著者
加納 弘 KANEO SEKIGUCHI 下岡 釿雄 沖 俊一
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.32, no.Supplement4, pp.121-130, 1984-06-25 (Released:2011-08-04)
参考文献数
5

Sulbactam (SBT) およびSulbactam/Cefoperazone (SBT/CPZ=1: 1) の吸収, 分布, 代謝およひ排泄をマウス, ラットおよびイヌを用いて検討した。SBT/CPZをラット, イヌに静脈内投与した時の血中濃度半減期はラットでSBT: 20分, CPZ: 21分, イヌでSBT: 30~35分, CPZ: 42~46分であった。またマウスに皮下投与した時の血中濃度半減期はSBT, CPZともに20分であった。SBT/CPZをラットに籐脈内投与した時の臓器・組織内濃度はSBT, CPZともに腎臓肝臓, 血清, 肺臓の順に高く, マウスに皮下投与した時はSBTで腎臓, 血清, 肺臓, 肝臓CPZで肝臓, 腎臓血清, 肺臓の順に高かった。SBTはラット, イヌで尿中排泄型, CPZはラットで胆汁中排泄型, イヌで尿中排泄型であった。なおラット尿中にはSBT, CPZ以外の抗菌活性をもった代謝物は認められなかった。SBTCPZを併用した場合, SBTの各極助物の血清蛋白に対する結合率はラット: 56%, ヒト, イヌ, ウサギで約20%であり, CPZではこれらの動物で77~93%であった。SBTの吸収分布およひ排泄はSBT単独投与とSBT/CPZ併用投与ではほとんど差が認められなかった。
著者
加納 弘 竹居 春実 大森 健太郎 村上 昌弘 下岡 釿雄 福島 英明 沖 俊一
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.33, no.Supplement2, pp.128-153, 1985-06-25 (Released:2011-08-04)
参考文献数
10

Sultamicillin tosilate (SBTPC) の経口投与時の吸収, 分布及び排泄をラット及びイヌを用いて検討し, 下記の結果を得た。1. SBTPCは経口投与後主として十二指腸より吸収され等モルのampicillin (ABPC) 及びsulbactam (SBT) を血中に遊離し, 末梢血中にはSBTPCの未変化体は存在しなかった。2. SBTPC100mg/kgを経口投与したラットの血中ABPC及びSBT濃度は共に投与後1時間にピーク (ABPC: 7.3μg/ml, SBT: 6.3μg/ml) を示し, 以後漸減した。血中濃度半減期はそれぞれ約60分, 約50分であった。またABPC・SBT併用投与時よりはるかに高い血中濃度を示したことからprodmgとしてのSBTPCの効果が認められた。ラットにおける血中ABPC及びSBT濃度はほぼSBTPCの投与量に依存していた。イヌにSBTPCを経口投与した時のABPC, SBT濃度推移もラットとほぼ同様であった。3. SBTPCをラットに経口投与した場合, ABPC及びSBTは共に各種臓器・組織に広く分布し, 特に肝臓及び腎臓には血中より高い分布が認めら礼血中濃度の減衰につれて臓器・組織内濃度も同様に減衰した。また両薬物の各種臓器・組織への分布傾向は近似した。このときのABPCの血中及びへの分布傾向は近似した。このときのABPCの血中及び組織内濃度の推移はBAPC投与の場合とほぼ同じであった。また, ラットgranuloma pouch内滲出液中へのABPC及びSBTの移行は良好で特続性が認められた。4. SBTPCをラットに経口投与した時の投与後96時間までの尿中排泄率はおよそABPC20%, SBT30%, 糞中排泄率はそれぞれ5%, 20%であり, またわずかであるが胆汁中へも排泄された。イヌでもほぼ同様の排泄パターンを示した。なお尿中及び糞中にはABPCSBT以外の抗菌活性を持った代謝物は認められなかった。5. ABPC, SBT当モル共存下のヒト及び各種動物血清蛋白に対する結合率はそれぞれ単独での結合率とほぼ同じで, ラット血清蛋白に対するSBTの約55%以外はいずれの動物血清に対してもABPCSBTともに約30%であった。6. SBTPCをラットに連続投与してもABPC及びSBTの血中濃度の上昇, 尿中排泄の増加及び組織への蓄積は認められなかった。7. SBTPCの経口投与を受けた四塩化炭素惹起肝障害ラットでは健常ラットに比べ血中ABPC, SBT濃度はわずかに低く, 尿中排泄率はやや増加した。一方, 塩化第二水銀惹起腎障害ラット及び馬杉型糸球体腎炎ラットでは健常ラットに比べABPCSBTの尿中への排泄の抑制がみら礼血中ABPC, SBT濃度が高くなる傾向を示した。8. ラットにSBTPCを経口投与するとき, SBTPCの塩として用いられたp-toluenesulfonic acid (PTS) は血中のピークがABPCSBTよりやや遅れるが吸収は良好でほとんどの臓器・組織に分布したのち, 投与量のほぼ全量が主として尿中に排泄された。また連続投与による蓄積もみられなかつた。
著者
尾家 重治 神谷 晃 石本 博美 弘長 恭三 神代 昭
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.117-121, 1990-02-25 (Released:2011-08-04)
参考文献数
22

