著者
松岡 純子 玉木 敦子 初田 真人 西池 絵衣子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.2_12-2_20, 2013-06-20 (Released:2013-07-04)
参考文献数
28
被引用文献数
2 1

目的:本研究の目的は,広汎性発達障害児をもつ母親が体験している困難と心理的支援について明らかにすることである.方法:広汎性発達障害児の母親10名に半構成的面接を行い,得られたデータを質的帰納的に分析した.結果:母親が体験している困難は,【適切な医療・療育環境の不整備ゆえに増大する苦悩】【家事,療育,教育支援のために余裕のない日常】【手探りの子育て】【長期にわたって続く心理的揺れと子どもの将来への心配】【学校生活に関する心配とストレス】として表された.母親が得ている心理的支援,および必要としている心理的支援は,【家族・友人・地域の協力者の理解と助言による支え】【家族や友人に相談できない状況】【気兼ねなく利用できる心理的支援への希求】【ゆとりの時間による気分転換】【子どもの長所や成長を確認することによる希望】【子どもの長所や成長に焦点を当てた支援への希求】として表された.結論:広汎性発達障害の特性と心理的支援に関する知識と技術をもつ専門家による母親への心理的支援や,母親への支援とともに子どもの長所や成長に焦点を当てた子どもへの支援の必要性が示唆された.
著者
松浦 利江子 鈴木 英子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.319-328, 2017 (Released:2018-02-07)
参考文献数
27
被引用文献数
2 2

目的:精神科看護師の自尊感情の関連要因を患者に対する陰性感情経験も視野に入れて明らかにし,看護師支援策を検討する.方法:9私立精神科病院に勤務する看護師737名を対象に質問紙調査を実施した.有効回答数は365名(49.5%)であった.調査内容は,基本的属性,職場環境要因,心理的健康,自尊感情尺度(Rosenberg, 1965;山本ら,1982)とし,自尊感情尺度合計得点を従属変数とした重回帰分析を行った.結果:重回帰分析の結果,自由度調整済み決定係数は0.44であった.自尊感情尺度合計得点と有意な関連が認められた要因は,環境制御力,患者に対する陰性感情経験への嫌悪度,既婚,職位が主任,コーピング行動は当事者と話し合う手法をとる,最長勤務領域が外科系病棟,であった.結論:患者に対する陰性感情への嫌悪感が過度にならない支援,患者を取り巻く精神科看護師も含めた人的・物的環境を制御する能力としての患者支援技術修得への支援,問題の当事者と話し合う対処方法修得への支援の重要性が示唆された.
著者
中野 綾美
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.38-50, 1994-06-30 (Released:2012-10-29)
参考文献数
32

本研究は, 慢性疾患とともに生きる青年のノーマリゼーション現象がどのようなものであるかを明確にすることを目的とした。慢性疾患のために現在外来通院を行っている中学生・高校生 30 名を対象に, 面接法によりデータを収集し, 質的分析を行った。分析の結果, ノーマリゼーションを形づくる局面として (1) 病気とともにある自己を形成する局面 (2) 状況判断の局面 (3) ノーマリゼーション行動の局面という3つの局面が抽出された。ノーマリゼーションは, 4 つの段階を経てプロセスをなして進展していた。青年は, ノーマリゼーションのプロセスが進展するに従って, 独自に生み出したノーマリゼーション行動を駆使しながら日常生活を営み, 健康な自己と病気の自己という分裂した自己を持つ苦悩を乗り越え, 統合した自己を確立していた。本究結果から, ノーマリゼーションを「病気とともにある自己をふまえて, 個人が自ら作り出した判断基準に基づき現実を検討して, 自らの生活を普通の生活に近づけ, 社会的に生きていくための戦略を創造していく過程である」と提案する。
著者
藤森 由子 國方 弘子 藤代 知美
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.114-120, 2016 (Released:2016-12-23)
参考文献数
14
被引用文献数
2 1

