著者
高橋 昌巳 一幡 良利 吉田 英一 佐々木 千鶴子 与那覇 朝英
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.36, no.11, pp.779-786, 1988

HeLa細胞の形成したmonolayerに肺炎桿菌を含む培養液を重層し, 菌の細胞吸着条件を求めた。その結果, 106CFU/ml以下の菌を含む培養液では3時間後の細胞吸着菌数が10<SUP>4</SUP>~10<SUP>6</SUP>CFU/mlに達した。肺炎桿菌を10<SUP>6</SUP>CFU/ml含むこの条件下で, AMKの<I>in vitro</I>のMIC濃度の10倍から100倍濃度を作用させ, 菌のHI寒天培地に発育できなくなる作用時間は10MICで18時間, 100MICで6時間後であった。しかしながら, L-プロス中では100MIC18時間作用後もなお48時間後に菌の発育が認められた。5種類の抗生物質の<I>in vitro</I>でのMICの100倍濃度を6時間作用させた結果では, DOXYがAMKと同様の結果を示したが, β-lactam系抗生物質ではHI寒天培地で10<SUP>2</SUP>~10<SUP>3</SUP>CFU/ml発育し, L-プロス中では10<SUP>-4</SUP>~10<SUP>-6</SUP>希釈管まで菌の発育が認められた。形態像はAMK100MIC作用後の光学顕微鏡的変化は認められなかったが, 走査電子顕微鏡的にはHeLa細胞と菌の両方が障害を受け, AMK除去後では細胞と菌の両方の回復してきた像が認められた。β-lactam系抗生物質では菌の伸長と内容物の吐出が光学顕微鏡下で認られた。
著者
保田 隆 渡辺 泰雄 四辻 彰 林 敏雄 南 新三郎 岡本 世紀 山城 芳子 荒木 春美 伊東 優子 本村 桂子
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.36, no.Supplement9-Base, pp.95-109, 1988-12-30 (Released:2011-08-04)
参考文献数
12

新ピリドンカルボン酸系合成抗菌剤T-3262のin vitroおよびin vivo抗菌活性をnorfloxacin (NFLX), ofloxacin (OFLX), ciprofloxacin (CPFX) を対照薬剤として比較した結果, 以下の成績を得た。1) T-3262はグラム陽性菌およびグラム陰性菌に対して広い抗菌スペクトラムを有していた。グラム陽性菌に対しては, すべての対照薬剤より強い抗菌力を示し, またグラム陰性菌に対しては CPFXとほぼ同程度, NFLX, OFLXより優れた抗菌力を示した。2) T-3262はPseudomonas aeruginosaを含むブドウ糖非醗酵菌, Bacteroides fragilisを含む嫌気性菌に対しても強い抗菌力を示した。3) T-3262はmethicillin耐性ブドウ球菌およびnalidixic acid耐性グラム陰性菌に対しても強い抗菌力を示した。4) T-3262の抗菌力に及ぼす諸因子の影響では培地の種類, ヒト血清添加の影響はほとんど受けず, 培地pHがアルカリ性側のとき抗菌力が強まった。5) T-3262の作用は殺菌的であった。6) グラム陽性菌およびグラム陰性菌を用いたマウス実験的全身感染症でT-3262は優れた治療効果を示した。特にグラム陽性菌においてすべての対照薬剤より優れた治療効果を示した。
著者
川原 富美男 大家 毅 永津 芳雄 内田 広
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.38, no.Supplement2, pp.122-134, 1990-11-30 (Released:2011-08-04)
参考文献数
11

