著者
杉浦 義典 杉浦 知子 丹野 義彦
出版者
信州大学
雑誌
人文科学論集. 人間情報学科編 (ISSN:13422782)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.79-89, 2007-03-15

強迫症状と関連の深い意志決定の困難さを,強迫症状に限定されないパーソナリティ特性として測定する不決断傾向尺度(Frost & Shows,1993)の日本語版を作成し,その信頼性と妥当性を検討した。非臨床群を対象とした質問紙調査の結果,以下のことが明らかになった。(1)不決断傾向は1因子構造であり,十分な内的整合性を示した。(2)不決断傾向は,強迫症状と正の相関を示した。(3)不決断傾向は,責任の認知および完全主義(ミスを恐れる傾向)との正の関連を示した。(4)不決断傾向は,一般的なパーソナリティ傾向(ビッグファイブ),および,責任の認知と完全主義で説明出来ない強迫症状の分散を説明していた(増分妥当性)。(5)否定的な思考の暴走を防ぐ認知的なスキル(認知的統制尺度の「破局的思考の緩和」)は,不決断傾向を低減できる可能性が示唆された。以上の知見から,日本語版不決断傾向尺度の一定の信頼性と妥当性が確認された。
著者
椎名 洋
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

1.Zonal多項式によって級数展開できる密度をもつ非負定値ランダム行列の非負定値母数行列の直交共変推定に関して、次のような成果を得た。(1)損失関数にSteinの損失関数を使った場合、直交共変な推定量は、その固有根の順序が標本固有根の順序と同じでないと、非許容的であるという予想があるが、これを2次元分布について照明した。(2)上記の予想と密接に関連する、Zonal多項式の直交群上の一様測度による積分に関する不等式を見つけた。2次元分布の証明は、この不等式を2次元の場合に証明することで得られている。2.東京大学竹村教授との共同研究により、ウィッシャート分布の母集団固有根の無限拡散に関する漸近理論について次のような成果を得た。(1)既に得られていた分布の収束に関する成果をより深めて、その漸近展開を得た。これによって収束のスピードに関する理解が深まった。(2)上記の成果を、Steinの損失関数に基づくリスク評価に使い、Tail Minimaxとなるための必要条件を得た。(3)さらにその必要条件を使うことで、長い間Minimaxか否かが不明だった2つの著名な推定量(Stein推定量とHaff推定量)が共に、Minimaxで無いことを証明した。3.ウィシャート分布の母数行列が特定の行列に等しいか否かの片側検定について、次の成果を得た。(1)一般的な変換に関して共変な推定量が、その固有根に関して単調であれば、不変性を満たすということは、既に知られた結果であるが、この結果に関して別の証明方法を得た。
著者
鈴木 泰子
出版者
信州大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2002

【研究目的】病気におけるすこやかな生への「はずみ」が、病気とともに成長する子どもにとってどういう経験であるのかを明らかにする目的でフィールドワークを継続し分析をすすめる.【研究対象】13歳〜22歳の慢性疾患患者5名で、発症後5年以上経過した者で、本研究への参加の同意の得られた者.【データ収集方法】(1)対象が参加するボランティア活動における参加観察(2)グループおよび個別のインタビュー.【分析】小児看護分野・小児がん臨床分野の研究者・実践家、質的研究を継続して実践している研究者らによるスーパーバイズを受けながら、データを質的帰納的に分析した.【結果及び考察】病気との対峙を通して子どもは、(1)発病前の自分へのわだかまりを何度もいったりきたりしながら捨て、いやなことがあってもとがめだてせずにあるがままを受け入れるようになる、(2)健康であったときより高次のすこやかさ(安定感や身体感覚)を獲得する、(3)自分の成長とともに病気への感謝を実感するようになった.これらはボディイメージの耐え難さや受け入れ難さと深く関わりながら、周囲の者への反発、自らや周囲への語り、他者との相互関係によって熟成され、上昇停止体験や未来への諦めとは異なる現在と未来を精一杯生きる意思や生きる意味の獲得へとつながりゆくものと考えた.この病気と対峙する過程で、発達段階に適切な多面的、継続的なサポートが必要とされ、自らや他者のいのちをみつめ、相互に関わりあうことで、子どもは強くしなやかなすこやかさ(安心や安定)を獲得し、病気がすこやかな生への「はずみ」を強める要因となり得るとみなされた。【今後の課題】本研究は発症時の記憶がはっきりした少数の限られた発達段階を対象としたものであることが研究の限界であり、今後は対象数を増やし、隣接する発達段階による比較検討も必要とされる.周囲への反抗や攻撃を実感できず表現もできない子どもへの着目の重要性も示唆された.
著者
坂口 けさみ 芳賀 亜紀子 徳武 千足 市川 元基 金井 誠 大平 雅美 近藤 里栄 島田 三恵子 米山 美希 上條 陽子
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