微生物汚染を受けた超音波加湿器は, 過敏性肺臓炎や感染症の原因となることが知られている。今回, 我々は学校, 家庭, 小売店, および美容院など市中で用いられていた超音波加湿器20台について, 振動子水槽水の微生物汚染を調査したところ, 13台は104~105コ/mlレベル, また残り7台は102~103コ/mlレベルの細菌汚染であった。すでに, 104~105コ/mlレベルの細菌汚染を受けた超音波加湿器が過敏性肺臓炎の原因となったとの報告があるので, 調査した超音波加湿器の過半数は, 過敏性肺臓炎の原因となりうることが推定できた。おもな汚染菌は, Pseudomonas属などのブドウ糖非発酵菌であった。超音波加湿器の細菌汚染のおもな原因として, 本装置が構造的に洗浄・消毒が困難であることがあげられる。
著者
新井 武利 濱島 肇 笹津 備規
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
日本化学療法学会雑誌 (ISSN:13407007)
巻号頁・発行日
vol.44, no.10, pp.786-791, 1996-10-25 (Released:2011-08-04)
参考文献数
16

黄色ブドウ球菌Staphylococcus aureus FDA 209Pに対するリノール酸, オレイン酸, 局方ツバキ油, 精製ツバキ油, オリーブ油, 精製ホホバオイル, スクワランおよび流動パラフィンの増殖抑制作用を検討した。これらの試料を培地に加え80μg/mlにしたものを標準液としてさらに培地を加え, 二段階希釈系列を作製した。一夜培養後の菌液を1.0×107cfu/mlになるようそれぞれに加えた。光学的に菌の増殖を測定し, 試料による増殖抑制作用を測定した。その結果, リノール酸, オレイン酸および局方ツバキ油には強い増殖抑制作用が認められた。精製ツバキ油とオリーブ油には比較的弱い増殖抑制作用があった。精製ツバキ油の50%阻止率 (ID 50) を脂肪酸および他の植物油脂のID50と比較した。ID50の比較により精製ツバキ油にはオリーブ油よりも強い増殖抑制作用があることが明らかになった。精製ホホバオイル, スクワランおよび流動パラフィンは測定した濃度では増殖抑制は認められなかった。精製ツバキ油とオリーブ油はアトピー性皮膚炎の皮膚病変部のスキンケアに有用であろう。
著者
田口 文広 陸 青 清水 正樹
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
日本化学療法学会雑誌 (ISSN:13407007)
巻号頁・発行日
vol.51, no.9, pp.583-585, 2003-09-25 (Released:2011-08-04)
参考文献数
10
被引用文献数
1