Fleroxacinの代謝物をイヌ及びウサギの尿から単離, 同定した. また, 第1相臨床試験で得られた血清及び尿を用いてfleroxacinの代謝を検討し, 以下の知見を得た.1.イヌ及びウサギの尿からは未変化体, デメチル体, N-オキシド体が, ウサギの尿からはこれら以外にもデメチルオキソ体, ホルミル体の合計5個が単離, 同定された.2.ヒトの血清中では大部分が未変化体として存在し, 代謝物として検出されたデメチル体及びN-オキシド体濃度はピーク時でいずれも未変化体の約1%であった.3.ヒトの尿中には72hまでに服用量の83%が回収され, 未変化体が約90%を占めていた. 4つの代謝物, デメチル体, N-オキシド体, デメチルオキソ体及びホルミル体が尿中から検出され, それぞれ服用量の5%, 5%, 0.3%, 0.2%であった.4.Fleroxacinはウサギを除いて生体内では代謝を受けにくく, 大部分が未変化体として挙動するものと思われた. また, fleroxacinは各種実験動物と比較するとヒトにおいて最も代謝的に安定であることが示唆された.5.Fleroxacin服用後の抗菌活性のほとんどは未変化体によるものと考えられた.
著者
平井 敬二 青山 博 庭田 寧 安江 徳太郎 福田 秀行 鈴江 清吾 入倉 勉
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.38, no.Supplement2, pp.1-10, 1990-11-30 (Released:2011-08-04)
参考文献数
7

新キノロン系抗菌剤であるfleroxacinのin vitro抗菌力について検討した. FleroxacinはEnterobacterimeae, Neisseria spp.及びHaemophilus influenzaeに対し強い抗菌力を示し, また, staphylococci, Pseudomonas aeruginosa及びBranhamella catarrhalisに対しても良好な抗菌活性が認められた. 臨床分離株に対するfleroxacinの抗菌力はnornoxacin及びofloxacinと同程度であったが, ciprofloxacinよりは幾分劣っていた. なお, fleroxacinはmethicillin耐性Staphylococcus aureus及びgentamicin耐性P.aeruginosaに対しても優れた抗菌活性を示した. Fieroxacinの抗菌力は, 培地の種類, 培地のpH, 接種菌量, 金属イオンの添加及びヒト血清の添加による影響をほとんど受けなかった. MICとMBCはほぼ一致していた. Fleroxacinは他のキノロン剤同様Escherichia coli及びP. aeruginosaから分離したDNA gyraseのスーパーコイリング活性を強く阻害した. Fleroxacinは大腸菌, 緑膿菌, ブドウ球菌に対し良好なpost antibiotic effect (PAE) を有していた.
著者
竹尾 剛 渋谷 統寿 本村 政勝 金沢 一 宍戸 春美
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.37, no.9, pp.1154-1159, 1989-09-25 (Released:2011-08-04)
参考文献数
8

ニューキノロン系抗菌剤と消炎鎮痛剤の併用により痙攣と高CK血症を来した症例を経験した。症例は64歳女性。膀胱炎のためエノキサシン (ENX) 300mg/日とフェンブフェン (FBF) 1,200mg/日を4日間服用中に突然意識消失し, 痙攣を来した。強直性痙攣と不穏状態が間歇的に3回繰り返し起こったが, 約4時間後には意識清明となった。入院時の心電図, 頭部CTスキャンは正常範囲であった。入院後著明な高CK血症 (第5病日に最高17,712IU/1と最高値) を認めたが第13病日には正常化した。CKアイソザイムはすべてMM型であったが, 針電極筋電図, 筋生検に異常はなかった。次に, マウスを用いてニューキノロン系抗菌剤による痙攣の発症に関する基礎実験を行なった。その結果ENXのみならず, シプロフロキサシンもFBFとの併用により痙攣を発症することがわかったが, オフロキサシンとFBFの併用では痙攣は発症しなかった。痙攣の予防に抗菌剤とFBFの投与前にあらかじめバルプロ酸ナトリウム, γ-アミノ-β-ヒドロキシ酪酸, プロスタグランディンE2, ジアゼパム, およびフェノパルピタールを投与したがいずれも痙攣の発症を抑えることはできなかった。ENXとFBFの併用による痙攣は現在まで7例が報告され, その主因はENXであろうと推定されているが, その機序は不詳である。
著者
長手 尊俊 杉田 和彦 宮地 純子 宮崎 真奈美 竹市 千恵 小野 武夫 大竹 盾夫 大村 貞文
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.36, no.Supplement3, pp.170-191, 1988-07-30 (Released:2011-08-04)
参考文献数
11

