著者
矢野 卓也 宇佐美 真一 西尾 信哉
出版者
信州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

ミトコンドリア遺伝子変異による難聴は、両側性感音難聴の2~3%に及ぶとされており、聴覚機能の維持にミトコンドリアが深く関与することは明らかになっているが、ミトコンドリア遺伝子変異により難聴を発症する詳細なメカニズムは未だ不明である。本研究では、難聴患者400名のミトコンドリア遺伝子解析を行うとともに、その臨床的特徴に関する詳細な分析を行った。その結果、日本人難聴患者における変異の種類と、頻度、また臨床的特徴を明らかにすることができた。また、ミトコンドリア遺伝子変異を持つ難聴患者由来の培養細胞を用いて、難聴発症のメカニズムを明らかにすることができた。
著者
西沢 理 田辺 智明
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

冷えストレスによる下部尿路症状(LUTS)はQOLを低下させることで悩んでいる人が多いが検討は十分とは言えない。基礎的検討では膀胱の尿路上皮に注目し, 前立腺肥大症患者において,自律神経系受容体mRNAの発現を検討したところ,アドレナリンα1D, β3受容体,セロトニン2b, 3a, 7受容体の変化が起こることが示された。臨床的検討では健康講座の受講生を対象として冷え症と冷え性でない2群に区分し,LUTSに対する体操の効果を検討したところ,冷え症群では,体操が蓄尿症状を改善させることが認められた。また,大建中湯が便秘症とLUTSを有する患者に対して冷え症とLUTSに有用なことが示された。
著者
中村 正行
出版者
信州大学
巻号頁・発行日
1994-03-20

信州大学博士(工学)・学位論文・平成6年3月20日授与(乙第3号)・中村正行
著者
森 政之
出版者
信州大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

SM/JとA/Jという遺伝的背景が異なる実験用マウス系統を交配して得られた雑種第一世代は繁殖性が両親より優れていることが判明した。このような雑種強勢と称される現象と、その逆の現象である近交退化(血縁個体間の交雑仔に、成長の遅れ、繁殖性の低下や、高率な奇形の発生などが起きる現象)が生じるメカニズムの解明には、これらの2系統マウスから作られたリコンビナント近交系マウスが有用である可能性を示した。
著者
大谷 元
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

平成8年度及び9年度に「乳汁κ-カゼインの免疫抑制作用に関する研究」という課題のもとに研究を行い、得られた成果は以下の通り要約される。1.牛乳κ-カゼインのTーリンパ球増殖抑制メカニズムについて検討を行い、κ-カゼインはそのκ-カゼイノグリコマクロペプチド(CGP)域(106-169域)のシアル酸を含む糖鎖を介して単球・マクロファージに結合し、IL-1レセプターアンタゴニストの大量生産を誘導することと、CD4+Tーリンパ球に直接結合し、その膜表面へのIL-2レセプターの発現を阻害することにより、Tーリンパ球の増殖を抑制する。なお、CGPは、IL-1レセプターアンタゴニストと同じIL-1ファミリーのサイトカインであるIL-1αやIL-1βの生産には影響を与えない。2.κ-カゼインは本来、マクロファージの食作用や活性化を抑制する作用を有しているが、その作用はペプシン消化では直ちに消失するが、トリプシンやキモトリプシン消化を行っても殆ど変化しない。3.CGPをマウスの飼料に混合し、経口投与すると、経口投与抗原や腹腔内投与抗原に対する特異抗体の生産が顕著に低下し、その原因はサブレッサーTーリンパ球の数が機能、あるいはその双方が増大していることによる。4.人乳CGPはマウスのT、B、両リンパ球に対してアポトーシス誘導能を有する。5.牛乳κ-カゼインをトリプシンで消化するとアポトーシス誘導能を有するペプチドが生じ、そのペプチドはパラ-κ-カゼイン(1-105)域とCGP域の双方から生じる。以上のように、牛乳κ-カゼインによるTーリンパ球の増殖抑制メカニズムを明らかにするとともに、人乳κ-かゼインのペプシン消化により生じるCGPにはアポトーシス誘導能があることや、牛乳κ-カゼインでも直接、トリプシン消化するとアポトーシス誘導ペプチドが生じることを明らかにした。
著者
高坂 泰弘
出版者
信州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

側鎖に重合可能なビニル基を有するβ-アミノ酸,α-(アミノメチル)アクリル酸のエステル,アミドおよびそれらの類縁体の重合について,立体規則性制御を中心に検討し,炭素-炭素骨格を主鎖に有するポリアミノ酸類を合成した.生成ポリマーが水中において温度/pH応答性を示すことを見出し,それらの機能とモノマー,ポリマーの構造的相関について評価した.また,ジビニルモノマー (= ビスアミノ酸エステル) の立体特異性環化重合に成功した.
著者
中沢 洋三
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