目的:地域で生活する精神障がい者が自分にとって調子のいい状態を獲得するプロセスを明らかにする.方法:地域活動支援センターに通所する精神障がい者12名に半構成的インタビューを行った.分析は修正版グラウンデッドセオリーアプローチを用いた.結果:地域で生活する精神障がい者は,「喪失と辛苦」から出発し,『試行錯誤』と『取捨選択』を繰り返す経験を自らの糧として『自分のよりどころ』とし,『自分での手当て』を行い『平坦な暮らし』をすることで自分にとって調子のいい状態を維持していた.このプロセスは,病気をコントロールし生活を主体的に送る力を取り戻す【主導権の再獲得】であった.結論:本プロセスを促進するために精神疾患に伴う認知機能障害を考慮した支援の必要性が示唆された.また,支援者によるつなぐという支援技術の詳細を明らかにする必要がある.
著者
三宅 優 横山 美江
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.3_61-3_67, 2011-09-20 (Released:2011-10-25)
参考文献数
51
被引用文献数
1 1

目的:国内において報告されてきた笑いの効果を身体面,精神面の二方向から概観し,看護の場で笑いを用いる有効性を提示することを目的とした.方法:引用文献の検索には,医学中央雑誌刊行会から,“笑い”or“ユーモア”をキーワードとして1980年以降,2009年5月までで検索を行い,29件採用した.また,国際誌はPubMedを用い,2000年以降,2009年5月までの文献からキーワード“laughter”and“effect”で検索し,20件を採用した.結果:笑いの身体面の効果としては,笑い体験によるNK細胞活性ならびにアレルギー反応などの免疫系に関して効果があったという報告が最も多く,その他疼痛緩和,血糖上昇抑制作用があることが報告されていた.また笑いの精神的効果として,ストレスコーピング,不安ならびに緊張の緩和などの効果が報告されていた.結論:笑いは,身体面と精神面両方での効果が期待できる.しかし,看護ケアとして笑いの効果を検討した研究は少なく,今後,看護師による笑いに関する介入研究の成果が期待される.
著者
青木 雅子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.3_43-3_51, 2009-09-16 (Released:2011-08-30)
参考文献数
16
被引用文献数
4 2

先天性心疾患患者の小児期におけるボディイメージの形成過程を明らかにすることを目的に,グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析した.先天性心疾患をもつ21名の成人患者に,小児期における身体に対する思いを回想してもらった.ボディイメージの形成過程は,もの心ついた時に認識した身体に対するあたりまえさを自分なりのあたりまえさに再構築していく『あたりまえさの創造』であった.【もの心ついたときのあたりまえさ】を基盤にし,友だち社会に進出して認識した身体心理社会的な【不都合さの実感】を,【同化への試み】【ジレンマとの駆け引き】【体内の調整力の発揮】をしながら,【自分らしいあたりまえさの再構築】へと変化修正させていた.体内感覚を頼りにしたボディイメージは,社会的営みを通して自己イメージへと創造されており,身体の適切な理解,他者からの了解,安心,コントロール感の獲得,他者との共軛,理想像との一体感,適応の実感を高めることが安定した自己構築につながると考えられた.
著者
半田 美織 日下 和代 叶谷 由佳 佐藤 千史
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.20-30, 2004-01-13 (Released:2012-10-29)
参考文献数
20
被引用文献数
6 1

本研究はデイケアに通所中の精神障害者59名を対象とし, アンケートと面接調査, 参与観察により主観的QOLや影響要因を分析することによって, 障害者の抱える問題を明確化し, デイケアにおける援助について検討することを目的とした.その結果, 以下のことが明らかになった. (1) 入院経験のある人はない人に比べて生活満足度が低かった. (2) 疾患によって心理的機能の満足度が異なる. (3) 同居者や相談相手がいる人, 相談相手に家族やクリニック以外の友人が含まれている人の生活満足度が高かった. (4) 食事を週1回以上は自分で作る人は心理的機能領域で, 家族が食事を作ってくれる人は身体的機能領域で満足度が高かった. (5) 障害受容の満足度は全体的に低く, その満足度が高い人は生活満足度が高かった. これらから, 対人関係や自尊心, 自己認知概念などの要因は生活満足度への影響が大きく, これらの要素に対する援助の重要性が示唆された.
著者
山口 真有美 瀬戸 奈津子 清水 安子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.176-183, 2018
被引用文献数
1

