著者
猪瀬 昌延
出版者
信州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は可塑性のある造形素材を用いて触覚による表現の可能性を考察した。対象は生徒児童及びその保護者とし、研究期間内に5回のワークショップを行った。そこで明らかになったことは可塑材や泥素材に働きかけた自己を素材に写し取られた自己として鑑賞の対象とすることである。このことは自らの行為を客観的な対象として捉え直し認識することを可能にし、新たな自己の形成に関わるものであると考えられる。また、意思を直接写し取った触覚による表現を純粋に芸術表現活動と捉えることを可能にした。
著者
海谷 治彦
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

情報システムの要求定義段階において,システムアーキテクチャに基づき,発生しうる脆弱性と,その対策群を予測するモデリング手法とツールを開発した.システム内の重要資産(アセット)の依存関係に基づきモデルは構築され,脆弱性と対策は,その依存関係グラフの構造的な特徴に基づき系統的に予測できる.ツールは独自のモデル検査エンジンによる予測の自動化と,予測結果の可視化を行う.これによって,セキュリティ分析者を含むシステム開発関係者が,予測結果の妥当性を吟味することが可能となった.
著者
阿久津 昌三 青木 澄夫 梅屋 潔 小泉 真理 澤田 昌人 阿部 利洋 ウスビ サコ
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本調査研究の目的は、現代アフリカにおける独裁者の虚像と実像に関する民族学的研究という研究課題のもとに、(1)軍事独裁、2)一党独裁(3)個人独裁という3つの政権の実態があることを探究することである。現代アフリカの7カ国、6独裁者(為政者)について現地調査を実施した。具体的には、ンクルマ(ガーナ)、セク・トゥーレ(ギニア)、ケニヤッタ(ケニア)、ニエレレ(タンザニア)、アミン(ウガンダ)、モブツ(コンゴ)である。本調査研究は、権威主義的政権及び指導者を探究することによって、通時的、共時的な独裁の包括的分析を提示した。
著者
村山 研一
出版者
信州大学
雑誌
地域ブランド研究 (ISSN:18812155)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.5-32, 2005-12-04

日本では、高度成長期において、地方を発展させるために工業開発の手法が導入されてきた。すなわち、行政が基盤投資を行って工業の誘致・導入が図られてきた。しかし、グローバル化の進展は、工業空洞化状態を作り出し、これまでの工業開発戦略を採用し続けることは困難になった。今日、地域の活性化を図るためには、内生的な発展の手法を検討する必要がある。本論文で提唱するのは、内生的発展の一手法としての「地域ブランド」である。ブランドはマーケッティング分野で近年重視されるようになってきた。本稿では、ブランド化の考え方を「場所」に対して拡張する。地域社会が内在的に持つ諸資源を拾い上げながら、一つのシンボルに集約させ、地域に新しい魅力を作り上げることが地域ブランドの手法である。地域ブランドは、私的ブランドとは異なり、地域の社会財としての意味を持つ。それゆえ、ブランド化の手法においても異なったアプローチが必要となる。本稿では、そのための提言がなされている。
著者
降旗 建治
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

提案したロジスティックモデルは、1回の測定結果からでも、閾値、許容値、最適値等が推定できる。このモデルを各種感覚・知覚実験法に拡張・展開した。特に、得られた感覚特性(弁別閾値)と各種疲労要因との関係から、疲労現象は、感覚特性だけで把握することは困難であることがわかった。そこで、このモデルが生理学的側面にも有効かどうかを検討した。具体的に、慢性疲労症候群のリスクファクターとして、非侵襲的頭蓋内圧推定法を提案し、新たに頭蓋内圧伝達関数法を構築し、その有効性を検証した。
著者
松本 剛 春日 恵理子
出版者
信州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

