著者
武井 勇介
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.499-508, 2023 (Released:2024-01-19)
参考文献数
33

目的:インストラクショナルデザインを用いて開発した産後うつ病に関する保健師の実践能力向上のための研修プログラムの効果と有用性を評価する.方法:産後うつ病に関する研修プログラムを開発し,保健師を対象にeラーニングを用いて実施した.研修前,研修直後,研修1か月後の知識テスト得点,目標達成度の得点はFriedman検定,各時期の比較はBonferroni法を用いた多重比較を行った.結果:保健師40名を分析対象とした.研修プログラム内容は興味関心など高い反応が得られ,対象者は研修前に比べ研修直後,1か月後では知識テスト得点,目標達成度の得点が有意に上昇(p < .05)し,本研修で得た知識,技術を実践活動で活かしていた.結論:本研修プログラムでは,対象者への高い学習意欲や動機付けがされ,知識の習得や実践能力の向上に繋がった.今後の保健師教育でもインストラクショナルデザインの手法を取り入れて教育や研修を行うことは有用であることが示唆された.
著者
山﨑 晶子 濱西 誠司 泊 祐子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.261-269, 2023 (Released:2023-10-03)
参考文献数
40

目的:3歳未満の子どもを育てる父親のコペアレンティングに妊娠期から出産後に形成される父親像が及ぼす影響を明らかにする.方法:対象者は1,621人であった.先行研究よりコペアレンティングとの関連が示唆された項目と「親になる移行期の父親らしさ尺度」を独立変数,「日本語版コペアレンティング関係尺度:CRS-J」を従属変数とし,独立変数を段階的に投入した3つの重回帰モデルを作成した.結果:全てのモデルで有意な回帰性が認められた(p < .01).ただし,CRS-J得点との有意な関連は,「子どもの存在から沸き立つ思い」「父親意識の高まり」「妻への思い」の得点にのみ認められた.結論:妊娠期からの父親像の形成状況が,乳幼児期のコペアレンティングに影響を及ぼしている可能性が示された.特に,独立変数の中で最も高く影響していたのは「妻への思い」であり,妊娠中の良好な夫婦関係がコペアレンティングに影響を及ぼす重要な要因となっていることが示唆された.
著者
藤後 栄一 村松 歩 水野(松本) 由子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.203-214, 2023 (Released:2023-09-13)
参考文献数
40

目的:本研究の目的は,看護学生を対象とし,瞑想を中心とするマインドフルネス呼吸法の効果について,カオス解析を用いて脈波の特徴を抽出することとした.方法:看護学生20名(21~22歳)をランダムに振り分け,マインドフルネス実施群(Mi群)10名とマインドフルネス非実施群(nMi群)10名とした.10日間を実験期間とし,1日目,5日目,10日目の脈波を測定した.脈波から算出したアトラクタを視覚的に評価し,両群間の安静閉眼・暗算課題時の最大リアプノフ指数を比較した.最大リアプノフ指数は,交感神経活動の賦活によって増大する.結果:実験10日目のアトラクタの形状は,Mi群は変化が少ないのに対し,nMi群は変化が複雑であった.Mi群の最大リアプノフ指数は1.7以下で推移し,nMi群と比較し有意に低値を示した.結論:実験10日目のMi群のマインドフルネス実践後に交感神経系が抑制されたことが示唆された.カオス解析を用いた信号処理によりマインドフルネス呼吸法の特徴を評価できる可能性がある.
著者
岩瀨 和恵
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.115-123, 2018 (Released:2018-11-13)
参考文献数
13

目的:介護老人福祉施設に勤務する看護師が高齢者の死の約1か月前に察知した症状や変化を明らかにすることを目的とした.方法:Miles, Huberman, and Saldañaの分析方法を参考にし,20名の看護師に半構造化面接法を用いてインタビューを行った.同意が得られた施設では同行観察を行った.結果:20名全員が約1か月前に,高齢者の死を察知した経験を持っていた.その症状や変化は,【高齢者が訴える死の恐怖】,【意欲の減弱】,【食事摂取機能の低下】,【形相の変化】,【眼の変化】,【声の変容】,【他覚症状の出現】,【活動性の低下】,【体重減少】が抽出された.これらは,さらに上位の概念である主要カテゴリー『精神心理面の変化』と『身体機能面の変化』に大別された.結論:看護師は約1か月前に高齢者の死を症状や変化で察知していた.必ずしもすべての症状や変化が1人の高齢者に出現するわけではないが,看護師が高齢者の死を察知し,十分な時間の中で看取りを行えることが示唆された.
著者
山本 弘江 池田 真理
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.106-113, 2021 (Released:2021-07-29)
参考文献数
21

