示すことができないというジレンマを生じるが,この理由について十分な分析ができない.そこでこの論文では,専門職化によって専門領域が規定されると同時に,非専門領域を作り出すという視点から,専門職化を理論的に捉えなおすことを試みる.まず対人サービスは,高度に分業化した社会において,財として交換の対象になりにくい性質を持っている.その性質は,協働性,個別性,不可視性という性質として説明できるだろう.したがって対人サービスに従事する職種は,自らの行為を社会の中で交換可能なものに規定する必要に迫られる.この対人サービスの再規定を,職業集団として組織的に追求するのが,専門職化という戦略であると言える.この戦略は,組織内部に対してはサービスの標準化を図り,外部に対しては差異化を行なっていくということである.この戦略によって,対人サービスの再規定に成功した領域と,成功しない領域が形成される.これを専門領域と非専門領域という言葉で呼ぶことにする.この非専門領域は,標準化および差異化できないような対人サービスの要素によって形成されている.この非専門領域は,ある意味ではもっとも対人サービスの最も特徴的な性質が集約されているといえるが,しかしサービス財として社会の中での交換に馴染まない領域でもある.ある職種が専門職化する際に,この非専門領域をどのように取り扱うか大きな問題となる.この非専門領域を自らの職種から切り離して他の職種に譲り渡そうとする場合が多く見られる.もっとも典型的な事例では,医師から看護職,看護職から看護補助職や介護職へ.このような非専門領域の形成およびその非専門領域の譲り渡しの連鎖が,対人援助サービスの分野で起こっている.だが見方を変えれば,非専門領域には対人サービスのもっとも重要な性質が集約されているということもできる.
著者
庄村(一瀬) 陽子
出版者
久留米大学
雑誌
久留米大学外国語教育研究所紀要 (ISSN:13406175)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.1-27, 2006-03-31

本論文では様々な言語で報告されている非対格性が、日本語にも観察されることを示す証拠について検討する。今回は提出されている7つの言語事象を取り上げる。まず宮川(1989)の数量子遊離、辻村(1990, 1994, 1996)の結果構文、竹沢(1991)の「テイル」構文、影山(1993)の格助詞脱落、影山(1993, 1996)の「たくさん」構文、岸本(1996)の「かけ」構文である。そして最後に宮川(1989),辻村(1990)らの漢語複合動詞を概観してまとめに入る。
著者
MIGITA Takashi MITSUZONO Ryouichi KOMIYA Shuichi
出版者
久留米大学
雑誌
久留米大学保健体育センター研究紀要 (ISSN:09198679)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.9-14, 1998-07-01

本研究の目的は,伝統的な健康補助食品である濃縮チキンスープ(ブランズ・エッセンス・オブチキン,以下BEC)飲用の陸上長距離走選手の合宿鍛錬期における身体的および精神的疲労の軽減に及ぼす影響を検討することであった。被験者は十分に持久的トレーニングを積んだ32名の男子大学生であった。身体的特性および競技成績が同等になるようにBEC飲用群(n=16)とプラセボ飲用群(n=16)に分けられ,合宿期間中の朝食前と夕食前に各被検物を1瓶(70ml)ずつ飲んだ。合宿前および合宿最終日に血液サンプルが採取され,以下の項目が測定された;Hb,血清鉄,TIBC,フェリチン,CK,LDH,GOT,GPT,Mb,LP0,テストステロン。また,合宿の前後で質問紙法による精神的疲労度の測定(POMS)も行われた。合宿期間の総走行距離は,通常のトレーニング時の約2倍に相当し,両群の血液測定項目は合宿後に身体的疲労度を示す傾向にあった。しかし、BECおよびプラセボの群間に差は認められなかった。POMS の結果は,BEC飲用群の合宿後にネガティブな尺度の減少,ポジティブな尺度の増加傾向を示し,プラセボ飲用群の合宿後にネガティブな尺度の増加,ポジティブな尺度の低下傾向を示した。以上のことより,本研究の合宿鍛錬期におけるBEC飲用の身体的疲労に対する軽減効果は確認出来なかったが,BEC飲用の精神的ストレスに対する軽減効果の可能性は示唆された。
著者
古園井 昌喜
出版者
久留米大学
雑誌
久留米大学保健体育センター研究紀要 (ISSN:09198679)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.33-37, 1996-09-01

1930年(昭和5年)10月,八幡製鐵所野球チーム一行17名は台北市政施行10周年記念行事の一環としての野球大会に招聘された。主催は台北野球同好会,斡旋は大阪毎日新聞社。当時,北九州地方では1918年に門司鉄道局,同20年中島鑛業所,同24年八幡製鐵所が,それぞれ自社のシンボル的存在としての機能性を期待し野球部を発足させている。3社ともに総従業員約30,000人の大企業である。特に,八幡・門司両野球部は,満州,朝鮮,台湾にしばしば遠征しているが,それに関わる資料は極めて少なく,今後の解明が待たれる。その一端として,今回は八幡製鐵所野球部史の台湾遠征記事を中心に,その内容を報告する。これは,日・台間の野球交流の史的補填を意味すると考える。