著者
江 聚名 石井 僚 大山 拓也
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.93, no.4, pp.311-319, 2022 (Released:2022-12-16)
参考文献数
41
被引用文献数
1

The present research examined the process of how determining the location and time of remote work, which was introduced during the COVID-19 pandemic, affects workers’ work-life balance, as well as their mental health. We also examined gender differences in the mediating effect of work-life balance. 1,692 employees of an IT company participated in our research by answering questionnaires with an online training system during November 2019 (Time 1) and May 2020 (Time 2). Participants’ mental health were measured at both Time 1 and Time 2, while work-life balance and whether the location and time of their remote work was determined were measured at Time 2. Results of multi-group mediation analysis showed that setting the time of remote work led to better workl-ife balance and in turn, improved mental health. However, flexibility in the location of remote work led to better work-life balance and improved mental health. Moreover, a gender difference was found on the effect of work-life balance on mental health in that it had a stronger influence on female workers’ mental health than male workers.
著者
信吉 真璃奈 金生 由紀子 松田 なつみ 河野 稔明 野中 舞子 藤尾 未由希 下山 晴彦
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.89, no.5, pp.507-513, 2018 (Released:2018-12-25)
参考文献数
30
被引用文献数
1 2

The purpose of this study was to develop a Japanese version of the Sensory Gating Inventory (SGI; Hetrick, Erickson, & Smith, 2012) and to examine its reliability and validity. SGI measures abnormalities in the quality of sensory input, heightened awareness of background noises, and poor selective attention at the phenomenological level. The questionnaire was completed by 515 university and graduate students. The questionnaire package included 3 scales; 35 items from the Japanese version of SGI, 27 items from the Japanese version of the Highly Sensitive Person Scale (HSPS; Funahashi, 2011), and 25 items from the Japanese version of the Cognitive Failures Questionnaire (CFQ; Yamada, 1991). Confirmatory factor analysis showed that the Japanese SGI had an acceptable level of internal consistency. Cronbach’s alpha was calculated to examine reliability and showed high values. Correlation analyses showed that the Japanese SGI and Japanese HSPS or CFQ were moderately positively correlated. This study suggests that the Japanese SGI is reliable and valid. It can be used to screen for abnormal sensory gating before physiological or behavioral inspection.
著者
中島 香澄
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
日本心理学会大会発表論文集 日本心理学会第85回大会 (ISSN:24337609)
巻号頁・発行日
pp.PD-073, 2021 (Released:2022-03-30)

本研究では内受容感覚と自己意識との関連性について検討した。内受容感覚は抑うつ,摂食障害などの感情関連の臨床群と関連がある(Murphy, Catmur, & Bird, 2018)ことから,養育者からの負情動・身体感覚否定経験(以下,否定経験)が感情制御の発達不全を生じるというモデル(福泉・大河原,2013)を参考に,否定経験からの影響も検討した。対象者は18~29歳までの男女300名(女性209名,男性91名)で,①MAIA-J(内受容感覚に関する尺度)の「身体への気づき」「注意制御」「感情への気づき」,②改訂版自己意識尺度(金子,2017;私的自己意識,公私的自己意識,外見への意識,行動スタイルへの意識),③負情動・身体感覚否定経験認識質問紙(大河原・猪飼・福泉,2013)からなる質問紙調査を行った。自己意識を目的変数,内受容感覚,否定経験,内受容感覚と否定経験の交互作用を説明変数として階層的重回帰分析を行った結果,男女ともに「私的自己意識」「公私的自己意識」において,内受容感覚(身体への気づき,注意制御・感情への気づき)や内受容感覚と否定経験の交互作用からの関連が有意に認められた。
著者
佐藤 俊彦
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
日本心理学会大会発表論文集 日本心理学会第84回大会 (ISSN:24337609)
巻号頁・発行日
pp.PB-028, 2020-09-08 (Released:2021-12-08)

感覚情報処理に関連した感受性や欲求性に関する概念には,感覚処理感受性や刺激欲求性など,さまざまなものがあり,従来から用いられてきたパーソナリティ特性の概念との間で関連が認められていることから,これらの概念の間の重複や差異を整理しておくことは,これらの概念が包含する個人の心理的特徴の範囲を正確に把握するためだけでなく,パーソナリティの個人差を理解する上でも重要であるだろう。そこで,それぞれの概念に対応した質問紙尺度の相互の関連性を明らかにするため,大学生を対象に,Highly Sensitive Person Scale日本語版(HSPS-J19;高橋,2016),刺激欲求尺度・抽象表現項目版(SSS-AE;古澤,1989),および日本版青年・成人感覚プロファイル(AASP;辻井,2015)の3種類の質問紙尺度への回答を求めた。AASPに含まれる低登録,感覚探求,感覚過敏,感覚回避の4つの尺度のうち,低登録の尺度の得点は,HSPSの易興奮性との間に中程度の正の相関を認め,感覚過敏と感覚回避の得点のいずれもが,HSPSの低感覚閾との間でやや高い正の相関を認めた。感覚探求の得点については,SSS-AEの脱抑制欲求(Dis)尺度との間で中程度の正の相関を認めた。
著者
本多 樹 小林 亮太 中尾 敬
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
日本心理学会大会発表論文集 日本心理学会第85回大会 (ISSN:24337609)
巻号頁・発行日
pp.PM-027, 2021 (Released:2022-03-30)