新規マクロライド系抗生物質TE-031の体液内濃度測定法について検討した。検定菌としてMicrococcus lutescs ATCC 9341, 検定培地としてHeart infusion agar (栄研; pH8.0) を用いたペーパーディスク法が最適であった。血中濃度測定には, その標準液としてヒトプール血清 (Consera) を, 尿中濃度測定には, メタノール・リン酸塩緩衝液 (メタノール: 0.02Mリン酸塩緩衝液, pH7.4=4:1) と一部には1/15Mリン酸塩緩衝液を, 組織内濃度測定にはメタノール・リン酸塩緩衝液を用いTE-031の定量が可能であった。各サンプルの調製は各々のサンプルに応じた希釈液を用いて行った。また, TE-031ヒト主要代謝物で最も強い抗菌力を有するM-5も上記と同様の方法にてその定量が可能であり, TE-031とほぼ同様の検量線が得られた。TE-031の測定範囲は0.025~100μg/ml (但し1/15Mリン酸塩緩衝液; 0.2~100μg/ml) であった。また, これらbioassay法は高速液体クロマトグラフィー (HPLC) を用いるchemical assay法と良好な相関性を示した。
著者
長手 尊俊 杉田 和彦 沼田 和生 小野 武夫 宮地 純子 森川 悦子 大村 貞文
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.36, no.Supplement3, pp.129-155, 1988-07-30 (Released:2011-08-04)
参考文献数
12

TE-031のin vitroおよびin vivo抗菌力をErythromycin (EM), Josamycin (JM) および他の抗生剤と比較検討し, 次の結果を得た。1. TE-031は, EMと同様の抗菌スペクトルを有し, 好気性グラム陽性菌, 好気性グラム陰性菌の一部 (B. catarrhalis, N. gonorrhoeu, H. influenzae), 嫌気性菌, L型菌およびマイコプラズマに対して優れた抗菌活性を示した。2. TE-031は臨床分離株388株に対して, EMと同等ないしやや強く, JMより強い抗菌力を示した。3. TE-031はEMと同様H.influenzaeに対して殺菌的に作用した。4. TE-031はマウス実験的全身感染症, 皮下感染症および呼吸器感染症に対してEM, JMよりも優れたin vivo抗菌力を示した。
著者
大石 明 勝 正孝 坂内 通宏 仲村 秀俊 石井 昌俊 井上 亨 福井 俊夫 青崎 登 吉松 博 奥井 津二
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.327-332, 1992

ME 1207の基礎的および臨床的検討を行い以下の知見を得た。基礎的検討での本剤の抗菌力はグラム陽性菌 (<I>Staphylococcus aureus, Staphylococcus epidermidis, Streptococcus pyogenes, Streptococcus pneumoniae</I>等6菌種) およびグラム陰性菌 (<I>Escherichia coli, Citrobacter freundii, Enterobacter cloacae, Serratia marcescens</I>等11菌種) に対してcefteramと同等またはそれ以上の抗菌力を示した。臨床的検討では急性咽頭炎6例, 急性気管支炎5例 (男4人, 女7人, 年齢24~82歳) に対し本剤を1日600mg分3で2~13日間投与し, 著効3例, 有効6例, 無効1例, 不明1例であった。副作用として嘔吐が1例, 臨床検査値の異常変動としてGOT・GPTの上昇が1例で認められた。
著者
椎尾 剛
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.36, no.7, pp.500-504, 1988-07-25 (Released:2011-08-04)
参考文献数
9

レンチナンとサイクロホスファマイドをsarcoma-180担癌マウスの初期に併用した場合には, 例外なく, 両薬剤を単独投与した場合よりも強く腫瘍を阻害した。しかしながら, 定着癌系ではレンチナンとサイクロボスファマイドの効果は薬剤の併用タイミングに依存した。定着したsarcoma-180固型癌担癌マウスにサイクロボスファマイドをレンチナン投与に先立って投与した場合には併用効果が認められなかった。定着固型癌系においてレンチナンとサイクロホスファマイドを同時併用した場合には両薬剤の単独投与群に比べより強い腫瘍阻害が認められた。併用した場合にはサイクロホスファマイド投与による遅延型皮膚反応や白血球数の抑制をレンチナンが有意に防止した。レンチナンはシスブラチン, アドリアマイシン, カルポコン, UFT, テガフールおよびブレナマイシンとの間においても併用効果を示した。
著者
守殿 貞夫 松島 敏春 岡本 了一 青木 信樹 小田切 繁樹 荒川 創一 相川 直樹 岩田 敏 坂巻 弘之 石田 直文 池田 俊也 矢島 秀一 池上 直己 森 和彦 紺野 昌俊
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
日本化学療法学会雑誌 (ISSN:13407007)
巻号頁・発行日
vol.50, no.8, pp.517-553, 2002-08-25 (Released:2011-08-04)
参考文献数
28

