著者
古川 雅子 久保 博子 岡田 愛理 安岡 絢子 杉崎 智子 竹谷 伸行
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間-生活環境系シンポジウム報告集
巻号頁・発行日
vol.36, pp.71-74, 2012-11-21

本研究の目的は、オフィス空間において省エネルギーかつ快適な温熱環境を作り出すために、実際のオフィスにて実測調査及び執務者にアンケートを実施し、執務者の温熱的快適性を検討することである。オフィス6ヶ所にて、2011年12月~2O12年3月に温湿度・風速・グローブ温度の実測調査及び、執務者に温熱環境評価アンケートを実施した。その結果、執務時間の温湿度はおよそ20~23℃、40%に制御されていた。上下温度分布は、0.1mと1.1mではおよそ2~4℃の温度差があった。快適とされている範囲においても、執務者は、寒い・不快側の申告をしていた。
著者
大中 忠勝 野中 麻由
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間と生活環境 (ISSN:13407694)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.93-98, 2011-11
被引用文献数
1

20名の青年女子(21.3±0.6歳)を被験者とし、自己申告に基づき暑がり(HS群:12名)と非暑がり(NS群:8名)の2群に分けた。被験者は26℃(60%RH)の前室で20分間安静を保った後、28℃、30℃、32℃(50%RH)のいずれかの温度に設定された曝露室で60分間過ごした。実験中、身体7か所の皮膚温、舌下温、衣内湿度が測定され、同時に温冷感、快適感の申告が記録された。28℃への曝露60分目の平均皮膚温は、HS群33.6℃、NS群33.2℃であり、群間に有意差(P<0.01)が認められた。HS群は発汗量が多く、発汗開始時期も早い頃向にあったが、群間に有意差は見られなかった。両群とも、平均皮膚温と快適感の間に有意な相関関係が認められ、HS群の回帰直線の傾きはNS群より大きかった。HS群は平均皮膚温の上昇に伴い、温熱的不快感を生じさせやすい頃向にあることが示された。
著者
北村 恵理奈 柴田 祥江 松原 斎樹
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間-生活環境系シンポジウム報告集
巻号頁・発行日
vol.36, pp.17-20, 2012-11-21

京都市南部の集合住宅4軒を対象に,すだれによる日射遮蔽や簡易内窓による断熱を施し,わずかな費用で省エネ性や快適性を得ることを試みた。施工前後の温湿度測定とエアコンの電力消費量測定,測定終了後にヒアリング調査を実施した。ヒアリング調査では「涼しくなった」という声が聞かれたが,実際に電力消費量が減少した住宅は2軒であり,他2軒は増加していた。電力消費量が減少した住宅ではエアコンの設定温度に変化はないが使用時間は短縮し,エネルギー削減につながった。増加した住宅では,断熱を施したことにより居住者が冷房効率の向上を実感し,エアコン使用時間が増加した。このことより,断熱性能の向上は電力消費量の減少には必ずしもつながらないことが示された。しかし,全住宅が簡易断熱及びすだれ設置による効果を感じていた。
著者
野中 麻由 大中 忠勝
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間-生活環境系シンポジウム報告集
巻号頁・発行日
vol.34, pp.187-188, 2010-11-22

非冷え性者との比較により、室温22℃(PMV=-1)および24℃(PMV=-0.5)における冷え性者の皮膚温や温冷感の違いを検討した。被験者は健康な女子学生16名とし、自己申告及びアンケートにより冷え性グループ9名と、非冷え性グループ7名に分けた。24℃曝露では、非冷え性グループが冷え性グループに比べ、有意に寒し順に申告した。22℃曝露では、冷え性グループと非冷え性グループの温冷感申告値の差が小さかった。22℃曝露では、非冷え性グループに比べ冷え性グノトプの平均皮膚温と体幹部の皮膚温が高かった。冷え性グループの高い皮膚温が、非冷え性グループに比べ涼しい環境で涼しさを感じない原因の1つであることが示唆された。
著者
石井 仁 渡邉 慎一 堀越 哲美 植村 崇史 河合 大喜 関谷 友里 高橋 奈津子
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間-生活環境系シンポジウム報告集
巻号頁・発行日
vol.36, pp.247-250, 2012-11-21