目的:産後うつ病をパートナーが評価するスクリーニング尺度EPDS-P日本語版を作成し,産後1か月時点の父親による母親の産後うつ病の兆候を検出しEPDS高得点者の発見につなげることができるか検討した.方法:EPDS-P日本語版を作成し,1か月児健康診査を受診した健康な児を育てる夫婦147組を対象に,無記名自記式質問紙調査を実施した.結果:母親のEPDSと父親のEPDS-Pの間にrs = 0.27の有意だが弱い相関が認められた(p < 0.01).EPDS-Pのクロンバックα係数は0.83であった.EPDSのカットオフ値(9点)を仮にEPDS-Pのカットオフ値とした時,EPDS陽性者の母親を検出する感度は50%,特異度は83%であった.母親のEPDSと父親のEPDS-Pの対応する項目1,3,7,8,9の5項目と産後うつ病の身体症状3項目(食欲の変化,睡眠の変化,易疲労性)に有意な相関が認められた.結論:EPDS-Pを活用したパートナーによる産後うつ病の早期発見の可能性が示唆された.
著者
木田 亮平 北村 言 磯部 環 武村 雪絵
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.305-314, 2023 (Released:2023-10-12)
参考文献数
13

目的:本研究は,認定看護管理者(CNA)の偏在是正と養成の普及推進のため,CNA所属施設の分布及び所属の有無と関連する二次医療圏や施設特性を明らかにすることを目的とした.方法:本研究は,5つの公開データを施設名で連結し,CNA教育機関所在医療圏と地域分類に区分した地図にCNA所属施設と非所属施設をプロットし地図を作成した.さらに,二次医療圏特性とCNA所属施設数との関連,施設特性とCNA所属の有無との関連を確認するため二変量解析を実施した.結果:CNAがいない二次医療圏はほとんどが過疎地域型医療圏であり,教育機関がない医療圏では有意に圏内のCNA所属施設数が少なかった(p < .001).施設レベルでは,病床数,教育機関までの距離,開設者,DPC区分が施設のCNAの有無と関連していた(p < .001).結論:地域特性と施設特性による全国のCNA分布の偏在状況が確認された.
著者
勝又 里織
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.37-45, 2018 (Released:2018-08-02)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

目的:本研究は,人工妊娠中絶の看護において共通する行動パターンやルールを記述することを目的とした.方法:エスノグラフィーを用いた.一産婦人科診療所での約1年間の参加観察によるフィールドノーツと,15名の看護師へのインタビューからデータを収集し,初期中絶時の看護に共通する行動パターンとルールを分析し,記述した.結果:〈女性自身の迷いを感じる〉,〈周囲からの圧力を疑う〉,〈女性の判断能力を危ぶむ〉場合は,【女性の意思決定を疑う】.そうでない限り,看護師は『関わらない看護』をする.『関わらない看護』は,【滞りなく進める】ことおよび【嫌な思いをさせない】ことが共通する行動パターンとなっていた.看護師は,〈予定通りに〉,〈事務的に進め〉,女性と〈距離をおく〉,〈責めない〉,〈傷つけない〉,〈立ち入らない〉,〈深入りしない〉,〈人目を避ける〉,〈身体の不快や苦痛を感じ取る〉といった看護を提供していた.
著者
須釜 淳子 石橋 みゆき 大田 えりか 鎌倉 やよい 才藤 栄一 真田 弘美 中山 健夫 野村 岳志 山田 雅子 仲上 豪二朗 佐藤 直子 柴田 斉子 長谷 剛志 深田 順子 三鬼 達人 有田 弥棋子 浦井 珠恵 大川 洋平 北村 言 臺 美佐子 高橋 聡明 玉井 奈緒 飛田 伊都子 野口 博史 松本 勝 三浦 由佳 向井 加奈恵 麦田 裕子 吉田 美香子 倉智 雅子 白坂 誉子 山根 由起子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.790-810, 2022 (Released:2023-03-10)
参考文献数
58