FLT3/ITD遺伝子変異を有する急性骨髄性白血病(AML)患者の生命予後は不良である。FLT3/ITD遺伝子変異AML細胞株(MV4-11)はGM-CSF受容体(GMR)を高発現する。そこで、GMRと特異的に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を構築し、GMR CARを発現する遺伝子改変T細胞を樹立した。GMR CAR-T細胞とMV4-11細胞を1:5の比で混合し5日間培養したところ、GMR CAR-T細胞はMV4-11細胞の98%を死滅させた。GMR CAR-T療法はFLT3/ITD遺伝子変異陽性AMLの治療に有用である可能性が示唆された。
著者
田中 佐千恵
出版者
信州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

2014年4月~2019年3月に当院精神科を受診した気分障害・ストレス関連障害の休職者のうち,研究に同意の得られた患者22名(うつ病11名,双極性障害7名,その他4名,男性18名,女性4名,平均39.0歳,平均参加期間137日)がプログラムに参加した.プログラム開始時と終了時の評価尺度の比較では,認知機能を測定するBACSの言語記憶,言語流暢性,注意,社会適応度を測定するSASS-Jの興味や好奇心,職務遂行能力を測定するGATBの知的能力,言語能力,書記的知覚,空間判断力,形態知覚,運動共応,手腕の器用さ,復職準備性を測定するPRRSの基本的な生活状況,症状,職場との関係,作業能力,準備状況,健康管理,PRRSトータルで有意な改善を認めた.うつ病の重症度を測定するHAM-D, 躁症状の重症度を測定するYMRSに有意差は認められなかった.プログラム終了後に復職できたのは16名(72.7%)であり,就労継続率は1年後,2年後ともに93.7%であった.プログラム終了後では,特に作業能力や復職の準備性の改善が大きかった.長期的検討では,復職率は国内での先行研究で示された,63.6~77.2%(秋山2003; 北川2009; 平澤2011; 大木2012)と同程度であり,就労継続率は既報の継続率,1年後86.0%,2年後71.5%(五十嵐2014)と比較しても高く,作業療法を取り入れた多職種で行う地域包括型のリワークプログラムの有効性が示唆された.2018年度は地域のハローワーク,障害者就業・生活支援センターと連携し,離職者のフォローアップ体制を整えることができた.
著者
伴野 潔
出版者
信州大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

ニホンナシ3品種‘おさ二十世紀'、‘菊水'、‘幸水'とリンゴ3品種‘ふじ'、‘つがる'、‘王林'を供試して、それぞれ正逆交雑を行ない、胚培養を実生法と併用して、ニホンナシとリンゴの属間雑種固体を110系統余り育成した。また、胚培養法を用いてシュート形成が認められない雑種の子葉においても、不定芽誘導法を併用することで、効果的に雑種が獲得できることが明らかになった。得られた属間雑種について、新梢や葉の形態的特性、葉や枝のアントシアニン蓄積の有無、圃場での病虫害の発病程度等を調査するとともに雑種の光合成特性、接ぎ木親和性についても調査した。これらの結果から、得られた属間雑種個体の表現形質は母本に類似している反面、アントシアニンの発現性や父本の台木に対する接ぎ木親和性の向上等、父本の遺伝子もかなり導入されていることが明らかになった。また、これらの属間雑種の光合成活性は、自根樹では低いものの、接ぎ木によって母本と同程度に回復することも明らかになった。さらに、ナシ黒斑病、リンゴ斑点落病に対する検定を行ったところ、ナシを母本とした雑種では、両病に対する遺伝分離が様々に現れるが、リンゴを母本としたものでは、両病に対してほとんどすべて抵抗性を示した。また、リンゴ黒星病について検定したところ、ナシを母本とするものでは、すべて抵抗性を示し、リンゴを母本とするものでも28系統のうち7系統が抵抗性と判定された。これらの結果は、耐病性育種を進めるうえで、属間雑種の利用が新しい育種戦略となりうることを示唆した。一方、細胞融合による属間雑種を得るために、プロトプラストの単離と培養法、PEG法及び電気融合法による細胞融合法について検討した。その結果、プロトプラストからカルスまでの培養系については確立できたものの、カルスからの再分化率が極めて低く雑種育成が困難であった。
著者
塩澤 彩香
出版者
信州大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、新規抗リウマチ薬イグラチモドによるワルファリン代謝阻害の機構を明らかにすることを目的とし、解析を行った。プールドヒト肝ミクロゾーム(HLMs)および組換えCYP2C9(rCYP2C9)を酵素源として用い、S-ワルファリン7-水酸化酵素活性に対するイグラチモドの影響を検討した。イグラチモドはHLMsおよびrCYP2C9の活性を濃度依存的に阻害し、IC_<50>値はそれぞれ14.1μMおよび10.8μMであった。阻害の速度論的解析を行った結果、イグラチモドは両酵素源に対して競合型の阻害様式を示した。HLMsおよびrCYP2C9に対するK_i値はそれぞれ6.74μMおよび4.23μMであった。イグラチモドによる阻害が代謝依存性を示すか否かを明らかにするため、プレインキュベーションの影響について検討したところ、NADPH存在下で各酵素源とイグラチモドを20分間プレインキュベートしても、IC_<50>値の低下は認められなかった。Obach RSら(J. Pharmacol. Exp. Ther., 316, 336-348, 2006)の方法およびコルベット錠25mg(イグラチモド製剤)のインタビューフォームに記載された方法を用いて、本研究で得られたHLMsのK_i値と肝臓中の非結合形薬物濃度(約0.8μM)から、臨床での薬物間相互作用の可能性について推察を試みた。その結果、S-ワルファリンのAUCはイグラチモドと併用することによって約2.3倍の上昇が見込まれた。カペシタビンを併用したときのワルファリンの体内動態および薬効の変動を解析した臨床研究では、S-ワルファリンのAUCが1.57倍増加したとき、PT-INRが1.91倍上昇したことが報告されている(Camidge R et al., J. Clin. Oncol., 23, 4719-4725, 2005)。これらのことから、イグラチモドとワルファリンを併用したとき、イグラチモドがワルファリンの代謝を阻害し、プロトロンビン時間を延長する可能性が示唆された。以上の結果から、イグラチモドはそれ自体がワルファリンの代謝を阻害することが明らかとなった。臨床で報告されたイグラチモドとワルファリンの相互作用の機序の1つとして、イグラチモドによるCYP2C9活性の阻害が考えられた。
著者
三木 敦朗 奥山 洋一郎 白澤 紘明 斎藤 仁志
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

