著者
野寄 亜矢子 清水 佐知子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.850-860, 2022 (Released:2023-03-10)
参考文献数
46

目的:看護師の自己教育性尺度を開発する.方法:概念分析より抽出した看護師の自己教育性の属性より看護師の自己教育性尺度項目を作成し,内容妥当性を検討し尺度原案62項目からなる質問紙を作成した.300床以上の医療施設に勤務する看護師1,080名に質問紙調査を実施し,尺度の信頼性と妥当性を検証した.結果:416名から回答が得られた.そのうち,259名を因子分析の対象とした.因子分析の結果,《自ら学ぶ力》《省察する力》《看護への興味と仕事の充実感》の3因子27項目が抽出された.尺度の信頼性の検討では,Cronbach’s α係数.945,再テスト法による級内相関係数.858であった.妥当性については,構成概念妥当性と基準関連妥当性で確認された.結論:看護師の自己教育性尺度を開発し,尺度の信頼性と妥当性が検証された.
著者
谷山 牧 荒木田 美香子 山下 留理子 橋本(小市) 理恵子 大久保 豪 甲斐 一郎
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.263-273, 2018 (Released:2019-02-16)
参考文献数
25
被引用文献数
1

【目的】就労支援を受ける生活保護受給者,生活困窮者自立支援法対象者(以下,生活困窮者)31名への面接調査を通じ,就労意欲に影響を与える健康特性を明確化すること.【結果】質的分析の結果,【他者から理解されがたい持続的な苦痛】,【ストレスへの脆弱さ】,【社会的適応の困難さ】,【自己流の健康管理】の4カテゴリーを抽出した.また,就労意欲への影響要因として,【就労することへの期待】,【生活保護廃止への不安と葛藤】,【社会から排除されているという感覚】の3カテゴリーを抽出した.これらが関連し〖健康課題を抱えながらの就労と,生活保護受給継続との間での就労意欲のゆらぎ〗を引き起こしていた.【結論】今回抽出した健康特性からみると,生活困窮者の就労支援に医療や心理の専門職が参加することにより,効果的な就労支援につながる可能性が示唆された.
著者
小山 晶子 小山 智史 伊東 美緒 紫村 明弘 福嶋 若菜 山﨑 恒夫 内田 陽子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.176-185, 2022 (Released:2022-10-15)
参考文献数
23

目的:地域在住高齢者の服薬支援の在り方を検討するために,服薬アドヒアランス良群・不良群別に対象者の属性を検討し,2群の服薬管理の工夫の特徴を示した.方法:地域在住高齢者55名を対象に,属性と服薬アドヒアランスに関する質問紙調査と,服薬管理の工夫に関する聞き取りおよび観察を行った.結果:服薬アドヒアランス良群は19名(34.5%),不良群は36名(65.5%)であり,全対象者が何らかの服薬管理の工夫を行っていた.【服薬指示理解と服薬の段取り】は〈服薬指示を記憶する〉など13の工夫,【薬の保管】は〈1週間分程の薬を手元に置く〉など10の工夫,【薬の飲み忘れ対策】は〈食事から服薬までを一連の流れで行う〉など9の工夫がされていた.結論:服薬管理の工夫は,個人の生活に合わせて調整されていた.したがって,看護師は対象者の生活と服薬管理の工夫を把握した上で,服薬支援を行うことが必要である.
著者
西名 諒平 戈木クレイグヒル 滋子 岩田 真幸
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.395-404, 2021 (Released:2021-11-13)
参考文献数
14

目的:きょうだいが小児集中治療室(以下PICU)に入院中の子どもに面会する場で,医療者はきょうだいと両親の状況をどのように捉え,きょうだいをどう支援しようとするのかを明らかにする.方法:PICU入院児ときょうだいの面会場面,15場面の観察と,看護師9名,Child Life Specialist 5名,PICU専従保育士1名の計15名へのインタビューを行い,グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析した.結果:医療者による【きょうだいの居場所をつくる】《きょうだいと入院児をつなぐ》《きょうだいと両親をつなぐ》という働きかけが適切に行われ,《両親によるきょうだいとの体験の共有》が行われることで,《きょうだいと入院児を含めた家族の一体感》が生じていた.結論:面会の場が,《きょうだいと入院児を含めた家族の一体感》のある場となることが望ましく,そのためには,医療者が【きょうだいの居場所をつくる】という働きかけを行った上で,両親が適切にきょうだいと体験を共有できるように支援することが重要である.
著者
加悦 美恵 井上 範江
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.3_3-3_11, 2007-09-15 (Released:2011-09-09)
被引用文献数
10 2