目的:本資料は,日本看護科学学会より公開した「看護ケアのための摂食嚥下時の誤嚥・咽頭残留アセスメントに関する診療ガイドライン」の要約版である.方法:本診療ガイドラインは,「Minds診療ガイドライン作成マニュアル2017」に従い,研究エビデンスと益と害のバランス,患者の価値観などに基づき作成された.結果:身体診査技術を用いた系統的アセスメント,反復唾液嚥下テスト,改訂水飲みテスト,フードテスト,頸部聴診法,超音波診断装置による嚥下観察,内視鏡による嚥下観察に関するクリニカルクエスチョンをもとに,10の推奨が作成された.8つの推奨はGRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation)2Cとして評価され,残りの2つはGRADEなしとして評価された.結論:看護ケアのためのアセスメントに焦点を当て,最新の知見を盛り込んだ信頼性の高い診療ガイドラインが作成された.本資料は要約版であり,臨床実践への活用が期待される.
著者
亀井 智子 山本 由子 梶井 文子 中山 優季 亀井 延明
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.2_24-2_33, 2011-06-20 (Released:2011-07-15)
参考文献数
28
被引用文献数
11 9

目的:COPD HOT実施者を対象として,在宅モニタリングに基づくテレナーシング(TN)を3ヵ月間提供し,急性増悪(primary outcome),および再入院(secondary outcome)をエンドポイントとして,ランダム化比較試験により効果を検討した.方法:対象は,COPD HOT実施者37名を介入群20名(平均年齢76.0歳),対照群17名(77.7歳)に無作為に割り付けた.方法は,介入群には毎日TNを提供し,対照群は従来の診療のみとした.結果:対象特性として,介入群の介入直前の在院日数は対照群よりも有意に長かった.介入群はTNにより急性増悪発症者が32.9%減少した.また,発症までの日数は有意に長く,介入前・中一人当たり急性増悪発症回数は介入群のみ有意に減少した.再入院割合は3.5%減少したが有意差はなく,介入前・中一人当たりの再入院回数は介入群のみ有意に減少した.生存分析(Kaplan–Meier法)では,急性増悪について両群間に有意差が認められた.結論:在宅モニタリングに基づくTNはCOPD HOT実施者の急性増悪発症予防,および発症回数を低下させる可能性があると示唆された.
著者
大山 裕美子 前田 留美 丸 光惠
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.38-42, 2015-04-03 (Released:2015-05-02)
参考文献数
15
被引用文献数
2 2

自己決定型学習とは,自らの学習ニード把握から適切な学習方法の実施・評価まで個人が学習のイニシアチブを取る一連のプロセスを指し,成人の学習や高等教育の場面で求められる学習姿勢である.自己決定型学習準備性とは,そのために求められる個人特性や態度等をその人がどれだけ持っているのかの程度である.看護学の成人学習者の自己決定型学習準備性の測定にはFisherらが開発したSelf-Directed Learning Readiness Scale for Nursing Education(SDLRSNE)を用いることができ,また様々な国・職種を対象に翻訳がされているため国際的な比較も可能である.本研究の目的は,本尺度を翻訳し日本語版SDLRSNEを開発することである.日本語版SDLRSNEの作成は開発者であるFisher氏の許可を得た上で,順翻訳,逆翻訳,ウェブ調査によるパイロットテストの順で実施した.その結果,表面妥当性のある日本語版SDLRSNEが完成した.本尺度は看護学の成人学習者を対象にした教育の方法の検討やその効果を測定する際に活用することができると考えられる.今後,信頼性・妥当性を検証し結果を報告していく予定である.
著者
水戸 優子 小山 眞理子 片平 伸子 山口 由子 川守田 千秋 植村 由美子 野崎 真奈美 鶴田 惠子 手島 恵
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.3_21-3_31, 2011-09-20 (Released:2011-10-25)
参考文献数
19
被引用文献数
3 1

目的:教育と臨床の専門家が合意する看護基礎教育卒業時の看護技術の到達目標と到達度を明らかにする.方法:デルファイ法により,看護の教育者91名および看護実践者98名の専門家の協力を得て158項目の看護技術の到達目標に関する質問紙調査を3回実施した.結果:到達目標は143項目に絞られ,うち138項目は教育者・看護実践者合わせて80%以上の同意率,残り5項目も74~79%であり,ほぼ合意が得られた.それらは,到達度Ⅰ(ひとりで実施できる)が33項目,到達度Ⅱ(指導のもとで実施できる)が53項目であり,日常生活行動援助の看護技術が多く含まれた.また到達度Ⅲ(学内演習で実施できる)が20項目,到達度Ⅳ(知識としてわかる)が37項目であり診療に伴う看護技術が多く含まれた.結論:明らかになった到達目標と到達度は,看護基礎教育と継続教育のギャップを埋め,看護技術教育の充実をはかる上で有用な基礎資料になると考える.
著者
竹下 悠子 山川 みやえ 内海 桃絵
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.234-240, 2021 (Released:2021-10-06)
参考文献数
17
被引用文献数
1