マウスコロナウイルス (マウス肝炎ウイルス, MHV) A-59株に対するポビドンヨード (PVP-1) を主成分とする各製剤のin vitro殺ウイルス効果を検討した。PVP-I消毒液, PVP-I含嗽夜, PVP-1手指消毒液, 速乾性PVP-I手指消毒液およびPVP-I喉用液 (0.1~5%PVP-1) の5秒間処理により, ウイルス感染値が1/104以下に減少した。このことは, PVP-1各製剤はマウスコロナウイルスに対して強い殺ウイルス効果をもつことを示している.
著者
五十嵐 正博 中谷 龍王 林 昌洋 中田 紘一郎 粕谷 泰次
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
日本化学療法学会雑誌 (ISSN:13407007)
巻号頁・発行日
vol.50, no.11, pp.826-829, 2002-11-25 (Released:2011-08-04)
参考文献数
7
被引用文献数
1

Moelleringのノモグラム (ノモグラム) によるvancomycin (VCM) の初期投与設計は, 目標平均血中濃度が約15μg/mLとなるため, ピーク濃度が中毒濃度に達することはほとんどない。本研究では, ピーク濃度とトラフ濃度の2点およびトラフ濃度1点だけの測定値を用いたBayesian法の予測精度を比較し, 日常診療でのVCM血中濃度測定をトラフ濃度のみにすることが可能であるかを検討した。対象としたのは, 1995年4月から2000年7月までtherapeutic drug monitoring業務を行った30症例のデータである。トラフ濃度1点だけによる予測精度は, トラフ濃度 (n=12) においてmean prediction error (ME)=-4.08μg/mL, mean absolute prediction error (MAE)=4.44μg/mL, root mean squared prediction error (RMSE)=5.42μg/mL, ピーク濃度 (n=11) においてME=2.87μg/mL, MAE=7.04μg/mL, RMSE=8.89μg/mLであり, ピーク濃度とトラフ濃度の2点による予測精度は, トラフ濃度 (n=12) においてME=-3.30μg/mL, MAE=3.90μg/mL, RMSE=4.93μg/mL, ピーク濃度 (n=10) においてME=0.57μg/mL, MAE=5.03μg/mL, RMSE=6.74μg/mLとなった。この両者における予測精度の差はトラフ濃度で1μg/mL未満, ピーク濃度で3μg/mL未満とわずかで, 有意差はなかった。したがって, VCMの最大投与量が要求される重篤なMRSA感染症などの症例を除けば, 日常診療におけるVCMのTDMはトラフ濃度だけの測定により適切に実施できることが明らかとなった。
著者
麻生 久 海老名 卓三郎 石田 名香雄 鈴木 富士夫
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.34, no.8, pp.665-671, 1986-08-25 (Released:2011-08-04)
参考文献数
26

有機ゲルマニウム製剤Ge-132 (Carboxyethylgermanium sesquioxide) のマウスのインフルエンザウイルス感染症に対する防御効果を検討した。DDIマウスにインフルエンザウイルス (A2/熊本/H2N2株) を10LD50経鼻感染させ, 感染当日より1日1回計6回Ge-132を連続経口投与したところ, 100mg/kg投与, つづいては20mg/kg投与で有意な延命効果を認め, また上記投与マウスにおいて肺内ウイルスの増殖抑制と肺のコンソリデーションの進展停止が確認された。Ge-132はin vitroでは直接の抗ウイルス作用を全く示さないことから, マウスにおけるインフルエンザ感染防御効果はGe-132投与により誘起されたIFNが生体の免疫系を賦活化した結果と考えた。なおGe-132の経口投与を行なったマウスにおいて著明なNK活性の増強が脾細胞中でも, 肺組織でも認められ, 特に感染マウスにおいて著明であった。Ge-132投与でin vivoで活性化されたNK細胞はウイルス感染細胞に対し殺傷作用を示したことから, Ge-132のマウスインフルエンザウイルス感染防御効果はGe-132投与で増強されたNK細胞が肺内ウイルスの増殖を阻止するとともにコンソリデーションの進展を停止した結果と考えられる。
著者
中川 昇 岡田 政信 南嶋 洋一
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.35, no.7, pp.546-550, 1987-07-25 (Released:2011-08-04)
参考文献数
23