現在わが国では少子化が大きな課題となっており、その背景には男性である夫の家事育児への関わりが少ないことが指摘されている。本研究は、父親の家事育児行動の実態と育児意識および父親意識を高める要因について実態調査を行うとともに、全国の自治体を対象に父親の子育て支援に関するWeb調査を実施した。さらに、父親への子育て支援教育プログラムを妊娠中および出産後の2回開催し、その評価を行った。
著者
野村 彰夫 森川 公夫 川原 琢也 斉藤 保典
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1996

局地気象情報取得のための昼夜連続観測可能な可搬型バイスタティックイメージングライダーの開発を行った.システムの基本構成として,送信系はNd:YAGレーザを用いた車載型とした.送信レーザ波長は532nm,繰り返し10Hz,最大出力200mJである.受信系は冷却型高感度CCDカメラに高速ゲート.イメージング・インテンシファイヤーを組み合わせ,高速シャッターを可能とした.高速ゲートとレーザ射出タイミングを同期させることにより,受信散乱光強度を減少することなしに背景光強度を1/5000にまで減少させることができ,昼間観測においても良好なSNRでレーザ光の散乱飛跡を画像として捉えることを可能とした.本システムを用いて4回のフィールド観測を行い,実用化に向けてのシステムの問題点と有用性について検討を行った.3日〜10日間の昼夜連続フィールド観測を実施し,その間,地上から高度3kmまでのエアロゾル,霧および雲底高度の鉛直プロファイルを時間分解能1〜2分でカラーコード化した時間変化をディスプレイ上に表示した.特に最終目標である長野冬季オリンピックのアルペン競技が行われた八方尾根会場におけるフィールド観測では,モノスタティックライダーとの共同観測を10日間実施した.連日の悪天候の中での気象予報が困難を極めていたが,昼夜連続観測を行っていたライダー観測データは,早朝に競技の実施を判断する気象担当官から多いに役立ったと高い評価を受けた.以上から,本研究は当初の計画を完全に実施することができ研究成果をあげることができた.フィールド観測から局地気象情報を得るための有用な観測手段になりうることも実証できた.
著者
山口 恒夫 高橋 知音 鷲塚 伸介 上村 惠津子 森光 晃子 小田 佳代子
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

自閉症スペクトラム障害(以下ASD)と注意欠陥多動性障害(以下ADHD)の傾向に関わる困り感と支援ニーズを把握するための質問紙を実施し、その特徴及び信頼性、妥当性を検討した。ASD困り感質問紙ADHD困り感質問紙は、既存の自己評価質問紙の項目に加え、事例報告論文、当事者の手記等から行動特徴、困難経験を表す記述を抜き出したものを項目化し、それらの困り感を4段階評定で問う質問紙であった。分析の結果、十分な信頼性が示され、外的変数との関連から妥当性に関する証拠も得られた。
著者
小山 省三 羽二生 久夫 宮原 隆成 芝本 利重 重松 秀一
出版者
信州大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1997