<p><b>目的:</b>初期・二次救急外来で勤務する救急看護認定看護師の入院せず帰宅する患者に対する看護実践を構造化することである.</p><p><b>方法:</b>近畿圏内の救急看護認定看護師12名に半構造化面接を実施し,質的統合法(KJ法)を用いて分析した.</p><p><b>結果:</b>救急看護認定看護師は入院せず帰宅する患者に対し【医師が診察したあとの看護としての観察とアフターフォロー】,【援助を必要としている患者を見捨てない最後の砦となる】,【入院が必要か否かを探りつつ,帰宅後の生活も想像する】,【救急患者の不安や緊張を思いやり共感しながらも入院不要の納得を得る】,【短時間で帰宅後のリスク回避の方法を説明する】,【重症化の危険に備え,多職種との連携をはかる】,【医療・介護スタッフ,地域住民への救急対応教育】を実践していた.</p><p><b>結論:</b>患者の健康回復のみならず患者を元の生活に戻すことに責任を負う救急看護認定看護師の実践が明らかになった.今後は救急看護師の介入による救急外来再受診や一般外来への定期受診への影響について検討を要する.</p>
著者
吉田 彩
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.260-269, 2020 (Released:2020-12-10)
参考文献数
16

目的:在宅がん患者の看取りにおける家族の対処の過程を明らかにする.方法:がん患者の看取り期に訪問看護を利用した20名の家族を対象に,家族の対処の過程について半構造化面接を行った.分析は複線径路・等至性モデルを用いた.看取りの過程を一連の径路に示し,家族の対処とそれに影響した要因を検討した.結果:対処の過程は2つに大別され,その差異は,患者が臥床がちになるなどの看取り期の変化の時期に生じた.患者の変化を捉え,昼夜を問わず患者のそばにいるなどの対処をとった家族は,心身の不調をきたしながらも,「自分ができるだけのことを一生懸命やれた」という認識に至った.一方,患者の死を予期せず自分の生活を優先するなどした家族は,「患者との死別や死の状況は受け入れがたい」という認識に至った.結論:家族が心身の健康を保ちながら,看取り期の患者の変化に対処できる,介護への適度な距離を保つ必要性が示唆された.
著者
大西 奈保子 小山 千加代 田中 樹
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.113-122, 2020 (Released:2020-09-01)
参考文献数
21

目的:本研究の目的は,死別前から死別後を含めて,在宅で妻を介護した夫の看取りの特徴と訪問看護師の支援について明らかにすることである.方法:在宅で妻を介護した夫を妻の生前からケアした経験のある訪問看護師9名にインタビューを行い,その内容をグラウンデッド・セオリー・アプローチを参考に分析を行った.結果:その結果,在宅で妻を介護した夫の看取りの特徴は,【夫婦のありよう】【非日常的生活の継続】【つながりの薄さ】【抑え込まれた悲しみ】の4カテゴリ,夫への訪問看護師の支援は,【非日常的生活の中での看取りを支える】【抑え込まれた悲しみからの回復を促す】の2カテゴリで構成された.結論:特に妻との死別後,夫が悲嘆から回復し,生活再建に取り組むようになるためには長い夫婦生活の中で育まれた【夫婦のありよう】が重要と考えられ,訪問看護師は看取りの時期に【夫婦のありよう】に添いながら,夫婦が望む看取りのあり方を実現できるように支援していくことが必要と示唆された.
著者
中村 幸代
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.1_3-1_11, 2008-03-20 (Released:2011-08-30)
被引用文献数
8 10