目的:検査を受ける患者の心身の苦痛を軽減する方法として,検査中に話しかける介入または話しかけながらタッチする介入で,患者の感じ方や気持ちに違いがあるかを明らかにすることである.方法:胃内視鏡検査を受ける入院患者43名を話しかけ群21名と話しかけタッチ群22名に振り分け介入し,気分調査票を用いて検査前と検査中の気持ちを調査し,かつ自由な感想を得た.結果:話しかけ群では検査前と検査中の気持ちに差はみられなかったが,話しかけタッチ群では,緊張や気がかりで落ち着かない気持ち(緊張と興奮),沈みがちな気持ち(抑うつ感)がやわらぎ,リラックスする気持ち(爽快感)が高まっていた(いずれもp<.05).また,両群とも看護者の介入に対し【苦痛に耐えるための心強い励まし】【身体的緊張の緩和】【精神的緊張のやわらぎと安心感】【自分に向けられた思いやり】を感じていたが,話しかけタッチ群では【親や家族がそばにいるようなぬくもりとやすらぎ】【好意に対するうれしさ】という感想が聞かれた.結論:苦痛を伴う検査を受ける患者は,看護者により話しかけられながらタッチされるほうが,より検査を楽に受けられると考えられた.
著者
山岡 愛 吾妻 知美
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.151-159, 2018 (Released:2018-11-13)
参考文献数
22

目的:医療的ケアを継続しながら在宅療養へ移行した先天異常のある子どもの母親の経験や思いから,母親のレジリエンスの一端を明らかにする.方法:在宅療養中の先天異常のある子どもの母親7人に感情浮沈図を用いて半構造化面接を行った.データは内容分析の手法を用いて分析し,母親のレジリエンスについてカテゴリー化した.結果:母親のレジリエンスとして【退院への意志】【ネガティブ感情に負けない力】【夫の存在】【信頼できる医療者の存在】【子どもの生命力】【家族の存在】【妊娠と出産のポジティブな思い】【同じ境遇の母親の存在】【母親としてのプライド】【ソーシャルサポート】が抽出された.結論:医療的ケアを継続しながら在宅療養へ移行した先天異常のある子どもの母親のレジリエンスは,退院への意志,母親の性格,周囲の人々との信頼関係や支援,子どもの生命力,子どもとの相互作用によって培われた母親としての思いであった.出産前からの計画的な支援,母親と子どもの相互作用に着目した支援,在宅療養への段階的な支援が重要であることが示唆された.
著者
二見 朝子 野口 麻衣子 山本 則子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.261-269, 2019 (Released:2020-02-15)
参考文献数
27
被引用文献数
2

目的:看護師が利用する科学的根拠の利用頻度およびクリティカルシンキング(CT)との関連を明らかにする.方法:病院の病棟師長および看護師を対象に自記式質問紙調査を実施した.組織特性,個人特性,CT,情報源の利用頻度等を尋ねた.情報源のうち,ガイドライン・論文データベースを科学的根拠と分類した.結果:全国61病院の師長68名,看護師986名分の回答を分析対象とした(有効回答率:師長93.2%,看護師72.1%).ガイドラインは58.4%,論文データベースは32.8%が1年以内に1度以上利用していた.CTは,ガイドライン(オッズ比[OR]:1.97,95%信頼医区間[CI]:1.30~2.99)および論文データベース(OR: 2.47, 95%CI: 1.58~3.85)の利用共に有意に関連していた.その他の要因としてガイドラインの利用には学会参加回数が多いこと,論文データベースには一般病床,統計解析の院内研修がある,年齢が低い,臨床研究実施回数が多い,学会参加回数が多いことが有意に関連した.結論:CTの高さは,科学的根拠の利用促進に寄与しうる要因であることが示唆された.
著者
西田 志穂
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.1-10, 2021 (Released:2021-06-10)
参考文献数
59