森林管理を持続可能な水準に高めることが求められていますが、一方でそれを実行する市町村では人材確保が難しいという現状があります。行政担当者の意志決定を支援するAIシステムがあれば、担当者は住民や関係者との合意形成等に専念することができ、持続可能な森林管理と行政コストの圧縮が両立できるのではないかと考えます。本研究は、そうしたAIの可能性を調査・実験等によって検証します。また、こうしたシステムが導入されたとき、森林管理や合意形成のあり方がどのように変化するのかを、制度と人材育成の面からも検討します。
著者
川股 知之 渡辺 雅彦 成松 英智
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

難治性がん疼痛の新たな治療法として脊髄大麻受容体(CB1)に注目しその鎮痛機序とがん疼痛治療への応用について研究を行った.CB1は脊髄興奮性介在神経の軸索終末に特異的に発現しており,神経伝達物質放出抑制よって鎮痛に作用することが示唆された.骨がん疼痛状態では脊髄μオピオイド受容体は発現低下するがCB1発現に変化なく,CB1活性化により骨がん疼痛が減弱することが明らかとなった.CB1は骨がん疼痛治療の新たな標的として期待される.
著者
中山 裕一郎 田島 達也 齊藤 忠彦
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では,音カメラを用いて声の視覚化を試みた。声は,口や胸部を中心に放射しており,正面のみならず,側面や背面からも放射している状況を視覚的にとらえることができた。声楽熟達者の声は,初学者と比べて,胸部を中心とした声の放射範囲が広くなり,倍音成分を多く含むことを明らかにした。二人で同じ音の高さの声を出し,二人のピッチが合っている状態のときには,二人の間の空間に,音がつながって見える現象を捉えることができた。なお,音カメラは,現段階では高額な装置で,一般に普及していないことから,実際の指導場面におけるNIRSによる検証は研究途上にある。
著者
大谷 元
出版者
信州大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