有機ゲルマニウム化合物Ge-132 (2-carboxyethylgermanium sesquioxide) のウイルス感染症に対する防御効果をマウスサイトメガロウィルス (MCMV) 対マウスの系を用いて検討した。ICRマウスにウイルス接種前3日と1日にGe-132をマウス当り10 mg腹腔内投与したあと, 腹腔内に強毒MCMV・Smith株をマウス当り5×105 PFU (約2 LD 50相当) 接種し, 生食水の前投与対照群と比較した。(1) 対照マウスが100%感染死したのに対して, Ge-132前投与群では60%のマウスが生存し,(2) 肝で増殖したウイルス量が対照の約115に抑制され,(3) 血中IFN値, 2-5 A合成酵素活性値の上昇が認められたが,(4) 脾細胞中NK活性は変化しなかった。 Ge-132はin vitroではウイルス不活化作用およびウイルス増殖抑制作用を示さなかったことから, マウスにおけるMCMV感染防御効果は, Ge-132投与により誘起されたインターフェロン (IFN) を介し生体の感染防御系が賦活化されたことにあると考えられた。 肝はMCMV感染の最も重要な標的器官であり, Ge-132によって誘導される主としてIFNが, 肝におけるウイルスの増殖を感染死にいたる閾値以下に抑制することによって, マウスは感染死を免れるのであろうと推定された。
著者
勝川 千尋 原田 七寛 津上 久弥 牧野 正直
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.41, no.11, pp.1160-1166, 1993-11-25 (Released:2011-08-04)
参考文献数
10

皮膚科領域の各種感染症治療における, ホウ酸利用の可能性について検討を行った。この目的のため, 標準菌株および臨床患者から分離された病原微生物に対するホウ酸の抗菌力の測定を行い, 以下の成績を得た。1.検査したすべての細菌および真菌が, ホウ酸1%(wt/vol) の濃度で発育が阻止され, 高濃度のホウ酸に耐性の菌は認められなかった。2.ホウ酸の各種微生物に対する発育阻止濃度は0.125%-1%の範囲に分布し, 菌種毎に以下のような特徴がみられた。同一菌種間は似た発育阻止濃度値を示したが, 同じ属であっても菌種が異なると, 発育阻止濃度も異なった値を示した。総じてグラム陽性菌に対する発育阻止濃度が高く, グラム陰性菌に対しては低かった。しかし, ブドウ球菌属中のStaphyloooccus aureusだけは異なり, Staphylococcus epidermidis やStaphylococcus hominis などのコアグラーゼ陰性ブドウ球菌に対する発育阻止濃度が高いのに対して, S. aureusに対しては低かった。3.S. aureusは近年, 多剤耐性化が問題となっているが, ホウ酸の発育阻止濃度はmethicillin-resistant S. aureus (MRSA) およびmethicillin-sensitive S. aureus (MSSA) の間に差は認められなかった。また, 他の菌種もホウ酸に対して耐性化の傾向は認められなかった。今回検査したすべての細菌および真菌に対する発育阻止濃度が1%以下であることから, 2-3%の低濃度での安全性の高い利用方法を考案することにより, ホウ酸を再び活用できる可能性があると考えられた。特にMRSAに対して耐性化の傾向の認められない点はMRSA感染予防の1つの打開策となり得ることを示唆している。
著者
竹末 芳生 横山 隆 児玉 節 藤本 三喜夫 瀬分 均 村上 義昭 今村 祐司
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.137-142, 1989-02-25 (Released:2011-08-04)
参考文献数
8