目的:慢性心不全患者のアドバンスケアプランニングの定義を明らかにする.方法:49文献を対象にRodgersの方法を用いて概念分析を行った.結果:8つの属性:共有と議論が必要な医療とケアに関する情報,その人を知る,エンドオブライフ(EoL)を見通す,決めるプロセスの推進,シームレスなケアのための体制構築,パートナーシップ,対話,継続的・反復的なプロセス,7つの先行要件:社会的背景,文化的背景,医療従事者の背景,個別の判断による意向確認のタイミング,心不全に対する認識のズレ,心不全の病態と治療・ケアの不確実性,終末期ケアの不足,5つの帰結:患者・家族の満足度の向上,患者・家族の全人的苦痛の緩和,患者の内的変化,その人らしい人生の実現,医療的アウトカムの向上が抽出された.結論:本概念を「慢性心不全特有の病いのプロセスのなかで先を見通し,対話を通してその人らしさを探究し,自律した意思決定と望む生き方を実現するための継続的・反復的プロセス」と定義した.
著者
嵐 弘美
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.52-60, 2021 (Released:2021-06-29)
参考文献数
11

目的:精神科看護師が自身の身体をとおして,どのように統合失調症者を理解して看護を実践しているのかを明らかにする.研究方法:Merleau-pontyの現象学的身体論に基づいた質的帰納的研究デザインを用い,統合失調症の看護経験が3年以上の看護師15名に半構成的インタビューを行った.結果:1.精神科看護師の身体をとおした統合失調症者の理解と看護実践には,身体性の次元と言語の次元がみられた.2.統合失調症者の生き辛さは,《自分の身体に馴染めない》,《他者の身体に脅かされる》,《自分らしく生きることに困難を抱える》であった.3.精神科看護師は,【共鳴する】ことと【応じる】ことを通して【関係性によって癒す】という実践をしていた.考察:精神科看護師は,統合失調症者の「自己性の形成不全」という生き辛さを,間身体性による付き合い方の身体知によって築いた関係性によって癒すことが示唆された.
著者
西澤 和義 大島 弓子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.132-140, 2021

<p><b>目的:</b>看護職が嚥下障害を臨床判断するための内容妥当性のある診断指標を明らかにし,major指標とminor指標も明らかにする.</p><p><b>方法:</b>本研究はFehringのDCVモデルを使った.嚥下障害の看護診断に精通した専門家672人に質問紙調査を行った.診断指標78項目が,どの程度嚥下障害を表すか,5段階のリッカート尺度で評価をうけた.各診断指標で,回答を点数化してDCV値(平均値)を算出した.DCV値でmajor指標,minor指標,除外する指標に分けた.</p><p><b>結果:</b>有効回答数は327人だった.major指標は11項目(食事中のチアノーゼ,嚥下後の呼吸切迫,嚥下テスト時の咽頭相の異常,嚥下後の湿性の呼吸音,むせる,食事中や食後に濁った声にかわる,喉頭挙上の不良,嚥下の遅延,嚥下前にむせる,嚥下後の嗽音の呼吸音,鼻への逆流)だった.minor指標は52項目,除外する指標は15項目だった.</p><p><b>結論:</b>嚥下障害の看護診断に精通した専門家の意見に基づく,内容妥当性のある嚥下障害の診断指標が明らかとなった.</p>
著者
島村 珠枝 田口 敦子 小林 小百合 永田 智子 櫛原 良枝 永田 容子 小林 典子 村嶋 幸代
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.2_3-2_12, 2010-06-21 (Released:2011-08-15)
参考文献数
32
被引用文献数
2