過去5年間に当院で入院治療を行った市中肺炎, 院内肺炎の経験をふまえて, 呼吸器感染症 (肺炎) に対する抗菌薬治験の進め方について発表し, 以下の結論を得た。80歳以上の高齢者および重症感染症に対する抗菌薬の治験はまったく実施されていないといえるが, もっとも抗菌薬が必要とされる対象であり, 有効性安全性の検討が第III相までにある程度なされるべきであろう。市中肺炎のみの臨床治験の実施で薬剤が製造承認され, 院内肺炎に対して使用されている。院内肺炎に対する臨床治験も今後必要となろう。内服βラクタム薬の投与量は体内動態, ブレイクポイントMICなどを考慮し再考を要する。
著者
原田 喜男 豊島 久美子
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.28, no.Supplement7, pp.1202-1225, 1980-11-25 (Released:2011-08-04)
参考文献数
17

6059-Sの静脈内投与による腎耐生を, 家兎を用いた単回投与および7日間連続投与試験によって, 他のCephalosporin系抗生剤投与により惹起される陣害と比較した。単回投与試験の結果, 6059-S投与群および対照楽として用いたCephalothin (CET) とCefmetazole (CMZ) 投与群には2,000mg/kg/日の投与量において腎障害を認めなかった。これに対しCefazolin (CEZ), efotiam (CTM) およびCefotaxime (CTX) 投与群にはBUNやクレアチニンの上昇, 尿中への顆粒円柱・上皮円柱等の出現, 蛋白・糖の出現, 形態学的に腎皮質近位尿細管上皮細胞の変性・壊死・石灰沈着, 遠位尿細管腔内に硝子様円柱の存在等の所見が認められた。7日間連続投与試験においても, 6059-SおよびCET投与群には腎障害を認めなかったが, CEZ 400mg/kg/日群では尿中への顆粒円柱・上皮円柱の出現が軽度に認められた。以上の成績より腎障害作用を各薬剤間で比較すると, 雄においてはCTM>CEZ>CTX>CMZ≒CET≒6059-Sであり, 雌においてはCEZ≧CTM>CMZ≒CET≒6059-Sであった。
著者
村岡 義博 矢原 功 吉崎 敏夫 原田 喜男
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.28, no.Supplement7, pp.1072-1088, 1980-11-25 (Released:2011-08-04)
参考文献数
11

1.6059-Sの亜急性毒性試験を, 赤毛ザルを用いて実施するに先立って, 6059-Sの静脈内投与によるpilot studyを, 雌雄各1頭の赤毛ザルを用いて実施した。6059-Sの500mg/kgまたは1,000mg/kgの4日口髄続投与では特紀すぺき変化は認められなかったが, 5,000mg/kgの1回大量投与では。注入量2, 500mg/kgに連したときに, 雌に嘔吐がみられ, 投与終了後から約30分間にわたって2頭ともに鎮静状態がみられた。また, 本投与量での解剖時の病理検査において, 1頭に肝細胞と腎尿細管上皮の軽度の腫脹が認められた。2.上記pilot studyの結果を参考にして, 赤毛ザルにおける6059-Sの亜急性毒性試験を100, 300および500mg/kgの30日間静脈内投与により実施した。100, 300および500mg/kgの30日間投与によっても途中死亡例は認められず, 耐薬性は良好であった。軽度な変化として, 投与初期から軟便あるいは下痢が観察されたが, 投与継続中にそれらの症状の悪化は認められなかった。100mg/kg投与群の1例において, 下痢, 体重減少, 血液生化学的所見の変化等の多彩な変化がみられたが, 特異な個体であると考えられた。本例を除けば, 6059-S投与に起因すると考えられる明らかな変化は観察されなかった。なお本実験の赤毛ザルでの最大無作用量は500mg/kg/日であると結論された。
著者
小林 文彦 松浦 稔 長谷川 紀昭 吉崎 敏夫 原田 喜男
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.28, no.Supplement7, pp.1029-1071, 1980-11-25 (Released:2011-08-04)
参考文献数
8

