著者
京川 裕之 清田 隆 近藤 康人 小長井 一男
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学ジャーナル (ISSN:18806341)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.265-273, 2012 (Released:2012-03-28)
参考文献数
21
被引用文献数
8 3

東北地方太平洋沖地震によって埋立地の大部分が液状化した千葉県浦安市において,著者らは地震発生直後から航空レーザ測量,粒度分析,SWS試験などを行い,液状化による地盤の変動を継続的にかつ定量的に把握してきた。これらの調査より,(1) 浦安市の埋立地では地盤沈下が広範囲に生じており,その沈下量の分布は家屋・ライフラインの被害と対応している。(2) 同時期の埋立地(未改良地区)で,被害程度が大きく異なる場所がある。(3) 広範囲に採取した噴砂の粒度およびSPT試料の粒度は,大量の噴砂と再液状化が確認されているニュージーランド・クライストチャーチのケースと非常に似通っている。(4) 液状化により地盤の貫入抵抗は大きく低下し,その後2ヶ月程度で強度は回復・安定するが依然として低い値を示している。本稿では以上の知見より,同地区の再液状化の可能性についても検討する。
著者
西山 哲 大西 有三 大津 宏康 西村 浩史 梁川 俊晃 亀村 勝美 関 文夫 池谷 清次
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学研究発表会 発表講演集 第38回地盤工学研究発表会
巻号頁・発行日
pp.1631-1632, 2003-03-05 (Released:2005-06-15)

石積み擁壁の安定性を不連続変形法(DDA)を用いて解析し,安定な構造となるためのメカニズムおよび盛土荷重に対する耐力や地震時での挙動を考察するためのデータを提供する.本研究は,特に空積み工法によって築かれた石積み擁壁を対象にし,従来の解析手法による安定性解析の困難さを示すと共に,当困難を克服するために開発された不連続変形法を紹介し,さらに当擁壁の各種地盤条件下ので安定性や地震時の挙動に関する解析結果を報告する.これにより,景観と環境に配慮し,人と地球の共生を図るための構造物としての石積み擁壁について考察する.
著者
門田 浩一 本橋 あずさ 佐藤 真吾 三嶋 昭二
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学ジャーナル (ISSN:18806341)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.253-271, 2019-08-31 (Released:2019-10-01)
参考文献数
25
被引用文献数
1

東北地方太平洋沖地震では,仙台市の盛土造成地において,多数の地すべり的変形被害が発生した。この被害は細粒分を多く混入する液状化が生じにくい盛土で発生しており,液状化に起因する盛土の変形被害とは異なる現象であった。本研究では,地すべり的変形が発生した盛土を対象として,変動部における物理・力学特性及び地下水特性を分析すると伴に,動的有効応力解析法等による再現解析を行い,その発生要因と機構について検討した。その結果,液状化が生じにくい盛土であっても,盛土内の締固め度89%以下の飽和部及び不飽和部(飽和度80%以上)では,大規模地震による繰返し載荷を受けると間隙水圧が上昇し,塑性変形が発生することを示した。また,繰返し載荷により上昇する過剰間隙水圧比は,盛土の静的な三軸圧縮試験結果より得られるせん断破壊時の過剰間隙水圧比と,同程度であることを示した。
著者
桑野 玲子 堀井 俊孝 山内 慶太 小橋 秀俊
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学ジャーナル (ISSN:18806341)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.349-361, 2010-06-30 (Released:2010-07-02)
参考文献数
35
被引用文献数
18 8

地盤内に何らかのきっかけで空洞やゆるみが発生し,それが周辺に拡大·進展して地表面に到達すると,陥没となって現れる。都市部で頻発する道路陥没において,それらの芽となる地盤内空洞の原因は,路面下に埋設物や掘削工事歴等が輻輳するうえ早急な道路復旧が優先される状況下では明確に特定できない場合も多く,現象の解明が遅れている一因となっている。一方で,下水管渠の老朽化や破損により管内に周辺土砂が流出して空洞·ゆるみが発生し道路陥没に至る事例も近年多く報告され,耐用年数を超過した管渠が増え始めている状況で看過できない問題である。本研究では,このような老朽下水管の破損が原因となる道路陥没等の地盤工学的問題を解決する一助となるよう,地盤内空洞とその周辺のゆるみ領域の形成·拡大·進展メカニズムとその評価方法について実験的に検討した。土砂流出による空洞形成の支配的要因や空洞の拡大過程について明らかにした他,空洞周辺の“ゆるみ”領域を定量的に評価し,地盤材料の土砂流出特性を整理した。
著者
久保田 恭行 森 守正 安田 亨 小山 倫史 西山 哲
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学ジャーナル (ISSN:18806341)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.135-145, 2022-06-01 (Released:2022-06-01)
参考文献数
38