2つの野外音楽イベント会場において温熱環境の測定を行い,その実態把握と評価を行った。さらにイベント来場者の熱中症対策ならびに防寒対策の実態調査を行った。7月開催のイベントは熱中症の発症する危険性があり,積極的な休憩や十分な水分補給などの対策が必要な温熱環境であった。 10月開催のイベントは熱中症の発症する危険性は少ないが運動や労働をする際には水分補給が必要な温熱環境であった。気象庁の観測データではイベント会場のWBGTを精度よく推定することは困難であった。来場者へのアンケート調査から携行した熱中症対策および寒さ対策の物品ならびに熱中症予防および防寒対策の実態を把握した。両イベントとも熱中症対策の物品としては「タオル」,「水・お茶・その他飲み物」,「帽子」,「うちわ・扇子」の携行率が高く,熱中症予防として「水を飲む」,「適度な休憩をとる」,「日陰に入る」,「涼しい場所に行く」の実施率が高かった。
著者
井幕 知伸 堀越 哲美
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間と生活環境 (ISSN:13407694)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.13-27, 2013-05

本研究は,人体の熱平衡式に基づく予測至適着衣量を用い,日本各地の「涼しい夏」の体感気候の経年変動の分布図を作成し,その特徴を検討したものである。各年代を通じ,北で着衣量が多く,小笠原と先島諸島で少なしい傾向が示され,京都では周囲より少ない値を示した。1960年代では,東北北部まで0.9cloで,関西から九州は,0.4clo台である。1970年代では,関東より北は1970年代と同様の傾向で,西日本が暑熱化傾向を呈した。1980年代は,北海道南部と東北の着衣量が低く,1990年代では,関東まで着衣量が多く,四国・関西では着衣量が少なく,西で多くなる傾向であった。2000年代は,最も寒冷傾向である。日最高予測至適着衣量の上昇・下降の主な影響要因は気温であるが,風速も影響要因としての寄与率が高い傾向にある。
著者
大中 忠勝
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間と生活環境 (ISSN:13407694)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.1-6, 2013-05

本研究の目的は暑がりと自己申告した者の家庭での夏期における温熱環境の実態を調査し、その環境での生理・心理反応を明らかにすることである。被験者の家庭での温熱環境調査が夏期に行われた。被験者は21歳から23歳の若年女性20名であり、自己申告により暑がり10名と非暑がり10名に分けた。被験者の家庭の温度、湿度を2分間隔で1週間にわたり記録した。在宅中は約1時間ごとに身体7部位の皮膚温(前額、胸、前腕、手背、大腿、下腿、足背)を放射温度計により測定した。同時に温冷感、快適感、着衣状況を記録した。室温と温冷感との間に有意な相関関係が認められ、暑がり群の回帰直線の回帰係数(傾き)は、非暑がり群より有意に小さかった(P<0.01)。暑がり群では室温30.2℃で「やや汗をかいている」と申告し、非暑がり群が同じ申告を行った室温より0.5℃、有意に低かった(P<0.05)。室温の希望度において、このままでよい」と申告した時の室温は、暑がり群27.9℃、非暑がり群28.5℃であり、両群間に有意差が認められた(P<0.01)。部屋で着用していた衣服は暑がり群0.27クロ、非暑がり群0.25クロであり、群間に有意差は認められなかった。暑がり群は、暑さに敏感であり、より涼しい温熱環境で快適さを得ており、夏季に薄着である状況下でさえエアコンを使用し、快適な温熱環境を得る傾向があった。
著者
山岸 明浩 堀越 哲美 石井 仁
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間と生活環境 (ISSN:13407694)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.23-34, 1997-07
被引用文献数
1