Oxacephem系抗生物質6059-Sの400, 800および1.600 (800×2) mg/kg/日をビーグル犬 (雄25頭, 雌24頭) に32日間連続静脈内投与を行い, Cefazolin (CEZ) を対照藁として亜急性毒性試験を実施した。成績を要約すると, 以下のごとくである。1) 一般状態: 流涎, 嘔吐, 排便動作等の中枢作用は, CEZに比較して6059-Sでは軽度であった。2) 肝への影響: 6059-SおよびCEZの800/mg/kg以上の投与で軽度な肝肥大がみられ, 電顕的にグリコーゲン野の減少をともなった滑面小胞体の軽度増加があったが, 肝単位重量当りの薬物代謝酵素活性はむしろ軽度低下を示したので, この変化は薬剤の大量投与による機能低下に対する単なる非特異的な代償性肥大と考えられる。3) 腎への影響: 6059-S 800mg/kg以上の投与で軽度な腎肥大が生じ, 近位尿細管上皮細胞でvesicleの増加, lysosoneの減少, 細胞間隙の拡張および酸phosphataseの軽度増加がみられたが, PSP排泄ではむしろ軽度亢進があったので, この変化は腎の排泄機能亢進像であって, 6059-Sには腎障害作用は無いといえる。4) その他: 6059-S投与群で, 検体の高浸透圧液大量投与を反映した摂水量の増加およびそれにともなう尿量の増加, 血漿中GPTの軽度減少, 脂質の増加, 軽度な局所刺激作用がみられたが, GPTの変化を除いては, いずれもCEZと同程度であった。CEZ投与群ではGPTの顕著な減少を認めた。その他の検査項目については異常は認められなかった。
著者
小林 文彦 古川 仁 長谷川 紀昭 吉崎 敏夫 原田 喜男
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.28, no.Supplement7, pp.1007-1028, 1980-11-25 (Released:2011-08-04)
参考文献数
8

SPRAGUE-DAWLEY系ラット雌雄に6059-Sの760, 1, 260, 2, 100および3, 500mg/kgとCEZの760, 1, 260mg/kgを1日1回連続35日閥静脈内投与し, 毒性を比較検討した。なお, 一部の動物については, 最終投与後, さらに28日間の休薬期間をおき回復性をみた。6059-Sの高用量投与群とCEZ投与全群に, 毎回の投与後一過性の呼吸困難や脱力および顔面浮腫などがみられ, 投与期間中, 6059-S 3, 500 mg/kg投与群の雌雄各2/16例とCEZ 1, 260 mg/kg投与群の雄10/24例が, いずれも急性中毒症状を呈して死亡した。投与期間終了時点の血液検査で6059-S 3, 500mg/kg投与群に軽度の貧血がみられた。生化学分析では, CEZ投与群に血漿GOT, GPT活性の著しい低下があった。病理所見では, 6059-SおよびCEZ投与全群の盲腸の異常拡張を認めたのみで, その他に特記すべき著変はなかった。なお, 以上の変化は, 投与中止後の回復試験ですべて良好な回復性を示した。以上の結果から, 6059-Sのラットでの最大無作用量は1, 260 mg/kgと判断され。また, CEZとの毒性比較において, 6059-Sは毒性が極めて弱く, 安全性の高い化合物と結論された。
著者
采見 憲男 武田 節夫 北里 健二 梶原 大義 藤井 節郎
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.200-208, 1978-03-25 (Released:2011-03-08)
参考文献数
13

The antitumor activity of 1, 3-Bis (tetrahydro-2-furanyl) -5-fluoro-2, 4-pyrimidinedione (FD-1) was compared with that of 1- (2-Tetrahydrofuryl) -5-fluorouracil (FT) or 5-Fluorouracil (5-FU) in a number of tumor systems.FD-1 had significant activity against the solid forms but not the ascitic forms, and it produced a greater inhibition in tumor growth than FT. On AH 130 solid form, the therapeutic index (LD50/ED50) of FD-1 and FT were respectively 18. 3 and 10.6.FD-1 was evaluated against the ip and sc implanted L 1210 leukemia by single, intermittent or daily administration. FD-1 retained some degree of antileukemic activity against the ic implanted L 1210.No significant difference in antitumor activity was observed between the R and S isomers or the racemic mixture (FD-1).A higher activity of FD-1 compared to FT was possibly due to the increased 5-FU level in tumor through its metabolite, 3- (tetrahydro-2-furanyl) -5-fluoro-2, 4-pyrimidinedione (3-FT).
著者
戸出 英輝 采見 憲男 川口 安郎 多比良 和基
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.385-391, 1977-02-25 (Released:2011-03-08)
参考文献数
11

