著者
工藤 瞳
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

本年度を含めた3年間の研究において、働く子どもの運動MANTHOCが学校教育を提供する背景には、仕事をしていることのみならず、留年、中退、学校関連費負担、そして一部には小学校入試の存在など、子どもが一般の公立学校に通う上での様々な阻害要因が明らかになった。本年度は、仕事以外の学校教育への阻害要因および公立学校間格差、そして修道会などが運営する公立学校である民営公立校に着目して研究を行った。前年度および本年度の現地調査を踏まえて明らかになった点は以下の通りである。(1)ペルーの地方都市カハマルカの公立学校間格差に着目し、入試の有無や学校関連費といった点から比較した。2011年当時学区制のなかったカハマルカにおいて、試験による入学者選抜や学校関連費の違いといった諸条件が、各家庭による学校選択を左右している可能性があり、選抜がなく「誰でも入れる」学校の教育環境の改善が放置される懸念がある。(2)また、国が教員給与を全額負担し、修道会などが運営する宗教系民営公立校は、学校数は少ないものの、公立学校の枠内で貧困層に対して質の高い教育機会を提供してきた。ペルーでは財政的制約や政策の不連続性によって教育制度の変化が低調であり、教会による貧困層への教育の関与を背景とした民営公立校という伝統的な教育の公私協働の形が維持されてきた。(3)宗教系民営公立校の中でもネットワークを形成し、ラテンアメリカ17か国において学校教育・ノンフォーマル教育を展開するフェ・イ・アレグリアは、学校運営に関して地域と緊密な関係を築くとともに、教員研修や専門家の視察により教育環境・内容の向上に取り組んでいる。以上のように子どもの就学への阻害要因を学校側から検討することにより、働く子ども、貧困層の子どもへのより良い教育機会をいかに保障するかを考える上での重要な知見が得られた。
著者
岩城 卓二 平岡 隆二 東野 将伸 鎌谷 かおる 久留島 浩 武井 弘一 小林 准士 瀬戸口 明久
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2021-04-01

本研究は、石見銀山附幕領では銀山・銅山・鉄山の三つを結節点に、幕領内の農村・山村・海村などが有機的に連関する広域的な「幕領社会」が形成されていたという視点から、とくに研究が手薄な銅山・鉄山の支配・社会構造の解明を通じて、非農業世界からみた「幕領社会」論の構築をめざすものである。具体的課題は、銅山師堀家文書の研究、鉄山の研究、幕領村の研究、鉱山の開発・操業技術の科学史的位置付けと、操業にともなう自然環境変化の研究である。また、研究者と地域住民が一つの史料群を囲んで地域の歴史を考え、地域住民が主体となった文化財保存・活用の場を創造する。
著者
TRONU CARLA
出版者
京都大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

Recent research on early modern lay Christians in Japan compensantes for elite-centered earlier studies, but targets only highly Christianized villages or cities. This project studies lay Christians in cities where Christians were minoritarian (like Edo, Kyoto, Fushimi, etc) by looking at the spatial distribution of and tension between churches, mission posts and lay confraternities in order to elucidate the reality of the lay Japanese Christians, and how they engaged at a local level with the transregional and global missionary networks, and the rivalry between Jesuits and Mendicants.
著者
静脩編集委員会
出版者
京都大学
巻号頁・発行日
vol.38, no.(139), 2001-05-31
著者
谷口 敏雄
出版者
京都大学
巻号頁・発行日
1957

博士論文
著者
北川 宏 草田 康平 古山 通久 吉田 幸大
出版者
京都大学
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
2020-07-30

本研究では、多元素ハイエントロピー効果により、多くの元素種を固溶化させることで、新しいナノ固溶合金を開発すると共に、革新的な触媒機能の創成を行う。超臨界ソルボサーマル連続フロー合成法により、多種金属元素を原子レベルで融合させ、新元素、新物質、新材料の探索を徹底的に行う。1)貴金属8元素からなるハイエントロピー固溶ナノ合金の作製、2)貴金属-卑金属12元素からなるハイエントロピー固溶ナノ合金の作製、3)貴金属-卑金属-軽元素16元素からなるハイエントロピー固溶ナノ合金の作製に挑戦する。さらに、プロセス・インフォマティクスの適用により、一気通貫型の革新的プロセス開発を行う。
著者
日下部 徹
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

肥満 2 型糖尿病モデルマウスを用いて、脂肪細胞由来ホルモンであるレプチンと GLP-1 受容体作動薬であるエキセナチドの共投与は、各単独投与と比較してより強い摂食抑制作用、体重減少作用を示し、かつレプチンが持つ異所性脂肪蓄積の減少作用の増強、GLP-1受容体作動薬が持つインスリン初期分泌促進作用の増強など、互いの作用を増強することが示された。 今回得られた結果は、レプチン/エキセナチドの共投与が肥満 2 型糖尿病に対する有用な治療薬になり得ることを意味する。
著者
菅沼 信彦 渡邊 浩子 山口 琴美 能町 しのぶ
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