目的:冷え症を苦痛に感じている妊婦は多いが,冷え症に関する研究は少ない.本研究は,冷え症の自覚がある妊婦の体温および,妊娠中の随伴症状や日常生活行動の特徴の実態を分析する.方法:妊娠20週以降の妊婦230名を対象とし,体温測定と質問紙調査を行った.調査時期は2005年6~7月と11月である.結果および結論:1.冷え症の有無において,前額部温と足底部温の温度較差は有意差が認められた(6~7月:2.0℃ vs 0.6℃,11月:5.2℃ vs 2.4℃).つまり,冷え症の自覚は温度較差を反映していた.2.冷え症の自覚と冷え症を判断する基準(寺澤)の一致率は80.9%と高値であった.つまり,どちらでも,冷え症を判断する指標となり得ることが示唆された.3.前額部温と足底部温の温度較差は,季節による影響が強く,外気温が低くなれば温度較差も大であった.また,自分が冷え症であると感じている妊婦の割合は6~7月では67.7%,11月は66.0%で,季節による影響はなかった.4.構造方程式モデリングより,「深部温温度較差」は「冷えの認識」に影響を与えており,「冷えの認識」は「冷えに関連した妊娠に伴う症状」に弱い影響を与えている.さらに「冷えに関連した妊娠に伴う症状」は「不規則な生活」から直接的な影響と,「陰性の食品の摂取」を介した間接的な影響を受けている.
著者
國方 弘子 渡邉 久美
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.1_44-1_53, 2007-03-20 (Released:2011-09-09)
被引用文献数
6 4

本研究は,デイケアに通所中(在宅生活)の69名の統合失調症患者を対象に,変数をグループ化した(人口学的要因,臨床特性,症状の重症さ,能力,自尊感情)概念枠組みを作成し,Quality of lifeを予測するものを2年間の追跡調査を用いて明らかにすることを目的とした.その際,交絡要因としての抗精神病薬1日服用量をコントロールした.結果,1年後と2年後の追跡調査において,自尊感情はQuality of lifeの4領域すべての予測因子であった.Quality of lifeの身体的領域と心理的領域に対する自尊感情の寄与率は,時間が長くなるほど大きくなった.社会的関係と環境領域に対する自尊感情の寄与率は,1年後と2年後の値がほぼ同程度であり,自尊感情のQuality of lifeへの影響は安定していた.
著者
青木 好美 片山 はるみ
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.255-262, 2016 (Released:2017-03-27)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

目的:本研究の目的は,日本語版自傷行為に対する反感の態度尺度(SHAS-J)の信頼性と妥当性を検討することであった.方法:全国の救命救急センターに勤務する看護師764名を対象に無記名自記式質問紙調査を実施し,302名(39.5%)の有効回答を分析対象とした.質問紙は,対象者の基本情報,SHAS-J,看護師の感情労働尺度,共感的コーピング尺度を用いた.分析は,探索的因子分析,確認的因子分析,相関分析を行った.結果:探索的因子分析の結果,SHAS-Jは4因子から構成されていた.4因子は「共感的実践力の低さ」,「ケアの反感」,「積極的理解の欠如」,「権利と責任に関する無知」であった.4因子についてCronbach α係数は0.83~0.54であった.併存妥当性の基準とした共感的コーピング尺度および看護師の感情労働尺度とは有意な相関が認められた.結論:SHAS-Jは,Cronbach α係数により信頼性が概ね確認された.また,共感的コーピング尺度や看護師の感情労働尺度との関連により妥当性が概ね確認された.
著者
大嶺 ふじ子 浜本 いそえ 小渡 清江 宮城 万里子 砂川 洋子 杉下 知子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.64-73, 1999-11-30 (Released:2012-10-29)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

正しい性知識を伝授することと性をより肯定的に捉えられるような動機付けを目的として, 大学生8人がピァ・カウンセラーとなり, 高校生42人に対しロールプレイ等を取り入れたピァ・エデュケーションを3回にわたり実施した. ピァ・エデュケーションの具体的な方法と展開内容および留意点を検討し, その実施前後に高校生の性に関する知識及び意識についての変化と男女差を明らかにするための自記式質問紙調査を行った.ピァ・エデュケーション実施後の感想では,「性についてよく考えられた」,「もっと性のことを知りたい」,「カウンセラーの人たちは話しやすくて, 質問をしやすかったので安心できた」,「3回だけではなくもっと計画してほしい」など否定的な感想は無く好評であった.今回の性知識・性意識の調査結果からも, この時期の特徴が反映されており, 性意識は活発化してきているといえるが, 性知識は不十分であった. 特に, 性知識の面では,男女ともに, 避妊法では「コンドーム」, STDでは,「エイズ」と知識に偏りが大きかった. 性意識の面では, 性の責任性において, 男子は実施後に高い得点を示し, 変化がみられた. また,「望まない妊娠を避けるには」において, 男女とも実施後に「男女が性について本音で話し合える」と答えたものが倍増し, 変化がみられた.このことより, ピァ・エデュケーションは, 生徒が性をより建設的, 肯定的に考えることに役立つ教育方法として, 効果があることが示唆された.
著者
坂井 志織
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.4_55-4_63, 2008-12-20 (Released:2011-08-30)
被引用文献数
7