FT-207 was activated to 5-FU by microsomal drug-metabolizing enzyme in the liver, and 5-FU was converted to F-β-alanine etc. in the microsomal supernatants or to FuR etc. in the nucleus.After administration of FT-207, 5-FU activated in the liver was released into the blood and then transferred to the tumor tissues.On the other hand, in experiment of the rat treated with CCl4 in vivo and of the activation of FT-207 by several tissues in vivo, it was observed that FT-207 was activated in the lung, the kidney and spontaneously besides the liver.After administration of 3H-FT-207, the radioactivities were incorporated as FUMP into the RNA fraction of tumor cells.Based on these results, we postulated that FT-207 was activated to 5-FU mainly in the liver, partially in the lung, the kidney enzymatically and in whole bodies spontaneously, was transferred to the tumor tissues and remarkably inhibited the RNA and DNA synthesis.
著者
安田 行寛 東郷 常夫 采見 憲男 渡辺 昭治 播磨 耕介 鈴江 崇志
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.21, no.6, pp.1171-1178, 1973-08-25 (Released:2011-03-08)
参考文献数
9
被引用文献数
1

N1-(2-Tetrahydrofuryl)-5-fluorouracil (FT-207), a new antimetabolic anticancer agent synthesized in USSR, was studied on antimicrobial activity in vitro and distribution, excretion and metabolism in vivo.The results obtained were as follows.1) Antimicrobial activityFT-207 showed fairly active against Micrococcus flavus ATCC 10240, Sarcina lutea PCI 1001, Staphylococcus epidermidis and Staphylococcus aureus 209 P, but in general the activity was inferior to that of 5-FU.2) DistributionBy the intravenous administration of FT-207, 400mg/kg, in normal and AH-130 bearing rats, the concentration of FT-207 in serum and tissues maintained measurably until 16-24 hours.On the other hand, the active substances (5-FU, etc.) from FT-207 detected at 1-4 hours and peaked at 4-16 hours in tissues.3) Urinary excretionFT-207 and its active substances were excreted in urine for a long time, and the recoveries of FT-207 for 48 hours in rats, mice and rabbits were 12-18%.4) MetabolismIn normal and AH-130 bearing rats, the main active substance from FT-207 administrated intravenously was 5-FU.
著者
安田 行寛 東郷 常夫 采見 憲男 渡辺 昭治 播磨 耕介 鈴江 崇志
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
日本化学療法学会雑誌 (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.21, no.6, pp.1171-1178, 1973

N<SUB>1</SUB>-(2-Tetrahydrofuryl)-5-fluorouracil (FT-207), a new antimetabolic anticancer agent synthesized in USSR, was studied on antimicrobial activity <I>in vitro</I> and distribution, excretion and metabolism <I>in vivo</I>.<BR>The results obtained were as follows.<BR>1) Antimicrobial activity<BR>FT-207 showed fairly active against <I>Micrococcus flavus</I> ATCC 10240, <I>Sarcina lutea</I> PCI 1001, <I>Staphylococcus epidermidis</I> and <I>Staphylococcus aureus</I> 209 P, but in general the activity was inferior to that of 5-FU.<BR>2) Distribution<BR>By the intravenous administration of FT-207, 400mg/kg, in normal and AH-130 bearing rats, the concentration of FT-207 in serum and tissues maintained measurably until 16-24 hours.<BR>On the other hand, the active substances (5-FU, <I>etc</I>.) from FT-207 detected at 1-4 hours and peaked at 4-16 hours in tissues.<BR>3) Urinary excretion<BR>FT-207 and its active substances were excreted in urine for a long time, and the recoveries of FT-207 for 48 hours in rats, mice and rabbits were 12-18%.<BR>4) Metabolism<BR>In normal and AH-130 bearing rats, the main active substance from FT-207 administrated intravenously was 5-FU.