本研究は連続した上下気温分布が,人体の皮膚温および温冷感に与える影響について明らかにすることを目的とし,裸体・椅座・安静状態で実験を行い検討した。実験は,床上0.7mの気温25℃,28℃と床上0.1mと1.1mの上下気温差0℃, 4℃, 8℃との組合せ条件下で,青年男子5名を用いて行った。人体各部位の皮膚温は,前額から足背へと部位の位置が低くなるにつれ低い値となり,上下の気温差とともに気温条件との組合せにより人体各部位の皮膚温への影響が変化する。各部位の温冷感申告は,他の部位に比べ頭部は暑い側,足部は寒い側の申告を示した。上下気温差は,人体の上半身よりも下半身に与える影響が大きい。人体の上下方向の皮膚温と温冷感申告の差は,上下気温差が大きくなるに従い増加する傾向であった。実験条件暴露60分間の皮膚温の変化は,気温28℃の実験条件では下腿,気温25℃条件では平均皮膚温,下腿,足背の皮膚温が低下する傾向にあった。
著者
松原 小夜子 後藤 春香
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間と生活環境 (ISSN:13407694)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.153-160, 2012-11

20代若者を対象として、日常生活における「もったいない」意識と実際の行動を捉えた結果、以下の知見を得た。1)日常生活に関する「もったいない」意識は、食べ物や資源・エネルギー消費に関する項目で高く、消費生活の充実や生活の利便性に関する項目では低い。2)「もったいない」意識に比べると、実際に行動している項目は全般に少なく、行動しない主たる理由は「面倒くさい」「利便性重視」である。3)「もったいない」意識と実際の行動の結果を組み合わせ、4つに類型化すると、「意識低・行動低」が最も多く、次いで「意識高・行動高」と「意識高・行動低」が同程度あり、「意識低・行動高」は少ない。そして、男性よりも女性の方が、意識・行動類型が高い。4)意識・行動類型は、「家庭内で、省資源・省エネルギーについて家族で心がけていることや、無意識に慣習として行っていること」がある場部こは、男女ともに高いなど、「家庭内生活慣習」の有無と関連があることがわかった。
著者
李 花子 勝浦 哲夫 岩永 光一 下村 義弘 東 洋邦 一條 隆
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間と生活環境 (ISSN:13407694)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.21-27, 2008-05

光は,ヒトの急性な生理的反応や覚醒反応を引き起こす。最近,夜間の光反応に対する波長の依存性が報告されたがこれらの研究は,ほとんどメラトニン抑制や位相変位に関するものである。ヒトの昼間の覚醒水準に及ぼす影響を明確に示した研究はまだ少ない。本研究では,脳波と瞳孔径を測定して昼間の覚醒水準と瞳孔の反応に関する波長の効果を検討した。実験は,男子大学生10名について行なった(23±2.9歳)。単波長光条件は,420,458, 500, 550, 610, 670 nmにピークをもつ6つの干渉フィルタを使用して設定した。AAC(α波減衰係数)は, 240, 550, 610, 670nmより458nmの単波長光においてのAAC変化量が高いことが示された。このことから,昼間の458nmの単波長光暴露時の覚醒水準が高いことが示唆される。瞳孔径は,波長と時間経過の有意な交互作用(p=0.0014)が認められた。そこで,時間経過の区間毎に瞳孔径の変化を比較した結果,単波長光条件暴露16分後に,670nm単波長光暴露時の瞳孔径は458, 500, 550, 610nmのより大きくなることが示された。
著者
北川 晃一 早野 ひろ子 斎藤 俊彦 菰田 紀子 田辺 新一
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間と生活環境 (ISSN:13407694)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.42-51, 1996-12