身体内の生理状態に対する感覚のことを内受容感覚という。自身の内受容感覚にどの程度気づくことができると思うか(内受容感覚の気づき)や,正確に検出することができるか(内受容感覚の鋭敏さ)には個人差があることが知られており,この2つの個人差には関連がないことが報告されている。発表者らは内受容感覚の気づきを測定する尺度として日本語版BPQ-BA超短縮版を作成したが,内受容感覚の鋭敏さとの関連は未検討である。内受容感覚の気づきや鋭敏さには文化差があることが示されているため,本邦におけるこれら2つの指標間の関連は,海外における報告とは異なる可能性がある。そこで,日本人の大学生62名を対象に検討を行った。参加者は日本語版BPQ-BA超短縮版への回答と,内受容感覚の鋭敏さを測定する2つの課題(心拍カウント課題,心拍弁別課題)を実施した。その結果,心拍弁別課題の成績との関連においては弱い正の関連がある傾向が認められたものの(心拍カウント課題 rho=-0.07 p=.61;心拍弁別課題 rho=0.22, p<.10),内受容感覚の2つの指標間には関連がないという海外の報告と概ね一致した結果が認められた。
著者
都築 誉史 松井 博史 菊地 学
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.83, no.5, pp.398-408, 2012 (Released:2013-03-01)
参考文献数
40
被引用文献数
2

In multi-attribute decision making, the similarity, attraction, and compromise effects warrant specific investigation as they cause violations of principles in rational choice. In order to investigate these three effects simultaneously, we assigned 145 undergraduates to three context effect conditions. We requested them to solve the same 20 hypothetical purchase problems, each of which had three alternatives described along two attributes. We measured their choices, confidence ratings, and response times. We found that manipulating the third alternative had significant context effects for choice proportions and confidence ratings in all three conditions. Furthermore, the attraction effect was the most prominent with regard to choice proportions. In the compromise effect condition, although the choice proportion of the third alternative was high, the confidence rating was low and the response time was long. These results indicate that the relationship between choice proportions and confidence ratings requires further theoretical investigation. They also suggest that a combination of experimental and modeling studies is imperative to reveal the mechanisms underlying the context effects in multi-attribute, multi-alternative decision making.
著者
菊池 聡
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
日本心理学会大会発表論文集 日本心理学会第85回大会 (ISSN:24337609)
巻号頁・発行日
pp.PC-145, 2021 (Released:2022-03-30)

超常信奉の成立についての解釈として「理解の及ばない事象に遭遇した時,熟慮して時間をかけて科学的に解明するよりも,現代の科学を超えた超常原理によって,手っ取り早く納得できる意味づけを見いだす」という言説が,一般にしばしば見られる。これは超常信奉が直観的処理スタイルや曖昧さへの不寛容などの非熟慮的・非自制的な認知特性と関連するという報告と符合する。その点で,超常信奉は,短期的な解決を受け入れて,将来の解決の価値を低く見つもる時間割引(time discounting)と関連することが予想される。一方で欧米の研究では,宗教的信仰心の特徴として即時的な報酬を断ち切って未来の価値を待つ能力も指摘されている。本研究では,大学生108名を対象として異時点間での報酬選択による時間割引課題を実施し,超常信奉および疑似科学信奉尺度,批判的的思考尺度の関連性を分析した。重回帰分析の結果,疑似科学信奉態度とスピリチュアル信奉態度は時間割引率と正の関連性があり,信奉者が将来の価値をより割り引くことが明らかとなった。これは不可解な現象の解釈におけるセルフコントロールの弱さが超常原理の受容と関連すると解釈できる
著者
小林 大介 宮田 裕光
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
日本心理学会大会発表論文集 日本心理学会第85回大会 (ISSN:24337609)
巻号頁・発行日
pp.PM-022, 2021 (Released:2022-03-30)

アーユルヴェーダはインド発祥の補完代替医療であり,体質ごとに異なる心理的特徴を呈することが伝統的に示されている。体質(プラクリティ)や体調(ヴィクリティ)の判断には,ヴァータ・ピッタ・カパの3 要素が用いられ,それらはトリドーシャ理論と総称されている。本研究では,トリドーシャ理論と,性格特性(Big Five尺度),気分状態(POMS-2 成人用短縮版),およびマインドフルネス(5因子マインドフルネス質問紙)との関連を,オンライン質問調査により検討した。大学生23名が,上記の心理学上の質問紙に加え,プラクリティとヴィクリティを判定する問診票に回答した。その結果,プラクリティにおいては,ピッタのみ情緒不安定性およびネガティブな気分状態と有意な正の相関を示し,調和性と有意な負の相関を示した。ヴィクリティにおいては,ヴァータがより多くのネガティブな気分状態と有意な正の相関を示し,カパのみマインドフルネスと有意な負の相関を示した。これらの結果は,アーユルヴェーダの体質論が,現代の心理学上の質問紙とも一定程度の関連があることを示唆しており,トリドーシャ理論に関する心理学的研究の実現可能性が示唆された。