1.牛乳k-カゼインのグリコマクロペプチド(106-169域)は単球/マクロファージに結合し,インターロイキン-1レセプターアンタゴニストの生産を誘導することによりBリンパ球やヘルパーTリンパ球の増殖・分化を抑制する。また、グリコマクロペプチドの単球/マクロファージへの結合は,グリコマクロペプチド分子内のシアル酸を末端にもつ糖鎖やホスホセリン残基のような強い負の荷電などの複数の負の荷電を介して起こる。2.牛乳k-カゼインのラクトフェリンは肥満細胞からの化学情報伝達物質の遊離を抑制することにより,抗アナフィラキシ-活性を有する。また、ラクトフェリンはペプシン消化することにより,未消化ラクトフェリンの場合とは異なった機構で作用する抗アナフィラキシ-成分を生じる。3.牛乳αS_1カゼインとk-カゼインはマクロファージの活性化に対して抑制的に,β-カゼインは促進的に働き、抑制的に働くαS_1カゼイン,k-カゼインおよびカゼイン由来の抑制ペプチドはすべてマクロファージに結合し,促進的に作用するβ-カゼインやそれ由来の促進ペプチドはマクロファージに結合しない。4.鶏卵アビジンはサプレッサーTリンパ球に結合し,サプレッサーTリンパ球上への1L-2レセプターの発現を抑制することにより,サプレッサーTリンパ球の増殖を抑制する。また,ウズラ卵オボアルブミン,オボトランスフェリン,オボインヒビターおよびリゾチームもTリンパ球やBリンパ球の増殖抑制作用を有しており,ウズラ卵オボトランスフェリンの抑制作用はリンパ球に特異的な細胞障害性とリンパ球増殖抑制成分の誘導による。さらに,ウズラ卵オボインヒビターのリンパ球増殖抑制作用はリンパ球増殖抑制因子の誘導による。
著者
樋口 由美子
出版者
信州大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2010

[目的]樹状細胞療法をうける患者にG-CSFを投与することにより、樹状細胞ワクチンの作製量を増やすことができるかということを、単球表面の接着分子及び細胞外マトリックスの発現に着目し解明する。[方法]1.対象樹状細胞療法を行う患者7名を対象とし、G-CSF投与前と投与24時間経過した後の末梢血を用いた。2.末梢血からの単球分離末梢血より比重遠心分離法を用いて単核球を分離した後、CD14Micro Bead (Miltenyi Biotec)と反応させ、磁気分離装置(Auto MACS)を用いてCD14陽性細胞を分離した。3.PCRアレイ分離したCD14陽性細胞よりtotal RNAを抽出し、RT反応によりcDNAを作製した後、RT^2 SYBER Green/Rox qPCR Master Mix (Quiagen)を用いてPCR反応液を作製し、RT^2 Progiler PCR Array (Quiagen)を用いて定量PCRを行った。装置はABI7900 (Applied Biosystems)を使用した。[結果]末梢血より分離したCD14陽性細胞のうち、単球は97.86±2.62%であった。PCRアレイを用いて84種類の接着分子及び細胞外マトリクスの発現解析をした結果、G-CSF投与前に比較して投与後ではMMP9のmRNA発現量が7.62倍に増加していた(最大値29.61倍・最小値1.91倍)。MMP9はヒト末梢血単球においても少量分泌されており、in vitroの実験においては単球を培養する際にPMAまたはM-CSFを添加することによりMMP9の分泌量が増加し、単球の接着性、伸展性が促進されることが報告されている(mRNA量はそれぞれ7倍、5倍)。今回の結果は、その報告を強く支持するものであり、G-CSF投与により単球のシャーレへの接着が増強され、結果的に樹状細胞ワクチンの作製量が増加すると考えられた。
著者
志村 佳名子
出版者
信州大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、日本の古代・中世に行われた官職の任命儀礼である除目(じもく)の儀式内容とその作法を記す史料(除目書)の形成過程の検討から、古代・中世における朝廷の政治制度を解明することを目的とする。除目は複雑な作法を伴う儀式で、その作法を記す除目書も難解なため、内容の検討も写本の整理も不十分である。そこで本研究では、近年高い学術的価値が見出された三条西家の除目書を整理し、九条家などの摂関家が有する除目書と比較・検討し、重要な未翻刻史料の翻刻・解釈を行うことで、除目研究の基盤を構築する。さらに、除目儀式を政治制度として位置付け直すことで、古代・中世の朝廷の政治構造を解明する新たな研究視角の確立を図る。
著者
山本 もと子
出版者
信州大学
雑誌
信州大学留学生センター紀要 (ISSN:13467433)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.19-31, 2004-03

日本語の謝罪表現には様々な種類があるが、代表的なものは「すみません」「ごめんなさい」の二つである。これらはまったく同じ条件の下で発話されるわけではない。話し手は発話する前に、意識的または無意識的に、謝罪するに至った状況や話し手と聞き手との人間関係を判断し、どの表現を使用するか選択している。そこで、テレビドラマのシナリオから「謝罪」と取れる表現をすべて抜き出し、これらをウチ。ソト。ヨソの関係に分類し、次いで性差、年齢差に分けて分類した。その結果、女性より男性、年上より年下の方が謝罪する回数が多いことが分かった。また、社会的立場が弱い方が強い方より謝罪する回数が多く、立場が強い方が謝罪する場合、「すみません」はほとんど使用しないことが分かった。