著者
徳井 丞次
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

資本に体化された技術進歩の仮説は、資本財そのものの性能の向上がそれを投資して利用する部門の生産性上昇の要因となる可能性を示唆するものであるが、それは翻って投資が停滞する1990年代以降の日本経済の生産性低迷を説明できるかもしれない。本研究では、ミクロデータを使った実証分析を整合的になるように、中間投入を明示的に含む生産関数から資本に体化された技術進歩の枠組みを導出し、その枠組みに基づいて推計された資本に体化された技術進歩率をマクロに集計して、日本経済のTFP上昇率と比較し、資本に体化された技術進歩率が無視できない要因であることを確認した。
著者
東城 幸治
出版者
信州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

昆虫類の高次系統を考察するべく,比較発生学的アプローチによる研究を展開した。特に,カカトアルキ目昆虫類を中心とした研究を行った。前年度までに採取・確保したサンプルを基に,胚発生や卵形態に関する知見を蓄積させ,原始的有翅昆虫類(直翅系昆虫類や旧翅類昆虫類)における発生プロセスとの比較検討を実施した。系統解析において鍵となるような発生形質:胚発生における胚の陥入anatrepsis,胚反転katatrepsisといった胚運動blastokinesisのシステムに関しては,初年度および18年度より知見を深め,この他,卵形成や卵形態(特に卵門micropyleなどの微細構造)の比較から,カカトアルキ目とガロアムシ目の類縁性を議論してきた。典型的な短胚型発生をし,はじめは卵内に浅く陥入し,その後に平行的に卵内に潜り込み,卵中央に定位することなど,ガロアムシ目との共通性が強く認められた。一方で,胚反転前のステージでありながらも,胚体としては孵化直前のレベルに近いほどによく形態形成が進んでいること(遅延的な胚反転)など,他の昆虫類の胚発生には認められない,本目独自の形質も認められた。この特殊性は,長く厳しい乾季を凌ぐ上で重要な形質であると考えられると共に,カカトアルキ目の単系統性を示唆する重要な形質の一つと言える。これらの研究成果は,海外の研究グループによる頭部形態や精子形成,分子系統解析などの研究からの考察とも矛盾なく,本研究における成果の妥当性が示唆される。これらの知見を,20年度に開催される国際昆虫学会で発表する予定である。また,本研究の成果のうち,既に学術誌への公表の済んだ内容に関しては,出版社からの依頼により,19年11月に書籍として出版した。
著者
坂口 けさみ 大平 雅美 芳賀 亜紀子 島田 三恵子 徳武 千足 湯本 敦子 金井 誠 市川 元基 馬場 淳 上條 陽子 楊箸 隆哉 中村 友彦 近藤 里栄
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

正期産母子に対する分娩直後のカンガルーケアの実態について、全国の産科医療機関を対象に質問紙調査を実施した。カンガルーケアは全国の約70%の施設で導入されていたが、実施方法や実施の基準は施設によってそれぞれ異なっていた。そこで、カンガルーケアを安全にかつ快適に実施するための指標を得ることを目的に、カンガルーケア中の児の安全性について呼吸・循環機能から検討するとともに、快適性について児の自律神経機能を用いて解析した。カンガルーケア中、児の呼吸機能や循環機能は安定しており、カンガルーケアの児の安全性が確認された。またカンガルーケアが児にとって快適であるかどうかは、母親の分娩経過の影響を強く受けていることが明らかとなった。
著者
西澤 久恵 土井 進
出版者
信州大学
雑誌
教育実践研究 : 信州大学教育学部附属教育実践総合センター紀要 (ISSN:13458868)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.173-182, 2000-07-31

This article reports SURAIMU making gives an opportunity of attending the class to children who have refused to go to school.
著者
杉野 健太郎
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

デビュー作『楽園のこちら側』の「すべての神は死に、すべての戦争は戦われ、そして人間への信頼はすべて揺らいでいる(中略)心に神はいなかった」という「失われた世代のマニフェスト」は「罪の赦し」(1924)というカトリック教会からの離脱物語まで続く。しかし、翌年の代表作『グレート・ギャツビー』(1925)で私がモダンな信仰と呼ぶような近代的信仰が成立する。モダンな信仰とは、近代的の啓蒙思想の流れにあり、アメリカのポジティヴな思想などとも通底する世界と自己に関する楽観的信仰であり、現在もよりどころとされる人権思想とも深く関わっている。しかし、その信仰も次作『夜はやさし』(1934)では失われてしまう。
著者
古川 安之
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