院内感染において, メチシリン耐性S.aureus (MRSA) は重要な位置を占めている。そこで, 当科において1983年より1988年4月までに臨床より分離された214株ならびに手術場の浮遊, 落下, 付着細菌62株のS.aureusを対象とし, コアグラーゼ型別分類を中心にMRSAの検討を行なったので報告する。病棟分離株の検討では, メチシリン高度耐性株 (MIC>100μg/ml) は1983年には認められなかったが, その後急増し, 1987年にはMRSA (MIC≧12.5μg/ml) の約60%を占めていた。しかし医療従事者がMRSAが流行していることを認識し, 病棟での消毒をクロールヘキシジン・アルコール溶液に変えるなど院内感染対策を行なったところ, 1988年にはメチシリン高度耐性株並びにMRSAは激減した。コアグラーゼ型の検討ではMRSAは1984年まではコアグラーゼIV型が主であったが, 1986年以降II型の耐性株がほとんどを占めるようになった。このコアグラーゼII型MRSAの特徴は, メチシリンやその他のβ-ラクタム剤に対し高度耐性化すること, ペニシリナーゼを高度に産生する株が少ないこと, MINOやピリドンカルボン酸系薬剤に感受性を示すこと, また最近GM感受性, AMK耐性株が流行していることであった。手術場においては, 全株MSSAであり, またコアグラーゼ型による検討ではVII型が手術場における流行株と推察され, 当科におけるII型MRSAの交叉感染の場は病棟であると考えられた。
著者
上田 康晴 野口 周作 牧 真彦 上笹 宙 望月 徹 畝本 恭子 黒川 顕
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
日本化学療法学会雑誌 (ISSN:13407007)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.8-16, 2007-01-10 (Released:2011-08-04)
参考文献数
26
被引用文献数
4

救急領域におけるmethicillin-resistant Staphylococcus aums (MRSA) 感染症に対するteicoplanin (TEIC) の高用量投与 (初日1,600mg/日, 以降800mg/日) を実施し, 本薬剤投与後の血中トラフ値推移と有効性および安全性との関係について検討し, 下記の成績が得られた。(1) MRSAに起因する肺炎10例, 創部感染症2例に対するTEICの臨床的有効率は, 100%であった。(2) 細菌学的効果は全症例のうち, 消失9例, 減少1例, 菌交代2例, 不変0例であった。TEIC単独治療8例では消失7例, 減少0例, 菌交代1例, 不変0例で, 他薬剤併用治療4例では消失2例, 減少1例, 菌交代1例, 不変0例であった。なお全12例中4例にPseudomoms aeruginosaとの複数菌感染が認められた。(3) 投与例では本薬剤に起因する副作用は認められなかった。(4) TEIC血中トラフ値は, day2で17.5±6.7μg/mL, day4で163±6.3μg/mLと若干低下するものの定常状態となり, day8でも20.5±6.9μg/mLとTEICの蓄積は軽微であった。さらに各症例で, 血中濃度のばらつきも認めなかった。(5) TEICの高用量投与はその効果に抜群のキレがあり, しかも安全性の高いことが示され, 重症MRSA感染症の治療において非常に有用な投与法であると考えられた。
著者
森川 宏二 橋本 繁輝 岩永 裕氏 山内 利栄 山崎 光雄
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.36, no.Supplement2-Base, pp.265-283, 1988-06-30 (Released:2011-08-04)
参考文献数
15

