著者
山本 潤二 村上 斉 砥出 勝雄 味岡 廣房 三宅 秀和
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.36, no.Supplement5, pp.149-158, 1988-10-10 (Released:2011-08-04)
参考文献数
12

新しいセフェム系抗生物質であるTHR-221の中枢神経系への影響をマウス, ラット, ウサギ, ネコおよびイヌを用いて検討した。THR-221 1500mg/kg, i. v. までの投与において, マウスの自発運動量, hexobarbital睡眠, 電撃・pentylenetetrazolけいれん, 協調運動, 酢酸stretchingおよびラットの正常体温, 条件回避反応に対して影響は認められなかった。また同用量の投与において, ウサギの自発脳波, 音・光刺激反応およびネコの脊髄反射に対しても影響は認められず, イヌにおいて1500mg/kg, i. v. でのみ軽度の嘔吐が観察されただけであった。以上の結果から, THR-221の中枢作用は弱いことが分り, THR-221は中枢神経系への影響が少ない抗生物質であると考えられる。
著者
齋藤 玲 多羅尾 史明
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
日本化学療法学会雑誌 (ISSN:13407007)
巻号頁・発行日
vol.44, no.Supplement1, pp.221-228, 1996-03-25 (Released:2011-08-04)
参考文献数
13

新規プロドラッグ型キノロン系抗菌剤NM441の吸収に及ぼす牛乳の影響について, 健常成人男性志願者6名を対象に検討した。NM441 200mg (活性本体NM394として200mg含有) 空腹単回投与時のNM394血清中濃度は, 水200mlでの服薬時および牛乳200mlでの服薬時で, それぞれCmaxが1.43±0.27μg/mlから1.00±0.26μg/mlに, AUC0~∞が7.60±1.47μg・h/mlから5.19±1.72μg・h/ml (平均値±SD) に, 約30%有意に低下した。24時間までの累積尿中排泄率も43.9±5.8%から30.8±5.4%と約30%低下した。Tmax, T1/2については大きな差は認められなかった。以上の結果より, 牛乳での服薬はNM441の吸収を低下させることが確認された。
著者
荒谷 春恵 山中 康光 大西 黎子 河野 静子 檜垣 雄三郎
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.15, no.5, pp.519-526, 1967 (Released:2010-09-24)
参考文献数
17

Pharmacological actions of 5-fluorouracil (Fu), an antipyrimidine agent, were investigated. In mice, LD50 were the doses of 730 ( sc), 1, 010 ( ip) and 41. 6 ( ic) mg/kg respectively. Chroni c convulsion, lateral turning or rotation of the whole body were observed in application of Fu in the brain of mice and its CD50 was the dose of 18. 15 mg/kg. For subacute toxicity, the rates of death w ere 50% during 30-40 days in the group of 20 mg/kg and 10∼50% during 50∼60 days in the group of 5∼10 mg/kg/day respectively. At that time decrease of testis weight and increase of spleen weight were noticed. The movement of the excised frog heart was accelerated at the dose of 0. 2 mg/ml of Fu, and inhibited at 2 mgiml. The mov e ment of the excised rabbit intestine was accelerated at the dose of 1 mcg/ml of Fu and inhibited at 0. 5 mg/ml. it has no effec t on the excised auricular vessels of the rabbit and dose of 1 mg/m1 of Fu increased the permeability of rabbit skin vessels. Temporary fall of blood pressu r e and decrease of respiration were observed at the dose of 10 mg/kg of Fu in the urethane-anesthetised rabbit. Bradycardia (lengthens of PQ inter val) took place at the dose of 4 mg/kg of Fu and tachycardia (shortens of ST interval) at the dose of 20 mg/kg. Local irritation of Fu was not observed. Fu, therefore, has not remarkab l e pharmacological actions at the therapeutic doses.
著者
五島 瑳智子 丹羽 千鶴子 桑原 章吾 林田 敏夫
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.11, no.6, pp.358-360, 1963-11-25 (Released:2010-09-24)
参考文献数
5