目的:手指衛生教育用にバーチャルリアリティ(VR)を開発し,教育への使用可能性について2次元映像と比較した.方法:看護師を対象に非無作為化比較試験を行った.VR群と2次元映像群に分け映像視聴と講義を行った.映像の評価は視聴直後に,手指衛生のタイミングは視聴前後,1か月後に調査した.結果:VR群と2次元映像群の比較では,映像の5件法の評価(中央値)は手指衛生の重要性が理解できた(5.0, 4.0 p = .024),実践を想起した(5.0, 4.0 p = .008),学習方法は効果的だった(5.0, 4.0 p = .046)であった.タイミングの「患者周囲の環境に触れた後」と記述できた割合はVR群で視聴前30%に比べ視聴後90%(p = .040),1か月後60%(p = .233)であった.2次元映像群では視聴前20%に比べ視聴後80%(p = .040),1か月後80%(p = .004)であった.結論:VR群では重要性の理解,実践の想起,学習の効果の評価が高かった.VRは手指衛生教育に使用可能と考える.
著者
江口 実希 國方 弘子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.160-165, 2021 (Released:2021-09-10)
参考文献数
39

目的:反すうの概念を分析し,その構造を明らかにすることにより看護実践における有用性を検討することである.方法:91文献を対象として,Rodgersの概念分析アプローチを用いて分析した.結果:属性には1カテゴリー【思考の制御困難】が得られた.先行要件には5カテゴリー,帰結には3カテゴリーが得られた.結論:反すうは,【精神的苦痛】や【ストレス負荷】,【客観視の不足】,【注意の調節困難】,【生物学的特徴】によってもたらされる【思考の制御困難】であり,その結果【精神的健康の悪化】,【身体的健康の悪化】,【ストレスの増悪または立ち直り】が生じる.反すうの概念を看護実践に用いることは,既存の看護実践に新しい視点をもたらすことに貢献する.
著者
及川 江利奈 栗林 一人 栗原 淳子 高野 歩
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.811-818, 2022 (Released:2023-03-10)
参考文献数
24

目的:精神科における看護師から患者への暴力と虐待に関する文献を包括的にレビューし,その特徴と要因を明らかにする.方法:PRISMA-ScRに基づき,スコーピングレビューを実施した.文献検索には,PubMed,CINAHL,医学中央雑誌を用いた.文献選定の包含基準は,(1)精神科病棟や外来における看護師から患者への暴力,虐待行為に関する論文,(2)英語または日本語で書かれた論文とした.結果:最終的に,12件の文献がレビュー対象となった.暴力や虐待の内容は,暴行,暴言,無視,身体拘束に関する内容であった.暴力や虐待の要因に関する内容は,自分の行為は,ケアであって暴力ではないという思い込み,精神科における閉鎖的な治療環境に関する内容であった.結論:本研究結果から,精神科における看護師から患者への暴力,虐待の特徴や要因には,閉鎖性,密室性,強制性という精神科医療における構造的問題があることが示唆された.
著者
澤田 いずみ 道信 良子 石川 幸代 小川 賢一 原田 瞳
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.652-660, 2022 (Released:2023-02-16)
参考文献数
42

目的:日本の医療分野で健康問題を抱える人へ実践されている応援の概念分析を行い,定義を明らかにする.方法:国内文献29件を対象にRodgersの概念分析を行った.結果:前提要件3つ,属性4つ,帰結4つのサブカテゴリーから,各一つの【カテゴリー】が抽出され,医療分野の応援は,生き方の模索が続く健康問題を抱える人への【自分らしくあることの困難性への共感】に基づいて,医療者が【その人が自分らしく生きるために味方になり新たな活動を試みる】ことで【その人の主体性の高まりに医療者としての自分らしさが充実していく】過程であった.味方になるとは,医療情報を分かりやすく伝えること,対象者と願いを共に考え支えること,対象者の思いを代弁し共感を周囲に波及させ仲間を作ることにより,その人らしさを支えることだった.結論:医療分野での応援は,対象者のその人らしさを大切にしたい医療者の新たな活動の創出を助ける概念と考えられた.