トンネル工事での地下水問題に対応するため,迅速かつ正確な湧水量の予測手法が求められる。このため,岩盤工学的な物性がほぼ一様であり湧水量の変動の小さい地山を対象に,坑口湧水量を予測し,施工に反映する湧水量の予測手法が開発されたが,予測値が観測値より大きくなり,濁水処理設備の規模等に関して過剰設計が指摘されている。原因の一つとして,実現象で発生する湧水の鉛直浸透の影響と切羽前方の地下水位が低下する影響を考慮していないことが考えられる。そこで,本研究では開発された湧水量の予測手法を基に,それらの影響を新たに考慮できるよう物理モデルを拡張した湧水量の予測手法を提案し,岩盤工学的な物性がほぼ一様であり湧水量の変動の小さい既施工トンネルのデータを用いて検証を行った。その結果,精度良く湧水量を予測でき,施工に効率的に反映できる可能性を示した。
著者
池田 光良 阪田 義隆
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学研究発表会 発表講演集
巻号頁・発行日
vol.39, pp.1169-1170, 2004

キタサンショウウオの生息環境は過去に十分な調査が行われておらず,釧路湿原国立公園など自然環境が残されている地域に生息していると漠然と思われていた。近年,キタサンショウウオは湿地と乾燥域の接している部分や,未開発地域と開発地域の境界付近に生息していることがわかってきた。開発行為によるインパクトを評価するための基礎資料を得る目的で詳細な地下水位観測を行い,地下水収支を検討した結果,融雪期の2mm/日に達する涵養量による地下水位急上昇→地下水マウンドの形成→地下水面>地表で産卵→地下水位低下→凍結深より深い地下水面=冬眠可能な空間の形成,というサイクルを繰り返していることが明らかになった。
著者
荒牧 憲隆 山本 健太郎 平 瑞樹 林 泰弘 根上 武仁
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学ジャーナル (ISSN:18806341)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.309-322, 2014 (Released:2014-09-30)
参考文献数
28

宮崎県と鹿児島県の県境,霧島山中央部に位置する新燃岳において,2011年1月19日から始まった52年ぶりの噴火は,新燃岳火口から南東方向に大量の火山灰を降らせた。発生した火山灰の量は,4,000万~8,000万tと推定されており,宮崎県南部周辺の広範囲で降灰が確認されている。この突発的な火山災害により,斜面等に降り積もった火山灰堆積地盤での降雨や火山性地震による安定問題や処分された火山灰のリサイクル方法が重要な課題となってくる。本研究は,上記のことを鑑み,新燃岳より噴出した火山灰を用いて,新燃岳火山灰質土の物理・力学性質を実験的に検討し明らかにすることを目的としている。その結果として,噴火直後の火山灰質土の物理・力学特性は,砂質土と概ね類似した傾向を示し,リサイクル材として有用な材料であることが示された。しかし,火山灰質土特有の性質も包含しており,凍結融解の繰返しにより火山灰質土が細粒化していくことが認められ,物理的な風化の影響により材料特性が経時的に変化していくことが予想される結果となった。
著者
荒牧 憲隆 清松 潤一 岡林 巧 藤井 治雄
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学ジャーナル (ISSN:18806341)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.359-373, 2014 (Released:2014-09-30)
参考文献数
31
被引用文献数
1 3

我が国には,火山灰質粗粒土が広く分布し,特殊土として取り扱われ利用されることが多い。これらの土粒子には,粒子内空隙を有することが知られており,現在の地盤材料の試験方法では対応が困難となることも見受けられる。そのため,物理的諸性質の測定値には,ばらつきが多くなることが予想される。本研究では,粒子内空隙を有する種々の火山灰質粗粒土を対象に,土粒子の密度試験ならびに粒度試験を行い,測定値のばらつきに及ぼす試料の準備や実験方法での影響因子について検討することを目的としている。その結果,火山灰質粗粒土の物理的性質の評価においては,人的,機械的なばらつきに加え,材料そのものの特性により,著しく影響を受けることが認められた。このような材料での計測,品質評価においては,試料の均質性や準備状況に充分配慮を行う必要があることが示唆された。
著者
高井 敦史 保高 徹生 遠藤 和人 勝見 武 東日本大震災対応調査研究委員会 地盤環境研究委員会
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学ジャーナル (ISSN:18806341)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.391-402, 2013-09-30 (Released:2013-09-30)
参考文献数
19
被引用文献数
8 9