卯尾田および高井(195)が合成したBis-(5-nitrofurfurylidene)-acetenguanylhydrazoneは,培地に.加えてから加熱滅菌すると高い抗菌価を示すが,無菌的に培地に加えた場合は抗菌価が低く,培地内で物質の変化が予想された。 三浦ら(1961)は上記の物質をアルカリ環境で有機溶媒中で加熱すると閉環反応が起こりastriazineをもつ化合体が生成することを発見し,強力な抗菌作用を示す3-Amine-6-[2-(5-nitro-2-fury1)-viny1]-as-triazineの合成に成功した。その抗菌力については木村ら(1962)の検討がある。私らは上記の2化合体のメチル誘導体である1,5-Bis(5-nitro-2-fury1)-3-pentadienone N4-methy1-amidinohydrazone・HC1(以下,BNP-Mと略す)および3-Methylamino-6-[2-(5-nitre-2-fury1)viny1]-as-triazine・HCI(ANT-Mと略)の新鮮分離ブドウ球菌および赤痢菌に対する抗菌価をしらべたので,つぎにその成績のあらましを報告する。
著者
原田 喜男 豊島 久美子 岡本 孝夫
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.35, no.Supplement1, pp.452-459, 1987-05-31 (Released:2011-08-04)
参考文献数
6

6315-S (Flomoxef) 1の静脈内投与による腎毒性を, ウサギを用いて, 1,000mg/kg単回投与試験により検索し, 対照薬Cefazolinsodium (CEZ) によるそれと比較した。6315-S投与群では, 組織学的に, 近位尿細管上皮細胞の一部に, わずかに壊死を認めたが, 尿検査や血液生化学的検査値に影響をほとんど認めなかった。他方, CEZ投与群では。近位尿細管上皮細胞の壊死やカルシウム沈着が著明であり, 蛋白尿や顆粒状円柱・上皮円柱の尿中への出現, 血漿中クレアチニン・尿素窒素値の上昇など腎毒性作用が明らかであった。以上の成績から, 6315-Sの腎毒性作用はCEZに比して明らかに弱いものと判断された。
著者
松澤 利明 吉田 俊夫 堺 俊治 塩原 有一
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.30, no.Supplement1, pp.267-277, 1982-04-20 (Released:2011-08-04)
参考文献数
14

Cefotetan (CTT, YM09330), Cefazolin (CEZ) およびCephalothin (CET) をNZW雌ウサギに静脈内投与し腎毒性を検討した。投与量は600または1, 200mg/kgで, 1投与量当り6匹 (対照は8匹) のウサギに1回投与し, 臨床検査を実施し, 投与3日後に屠殺し, 病理検査を行った。Cefotetan: 600および1, 200mg/kgの両群に食欲不振が認められたが, 死亡例はなかった。BUNおよびクレアチニンの上昇は認められなかった。尿蛋白は1, 200mg/kg群の1匹にみられた。腎を肉眼的に観察すると1, 200mg/kg群の1匹に灰白色結節, 他の1匹に小さいcystが認められた。600mg/kg群の1匹に小さなcystが認められた。腎の組織学的な検査では, 1, 200mg/kgの1匹に認められた灰白色結節はnephroblastomaと診断された。600mg/kg群の1匹に腎皮質近位尿細管上皮の壊死が認められた。Cefazolin: 1, 200mg/kgの1匹が投与後約6時間で死亡した。600および1200mg/kgの両群で食欲不振がみられた。1, 200mg/kg群では, BUNおよびクレアチニンの上昇が認められた。尿糖および尿蛋白は600および1, 200mg/kg群の両群にみられた。腎の肉眼的所見では, 1, 200mg/kg群の全例が褪色し, 大きくなっていた。また, 小さいcystがみられるものもあった。600mg/kg群の3匹に微細な灰白色点が密在しているのがみられた。腎の組織学的な検査では, dose dependenceに皮質近位尿細管上皮の壊死が認められた。Cephalothin: 600および1, 200mg/kg群に食欲不振がわずかに認められた。1, 200mg/kg群の1匹に尿蛋白が認められた。血漿生化学的所見では異常が認められなかった。腎を肉眼的に観察すると, 600mg/kg群の2匹が黄褐色化し, 小さいcystが認められた。腎の組織学的検査では, 薬物に関連する異常は認められなかった。Cefotetanの投与群にみられた腎の組織学的異常所見はdose dependenceがないことから, 本剤のウサギに対する腎毒性は, ほぼCETと同程度で, CEZよりも, かなり弱いものと考えられる。
著者
二木 力夫 柿本 守夫 宇佐美 正義 鈴木 繁生 高垣 善男
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.703-721, 1976-04-20 (Released:2011-03-08)
参考文献数
10