NY-198の中枢神経系および呼吸・循環器系に対する薬理作用を検討した。1. 100~1000mg/kgの経口投与でマウスは抑制症状を, 300mg/kg以上の経口投与でラットも抑制症状を示した。また, 300mg/kg以上でマウスの自発運動量の減少, hexobarbital睡眠時間の延長および協調運動抑制作用が現れたが, 懸垂抑制作用は認められなかった。2. 300mg/kg以上の経口投与でマウスおよびラットで鎮痛抗炎症作用, 300~1000mg/kgの経口投与でマウス, ラットおよびウサギの正常体温ならびにラットのyeast発熱体温を下降させた。3. 30mg/kgの静脈内投与でもウサギの急性脳波パターンに影響はなかったが, 30mg/kgの静脈内投与によりネコの脊髄単シナプス反射電位と後根反射電位は抑制された。4. 300mg/kg以上の経口投与でマウスの電撃およびpentetrazol痙攣は増強され, また100mg/kgの経口投与で無麻酔ビーグル犬の脳波に発作発射と間代性痙攣が発現した。5. 無麻酔ラットの血圧, 心拍数にほとんど影響はみられず, 麻酔イヌにおいて3mg/kg以上の静脈内投与で血圧の下降, 大腿動脈抵抗の減少が, 10mg/kg以上の静脈内投与で呼吸数の増加, 心拍数の増加あるいは減少が現れたが, 腎動脈抵抗には著明な影響を与えず, 摘出モルモット心房標本にも著明な影響は認められなかった。
著者
尾熊 隆嘉 矢野 義孝 財前 政美 牡丹 義弘 伊賀 立二 全田 浩 奥村 勝彦 安原 眞人 堀 了平
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
日本化学療法学会雑誌 (ISSN:13407007)
巻号頁・発行日
vol.45, no.12, pp.987-994, 1997-12-25 (Released:2011-08-04)
参考文献数
18
被引用文献数
1 3

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症の治療時におけるバンコマイシンの有効性, 安全性に関与する要因を統計的に検討する目的で, Therapeutic Drug Monitoringの対象となった患者の背景, 病態, 投薬履歴, 血漿中濃度等の要因と, 有効性, 安全性の臨床評価のデータを集積した。有効性としては効果の有無を, 安全性としては副作用として比較的報告例数の多かった腎機能, 肝機能を対象とし, その検査値異常の発現を採用した。患者背景, 病態, 治療履歴, 体内動態の各要因について, さらに項目ごとに有効性, 安全性との関連性を直接確率計算法, ロジスティック回帰分析法にて検討した。有効性に関しては高齢患者におけるアミノグリコシドの先行投与が有効率の向上に対し, 有意な関連性を示した。安全性に関しては肝機能, 腎機能の検査値異常発現率に対する1日投与量の関連性が強いことが示された。特に, 高齢患者においては血清クレアチニン値, 重症度, 総ビリルビン濃度が影響要因になることが明らかとなった。さらに, 腎機能異常値発現率の影響要因となることが示されたトラフ濃度とその発現率についてノンパラメトリックな2値回帰分析により解析したところ, アミノグリコシドとの併用により発現率が高くなることが示されたが, いずれの場合においてもトラフ濃度を10μg/ml以下にコントロールすることにより, 発現率を15%以下に抑制できることが示された。バンコマイシンの適正使用を推進するうえで, 今回の検討において有効性, 安全性に関与する要因を明らかにできたことは意義深いものと考えられるが, 今回の検討によって, 必ずしも十分な結論が得られたとは言い難く, 今後さらに臨床データを蓄積し, より精度の高い検討をする必要があると思われる。
著者
正岡 徹 長谷川 廣文 高久 史麿 溝口 秀昭 浅野 茂隆 池田 康夫 浦部 晶夫 柴田 昭 齊藤 英彦 大熊 稔 堀内 篤 斎藤 洋一 小澤 敬也 宇佐美 眞 大橋 靖雄
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
日本化学療法学会雑誌 (ISSN:13407007)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.199-217, 2000-03-25 (Released:2011-08-04)
参考文献数
29
被引用文献数
2 16