東北地方太平洋沖地震では,地震動のみならず津波による甚大な被害が発生した。具体的には津波の波力による建築物の倒壊や堤防の損壊,土砂の運搬および堆積,膨大な災害廃棄物・津波堆積物の発生等が挙げられる。公益社団法人地盤工学会東日本大震災対応調査研究委員会地盤環境研究委員会(以下,地盤工学会地盤環境研究委員会)では,津波堆積物の堆積状況を広く把握することを目的とし,2011年12月20~22日に福島県沿岸部の東西約7 km×南北約12 km の津波浸水範囲において,計158 地点を踏査し堆積状況を調査した。本研究では,この調査結果を基に津波堆積物の分布特性を明らかにするとともに,津波堆積物を地盤材料として利活用するために不可欠な科学的知見の集積を目的に,当該地から試料を採取し,のべ約1400検体を用いた室内試験により,津波堆積物の物理化学特性を評価した。
著者
福江 正治 渡部 要一
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学研究発表会 発表講演集
巻号頁・発行日
vol.38, pp.241-242, 2003

貧配合セメント処理土の圧密試験結果について、土のセメンテーションという観点から、その状態式を考える。セメント処理土は時間とともに硬化するので、その硬化の程度はセメンテーションと見なすことができる。つまり、セメンテーション硬化は養生期間に依存する。本研究では、このようなセメンテーションを有する供試体の圧縮曲線がつぎの状態式で表せることを示す。(1+ ë) p =γs z ここに、ë は平均間隙比、 pは有効圧力、γsは定数(土粒子の水中単位体積重量)、zは変数(深さ)である。ここで、ëおよびpはzの関数で表せる。
著者
栗谷 将晴 佐藤 真吾 小倉 薫 向山 雅史
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学研究発表会 発表講演集
巻号頁・発行日
vol.39, pp.1893-1894, 2004
被引用文献数
1

1978年宮城県沖地震以降、丘陵地を造成した住宅地において、地震時に切土盛土の境界付近や盛土内で、住宅が被災する可能性が高いことが知られている。そこで、造成宅地の切盛分布を広範に調査することを目的として、国土地理院発行の2万5千分の1地形図と同旧版地形図の等高線を用いて10mメッシュのデジタル標高データを作成し、両者の差を計算することで、造成宅地の切土盛土分布を示す造成宅地地盤図を作成した。また誤差に対する検討を行った。本図は、地震防災計画の立案や住民への防災意識の高揚、住宅の耐震化等に活用することができる。
著者
土田 孝 由利 厚樹 加納 誠二 中藪 恭介 矢葺 健太郎 花岡 尚 川端 昇一
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学ジャーナル (ISSN:18806341)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.339-348, 2013-06-30 (Released:2013-06-30)
参考文献数
20
被引用文献数
1

広島県内9箇所のまさ土斜面でにおいセンサを用いて地盤内のにおいの強さを調べた結果,最大1000のにおい強度を観測した。においの強さは地盤による相違が大きく,土の強熱減量が大きいほどにおい強度は大きかった。底部ににおい発生源を置き降雨を一次元的に浸透させる模型実験を行った結果,地下水面が上昇し表層部に近づいたときに地表面のにおい強度が急増することを確認した。実験結果は,深い層に強いにおいが存在する地盤において,豪雨時に地盤内のにおいを含む空気が地下水位の発生と上昇によって地表面に押し上げられにおいが発生する可能性を示している。
著者
加納 誠二 土田 孝 中川 翔太 海堀 正博 中井 真司 来山 尚義
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学ジャーナル (ISSN:18806341)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.243-259, 2011-06-30 (Released:2011-07-01)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