複合材料は人などの生活空間に用いる際には勿論のこと、腎不全、心不全、肝不全等の生体の機能不全を改善する目的で利用されるさいには、これらの複合材料による生体側の防御反応としての、免疫アレルギィー反応を含めた炎症反応の出現の有無が、それらの素材開発と応用に重要な要因となることは当然のことである。しかしながら、それらの複合材料を受け入れる生体側での反応性に関して古典的であるにもかかわらず炎症防御反応の根源的な検討が、同一施設において、比較検討された報告は少ない。本研究では、各種のピッチ状活性炭(FL-1)をマウスの皮下に埋没し、6ヵ月間にわたって免疫リンパ球の変動並びに病理組織学的な反応形態の変化を検討し、複合素材としての活性炭の生体防御系に対する妥当性についてアスベストと比較検討した。実験には4週齢系統std:ddYマウスを3群に分けた。実験に用いた活性炭はピッチ系活性炭繊維のうち直径が通常のものの約10分の一である極細系のFC-1を用いた。またアスベストを比較材料として用いた。本年度成績ではアウベストの生体適合性は極めて悪く、皮下に埋没後1ヵ月後にはすでにラングハンス細胞の出現や慢性炎症所見を示すとともに、免疫担当血液細胞のバランスもすでに1ヵ月後には変化していた。さらにこの慢性炎症所見は時間の経過とともに進行性であり、生態的合順応とは逸脱した生体反応を時間変遷とともに発現していることが推察される。すなわち、また、新規な炭素素材であるFC-1の生体適合性を検討したが、6ヵ月間の観察経過で組織炎症反応の発現は究めて軽度であり、進行性の慢性炎症所見はいずれの期間においても認め難いことが特徴的な所見であった。今後、予想することができる生産から廃棄までの生産者側の環境要因、また不確定多数の利用者側の状態要因に対応した生体適合性の検討が逐一なされるべきであることを本年度研究のまとめとして指摘しておきたい。
著者
高瀬 将道
出版者
信州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

6次元球面に埋め込まれた3次元球面がすべて、1989年にデニス・ローズマンによって導入された部分多様体に沿うスピニングという操作で構成できることを示した。また、このような6次元球面に埋め込まれた3次元球面に対して定義されるある種のHopf不変量の取りうる値の考察を行った。さらに、3次元球面から4次元空間へのはめ込みに対して、そのボルディズム類をジェネリック写像による拡張に現れる特異点の幾何的情報から読み取る公式を与えた。
著者
又坂 常人 西村 直子 野地 孝一
出版者
信州大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1993

1今年度は昨年度の研究成果をふまえ、理論的研究を中心に遂行し、あわせてそれを補強するために全国550余の自治体首長にアンケート調査を行った。第3セクターの運営やそれに対する統制、行政的評価の実態については、設立の理由は第3セクターの事業目的によって様々であること、経済社会状況の変化を反映して第3セクター形態による事業展開の分野がハードを中心とするものからソフト面を中心とするものへと変化しつつあること、第3セクターの事業活動に対する評価は当該事業分野の性格によって様々であり一様には語れないこと、第3セクターに対する様々な統制一議会や首長部局による監視・監督等ははなはだ不十分な状態にあること、その他多くの新しい知見を得ることができた。第3セクターに対する法学的行政学的研究を通じて、従来の「行政主体論」的理論枠組にかわる新しい認識枠組を設定する必要性が確認され、また、従来の行政処分や行政指導を念頭に置いた「権利救済」を中心とする伝統的な行政統制手法は、第3セクターに対する統制論としては極めて不十分であり、立法論を視野にいれた枠組形成の努力が必要であること、また、現実的な統制としては、現行制度においては議会を通した統制が有効であり、それを活性化するために必要な方策が研究された。経済学的研究を通じて、第3セクターの政策効果を経済学的に解明する場合は、官民の出資比率が重要であること、その他の多くの新しい知見が得られた。
著者
小松 貴
出版者
信州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