厚生省から再評価指定を受け, 重症感染症に対する静注用ヒト免疫グロブリン (以下MG) 製剤の抗生物質との併用効果を検証するため, 抗生物質単独投与を対照とした多施設共同非盲検ランダム化試験を実施した。広範囲抗生物質の3日間の投与において感染症の主要症状の改善が認められない無効例をmG群または対照群に無作為に割り付けた。割り付け日 (第1日目) より, いずれの群も抗生物質をimipenem/cilastatin (IPM/CS)+amikacin (AMK) に変更し, 7日間投与した。MG群のみにWIGを第1日目より1日59, 3日間連日併用投与した。効果は解熱に要した日数ならびに臨床症状の消失に要した日数を中心に判定した。有効性評価からの除外率は26.1% (178/682) であった。背景因子 (性, 年齢, 病態の区分, コロニー刺激因子 (以下CSF) 製剤投与の有無, 投与前アルブミン濃度, 投与前IgG濃度および好中球数の推移) に関してはすべての項目で両群間に偏りは認められなかった。Kaplan-Meier法にて推定した第7日目までの解熱率はmG群54.8%, 対照群37.2%で, IVIG群が有意に早く解熱した (一般化Wilcoxon検定: P=0.002)。同様に第7日目までの臨床症状の消失率はIVIG群57.3%, 対照群39.4%で, IVIG群が有意に早く消失した (一般化Wilcoxon検定: P=0.002)。客観的な半掟基準にもとつく「有効」以上の有効率はMG群61.5% (163/265), 対照群47.3% (113/239) でIVIG群が有意に優れていた (x2検定: p<0.001)。IVIG製剤は重症感染症に対し, 抗生物質との併用において有効であると考えられた。
著者
真崎 美矢子 道津 安正 増山 泰治 山下 京子 古賀 宏延 須山 尚史 河野 茂 山口 恵三 広田 正毅 斉藤 厚 原 耕平
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.35, no.9, pp.709-713, 1987-09-25 (Released:2011-08-04)
参考文献数
14

マクロライド系抗生剤であるEM, JM, TE-031, RKM, Ru-28965の5薬剤について, ヒト多形核白血球内への移行性をradioisotope 14Cをラベルした薬剤を用いて測定した。37℃培養下での移行率 (細胞内/外濃度比) は, EM; 6.6倍, JM;15.5倍, TE-031;16.4倍, RKM;30.5倍.Ru-28965;21.9倍と.いずれも高値を示した。ホルマリン処理好中球および低温培養下での移行率は5薬剤ともに著明に低下した。また, pHが酸性になるほど移行率は低下し, pH依存性が示唆された。細胞のエネルギー代謝阻害剤であるフッ化カリウムおよびシアン化ナトリウムを添加すると, それぞれ2~47%, 4~38%程度の移行率の低下が認められた。またヌクレオシドの一種であるアデノシンの添加ではEM以外の4薬剤で8~17%の移行率の低下がみられた。細胞内へ移行した5薬剤は, 細胞外の薬剤を除去するといずれも急速に細胞外へ流出し, 5分後には30%以下に低下した。今回我々が用いた5種類のマクロライド系抗生物質は, いずれも良好な細胞内移行性を示し, これらの細胞内への移行には能動輸送が関与していることが示唆された。
著者
村川 武雄 坂本 博 深田 志計実 中本 昭治 広瀬 俊治 伊藤 位一 西田 実
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.28, no.Supplement5, pp.111-118, 1980-09-25 (Released:2011-08-04)
参考文献数
7

Ceftizexime (CZX, FK 749) をマウス, ラット, イヌおよびサルに非経口的に投与したときの薬動力学的特性について, Cefotiam, Cefmetazole, Cefotaxime, CefamandoleおよびCefazolinの場合と比較検討した。CZXの血清中濃度は大動物 (イヌおよびサル) では全般に他剤より高値を示したが, 小動物 (マウスおよびラット) では低値を示した。検討した実験動物において, 投与したCZXの約80%が未変化体で24時間尿中に排泄された。またCZXのラットにおける胆汁中排泄率は低く, 24時間内で3.7%であった。またイヌにおける24時間胆汁中排泄率は0.45%と低かったが, 胆汁中濃度は1時間で179μg/ml, 2時間で148μg/mlと比較的高値を示した。1回静注投与後の血清中濃度のデータを用いて, two compartment open modelにより薬動力学的解析を行なった。各種動物の尿中の抗菌活性物質はCZXたけであったが, ラット胆汁中にだけCZXとは具なる活性代謝物が検出された。CZXは血清, 尿および組織ホモジネート中で安定であったが, Cefotaximeはラット組織ホモジネート中で不安定であった。CZXの血清タンパク結合率は検討したすべての血清種で他剤より低値を示し, ヒト, イヌおよびラットでそれぞれ31%, 17%および32%となった。
著者
新井 蔵吉
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.20, no.6, pp.737-747, 1972-11-25 (Released:2011-03-08)
参考文献数
38