Potential nephrotoxicity of ceftezole (CTZ) and cefazolin (CEZ) was studied in rabbits by intravenous injections.A single injection of 125, 250, 500 and 1000 mg/kg of CTZ or CEZ caused a dose-related renal injury. This was confirmed by the results of tests of clearance (PAH), PSP excretion, BUN and protein and sugar in urine, and also by macro-and micro-scopic examination of kidneys. CTZ or CEZ injection of 500 and 1000 mg/kg resulted in alteration of renal functions and caused a necrosis of proximal tubules, while 125 and 250 mg/kg administrations did not cause a renal injury.In rabbits injected CTZ or CEZ, twice daily for 7 consecutive days at a dose of 64 and 125 mg/kg, no abnormalities were observed to be attributable to the drug treatment in both renal functions and kidney structure.CTZ or CEZ injections at doses of 50 and 100 mg/kg/day for 21 consecutive days would have been not caused a renal injury, while 200 mg/kg dose caused a slight alteration in renal functions, and CTZ injection at doses of 200 mg/kg/day caused slight necrosis to the least extent in proximal tubules.CTZ seemed to have much less nephrotoxic potential than CEZ.
著者
小林 文彦 小川 幹男 松浦 稔 吉崎 敏夫
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.37, no.Supplement1, pp.1084-1092, 1989-11-30 (Released:2011-08-04)
参考文献数
9

7432-Sまたは7432-SのNa塩 (7432-S・Na) の1000mg/kgをウサギに1回経口または静脈内投与して腎毒性の有無を調べた。得られた成績は次の如く要約される。1. 7432-S経口投与および7432-S・Na静脈内投与群とも摂餌量は, 有意に減少し, 体重の増加抑制傾向がみられた。2. 7432-S経口投与群では。尿の酸性化, 血漿中のクレアチニン, 総コレステロール値などがやや高かったが, 病理学的検査で腎毒性を反映した変化は認められなかった。3. 7432-S・Na静脈内投与群の腎臓では, 4例中3例に軽度から中等度の近位尿細管上皮細胞の壊死がみられた。これらの例では, 尿中に蛋白や糖および顆粒円柱がみられた。また, 血液生化学検査では, 中等度の近位尿細管上皮細胞壊死例のみに血漿中のクレアチニンおよび尿素窒素の上昇傾向がみられたが, 対照群との有意差はなかった。4. 従って, ウサギでは, 7432-S 1000mg/kgの1回経口投与で腎毒性の発現はみられず, 7432-S・Na 1000mg/kgの静脈内投与でのみ病理学的に弱い腎毒性が認められた。
著者
三宅 美行 宮崎 修一 辻 明良 金子 康子 山口 恵三 五島 瑳智子
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.42, no.Supplement2, pp.34-50, 1994-10-24 (Released:2011-08-04)
参考文献数
17