ツキノワグマによる咬傷に対して、感染予防目的に使用べき抗菌薬の検討を行った。捕獲されたツキノワグマの口腔内常在菌を採取し、同定及び薬剤感受性試験を実施した。ツキノワグマの口腔内に常在する細菌は、イヌやネコなどの口腔内常在細菌に比べ、抗菌薬の効きにくい細菌が多く検出された。本研究によりツキノワグマによる外傷症例に対して使用する抗菌薬は、イヌやネコの外傷に対して使用する抗菌薬に比べ広域の抗菌薬を選択する必要が示唆された。
著者
伴野 潔 伊藤 靖夫
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究では,属間雑種を利用したリンゴとナシの飽和連鎖地図を同時に,かつ効率的に作成するとともに,得られた情報をもとに有用遺伝子をマッピングし,リンゴやナシのDNAマーカーを利用した新育種法の開発の可能性を検討した。1.胚培養を用いて育成したリンゴ‘ふじ‘とナシ‘大原紅'の対称雑種62個体を用い,連鎖地図を作成した。その結果,‘ふじ‘では,1348.1cM,17連鎖群,195遺伝子座からなる連鎖地図が,‘大原紅'では1345.4cM,17連鎖群,240遺伝子座からなる飽和した連鎖地図がそれぞれ作成された。作成された両品種の各連鎖群では,SSRを中心とした共優性の各遺伝子座がほぼ同じ順序と遺伝距離で対応し,リンゴとナシのゲノムのシンテニーが高いことが示唆された。2.‘おさ二十世紀',‘大原紅',‘ふじ'の3品種の幼果からm-RNAを単離し,作成したcDNAライブラリーから得られたESTクローン約350種類についてシークエンスを行い,相同性検索を行った。その結果,ナシ果実で発現するESTクローンはこれまでに報告されたリンゴ果実等で発現する遺伝子と極めて相同性が高く,1〜2塩基多型(SNP)を示すものが多く,さらに6%の遺伝子で5塩基以上の挿入あるいは欠失変異が認められた。3.‘おさ二十世紀'と‘大原紅'の交雑系統(Os×Ob)90系統を用い,開花・結実した系統について果実の成熟期,果形,果重,硬度,糖度,酸含量,追熟性の諸形質を調査し,作成された両品種の連鎖地図上に各形質についてQTLマッピングを行った。4.リンゴ品種‘ふじ'へカラムナー形質を導入するために,‘ふじ'とカラムナー品種‘メイポール'とを交雑した。得られた系統を用いて,果実形質を調査するとともに,カラムナー形質や赤葉形質,果皮・果肉の着色形質について遺伝解析し,これらの形質に関与する遺伝子のマッピングを行った。その結果,‘メイポール'の第10連鎖群にはカラムナー遺伝子(Co),第9連鎖群には赤葉遺伝子(Rl)がそれぞれマッピングされた。
著者
伊藤 冬樹
出版者
信州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

高分子媒体中で形成されるピレン誘導体集合体の濃度変化にともなう蛍光スペクトル変化と集合体サイズの関係を定量化・モデル化し,これを利用して結晶核生成初期過程に関する知見を得ることを目的として研究を行った.ピレン誘導体の高分子薄膜での色素濃度に依存した蛍光スペクトル変化は,バルク結晶に至るまでの成長過程における集合体の階層性の存在を示唆するという結論を出した.また,再沈法によって作製したピレン誘導体ナノ凝集体の光照射にともなう蛍光スペクトル変化を見出した.これは,光照射によるピレン誘導体ナノ凝集体の溶解現象に起因する現象であるといえる.
著者
塩原 孝茂 土井 進
出版者
信州大学
雑誌
教育実践研究 : 信州大学教育学部附属教育実践総合センター紀要 (ISSN:13458868)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.21-30, 2002-07-31

In this thesis, we discussed the significance of nature's classroom in school education from three aspects: "the original experience (as it relates to the five senses) ," "the fundamental scientific view point," and "the basis for becoming independent." We showed, based on these three aspects, that Life Environment Study should be effectively used in the early years of elementary school education. Based on the significance of nature's classroom, we suggested that one way to improve Life Environment Study is for students to observe wild birds and to care for animals that they are familiar with. At the same time, we also emphasized the importance of teacher's role in this activity.
著者
奉 鉉京 加藤 鉱三
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は類似する母語(日本語・韓国語)話者による英語前置詞の第二言語習得研究である。理論的方針として、英語の前置詞と日本語・韓国語の助詞を、意味的・統語的考察から、プトロタイプ理論に基づく習得仮説(Prototypicality Hypothesis)と生成文法に基づく言語習得仮説(Economy-Driven Development Hypothesis)を2つの実験研究を通じて検証した習得実験研究では、各々の中間言語、つまり、日本語・韓国語を母語とする学習者のL2としての英語の前置詞の心的標示を3つの構築段階に分けて記述し、母語の影響、習得難易度などについて議論しながら、経済性に統率された習得仮説の優越を提訴した
著者
佐々木 明
出版者
信州大学
雑誌
人文科学論集. 人間情報学科編 (ISSN:13422782)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.115-140, 2000-03