1. A new assay method of chemotherapeutic agents, a vertical diffusion assay method at low temperature (15°C) using Serratia marcescens as the test organism, was developed. S. marcescens No. 33 strain, has suitable biological characteristics for this new method. The microbiological activity of bacteriostatic agents such as sulfa drugs is successfully evaluated by this method. The method can also be applied widely for the assay of antibiotics which are active against Gram-negative bacilli.2. S. marcescens No. 33 strain was found to grow anaerobically under certain culture conditions using a new synthetic medium and protein-free medium modified from the experimental results of QUASTIL and STEPHENSON. This method is very useful for the assay of chemotherapeutic agents which are adsorbed onto protein.3. In this method, amount of the samples to be assayed can be minimized by using a gauze, sterilized and impregnated with the sample solution. The amount of the sample solution required is less than 0.1 ml.
著者
小川 浩司 松崎 道男 宮下 裕子 本村 茂樹 伊藤 章 大久保 隆男 丸田 壱郎 児玉 文雄
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.398-410, 1987

白血病治癒の主要薬剤であるDaunorubicin (DNR) の代謝, 分布, 排泄を知るために, 白血病患者にDNR 40 mgを3分間で静注し, 血中濃度 (血漿中, 赤血球中濃度), 尿中排泄を高速液体クロマトグラフィー (HPLC) を用いて測定した。 同時に3コンバートメントオープンモデルを用いて血中濃度の薬物動力学的解析を行ない, 以下のような結果を得た。<BR>1. DNRの血漿中, 赤血球中濃度のピーク値は5分後にあり, 各々228.00±204.00ng/ml, 237.00±111.00ng/gであった。 血中濃度曲線は, α, β, γの3相を呈した。 血漿DNRの半減期は, α相0.0351±0.0157 hr (約2分), β相1.83±2.01 hr, γ相15.8±8.4 hrであった。<BR>2. DNRの主要代謝物は, Daunorubicinol (DNR-OL) であり, その血漿中, 赤血球中濃度のピーク値は, 96.50±62.90 ng/ml, 205.00±115.00 ng/gであった。 2時間値で, DNRの血漿中濃度は20.00±15.80 ng/ml, DNR-OL 41.40±27.20 ng/mlで, 赤血球中濃度は40.00±19.50 ng/g, 40.20±13.60 ng/gであり, 2時間以後では, DNRよりDNR-OLの濃度が高値となることが示された。<BR>3. 3コンパートメントオープンモデルの解析結果では, DNRの体循環コンパートメントから組織コンパートメントIIおよびIIIに対する移行速度定数<I>K</I><SUB>12</SUB>, <I>K</I><SUB>13</SUB>は大きく, 逆に組織II, IIIから体循環コンパートメントへの移行速度定数<I>K</I><SUB>21</SUB>, <I>K</I><SUB>31</SUB>は小さく, DNRは速やかに組織に移行し, 組織に高濃度に保持され, 放出は緩やかであることが考えられた。 また, 体循環コンパートメント分布容量<I>V</I><SUB>1</SUB>は, 組織コンパートメント分布容量<I>V</I><SUB>2</SUB>+<I>V</I><SUB>3</SUB>に比べ極めて小さく, 投与されたDNRの多くが組織に分布することが示唆された。<BR>4. 尿中排泄率は, 24時間においてDNR 6.33±2.93%, DNR-OL 5.30±2.48%で, 総排泄率は, 11.8±5.1%で尿中への排泄は少ないことが示された。