妊娠初期における葉酸補充効果を検証するため、葉酸が添加されているガムを噛むことで、つわりの症状が改善するか否かを調査した。妊娠初期妊婦を対象に、葉酸添加あるいは非添加ガムを用い、ガム摂取前ならびに摂取後1週間と2週間につわり症状の改善度を自己評価した。その結果、つわり症状は葉酸添加ガム摂取により明らかに改善した。
著者
藤田 幸一 今村 真央
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

大きく2つの成果が上がった。第1に、京都大学東南アジア地域研究研究所に「ゾミア研究会」を立ち上げ、2年の研究期間内に内外の研究者を招へいして計24回の研究会を開催し、研究ネットワークの構築を行った。「ゾミア研究会」は東南アジア学会の学会員などに広く知れ渡り、また海外にもよく知られる存在となり、今もなお他財源を利用して継続している。第2にまだ予備的段階にとどまっているが、中国、ミャンマー、インドの3つの異なる国家領域に分かれて住むカチン族の社会経済的現況、その形成に至った歴史的背景、今後の発展の展望等を、現地実態調査に基づき明らかにした。
著者
戸谷 友則
出版者
京都大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2010

大規模銀河分光サーベイによる赤方偏移歪み測定は、宇宙物理的な系統誤差が少ないダークエネルギー問題へのアプローチとして世界的に期待されている。すばるの新観測装置FMOSは、直径30分角の領域で一度に400天体の近赤外スペクトルが取得できるという大変ユニークな装置である。日英のFMOSチームを中心に、このFMOSを用いた大規模銀河サーベイ(FastSound計画)が現在検討されている。すばる望遠鏡で40晩程度の観測時間を使い、30平方度の領域で1万もの銀河のスペクトルを取得し、これによりz>~1という最遠方の赤方偏移歪みを検出し、構造形成速度を測定することで宇宙論的スケールでの重力理論の検証を行う。いよいよ23年度から、このFastSound計画が本格的にスタートし、観測が開始されてデータも取得できた。本研究費は主に旅費として使用し、日英豪に分散する研究者の相互交流と準備研究の推進が行われた。最初の試験観測データを吟味し、サーベイデザインを最終的に確定した。初期データをさらに吟味して、輝線検出法の確定など、本格的な解析作業も始められた。すでに全体の1/4ほどのデータが取得され、パワースペクトルを計算するための準備も進めた。このFastSoundプロジェクトは、実現すれば初の日本主導の宇宙論目的大規模銀河分光サーベイとなる。それを通して経験蓄積や人材育成も目指し、さらなる次世代サーベイでも日本が大きな貢献ができるような形を目指していきたい。
著者
山本 有造
出版者
京都大学
巻号頁・発行日
1993

博士論文
著者
小林 茂夫 細川 浩 前川 真吾
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

ほ乳類や鳥類は,環境温が低下すると,ふるえによる産熱反応を起こして体温を保つ。一方,爬虫類,両生類,魚類は,環境温が低下しても産熱反射を生まず体温が下がる変温動物である。しかし,ふるえが系統発生上いつ生じたのかわかっていないここでは,低温でふるえ様の反応がサカナで生まれるとの仮説を立て,それを検証する実験をおこなった.受精後3日齢のゼブラフィッシュの稚魚を,28.5℃から12℃の水に移すと,尾ひれを律動的に振る相(ON相,約10Hz)と静止する相(OFF相)が,約3秒の周期で断続的に生じた(ON-OFF相)。しかし,サカナに前進運動は見られなかったので,その運動は産熱のための考えられる.ここでは,発砲スチロールで熱流を遮蔽した試験管に少量の12℃の水を入れ,その中に稚魚をいれ,ふるえで生じる水温の上昇を産熱の指標として測定した。一匹の稚魚を入れたときの温度上昇は,対照群の温度上昇と差はなかった。5匹の稚魚を入れると,水温は,対照群の上昇速度より高い速度で上昇した。10匹の稚魚を入れると,水温は,5匹の上昇速度のほぼ2倍の速度で上昇した。魚類の麻酔薬MS222で処理した5匹の稚魚を入れたとき,温度上昇は対照群と差はなかった。これらの結果は,尾びれのふるえ様の動きで熱が生まれたことを示す。間欠的な動きを生む発振器の場所を探るため,脳神経系のレベルで切断しふるえの変化を見た。後脳と脊髄の間を切断すると,間欠的な動きが連続的なものに変わった.これは,脳の発振器が,連続的なふるえを周期的に遮断していることを示す。
著者
阪口 翔太
出版者
京都大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

平行進化では共通の遺伝変異で類似表現型が生じたのか,異なる変異が関与したのかが問題となる.アキノキリンソウはもともと秋に開花する植物だが,北海道の高山と蛇紋岩地では夏前に開花する性質が進化している.本研究ではこの2生態型について早期開花性の遺伝基盤を特定し,その進化過程を解明することを目的とした.蛇紋岩型で著しく分化したゲノム領域を調べたところ 2つの開花遺伝子が抽出された.しかしこれらの候補遺伝子は高山型では分化していなかった.また共通圃場で2型間でも開花期のずれが確認され,開花遺伝子の発現にも時間差があったことから,早期開花性は高山と蛇紋岩地で別個の遺伝変異に基づいて進化したと考えられた.
著者
静脩編集委員会
出版者
京都大学
巻号頁・発行日
vol.31, no.(114), 1994-09-30