日本国内では、九州・南西諸島にてアリヅカコオロギ属のサンプリングを行い、トータル200個体以上のサンプルを分子系統解析及び飼育観察用に採集した。海外では、マレー半島にてサンプリングを行い、トータル100個体のサンプルを分子系統解析用に採集した。分子系統解析は、得られたサンプル中20形態種500サンプルによりDNA抽出および分子系統解析を行い、得られた系統樹上に野外での生態情報を反映させた。その結果、内群は大きく19系統に分岐し、全北区グループと東洋区グループに2分された。そして、寄主特異性に関する形質復元を行ったところ、どちらのグループも共に単一アリ種に寄生するスペシャリスト系統が最も祖先的となり、特に全北区グループにて頻繁に形質状態の逆転が認められた。これにより、従来のモデル系である植食性昆虫などで認められてきた、ジェネラリストの系統からスペシャリストの系統が派生するというパターンとは異なる傾向が示され、本属が従来のモデル系とは異なる進化的性質を持ちながら多様化してきた可能性が示唆された。以上の結果はMolecular Phylogenetic and Evolution誌に投稿予定である。飼育観察では、日本本土に生息する寄主特異性が比較的緩い2種のアリヅカコオロギを用いて、アリコロニー内での行動を記録し、種間での比較を行った。その結果、アリから攻撃を受ける頻度や自力でアリ巣内の餌を摂食する頻度にて種間での統計的有意性が検出された一方、アリ体表をグルーミングする頻度や口移し給餌を受ける頻度に有意性は検出されなかった。これより、中程度の寄主特異性をもつ種は、行動生態的にも中程度の特殊化を示す可能性が示された。以上の結果はJournal of Entomological Science誌にて掲載予定である。
著者
徳井 厚子
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

複言語サポーターへのインタビュー調査の分析結果について論文発表及び学会報告を行った。複言語サポーターは文脈に応じて言語を使っていた。例えば相談場面で感情的な面や個人的な内容を聞く場合、具体的な説明の場合、緊急時の状況説明の場合、母語で行っていた。また、複数の言語の融合や言語スタイルの調整を行っていた。複言語サポーターは相談者と一定の距離を保ちつつ支援を行っていた。関係の相対化や、関係性の変化の重要性も挙げられた。また、複言語・複文化能力の観点から考察した結果、文脈に応じての自己の位置づけや複数の言語使用を変化させ、異文化間調整を行い、ネットワーキングを行うコンピテンシーの重要性が示唆された。
著者
竹内 健司 遠藤 守信
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、カーボンナノチューブ(CNT)の構造、CNTの均一分散技術および細孔共連続構造ポリマーであるポリマーモノリス技術を最適に融合することにより、軽量高強度樹脂複合材の技術基盤の構築を目的としている。目標を達成するために複合材に適したCNTの検討に加えてポリマーモノリス材の調製および構造解析について検討した。調製したポリマーモノリス/CNT複合材は、ポリマーソリッド材のような脆性破壊が起こらず、CNT未添加のポリマーモノリス材よりも高い初期応力、圧縮破断強度、柔軟性を有し、圧縮後も構造の割れや破断が見られないことを示した。
著者
信州大学農学部図書・紀要編集委員会 信州大学農学部農学情報係
出版者
信州大学
雑誌
信州大学農学部紀要 (ISSN:05830621)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.73-82, 2000-10