目的:多剤耐性結核の治療のため隔離入院中の患者が病気をどのように受けとめ,どのようなことを感じながら入院生活を送っているかを明らかにする.方法:入院中の多剤耐性結核患者5名に半構造化面接を実施し,質的記述的に分析した.結果:病気について,全員が『治りにくい病気に罹った』と捉えた上で,『治るだろう』と受けとめている者,『治らないだろう』と考える者の両者が存在した.ほとんどの協力者が『先が見えない』と感じており,長期入院と隔離に大きなストレスを感じていた.入院生活について,全員が『楽しいことはほとんどない』と感じていた.『人に会えないのが寂しい』と閉塞感を訴え,『外とのやり取りで気が紛れる』と入院生活の辛さを紛らわせていた.『看護師との日常的な会話が楽しみ』と話す者もいた.結論:看護師は日常的に患者と関わる中で患者と外との接点になり得るため,日常的なコミュニケーション場面での配慮が求められている.
著者
飯岡 由紀子 亀井 智子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.114-121, 2021 (Released:2021-08-12)
参考文献数
25
被引用文献数
1

目的:学際的チームを基盤とし,個人の認識からチームアプローチを評価するチームアプローチ評価尺度(TAAS)の信頼性と妥当性を検討し,TAAS改訂版(TAAS-Revised Edition)を開発する.方法:A県の総合病院3施設の医療専門職を対象にTAASを用いて無記名質問紙横断調査を行った.信頼性はα係数の算出,妥当性は探索的因子分析にて検討した.研究倫理審査委員会の承認を得て行った.結果:回収率27.1%,有効回答は789部だった.探索的因子分析は最尤法のプロマックス回転により,22項目となり,TAASの4因子から5因子構造(チームの機能,チームへの貢献,チーム活動の重要性,チームメンバーの役割遂行,目標と役割の明確化)となった.尺度全体のα係数は .93であり,各因子は .68~.91の範囲だった.結論:TAAS改訂版は,概ね信頼性と妥当性は確保された.
著者
野川 道子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.39-48, 2004-09-15 (Released:2012-10-29)
参考文献数
27
被引用文献数
3 4

本研究の目的はMishel Uncertainty in Illness Scale-Community Form (MUIS-C) 日本語版の信頼性と妥当性を検討することである. MUIS-Cは慢性疾患患者または家族の不確かさを測定する用具として開発された尺度であることより, 調査は外来通院中の自己免疫疾患患者と2型糖尿病患者の協力を得て行った.信頼性のうち内的整合性に関してはCronbach's α係数が0.82~0.88, 折半法のSpearman-Brownは0.71~0.86であり, 十分な内的整合性が確認された. しかし, 糖尿病患者を対象とした再テスト法ではr=0.61であり, 0.7の基準をやや下回る結果であった.妥当性についてみると, 回答はそれぞれの疾患の臨床的特徴を反映したものであり臨床的妥当性は確保された. 併存的妥当性についてはMUIS-CとPAIDとの相関係数が0.41であり, 一定程度確保された. 構成概念妥当性についてはMishelの不確かさの概念モデルに照らして, 適応に対応すると考えられる主観的QOLを従属変数として重回帰分析を行ったところ, 不確かさ, 病状の不安定さ, ソーシャルサポートが関連していることが示された.以上の結果より, MUIS-C日本語版は今後洗練する必要があるが, 臨床での使用基準を満たしていると考えられる.
著者
西澤 和義 大島 弓子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.132-140, 2021 (Released:2021-08-27)
参考文献数
24

目的:看護職が嚥下障害を臨床判断するための内容妥当性のある診断指標を明らかにし,major指標とminor指標も明らかにする.方法:本研究はFehringのDCVモデルを使った.嚥下障害の看護診断に精通した専門家672人に質問紙調査を行った.診断指標78項目が,どの程度嚥下障害を表すか,5段階のリッカート尺度で評価をうけた.各診断指標で,回答を点数化してDCV値(平均値)を算出した.DCV値でmajor指標,minor指標,除外する指標に分けた.結果:有効回答数は327人だった.major指標は11項目(食事中のチアノーゼ,嚥下後の呼吸切迫,嚥下テスト時の咽頭相の異常,嚥下後の湿性の呼吸音,むせる,食事中や食後に濁った声にかわる,喉頭挙上の不良,嚥下の遅延,嚥下前にむせる,嚥下後の嗽音の呼吸音,鼻への逆流)だった.minor指標は52項目,除外する指標は15項目だった.結論:嚥下障害の看護診断に精通した専門家の意見に基づく,内容妥当性のある嚥下障害の診断指標が明らかとなった.
著者
野高 朋美 荒木田 美香子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.225-233, 2017 (Released:2017-12-21)
参考文献数
26
被引用文献数
1