新しいβ-ラクタマーゼ阻害剤tazobactam (TAZ) とpiperacillin (PIPC) との1: 4の配合剤で あるtazobactam/piperacillin (TAZ/PIPC) のin vitroおよびin vivoにおける抗菌力を既存のβ-ラクタム系抗生物質と比較検討した。TAZ/PIPCはグラム陽性菌および陰性菌に対して幅広い抗菌スペクトルを示し, 陽性菌 では対照薬剤のなかで最も強く, 陰性菌においてもimipenem, ceftazidimeにつぐ強い抗菌 力を示した。特にβ-ラクタマーゼ産生株では配合相手であるPIPCよりも強い抗菌力を示 した。マウス全身感染治療実験において TAZ/PIPCは試験株のすべてに優れた治療効果を認 め, とくにβ-ラクタマーゼ産生株の感染ではPIPCよりも優れた治療効果を示した。また, TAZ/PIPCのβ-ラクタマーゼ非産生株単独感染での治療効果はPIPCとほぼ同様であったが, 産生株との混合感染においては明らかにPIPCより優れていた。β-ラクタマーゼ産生株であるEscherichia coli KU-3によるマウス尿路感染治療実験で, TAZ/PIPC投与マウスは PIPC投与マウスに比較して速やかな腎内生菌数の減少が観察された。また, 同様の方法にて尿路感染時の腎内PIPC濃度を測定したところ, PIPC投与群ではβ-ラクタマーゼによる分解を受けPIPC濃度はTAZ/PIPC投与群より有意に低下していたが, TAZ/PIPC投与群は正常マウスとほぼ同様であり, 分解を受けなかった。さらに, 臨床治療時を想定したヒト血中濃度シミュレーションシステムを用いてTAZ/PIPCの殺菌効果をβ-ラクタマーゼ産生株についてPIPCと比較したところ, TAZ/PIPCは PIPCより著明な生菌数の減少と再増殖の遅延が認められた。またE. coliとKlebsiella Pneumoniaeの混合接種においてもTAZ/PIPCはPIPCと比べ両菌に対し著明な殺菌作用が認められた。混合感染などβ-ラクタマーゼ産生株による感染治療においてTAZ/PIPCが優れた治療効果を示したのは, 感染部位に産生されたβ-ラクタマーゼによるPIPCの分解をTAZが阻害するためPIPC本来の抗菌力が発揮されたことによると考えられた。
著者
三宅 美行 西田 幸一 東谷 房広 宇治 達哉 兵頭 昭夫 石田 直文 釆見 憲男
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.42, no.Supplement2, pp.156-163, 1994-10-24 (Released:2011-08-04)
参考文献数
11

Tazobactam/piperacillin (TAZ/PIPC) のin vivo抗菌力を既存のβ-lactam系抗生物質と比較検討した。マウス全身感染治療実験においてTAZ/PIPCの治療効果はβ-ラクタマーゼ非産生のEnterococcus faecalisでpiperacillin (PIPC) と同等であったがβ-ラクタマーゼ産生株では優れていた。E. faecalisとEscherichia coliの混合感染およびStaphylococcus aureusとPseudomonas aeruginosaとの混合感染でTAZ/PIPCはPIPCより優れた治療効果を示した。尿路感染治療実験でTAZ/PIPCはP. aeruginosa単独, Proteus vulgarisとP. aeruginosaの混合感染共にPIPCより速やかな腎内生菌数の減少が観察され, 感染5日後ではPIPCより1/100以下に低下していた。Klebsiella pneumoniaeを用いた呼吸器感染治療実験でTAZ/PIPCはsulbactam/cefoperazone (SBT/CPZ) とほぼ同等の効力を示しPIPCより有意に優れていた。以上によりTAZ/PIPCは全身, 局所感染治療実験において優れた治療効果が認められた。特にβ-ラタマーゼ産生菌との単独, 混合感染において優れていた。
著者
松下 仁 小室 昌仁 前田 利松 南 慶典 佐川 久美子
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.42, no.Supplement2, pp.198-205, 1994-10-24 (Released:2011-08-04)
参考文献数
9

Tazobactam/piperacillin (TAZ/PIPC) の代謝物の検索をラジオ-HPLCを用いて, また活性代謝物の検索をTLC-バイオオートグラフィーを用いて検討した。次にtazobactam (TAZ) の代謝物M-1の生成臓器について, 血漿, 臓器ホモジネートを用いたin vitro試験により検討し, 次の結果を得た。1. ラットに14C-TAZ/PIPCあるいはTAZ/14C-PIPCを静脈内投与して, 血漿, 尿および胆汁中代謝物を検索し, 定量した。TAZの代謝物として, β-ラクタム環が開裂・分解した構造を有するM-1を同定した。Piperacillin (PIPC) は主として未変化体として検出され, 主要代謝物は存在しなかった。ラットの尿中にはTAZ未変化体が約70%, TAZの代謝物M-1が約17%, PIPC未変化体が約25%排泄された。胆汁中にはTAZが約2%, M-1が約1%, PIPCが約60%排泄された。2. ラット, イヌおよびサルにTAZ/PIPC50mg/kgを投与して, 血漿および尿のバイオオートグラムを作製し, 活性代謝物を検索した。その結果, TAZ, PIPCともに, 標準品と同位置に1スポットのみ検出され, 活性代謝物は存在しなかった。3. マウスの肺, 肝, 腎, 小腸の25%ホモジネートおよび血漿中の安定性について検討した。マウスでは血漿, 腎, 小腸でM-1が生成した。
著者
小室 昌仁 前田 利松 角尾 浩幸 松下 仁 箱井 加津男 吉田 昌彦
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.42, no.Supplement2, pp.217-227, 1994-10-24 (Released:2011-08-04)
参考文献数
19