放射冷暖房方式は,従来の対流による空調方式よりも快適で省エネルギー性が期待できるといわれている。床暖房やラジエータを用いた放射暖房方式は数多く実用化されており,研究例も多い。一方,放射冷房は,研究はよく行われているが,日本では結露の問題等から一般に普及していないのが現状である。本研究では,日本の住宅においても使用可能な放射冷暖房システム開発のための基礎研究として,天井放射冷房時における,湿度,微弱気流の体感に及ぼす影響を調べることを目的とし,被験者実験を行い,全身および身体各部位の熱的快適性を分析した。実験は,湿度,気流について数種類の条件に設定した人工気候室において,種々の表面温度にコントロールした放射冷却パネルの下に被験者を座らせ,温熱環境を計測し,温冷感と快不快感に関する申告をさせた。本研究の主な結果として,放射冷房時の全身の温冷感に対する湿度(45%rh, 65%rh, 85%rh)及び気流(0.1m/s: constant, on/off; 0.1〜0.3 m/s: random)の影響を新標準有効温度SET^*を用いると全身の温冷感スケールで±℃1程度の誤差を生じること,微弱気流を放射冷房と併用することにより,全身及び局所的な温冷感が全体的にSET^*の評価より温冷感スケールで1程度涼しい方向にシフトするとともに,快適感が向上する傾向があることを明らかとした。
著者
田辺 新一 長谷部 ヤエ 田中 辰明
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間と生活環境 (ISSN:13407694)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.64-67, 1994-06

標準夏服,セー夕一組合わせ衣服,ウインドブレーカー組合せ衣服の気流速度増加による着衣熱抵抗の減少に関する実験結果に関して述べている。熱的に19分割された椅座位のサーマルマネキンを0.1, 0.22, 0.32, 0.48, 0.69, 1.0, 1.4m/sの気流速度下に曝露した。標準夏服の場合,作用温度は27℃とした。また,セーターとウインドブレーカー組合せの場合,作用温度23.3℃とした。静穏気流時05.cloの標準夏服の基礎着衣熱抵抗は風速1.0m/sで25%減少した。セーター組合せの基礎着衣熱抵抗は,気流速度増加によりウインドブレーカ組合せ衣服より大きく減少した。着衣熱抵抗の減少を考慮に入れた等価温度がサーマルマネキンの熱損失に基づき導き出された。気流を透過する衣服では,従来の等価温度より気流の冷却効果があることが示された。
著者
松永 和彦 持田 徹
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間と生活環境 (ISSN:13407694)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.40-48, 2003
参考文献数
19

自動車用の評価指標として用いられている等価温度の分析を行っている。本報告では、身体の内部から環境までの熱移動を系統的に考えることにより、新たに等価温度を導いた。等価温度は、その定義式の中に人体の対流熱伝達率、放射熱伝達率、着衣量などがパラメータとして表示されており、Madsenらの等価温度において、定数値と扱われている3つの項に掛かる係数の内部構造を明らかにしている。内臓、骨、筋肉、血液などをマクロにみた、体心から皮膚表面までの相当熱抵抗の取りうる範囲を、体心温、皮膚温、気温、湿度、活動量の組み合わせを考えて検討した。その結果、この等価温度式では、風速が変化した場合、Madsenの等価温度式では気温の項は、実際よりも影響が小さく、平均放射温の項は、実際よりも影響が大きくなることを確認している。等価温度の適用範囲、有効性を検討した結果、暖房環境で使用する限結果的には大きな差が無いことを確認している。
著者
河原 ゆう子 美和 千尋 出口 晃 水谷 行雄
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間と生活環境 (ISSN:13407694)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.23-30, 2010-05
参考文献数
15
被引用文献数
1

本研究では,入浴介護の労働負担について,入浴介護方法の違いによる生理的心理的影響を明らかにし,介護負担を軽減するための新たな入浴設備「ミストサウナ」の導入の可能ら生を検討した。小山田記念温泉病院に勤務する看護師と介護職員10名を対象とし,大浴場での入浴介護,油圧昇降式浴槽を用いた入浴介護,入浴介護以外の介護をそれぞれ60分間行わせ,介護前後の血液成分,血圧,心拍数,握力,自覚症しらべ,POMSの測定を行い,実験後に温冷感などのアンケートを行った。その結果,大浴場での介護は油圧昇降式浴槽を用いた介護に比べ,上下移動と暑熱暴露があるため,全身疲労を伴い陰性な気分を保持しやすい介護形態であることがわかった。その対策のひとつとして,ミストサウナ専用室の設置が考えられた。入浴者,介護者双方にとって有用な入浴介護設備の開発と導入が期待される。