The purpose of this paper is to establish the global outline of the Boreal and the Early Atlantic culture-temprature correlation. 5. The early and middle Boreal (7.9-7.1kaBC) was under fluctuant amelioration toward the B. hypsithermal (7.1-6.6kaBC). Polarward shifted midlatitude high pressure began to dessicate northern Sahara, but newly rained warm grassland in the southern part attracted immigrants. Preceramic meditteranean farmers climbed the gorge of the overwarming Lift Valley to diffuse over the cool Fertile Crescent and a part of their descendants further emmigrated in B.H. to cooler upland steppes, especially to central Anatolia whose copper resource accelerated the Crescent's chalcolithization. Monsoon development moistened continental South Asia to accomodate microlithic Iranians, eastern Central Asia to allow the East Asian ceramic-neolithic penetration, and central and northern China to initiate oryza agriculture. 6. The Early Antlantic opened with short but rapid deterioration which was followed by persistent fluctuation (E.A. interhypsithermal : 6.6-6.2kaBC), and by the E.A. hypsithermal (6.2-5.6kaBC). Midlatitude desiccation transferred the Saharan economy from fishery to nomadic stock rising, forced the Mesopotamian craftsmen to produce the painted wares of higher exchange value to meet their own subsistence demand, and began to force the Mesopotamian population to concentrate into the lower and irrigated areas. Ameriolation gave impetus to ceramic-neolithization both in the Black Sea-Donau areas (their copper resource drawing mediterranean migrants) and in lran-southwestern Central Asia, and to incipient setaria agriculture in northern China. Discussion is summarized as ; (i) 'migration' in this paper is the time-area bound sum total of individuals' movement, is motivating factor for acculturation and is critical countermeasure against fatal crises, (ii) the earliest microlithic industries were technological response to the glacial reduction of pebbled riverbeds, the main suppliers of stone tool materials, and (iii) in the early Holocene the natural size reduction and species diversification of ameliorating faunas paralleled the 'archaic' hunting strategy, nonexistent was the coastal. fishery dependency for which archaeological evidences were eustatic incidents (older and lower sites having been demolished), the polarward migration of the species of intensive gathering, when human-assisted, evolved itself to the incipient agricuture, an achievement having experienced an intermediate millenium, and several mammal species of fitted ethology were polygenetically domesticated as husbandry livestocks.
著者
熊 崎 さとみ
出版者
信州大学
雑誌
信州大学留学生センター紀要 (ISSN:13467433)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.139-149, 2003-03

1990年の入管法改正以来増加してきた就労目的のブラジル人の在住に伴い問題となってきたのが、彼らの子供たちの就学問題である。その現場において生じている様々な問題を明らかにする為に行なった調査において、先生方やブラジル籍児童・生徒の保護者計149名から寄せられた回答によると、①日本全体での統一マニュアルの作成 ②日本文化・教育システム・学校制度・集団生活についてのガイダンス ③専門スタッフの常設(日本語教育・異文化理解のアドバイザー,カウンセラー)④サポート体制の充実(通訳,翻訳)⑤帰国後、ブラジルへの再順応を見越してのことば・教育・文化についての指導、という5点が、主に現在必要とされていることが分かった。
著者
西村 直子 西條 辰義
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究は,理論・実験の両側面から,自主流通米価格形成センター方式の入札市場における価格形成メカニズムの意味を解明し,コメの実勢需給をより反映できる代替市場制度を提案することを目指すものである。コメ市場は銘柄米ごとに,1人の売り手(農協)に多数の買い手(卸)が入札する,売り手独占体制である。また,買手と売り手ともに市場の常連である。参加者は互いの状況に関する豊富な情報を持っていると考えてよいため,オークション分析ではあまり用いられない完備情報ゲームとして分析するのが適当である。理論研究においては,コメ入札市場のゲームモデルを構築し,その均衡の特性を分析した結果,コメ価格設定ルールと上記情報環境の特殊性により,売り手独占市場にも関わらず,独占価格や競争均衡価格を含む多くのナッシュ均衡が存在することがわかった。さらに,その複数均衡から精緻化を経て抽出した均衡では,競争均衡に近い配分のみが達成されることがわかった。加えて,実際のコメ市場では,売り手の指値に上限を与えるルールがあるが,これはむしろ,売り手が将来の需要変化を懸念する場合には,指値設定を高止まりさせる誘引を与えることがわかった。以上の理論分析を基にデザインした実験を実施した結果,上記理論に整合的なデータが観察された。したがって,コメ入札市場現場では約定価格下落が懸念されているが,むしろこれは適正価格(=競争均衡価格)への収斂過程における下落傾向である可能性が強いことが判断できる。一方コメ入札市場との比較対象として第二価格入札市場を分析したが,完備情報下では通常の入札行動とは異なる行動が生じることに気づいた。これは参加者心理的な側面に由来するものと思われる。関連して,第二価格入札と競りとの同値性にも疑問が生じた。この点については今後の研究課題として継続していく予定である。2005年,実験経済学の世界組織ESAの公認を受けた初のコンファレンスを主催した。
著者
中村 宗一郎 寺嶋 正治 藤井 博
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