Tazobactam/piperacillin (TAZ/PIPC) は広域ペニシリン系抗生物質であるpiperacillin (PIPC) にβ-ラクタマーゼ阻害剤であるtazobactam (TAZ) を4:1の力価比で配合した新規抗生剤である。今回, 肝臓あるいは腎臓障害動物および幼若動物にTAZ/PIPCを静脈内投与し, 薬物動態を検討した。またTAZ/PIPCのビリルビン血清蛋白結合に及ぼす影響を伽in vitroで検討し以下の結果を得た。1. 肝障害動物ではTAZ, PIPCともに腎外クリアランス (CLnr) の減少に由来する全身クリアランス (CLPtot) の減少が認められ, CLPtot, は腎クリアランス (CLr) とほぼ等しくなった。しかしながら腎クリアランス (CLr) が大きいため, 代償的な腎排泄が認められ, 体内からの消失の遅延の程度は大きくなかった。2. 腎障害動物ではTAZ, PIPCのCLPtot, CLr, 腎分泌クリアランス (CLrs) とクレアチニンクリアランス (CLcr) との問には高い正の相関が認められた。このときのCLnrは小さく, 障害の程度に応じてTAZ, PIPCの体内からの消失が遅延した。3. In vitroにおいてTAZ, PIPCはビリルビン・アルブミン結合に対して影響を及ぼさず, ビリルビン遊離作用は認められなかった。4. 幼若イヌにおけるTAZ, PIPCのT1/2βは成熟イヌよりも長く, 体内からの消失の遅延が認められた。また幼若イヌに反復投与後の蓄積性は認められなかった。
著者
前田 利松 小室 昌仁 松下 仁
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.42, no.Supplement2, pp.206-216, 1994-10-24 (Released:2011-08-04)
参考文献数
14

Tazobactam/piperacillin (TAZ/PIPC) は広域ペニシリン系抗生物質であるpiperacillin (PIPC) にβ-ラクタマーゼ阻害剤であるtazobactam (TAZ) を4: 1の力価比で配合した新規抗生剤である。今回マウス, ラット, ウサギ, イヌおよびサルを用い, TAZ/PIPC静脈内投与後の体内動態を検討し, 以下の結果を得た。1. TAZ/PIPC単回投与後の血漿中からの消失半減期は, TAZ, PIPCともにマウスで約5分, ラットで約10分, ウサギで約15分, イヌ, サルでは約25~35分であり, TAZ, PIPCはよく似た血漿中動態を示した。2. TAZ/PIPC単回投与後の尿中排泄率は, 未変化体TAZが約70~85%, TAZの代謝物M-1が約2~15%, 合計約80~90%であり, いずれの動物種においても主として尿中に排泄されたが, PIPCでは未変化体として約25~70%の排泄率であり, 種差が認められた。3. イヌにTAZ/PIPC16.6, 50または150mg/kgを単回投与した場合, TAZ, PIPCとも全身クリアランスおよび定常状態における分布容積の変動はほとんど認められず, この投与量範囲内では見かけ上ほぼ線形な動態を示すものと考えられた。4. イヌにTAZ/PIPCを反復投与した場合, TAZおよびPIPCの消失半減期, 全身クリアランス等のファーマコキネティックパラメーターや尿中排泄率は単回投与時とほぼ同じで, 反復投与により体内動態は変動せず, 蓄積性はないものと考えられた。5. マウスにTAZ/PIPC単回投与後のTAZの組織内濃度は血漿, 肝, 腎, 皮膚および肺に高く分布した。PIPCもTAZと同様の組織に高く分布した。6. In vitroにおける各種動物の血清蛋白に対するTAZの結合率は, TAZ/PIPC併用時, いずれの動物種においても0~4%と低かったが, PIPCの結合率は6.1~23.8%と種差が認められた。これはTAZ単独, PIPC単独時の結合率と比べて差は認められず, 併用による相互作用はないものと考えられた。7. イヌにおいて, プロベネシド併用による影響を検討した結果, TAZおよびPIPCはプロベネシド併用により, 血漿中からの消失が遅延した。
著者
佐川 久美子 佐々木 徹 大谷 敏夫 兵頭 昭夫 石田 直文 西川 昌子 梅野 幸彦
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.42, no.Supplement2, pp.263-276, 1994-10-24 (Released:2011-08-04)
参考文献数
13