我々は交感神経と副交感神経の単独あるいは同時刺激時の歩調取りの部位の同定とpacemaker shiftの有無を検討し、更に歩調取り電位を直接あるいは間接的に修飾する薬物を用いpacemaker shiftの有無を観察し、その機序を考察するため以下の実験を行っている。雑種成犬をペントバルビタール麻酔後、人工呼吸器(Harvardmodel 613)管理下に、開胸し、迷走神経を頸部で、星状交感神経節の心臓側でそれぞれ結紮、座滅し、中枢からの神経調節を除き実験を行った。48極の単極性多極電極を作成し、心外膜側の洞房結節を含む洞結節一心房歩調取り部位(sinoatrial pacemaker complex)に固定し、心表面マッピングシステム(フクダ電子HPM7100)を用い、等時線図を記録した。頸部迷走神経、交感神経の結紮部位の心臓側に双極性の刺激電極を設置した。実験は交感神経、頸部迷走神経刺激時の歩調取り部位(pacemaker sites)を同定し、歩調取り電位を修飾する薬物、E-4031,zatebradine,verapamilと自律神経遮断薬であるpropranolol,atropineの歩調取り部位に対する作用を検討している。交感神経刺激により、歩調取り部位がいわゆる洞房結節部より上方に移動し、副交感神経刺激によっては下方に移動する傾向はあるものの必ずしも一定しないこと、交感神経刺激時に副交感神経刺激を行うと歩調取り部位が下方に移動することを観察した。交感神経刺激による歩調取り部位の変化はpropranololによって、副交感神経刺激による歩調取り部位の変化はatropineにより抑制されることを確認した。更に現在、E-4031,zatebradine,verapamilの歩調取り部位に対する影響と交換、副交感神経刺激による歩調取り部位の移動に対する作用の差異を観察中である。
著者
田中 直樹 長屋 匡信 中村 浩蔵
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

トランス脂肪酸は日常生活で我々が頻繁に食する脂肪酸である。米国ではトランス脂肪酸摂取が禁止されているが、我が国ではトランス脂肪酸の健康被害に関する科学的根拠が乏しいとの理由で、その摂取に注意が払われていない。我々はトランス脂肪酸が肝癌を促進させる可能性を見出したが、そのメカニズムは不明である。本研究では、食事中トランス脂肪酸が肝臓に与える影響を多角的に解析し、その毒性を機能性食品で軽減する方法も探索する。トランス脂肪酸毒性に関する明確な科学的根拠とその予防戦略を提示できれば、国民の食生活の改善や健康寿命延伸、新規産業創出につなげられる可能性があると考えている。
著者
布施谷 千穂 浅香 亮一 小野 元紀 塩沢 丹里
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

我が国の子宮体癌患者数は急増しているが子宮体癌治療に使用できる薬剤は限られており、新規薬物療法の開発が急務である。抗癌剤や分子標的薬は時に強い副作用がみられるため、近年、古来より摂取し安全性が高いと予想される天然化合物の抗腫瘍効果が注目されている。6-(methylsulfinyl) hexyl isothiocyanate(6-MITC)は、日本原産の本ワサビから抽出される天然化合物であり、抗炎症作用や抗酸化作用などが報告されているが、子宮体癌に対する抗腫瘍効果は報告されていない。本研究では6-MITCの抗腫瘍作用と腫瘍免疫に対する作用を明らかにし、新規治療薬候補となるか検討する。
著者
市野 隆雄
出版者
信州大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