目的:知的障害者が医療機関の受診を困難と感じるプロセスを保護者の意見から明らかにする.方法:知的障害者の保護者3グループの計14名にフォーカスグループインタビューを行い,M-GTAで分析を行った.結果:保護者から明らかとなった知的障害者が医療機関の受診を困難と感じるプロセスは〔スムーズな受診への不安とその緩和に対する負担〕に加え〔医療機関での不快体験や失敗体験による受診負担の増加〕があり,〔受診負担解決への無力感〕〔受診への自信喪失〕が生じることで【医療機関を訪れることへの気後れ】となっていた.【保護者・医療機関・社会がそれぞれできる取り組み】は【医療機関を訪れることの気後れ】に影響すると保護者は考えていた.結論:知的障害者が医療機関の受診を困難と感じるプロセスは【医療機関を訪れることへの気後れ】であり,保護者・医療機関・社会のそれぞれの努力により軽減できる可能性が示された.
著者
田口 めぐみ 宮坂 道夫
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.350-358, 2019

<p><b>目的:</b>看護師が自己規範とチーム規範との不一致によって経験するジレンマの内容,ジレンマ対応の様式,対応に影響を及ぼす因子を明らかにする.</p><p><b>方法:</b>ジレンマの内容と経験および対応について,看護経験2年以上の看護師21名にインタビューを行い,構造的ナラティヴ分析とテーマ的ナラティヴ分析を組み合わせた分析を行った.</p><p><b>結果と考察:</b>構造的ナラティヴ分析の結果から,ジレンマを経験した際の対応は,イ)ジレンマに対してチーム規範に則って行動した,ロ)-①ジレンマに対して個人の可能な範囲で行動した,ロ)-②ジレンマに対して小集団から同意を得られた場合に行動した,ハ)-①ジレンマに対して自己規範に則って行動したがチーム規範に変化をもたらさなかった,ハ)-②ジレンマに対して自己規範に則って行動しチーム規範に変化をもたらした,に分類できた.テーマ的ナラティヴ分析の結果から,ジレンマ対応に影響を及ぼす因子は,看護経験年数,異動経験の有無,周囲との対立回避,賛同者の獲得,役割意識に基づく行動であった.患者の多様なニーズへの対応には,看護師個人とチームの相互における継続的な検討が必要である.</p>
著者
坂井 郁恵 水野 恵理子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.3_32-3_41, 2011-09-20 (Released:2011-10-25)
参考文献数
19
被引用文献数
2 3

目的:地域で生活する精神障害者の生きがいの具体的内容と特徴,生きがいに影響を与える体験を明らかにすることを目的とした.方法:対象は,3年以上地域生活を続け研究に同意が得られた精神障害者17名であり,半構成的面接を実施し,得られたデータを質的に分析した.結果:生きがいの内容を示す5つのカテゴリ【他者の存在と関わり】【現在の生活への肯定的な感情】【趣味】【信仰】【仕事】と,生きがいに影響を与える要因を示す6つのカテゴリ【自覚する症状と病気】【他者による肯定的な理解と助言】【現在の生活】【あえて距離をとる対人関係】【家族との関係】【生きがいの気づきにくさ】が抽出された.結論:地域で生活する精神障害者は,自分を理解し支えてくれる他者の存在や,現在の生活への肯定的な感情,現在の趣味を生きがいとしている者が多くみられ,生きがいは普段の生活の中に多様に存在していた.また,生きがいの気づきにくさをもつ者もおり,精神障害者にとって他者の関わりは重要であると考えられた.
著者
稲垣 久美子 古澤 亜矢子 村瀬 智子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.41-50, 2016 (Released:2016-09-30)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