Tazobactam/piperacillin (TAZ/PIPC; tazobactam: piperacillin=1: 4) の体内動態を解明するために, bioassay法およびHPLC法により, tazobactam (TAZ) とpiperacillin (PIPC) の分別定量法を検討した。Bioassay法において, TAZはそれ自身の抗菌力が弱いため, 培地中にcefoperazone (CPZ) を150μg/ml添加し, CPZ高度耐性でβ-lactamaseを産生するEscherichia coli 603を検定菌とする方法により, 定量が可能であった。PIPCはMicrococcus luteus ATCC 9341を検定菌とするbioassay法により, TAZの影響をほとんど受けずに測定可能であった。HPLC法においては, Inertsil ODS-2カラムを用いることによって, TAZ, PIPCおよびPIPCの活性代謝物desethyl-PIPCを同時に分別定量することが可能であった。また, TAZの非活性代謝物M-1についてはDevelosil ODS-5カラムを用いることにより定量可能であった。Bioassay法とHPLC法の相関関係について, ヒトの血漿および尿を用いた添加回収試験で検討した結果, 両者間には良好な相関関係が認められた。
著者
澤江 義郎 岡田 薫 高木 宏治 三角 博康 下野 信行 江口 克彦 仁保 善之
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.42, no.Supplement2, pp.437-442, 1994-10-24 (Released:2011-08-04)
参考文献数
2

新規β-ラクタマーゼ阻害剤tazobactam (TAZ) と広域ペニシリン系抗生物質piperacillin (PIPC) の配合剤であるtazobactam/piperacillin (TAZ/PIPC) について基礎的・臨床的検討を行った。TAZ/PIPCの臨床分離株に対する抗菌力は, Proteus vulgarisとProtens mirabilisに対して優れ).Enterococcus faecalis, Escherichia coliやKlebsiella pneumoniaeに対してもペニシリン系対照薬よりも同等以上であった。また, Citrobacter freundii, Psendomonas aeruginosaやStaphylococcus aureusに対してもある程度の抗菌力があった。肺炎3例) 慢性気管支炎1例) 菌血症1例の計5例の感染症にTAZ/PIPC1日2.5g~10g, 6~14日間の使用により, 著効2例, 有効1例, やや有効1例, 無効1例の臨床効果が得られた。自・他覚的副作用および臨床検査値異常は認められなかった。
著者
松本 慶蔵 永武 毅 大石 和徳 天本 敏昭 浦江 隆次 入江 伸 仁位 泰樹 浦江 明憲
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.42, no.Supplement2, pp.281-299, 1994-10-24 (Released:2011-08-04)
参考文献数
14

健康成人男子志願者を対象に, 新規β-lactamase阻害剤であるtazobactam (TAZ) にpiperacillin (PIPC) を1: 4 (力価比) に配合した注射用配合剤であるtazobactam/piperacillin (TAZ/PIPC) の臨床第1相試験を実施した。試験は単回点滴静注 (TAZ/PIPC1.25g, 2.59, 5.0g, およびPIPC2.0g, TAZO.5g), 単回静注 (TAZ/PIPC1.25g, 2.5g) および9回反復点滴静注 (5.0g, 1日2回) を実施し, 安全性および体内動態を検討し, その成績を次に示した。1) 自他覚症状, 理学的検査および臨床検査において, 単回投与試験では本剤に起因する変化は認められなかった。9回反復投与試験において下痢および頭痛・倦怠感・胸部痛 (1例) を認めたが, 特に処置せずに消失した。2) TAZならびにPIPCはともに投与量に相関した血漿中濃度を示した。3) 血漿中濃度半減期 (T1/2β) は, TAZ, PIPCともに約0.6~0.8時間であった。また, TAZ, PIPCの定常状態の分布容積, 全身クリアランスは, ほぼ同じ値を示し, 両者はよく似た体内動態を示すことが明らかになった。4) 24時間までの尿中回収率はTAZが約67~77%, TAZの非活性代謝物M-1が約13~18%, PIPCが約54~68%であった。5) 5.0gの9回反復点滴静注後の血漿中濃度および尿中排泄には, 蓄積傾向は認められなかった。6) TAZの体内動態をTAZ/PIPC投与時とTAZ単独投与時で比較すると, 単独投与時に比べてTAZ/PIPC投与時にはTAZの血漿中からの消失の遅延が認められた。7) TAZの活性代謝物は血漿および尿中には認められなかったが, PIPCにはその活性代謝物が確認、され, PIPCの脱エチル体であることが確認された。以上の安全性および薬物動態についての検討成績からTAZ/PIPCは今後, 臨床評価を行うに値するものと考えられた。
著者
菊地 康博 北崎 知子 斉藤 秀之 柴沼 忠夫 諸住 なおみ 金井 靖 米本 儀之 杉田 修 大沼 規男
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.42, no.Supplement1, pp.227-234, 1994-04-25 (Released:2011-08-04)
参考文献数
5