1. まず、クヌギクチナガオオアブラムシを野外で飼育するための装置の開発に成功した。クヌギ幹上に通風性の高い小型のプラスチックケージをとりつけ、毎日容器内にたまった甘露を取り除くことで,安定的にアブラムシを生存,繁殖させることに成功した.これを用いて長野県各地から採集してきた別クローン由来のアブラムシコロニーを隔離累代飼育して繁殖させた.2. 次に,多数の2齢虫,3齢虫,4齢虫および成虫に個体識別マークをほどこし,各個体について,経日的に甘露分泌量を測定した.得られた甘露分泌量のデータをクローン間,クローン内に分けて分散分析した結果,甘露分泌量にクローン間での遺伝分散が存在することを明らかにした。このことは、アリの選択的捕食によってアブラムシの甘露分泌量が進化する可能性を示すものである。なお、上記の実験から得られた甘露分泌量の遺伝率は比較的低かった。これは野外飼育系であることから,環境分散の影響が大きかったことが影響したものと考えられる.3. アリが,自身の化学物質をアブラムシに塗りつけていることを、両者の体表面炭化水素の化学分析から明らかにした.アリとアブラムシが共有している体表面化学物質の中には,アブラムシ自身が分泌する「アリに似せた化学物質」と,アリがアブラムシに塗りつける「マーキング物質」の両方があることを,アリ非随伴アブラムシとの比較から明らかにした。一方、あるアリコロニーに随伴されていたアブラムシを別コロニーのアリに随伴させると有意に捕食率が上がることを示した。これらの結果は、自コロニーのマーキング物質の多寡によってアリが捕食対象のアブラムシを決めている可能性を示唆するものであり、アリによる「育種」の具体的な実現メカニズムの一端を示す結果である。
著者
三島 修治 平林 耕一 清水 公裕 江口 隆 三浦 健太郎 松岡 峻一郎 濱中 一敏 原 大輔
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2023-04-01

本研究では、主に肺腺癌に対する新たな治療戦略の一つとしての新規キメラ抗原受容体発現遺伝子改変T細胞療法(CAR-T療法)の開発を目的とします。私たちはすでに、このCAR-T細胞が新たに標的とする抗原を特定し、この標的に対して特異的に結合しうるタンパク質の遺伝子配列を複数同定しています。本研究では、肺腺癌の腫瘍細胞株を用いた実験に加え、マウスを使った動物実験により、この新規CAR-T細胞の有効性を検証します。
著者
松本 昇
出版者
信州大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

本プロジェクトは,自伝的記憶の概括化(OGM)が生じるメカニズムおよび記憶の特定性トレーニング(MeST)がOGMおよび抑うつに効果を発揮するメカニズムを明らかにすることを目的とした。いくつかの実験研究を通じて,ネガティブな手がかりに対するOGMの直接検索が抑うつに特に関連するメカニズムとして特定された。このことから,OGMに対するアクセシビリティを変容させる介入が重要であることが示唆された。MeSTによる治療データの二次分析では,OGMの直接検索が抑うつを予測する効果をMeSTが緩和させることが示された。OGMのアクセシビリティに焦点を当てた介入では,抑うつに対する大きな治療効果が示された。
著者
杠 俊介
出版者
信州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

ミュラー筋の神経支配の詳細を検索するために研究を行った。平成14年度、ヒトの上眼瞼と眼窩内の解剖と組織学的検索により、ミュラー筋は近位部で涙腺神経につながる神経から神経支配を受けており、その中に、遠心路である無髄のカテコールアミン作動性交感神経節後線維と、求心路と考えられる有髄の自律神経でない神経線維が含まれているという結果を得た。すなわち、ミュラー筋は、涙腺神経内を通ってきた交感神経節後線維の刺激により収縮を起こすとともに、ミュラー筋自体の緊張状態を涙腺神経につながる有髄神経を介して中枢に伝えており、それが上眼瞼挙筋の不随意収縮、すなわち開瞼の持続を起こすものと推察した。平成15年度は、実際に涙腺神経を切断した場合に眼瞼に変化が現れるかどうかを動物実験により検討した。実験動物としてラットを選択した。まずラットの脳から眼窩内、さらに眼瞼にいたる神経の走行を実体顕微鏡下に観察し、三叉神経第一枝の分枝と涙腺神経の位置を同定した。ラット15体で、三叉神経第一枝の分枝である眼窩上神経の中枢端および涙腺神経の切断実験、ならびに上頚部交感神経節の切除実験を各群5体ずつ行った。眼窩上神経の切断を行っても眼瞼には変化は生じなかった。涙腺神経を切断すると上眼瞼の下垂を生じた。上頚部交感神経節の切除を行うと、上眼瞼下垂のみならず眼球の突出が無くなり、下眼瞼の下方移動も悪くなり、結果的には3群の中では最も瞼裂幅が狭くなっていた。この結果は、涙腺神経内に上眼瞼挙上に関係した神経線維が存在することを示唆するもので、ヒトの解剖と組織検索から推察した内容に一致するものと考えた。
著者
野津 寛 納富 信留 吉川 斉 葛西 康徳
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