全身性アミロイドーシスや認知症を引き起こすとされているL68Qヒト型シスタチンやアミロイドβ蛋白質を用いて,種々の天然フェノール化合物及びそれらのリポフィル化あるいはグリコシル化誘導体のアミロイド線維形成抑制能を調べた。その結果,グリコシル化に比べリポフィル化の方がより効果的であることが明らかにされた。本研究で示された構造と機能に関する成果は,今後の抗コンフォメーション病食品素材の分子設計に活用されるものと期待される。
著者
川 茂幸 太田 正穂
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

自己免疫性膵炎の疾患感受性遺伝子の検索過程でカリウムイオンチャンネル蛋白、KCNA3(Kv1.3)を見出し、病態との関連を検討した。またgenome wide association study(GWAS)により新たな疾患感受性遺伝子の検索を行った。自己免疫性膵炎の病態とKv1.3の発現に有意な関連を見出すことができなかった。GWAS検索で、14種類の染色体上に25種類の感受性遺伝子の候補を認め、遺伝子内に設けたSNPを用いて確認解析を行っている。
著者
中島 卓郎 岡田 匡史
出版者
信州大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2001

本年度の研究は、「印象派期における音楽と絵画の相関(2)-ドビュッシーとモネの作品の構造的側面からの分析および考察-」を行った。ドビュッシーは、ピアノ作品におけるダンパーペダルの斬新な使用法により、1つ1つの和声をはっきりと示すことなく、それらを融合させて響きの色合を溶け合わせている。そして、そのような響きに包まれた休符や'で区切られる断片的な旋律は霧の中にうっすらと見えるかのようにぼかされている。これらは、モネが絵画において、SLの猛煙,立ち込める靄や霧をメイン・モティーフとし、輪郭をキチッと描かず、「積み藁」,「ルーアン大聖堂」,ロンドンで描いた「橋」とか「国会議事堂」などの連作,さらには殆ど融合してしまう晩期の「ばらの小道」連作など、対象が周りの空間に溶け込むような作法をとったことと極めて類似するものである。また、ドビュッシーが伝統的機能和声の破棄による方向性の薄い和声群を基盤としていることや、コントラストを避けた強弱法なども、やはりモネの、絵画作品において伝統的に使用されていた黒を避け、影を黒でない色で表すことによって生じる朦朧たる情調や、カラヴァッジオを嚆矢とするバロック的作風とは対照的に,明暗のコントラストを抑え,明るい色(概してパステル調)で全体をまとめていることなどと、相通じるものである。それらが結果として「ぼかしの効果」を生み出していると考える。ドビュッシーの作品に見られた、驚くほど多様で細密なアーティキュレーションや弱音域に執着した精緻な強弱法は、ほんの少しだけの微細な変化をもたらし、pp、pppの多彩さと限りないニュアンスを生み出した。一方、モネにおいては、白を混ぜる中間域トーンを主として達成される,色の無限とも言いうる諧調、緑にピンクやヴァイオレットが浸透したりもする移ろふようなデリケートな色調を用い、点描をビッシリと敷き詰めていく中で,その作品において色が発酵を始め,葉を繁らす木々,キラキラ輝く川面,陽を浴びた岩肌などが,独特なニュアンスを呈してくる。加えて、型・レ型・l型,また長短太細と,様々な種類のストロークが画面を構成し、油絵具の粘っこくネットリした触感性をよく生かした,稠密で美しいマティエールなどの技法も、「細部の緻密性と豊穣なニュアンス」という点において、ドビュッシーと近似していると捉えられる。そして、3点目は「主張のなさ」である。ドビュッシーの作品は、小節数・演奏所要時間の短さ、小規模な編成により、誠に簡潔性を帯びたものであり、極端な弱音城における表現の連続、旋回あるいは下降形をとる旋律線、楽節構造の曖昧さやモティーフの非発展性と非生成感、単調なリズムの反復などには、主張が感じられなく、クライマックスの不在と簡潔なコーダとともに、ドラマティックな展開とは全く無縁の世界と捉えられる。モネでの添景人物の反復的な置き方,並木の列,またはタッチの繰り返しには,やはり劇的な盛り上がりが認められない。そこでは、聖書などのテキスト,モティーフの寓意的・教訓的働きをベースとはせず,今ここで目に映り感覚に訴えてくる物を描き、ドラマを伴う人間でなく,普通の,ありふれたとも言いうる風景の方がテーマとなる。そして、対象となる人物に対し、しばしば目鼻口を描かず,心理表出に大きく益するところの表情が顔に表れていない。このようなアトモスフェリックな絵は中心性が退くため,拡散的な空間自体がテーマとなっている。これらのこと全てが、思弁性を帯びた主張をなくし、「耳を楽しませるための」、「目を楽しませるための」、音楽と絵画の創造を導いていると考える。
著者
佐藤 幸雄
出版者
信州大学
雑誌
信州大学農学部紀要 (ISSN:05830621)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.55-62, 1994-08
被引用文献数
1