本学部図書分館では,平成8(1996)年度より週日は,17時から20時までの3時間開館時間延長を行っている。また,10(1998)年度より土曜日も10時から16時までの開館を行うことにした。そのため,平成8,9年度に引き続き,10,11年度においては,同じく延長時間内の利用状況に加え,土曜開館時間中,さらに両年度の前期,後期の通常授業期(通常期)および試験・補講期(試験期)の各1週間(月~金)を選び開館全時間を通じての利用状況を調査した。調査は,延長時間内については前回の調査と同じく17:30~19:30までの間30分おきに5回,週日の9:00~5:00までは,9時より1時間おきに9回,また土曜日は10時半より1時間おきに6回,館内閲覧室・書庫およびロビー・印刷室にいる利用者の数を記録することで行った。さらに各調査日の調査時刻ごとの在館者数を集計し,これを当日の延べ利用者数として解析に用いた。 全日調査による1日平均延べ利用者数は,通常期で150~190,試験期で300名前後であり,これから実際の1日当たり利用者数は通常期で100~150名,試験期で200名強と推定された。1日当たりでみると,これら利用者のうち60~70%が閲覧室,30~40%がロビーに在室していたが,通常期午前はロビー在室者の割合が高い。通常期においては利用者の数は午前中は少なく,午後次第に増加して16:00ないし17:00にピークに達した後,延長時間内を通じて減少した。試験期でも利用者数が午前中から増加し始めること,ピーク到達が15:00~16:00であることを除けば同様の日内推移がみられた。また,開館延長時間内の利用者数は,通常期,試験期ともに,1日の利用者総数の約1・4と推量された。 平成10,11年度前・後期における延長時間内利用者数は,先の報告の8,9年度における利用者数よりかなり増加した。しかし,利用者数の各期間内推移,曜日の影響,延長時間内の在館者数推移等については,前報結果と大差はなかった。 土曜日における利用者数は週日昼間の1・3以下であったが日による違いが大きく,全般に前期,後期の前半は少なく試験期が近づくにつれ増加,試験期には100名内外,ないしそれ以上の数にまで達したものの,前半でも時に試験期に近い利用者数の日もあった。午前中の利用者は少なく,在館者数は午後次第に増加し,閉館前15:30に最大値になった例が多かった。開館時間の設定については,今後なお検討の余地があるかも知れない。土曜開館の場合,他に比べロビー利用者の割合が少なく全利用者数の20~30%にとどまった。
著者
戸田 任重 宮原 裕一 浅井 和由
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

不活性ガスの六フッ化イオウ(SF6)による年代解析では、調査地(長野県南部)の地下水の滞留時間は2~33年と推定された。水道水源および観測井戸(いずれも30m以上の深井戸)の地下水の硝酸態窒素濃度は、滞留時間が20年弱(1993~94年涵養)の井戸で極大を示し、15年未満(1997年以降涵養)の井戸では比較的低濃度であった。調査地では、堆肥を含む施肥量が過去40年以上にわたり減少し続けており、水道水源などの深井戸の硝酸態窒素濃度は施肥量の減少を反映している可能性がある。
著者
手嶋 勝弥 是津 信行 石崎 貴裕 我田 元 大石 修治
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

研究代表者のオリジナル技術である『フラックスコーティング法』の基盤構築をめざし,単結晶薄膜の創成と応用に関するプロセスイノベーションに注力した。特に,フラックスコーティング技術を実現するスマートフラックス概念の確立,単結晶超薄膜(結晶層)のビルドアップ&オンデマンド成長モデルの解明,ならびに次世代グリーン&バイオイノベーションに資する単結晶超薄膜応用を中心課題とし,すべての課題に独自の解を提案した。これまでの経験と知見にもとづくフラックスプロセスに,計算科学の視点を新しく導入し,学理の体系化の端緒を踏み出すことに成功した。また,フラックス単結晶薄膜の特長を活かしたデバイス提案も実現した。
著者
水野 知昭 下田 立行
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