2009年7月24日から25日にかけての連続した降雨により,東広島市志和町内うち地区の残土処分場で崩壊が発生し,流動化した土砂が流下して住宅1戸が全壊した。本論文は本災害の原因について考察したものである。災害発生箇所は何回かの地形改変を経て残土処分場となっていたため,三次元レーザー測量による崩壊後の地形の把握,軽量動的コーン貫入試験による崩壊土砂堆積厚さの調査,過去の測量地図,航空写真の解析を行って,地形改変履歴を明らかにし崩壊直前の地形を推定した。崩壊した残土斜面の底部には帯水層が存在し豊富な地下水が流れており,崩壊後の現地調査と降雨後の地下水位の上昇を考慮した安定解析により,地下水位が帯水層から約9m 上昇し斜面全体の安全率が1 以下となり,すべり崩壊が発生したと推定された。降雨によって飽和度が高まっていた崩壊土砂は,地下水の流出とともに流動化し約9°の傾斜を500m 流下したと考えられる。
著者
汪 発武 高田 渉 松本 樹典
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学研究発表会 発表講演集 第39回地盤工学研究発表会
巻号頁・発行日
pp.2127-2128, 2004-03-05 (Released:2007-01-18)

崩壊誘起土石流の運動範囲予測は斜面防災の分野で重要な課題である。Sassa(1988)及びWang & Sassa (2002)によって提案された地すべり運動予測プログラムは計算結果の可視化機能などが加わり,実務適用可能の段階まで至っている。本報告は,簡単化した数値模型斜面を用いて,地形条件及び土質パラメータの影響を確認し,プログラムの有効性を確認した。さらに,崩壊土砂の衝撃による河床堆積物の流動化過程の数値実験を行った。これらに基づいて,1934年に発生した白山別当崩れを対象に,事例研究を行った。別当崩れは崩壊後,土石流となり,手取川に沿って,70kmも流下し,日本海まで達した大災害である。
著者
大山 将
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学ジャーナル (ISSN:18806341)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.465-470, 2020-09-30 (Released:2020-09-30)
参考文献数
16

水銀汚染土壌(模擬汚染土壌および実際の汚染土壌)に対して,酸化マグネシウム系材料(マグネシウム系固化材)および高炉セメントB種により不溶化処理を検討した室内試験の結果および不溶化処理土の長期溶出挙動の観察結果について報告する。水銀溶出量によっては助剤の併用が必要であるが,マグネシウム系固化材は水銀に対して安定して高い不溶化効果が長期間持続することが最長10年の観察により確認された。高炉セメントB種についても,水銀に対して一定の不溶化効果を発揮すること,材齢の進行により不溶化効果が増加すること,中性化(pH低下)により不溶化効果が低下する可能性があることを示した。
著者
杉山 歩 井原 哲夫 永翁 一代 辻村 真貴 加藤 憲二
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学ジャーナル (ISSN:18806341)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.13-21, 2021-03-01 (Released:2021-03-02)
参考文献数
43
被引用文献数
1

高レベル放射性廃棄物の地層処分や地中熱利用等に関連して,地質環境の基礎データの収集・整理が進められている.近年の国際動向をみると微生物情報を収集していく必要性が認識されつつある一方,未だにその知見は限られている.深部地下水における微生物の基礎情報を他の水質情報と共にデータベース化していくためには,微生物解析手法を体系化し,データ集積を進める必要がある.本報は北海道幌延町浜里沿岸域に位置する大深度掘削井から採取した深部地下水を対象に行った微生物解析の結果と一度の採水で効率的に地下水中の微生物に関する基礎情報,すなわち微生物数,群集構造,活性,群集構成を評価する手順を示した.
著者
上田 慎一郎 末政 直晃 片田 敏行 玉手 聡 有木 高明
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学研究発表会 発表講演集
巻号頁・発行日
vol.39, pp.1387-1388, 2004

表層固結地盤とは、軟弱な不飽和土層の上部に固結層が配置された2層地盤である。模型地盤は、関東ロームを静的に締め固めた下層の上部に、セメント混合ロームで再現した固結層を配置させたものであった。支持力実験は、表層厚とそのせん断強度を変えるとともに、円形フーチングの径を変えて実施された。極限支持力の解析方法を検討した。テルツァーギ式による方法と仮想すべり面法による2つの解析値を実験値と比較した。仮想すべり面法とは、表層内に観察されたすべり面の面積にせん断強度を乗じて極限支持力を計算する方法である。検討の結果、仮想すべり面法による解析値と実験値には、比較的良く一致が見られることがわかった。