野辺山高原におけるハイブッシュ・ブルーベリー栽培の可能性を検討するため,5か年にわたって生育相,寒害,果実収量及び果粒重について調査を行った。1. 調査5か年間の平均発芽日は,品種によって多少異なり,4月29日~5月3日であった。また,開花日も品種によって異なり,5月28日~6月8日であった。しかし,開花期間は品種による差が少なく,およそ25日間であった。2. 収穫時期は品種による差が大きく,早生種7月下旬~8月下旬,中晩生種は8月上中旬~9月中旬以降で,平均収穫期間は短い品種で約25日間,長い品種で約50日間で,2倍の差がみられた。3. 1株当りの新梢発生数は,'ノースランド'が最も多く,最小の'ブルータ'の3.7倍であった。しかし,新梢長については,品種間で有意差は認められなかった。4. 寒害被害新梢数の割合は,'コリンズ'が最高で,ついで'ウエィマウス'及び'コビル'も高かったが,'ジャージー','ノースランド'及び'ブルーレィ'は比較的低かった。寒害被害新梢長の割合についても同様の傾向がみられた。5. 果実収量は年次変動が極めて大きく,1986年は収穫皆無に近かったが,1988年にはかなりの収量が得られ,とくに'ノースランド'では,1株当り平均7㎏以上に達した。しかし,'コリンズ','ウエィマウス','ブルータ'及び'アーリーブルー'の各品種は極端に少なかった。6. 供試10品種のうち,果粒重が最も大きかったのは,'バークレィ'の約1.5gで,ついで'コリンズ'及び'コビル'も比較的大粒であった。しかし,'ノースランド'及び'ジャージー'は小粒で,いずれも1g未満であった。
著者
樋口 京一 森 政之 澤下 仁子 亀谷 富由樹 内木 宏延 前田 秀一郎
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

アミロイドーシスとは蛋白質がアミロイド線維に異常凝集し、生体に傷害を与える疾患群である。アミロイド線維による伝播現象に注目して、合成ペプチドを用いた新たな線維形成解析システムと新規のアミロイドーシスモデルマウスの開発を行い、アミロイドーシスの発症機構や治療方法に関して体系的な解析を行った。その結果、1)糞や骨格筋を介した新たな伝播経路の発見、2)線維形成阻害ペプチド、熱ショック転写因子(HSF1)、アポリポプロテインA-I(apoA-I)等の治療ターゲットの発見、3)今後アミロイドーシス研究者が利用可能なモデルマウスの開発、などの成果を得た。
著者
篠原 成彦
出版者
信州大学
雑誌
人文科学論集. 人間情報学科編 (ISSN:13422782)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.37-46, 2007-03-15