新規経口ペネム薬SY5555の体液内濃度測定法および体液中での安定性について検討した。微生物学的定量法 (bioassay法) では, 検定菌としてBacillus subtilis ATCC6633, 検定培地として日抗基記載の培地 (ペプトン0.5%, 肉エキス0.3%, クエン酸ナトリウム1%, カンテ ン1.5%, pH6.5~6.6) を用いる寒天平板拡散法により測定可能であった。検出感度はカップ法およびagar well法で0.05μg/ml, ペーパーディスク法で0.10μg/mlであった。血漿中濃度の測定では標準溶液は対照血漿により調整することが必要であり, その時のagar well法での検出感度は0.10μg/mlであった。高速液体クロマトグラフ (HPLC) 法では, 血漿はアセトニトリルで除たん白後, 尿は緩衝液で希釈後。逆相系カラムにより測定可能であり, 検出感度はそれぞれ0.1μg/mlおよび2.5μg/mlであった。臨床第一相試験におけるヒト血漿および尿中のSY5555濃度をbioassay法とHPLC法で測定したところ, 両法による結果はよく相関した。また, SY5555を添加したヒト血漿試料および尿試料をそのまま-20℃ 以下に凍結保存した時, SY5555はそれら体液中で少なくとも42日間は安定であった。
著者
金井 靖 諸住 なおみ 米本 儀之 杉田 修 大沼 規男 菊地 康博
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.42, no.Supplement1, pp.243-253, 1994-04-25 (Released:2011-08-04)
参考文献数
13

新規経口ペネム薬SY5555の体内動態をマウス, ラット, イヌを用いて検討した。1.本薬を絶食下のマウス, ラットおよびイヌに経口投与したところ, いずれの種においても消化管より速やかに吸収され, 生物学的利用率はマウスで27.1%, ラットで13.0%, イヌで40.4%であった。2.幼若イヌに経口投与したところ成犬と比べて半減期は延長した。3.本薬は用量依存的に吸収され, 主吸収部位は消化管上部と考えられた。摂餌後のイヌに本薬を経口投与したところ半減期の延長が観察された。4.経口投与後の未変化体の尿中排泄率はラットで3.8%, イヌで16.3%であり, SY5555以外に活性代謝物は認められなかった。胆汁排泄率はラットで0.1%とわずかであった。イヌを用いた定型クリアランス法により本薬は主に尿細管分泌により排泄されることが示された。5.マウス, ラットおよびイヌに経口投与したところ本薬は速やかに各組織に移行した。イヌにおける組織移行率は腎91.2%, 肝20.9%, 心17.0%, 肺18.1%, 前立腺15.3%, 筋15.2%, 顎下腺12.7%であった, 本薬の分布容積はマウスおよびイヌでそれぞれ127, 127ml/kgであり, 他のβ-ラクタム薬と同様に血漿および組織間質液中に分布するものと推定された。6.腎障害ラノトに本薬を経口投与したところ半減期は延長したが, 生物学的利用率は正常群と変わらなかった,7. SY5555は血清中のアルブミンと結合し, 血清蛋白結合率はSY5555濃度が20μg/mlで81.5~91.2%であった。本薬はヒト血清アルブミンに結合したビリルビンを遊離させなかった。8.イヌにSY5555錠剤および粒剤 (小児用剤: ドライシロップ) を投与したところ, 血漿中濃度推移は原体投与時と変わらず, 錠剤および粒剤の生物学的利用率はそれぞれ47.8%, 50.8%であった。
著者
金井 靖 諸住 なおみ 米本 儀之 杉田 修 大沼 規男 安達 栄樹 菊地 康博
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.42, no.Supplement1, pp.254-268, 1994-04-25 (Released:2011-08-04)
参考文献数
10