平成11年度:北欧神話に登場する「馬に乗る神々」に焦点を絞り、オージンを筆頭とする「異境より来往する神々」の原態に探りを入れた。イェーアト国(スウェーデン南西)のベーオウルフは、デンマークにおける怪物退治の報酬として首飾りや胴鎧、その他の贈物を与えられて故国に帰参する勇者であるが、既存の秩序の混乱を招く「恐るべき異人」の側面を露呈している。と同時に、みずからが王に即位して長期の平和を確立し、「幸もたらすマレビト」としての特性を兼ね備えている。また、荒ぶる軍勢を統べ治める神オージンについて、「来訪する死霊神」と「豊饒をもたらすマレビト」という両義的な側面から、その本性を解明した。平成12年度:「海原を渡り来るおさな君」が士地の者に養育され、成長した後に、王に推挙され、平和と豊饒の時代を切り拓くという、北欧の類話を比較考察した。海上の島より来往するニョルズ神と豊饒神フレイにまつわる「古北欧のマレビト」の信仰基盤がその背景に横たわっている。また、中世北欧の教会建立の伝説について、「海からの異人」と「山からの異人」の対立抗争のテーマが隠されていることを、比較神話学・伝承学の見地から実証した。その根底には、アースガルズ塁壁造成神話のみならず、古代トロイアの城塞構築の伝説にも共通する「異人」(異神)来訪のモチーフがひそんでいる。平成13年度:フレイとバルドルは、「双生神」として密接不可分な関係にあり、「異族」の襲来から神界の境域を守護する戦士の役割りを負わせられていた、という新解釈を提示した。また、ヴォルスング王家のシグルズ、デンマークの王子ラグナル・ロズブローク、およびベーオウルフなどの勇者や雷神ソールの群像にスポットを定め、「異人」による「聖戦」(vig)として竜蛇退治の伝説を捉えなおした。また「北欧のマレビト」の代表格ともくされるニョルズの原姿に、航海・遠征からの生還をつかさどり、人々を危難から「救出する」神の側面を認めた。ニョルズの神観念の成立は後期青銅器時代にさかのぼるが、古代ギリシアのネストール(Nestor)の特性との共通性も見えてきた。これらの見地が、今後、異人・マレビト考を深化させてゆくための導きの糸になるであろうことは疑いもない。下田立行は、ギリシア喜劇断片の解読に従事し、ヘーリオドーロス『エティオピア物語』の翻訳を続行中である。前者のギリシア喜劇の中には、市民と非市民、あるいは市民と客人との地位の格差について触れた箇所がある。後者の『エティオピア物語』は、ギリシア・エジプト・エティオピアおよびペルシアなどの広範囲な地域におよぶ散文作品であり、異文化接触の記述が散見される。平成14年度中に刊行される予定である
著者
佐々木 隆 高崎 金久 小竹 悟
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

数多くの厳密に解ける一次元量子力学系を具体的に構成し,その持つ量子対称性と可解性の関係を明らかにした.元の固有関数系に離散対称性を作用させ,(擬)仮想状態解を作り,それらを種解として用いた多重変形によって,数多くの可解量子力学系を得た.仮想状態解からは,例外型および多添え字直交多項式系を得た.擬仮想状態解を用いたものからは,多くのロンスキアン・カソラティアン恒等式を導出した.調和(放射)振動子,ポッシェル・テラー,モース,エッカート,クーロンポテンシャル,ウィルソン,アスキー・ウィルソン多項式,(q-)ラカー多項式等の変形を論じた.高い見かけの特異異性を持つポテンシャルと固有関数系も構成した.
著者
菊池 聡
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

適応的な機能持つ認知バイアスの影響によって疑似科学や超常現象への信奉が強化されるという仮説を、実験的方法と質問紙法で検証した。その結果、確率的な現象に対するコントロール幻想と超常信奉の一部に正の関連性が示されたが、課題や対象群により、結果は一貫したものではなかった。また、高校生では科学への好意的な態度が超常現象信奉と正の関連があったが、学校教員では負の関係になることが示された。これらの結果を批判的思考の教育現場に還元するために書籍にとして出版した。