目的:一般病棟で臨床経験を有する看護師が,初めて緩和ケア病棟に配属された後,2年未満に感じる心理的負担と対処の特徴について明らかにする.方法:質的記述的研究方法とし,半構成的インタビュー法を用い,得られたデータを質的帰納的に分析した.結果:7名の緩和ケア病棟看護師の個別分析結果を統合し,4段階の分析過程を経て,心理的負担は8の上位カテゴリーに集約され,心理的負担への対処は9の上位カテゴリーに集約された.結論:1)緩和ケア病棟看護師が配属後2年未満に感じる心理的負担の特徴は,【自分の経験がゼロになったような無力感と戸惑い】が中核となり,三層に構造化され,この中で,心理的負担は看護経験を重ねる過程で変化していたが,その一方で経験を重ねても抱き続ける心理的負担もあることが明らかになった.2)心理的負担に対して,看護経験を重ねる過程で後ろ向きの対処から前向きな対処へと変化しており,これらの変化に影響を与える要因には,緩和ケア病棟看護師のレジリアンスが関係していると考えられた.
著者
岡本 留美 我部山 キヨ子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.194-202, 2015-11-02 (Released:2015-11-17)
参考文献数
28

目的:胎児異常の診断を受けた女性とそのパートナーの支援に関する文献を整理し,支援の方向性と今後の研究課題について示唆を得る.方法:PubMed, Web of Science, 医学中央雑誌を用いて“fetal abnormality (胎児異常)”“women(女性)”“partner(パートナー)”“nursing(看護)”をキーワードに2003年1月から2013年12月の期間に発表された文献を検索.胎児異常を診断された女性の体験や心理に関する研究とパートナーの体験を含む26文献(国内文献10件・海外文献16件)を分析対象とした.結果:妊娠期の女性に焦点を当てた研究がほとんどであった.女性とパートナーの心理特性では,診断時における悲嘆,不安,ショック,などの心理的反応に性別の違いはなく,夫婦間での一致の頻度は高かった.また,夫婦ともにネガティブな感情だけでなく,希望などのポジティブな感情もみられた.医療者には,胎児異常の診断時から正確な情報提供を行うことや共感的で継続的な支援が求められていた.結論:日本の研究は海外に比べ集積が少ない現状にあり,日本の社会文化的背景のなかでの検討が必要である.今後は,ケアシステム構築のため,パートナーも含めたケアニーズやケアの質評価に関する検討が必要である.女性とそのパートナーの支援を行う看護者への教育プログラムの必要性が示唆された.
著者
溝口 全子 松岡 緑 西田 真寿美
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.92-102, 2000-11-30 (Released:2012-10-29)
参考文献数
28
被引用文献数
1

本研究の目的は, 女子大学生のダイエット行動において, 比較的緩やかなダイエット行動をとる人, 健康をも脅かすような過激なダイエット行動をとる人の背景に何が関与しているのか, 各々の行動に及ぼす影響要因の違いについて明らかにすることであった. 調査では, PenderのHealth Promotion Modelの枠組みを参考に, ダイエット行動に関連す る要因を (1) 個人的因子: 生物学的要因 (体脂肪率・年齢・家族の肥満), 心理学的要因 (主観的健康評価・集団回帰傾向・体型不満・ボディイメージ), 社会的要因 (周囲のダイエット行動者・ダイエットに関する話題の頻度), (2) 過去の関連行動: 過去のダイエット経験, ダイエット情報の収集, 情報源, 体型・体重に関する嫌な体験, (3) ダイエット行動に対する特別な認識と感情: 痩せ願望, 自己効力感と設定し, 看護女子大学生203名を対象に調査した. その結果, 以下のことが得られた.1) 緩やかなダイエット行動, 過激なダイエット行動には共通して痩せ願望が影響していた.2) 緩やかなダイエット行動のみに影響する要因は専門的情報, 自己効力感があった. 過激なダイエット行動のみに影響する要因は家族の肥満, 過去のダイエットの成功体験, 体型・体重に関する嫌な体験があった.3) 痩せ願望をもたらす要因では, 過去の関連行動, 生物学的要因, 心理学的要因, 社会的要因の順に影響力が強かった.痩せ願望があっても自己効力感が高ければ, 専門的・健康に基づいたダイエット情報を得て, 緩やかなダイエット行動をとることが示唆された. 今後, 自己効力感を高めていくような介入が必要と考えられる.