新規経口ペネム薬SY5555のラットおよびイヌにおける体内動態を14C標識体を用いて検討した。1.[14C] SY5555経口投与後の吸収は速やかで, 血漿中放射能濃度はラットでO.5時間, イヌで1.0時間に最高濃度に達した。放射能の尿中排泄率から求めた吸収率はラットで21.8%, イヌで51.6%であった。2.[14C] SY5555静脈内投与後, ほとんどの放射能は尿へ排泄され, 胆汁への排泄はわずかであり, 尿への排泄が主排泄経路であった。経口投与ではラットで17.1%が, イヌで47.0%か尿中に排泄され, 糞中にはそれぞれ85.8%, 52.9%が回収された。3.[14C] SY5555の組織への移行は速やかで, 組織内放射能濃度はほぼ血漿と同様に推移した。ラットおよびイヌともに組織内濃度は腎が最も高く血漿の約3倍の濃度が認められ, その他の組織にも広く分布した。4.血漿および尿中の主代謝物は, β-ラクタム環およびテトラヒドロフラン環か開環したM-1, M-2であった。M-1およびM-2の血漿中濃度はラットで高く, イヌで低かったが, 尿中排泄率には著しい差は認められなかった。これら代謝物は腎ならびに肺に存在するdehydropeptidase-1 (DHP-1) により生成するものと推定された。5.ラットにおけるSY5555のin vivo血漿蛋白結合率は82.8~83.9%であったが, 蛋白との結合は可逆的であった。代謝物の蛋白結合率はM-1で4.3~7.9%, M-2で69.0~76.2%であった。SY5555は血球にほとんど移行しなかった。
著者
三宅 美行 朝長 正志 東岡 俊之 山田 雄次 石田 直文 兵頭 昭夫 井上 松久 三橋 進
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.36, no.Supplement5, pp.128-139, 1988-10-10 (Released:2011-08-04)
参考文献数
14

新しいセファロスポリン系抗生物質であるCefodizime (THR-221) のin vivo抗菌力を調べたところ, 正常および実験的感染防御能低下マウスでの感染に対し優れた治療効果を示した。更にTHR-221のin vivoでの優れた効果を解明するために, 生体防御因子との関連について検討を行い, 以下の知見が得られた。1. THR-221は感染防御能低下マウス (X線, Adriamycin処理) においても優れた治療効果を示し, ED50値は正常マウスに近く, Cefotaxime (CTX), Cefoperazone (CPZ) よりもはるかに優れていた。2. K. pnemoniu感染治療時におけるマウス腹腔内浸出細胞 (PEC) のacid phosphatase活性は, THR-221 500mg/kg治療群において上昇し, CTX, コントロール群のそれよりも高かった。3. THR-221 1/4MIC存在下においてPECのK. pneumoniaeに対する殺菌作用は増強した。その殺菌作用はTHR-221単独に比べ40.7倍強く, CTXの7.1倍よりも優れていた。4. THR-221前処理菌はPECのNitro Blue Tetmolium (NBT) 還元能をCTX, 無処理菌のそれよりも有意に上昇させた。5. THR-221前処理菌はマウス腹腔内において食細胞に食菌されやすくなり, 感染後, 菌の再増殖は認められなかった。CTX前処理, 無処理菌は感染後6時間で再増殖し, マウスは全数死亡した。K. pneumoniaeのマウス感染力はCTX前処理, 無処理菌に比較して, THR-221前処理において著しく低下した。PECのライソゾーム酵素の上昇, PECとの殺菌増強作用, NBT還元能の上昇等これらの結果より, THR-221の優れたin viro作用は生体防御因子との協力的な殺菌作用に優れていることが一因と考えられた。