葛西(研究分担者)が令和31年度3月13日から22日まで米国の大学及び学会(テキサス州南メソディスト大学ロースクール及びボストンのAssociation for Asian Studies学会)に出張する予定だったが、コロナウイルスにより先方から通知が来てキャンセルすることになった。そこで、令和2年度中に改めて出張ないし海外研究者を招聘するため、当該費用は令和2年度に繰り越した。この予算は、海外からの研究者招聘に使用する予定であった。しかし、令和2年度もコロナウイルスにより、研究分担者の海外出張と海外研究者の招聘に使えなくなり、再び次年度に繰り越すこととなったた。そのため、この繰越金に関する研究実績はあげられなかった。
著者
船津 和幸 シャンカル ヴェーンカテーシュワラン 船津 恵美子
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

バーサ作のサンスクリット戯曲の特徴を翻訳研究として考察するなかで、バーサ戯曲の独創性と魅力はその短編性とナラティヴの相対化にあると理解される。それは見る側、演じる側の想像力に訴え、解釈の大いなる自由をゆだねる。そして、実際に、『打ち砕かれた腿』を脚本化するプロセスでその醍醐味を体験的に確認できた。最終的には、演出家シャンカル・ヴェーンカテーシュワランとの共同作業により、実験的なヴォイス・パフォーマンス『百と一の子守唄』としてインドで上演して好評を博した。
著者
本田 秀夫
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究の目的は、特定の出生コホートの累積発生率調査(Honda et al, 2005)で把握された自閉スペクトラム症(ASD)の子ども278名の長期追跡を行い、成人期の転帰を調査することである。278名のうち189名に連絡がとれ、そのうち170名から研究参加に同意が得られた。全般的社会適応は、全体の11%が優良、14%が良、37%が可、33%が不良、5%が著しく不良であり、過去のASDの長期追跡調査での報告と比べると、不良/著しく不良が少なかった。ASDの人たちは、幼児期より個々の特性に応じた環境設定や支援を受ければ、それなりに安定した成人期の生活を送ることが可能であることが示された。
著者
岡崎 裕之 布田 裕一 師玉 康成 荒井 研一
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究では、形式的定理証明系Mizarとモデル検査器ProVerifを用いて、計算機援用による暗号システムの安全性形式的評価システムを開発した。Mizarでは暗号理論に関わる形式化数学ライブラリを開発した。本成果は確率、統計、関数解析、計算アルゴリズムや計算量等の計算機科学の基礎の形式化であるので、暗号理論以外にも応用できる。一方、ProVerifでは、基本的な暗号プロトコルのみならず、従来より抽象度が低くより現実のシステムや実装に近いモデルでの安全性検証手法を提案した。これにより暗号学的ハッシュ関数やブロック暗号の利用モード等の開発時の設計支援や形式的安全性検証を行うことが可能となった。
著者
高橋 徹 松下 正明 鷲塚 伸介 萩原 徹也
出版者
信州大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

以下の2編の論文を発表した。①作家・北杜夫と躁うつ病 ― 双極性障害の診断 ―.病跡学雑誌95:58-74,2018.②作家・北杜夫と躁うつ病 ― 顕在発症前エピソードと『どくとるマンボウ航海記』―.信州大学附属図書館研究8:57-87,2019.第一報において、北杜夫における「躁うつ病」の病名が、現代の診断基準における双極Ⅰ型障害に該当すること、また「混合状態」「急速交代型」の特徴を有していたことを考察した。第二報において、顕在発症とされている39歳前にも気分変動が存在し、『どくとるマンボウ航海記』(1960年:33歳時)の執筆にも躁状態とうつ状態が創作に影響を及ぼしていた可能性を指摘した。
著者
杉本 渉 宮丸 文章
出版者
信州大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

4種類の導電性ナノシート(K-RuO2,Na-RuO2,K-IrO2,還元型酸化グラフェン)のTHz領域における電磁応答特性を調べ,新規THz光学デバイスへの応用性を検討した。THz領域における透過率を測定し,シートインピーダンスを算出した結果,K-RuO2はTHz領域において比較的高い導電性を示すことが示された。K-RuO2ナノシート膜は波長に対して非常に薄い領域にTHz波を吸収させることができるため,THz領域の薄膜吸収体として応用が期待できる。一方,メタマテリアルへの応用について検討した結果,導電率が最も高いK-RuO2ナノシートでもメタマテリアル構造には適していないことが示唆された。