脳卒中後遺症でしびれを患った人々がどのような体験をしているのか,またその体験にはどのような意味があるのかを,日常生活での体験を記述することで明らかにすることを目的とし,半構成的面接を行い質的記述的に分析した.分析の結果,以下のことが明らかになった.参加者はしびれのため生活動作が不確かなものとなり,加えてからだによって無意識に行われていた生活空間の把握にも困難さがみられた.そしてこのような生活を積み重ねることは,自己を支える基盤を揺るがせる可能性を孕んでいることが示唆された.また,しびれ特有の認識様式として,しびれがあることや動作が以前のようにはできないことをその都度認識させられるという特徴がみられた.さらに,注目すべきことは,「慣れる」というプロセスが当事者の視点から明らかになったことである.それは,動作に応じた工夫を日々繰り返すことで再びからだが覚えていくことであり,からだが自然に覚えていく,つまり身体化されるがゆえに慣れたことを自覚しにくいという特徴がみられた.この身体化により,しびれ自体の症状改善が難しくとも,できない動作が減ることで生活の中で感じていた苦痛が軽減されることが示唆された.
著者
片倉 直子 山本 則子 石垣 和子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.2_80-2_91, 2007-06-20 (Released:2011-09-09)
被引用文献数
5 1

本研究は,統合失調症をもつ者への効果的な訪問看護を,その目的と技術に着目して明らかにした.対象は,統合失調症をもつ利用者を2年以上継続して看護し,その間利用者に入院のなかった経験をもつ7名の訪問看護師,およびこの7名の訪問看護を受けた9名の利用者である.訪問看護師へのインタビューと訪問場面の参加観察を,質的に分析した.効果的な訪問看護では,利用者の地域生活に対する意志を看護師が了解する前後で目的が変化していた.意志を了解する前の段階では,「利用者の意志表出に道を付ける」が目的となり,「利用者の状況を五感でみる」「精神障害者として生きてきた体験の把握」「その人らしい特性の把握」「意図的に日常(ふだん着)の自分を使う」等の看護技術を用いていた.利用者の意志を了解した後は,「利用者に必要な生活能力を育成する」が目的となり,一部上記の技術を継続しながら「生活上の対処能力の把握」「意図的な日常の自分と専門家としての自分を使い分ける」等の技術を用いていた.
著者
吉田 みつ子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.49-59, 1999-03-25 (Released:2012-10-29)
参考文献数
37
被引用文献数
10 7

本研究は、我が国のホスピスにおいて、看護婦が死にゆく患者及びその死にどのように対応しているか、その対応にはどのような「死」観が関与しているか、について明らかにしたものである。1ホスピスに勤務する看護婦14名を対象に、参加観察法と半構成的面接法によってデータを収集した。分析はデータをコード化、カテゴリー化することによって行い、その結果の一部として以下のような看護婦の「死」観と対応を抽出した。[良い看とり] は、看護婦相互の間で共有されていた患者の死の迎え方の理想像を示すものであり、看護婦は〈身体的症状がコントロールされた死の過程/穏やかな死に際〉〈死までの過程を有意義に過ごした死〉〈家族が納得する死〉〈臨終時に家族に見守られた死〉を望ましい死の迎え方だととらえていた。[良い看とり] は、看護実践の指針となっており、患者がそのような死を迎えることが出来るようかかわろうとしていた。また、看護婦が[良い看とり]ととらえたかどうかが彼らが抱く感情にも影響をもたらし、[良い看とり] の場合には肯定的感情を、そうならなかった場合には否定的感情を抱いていた。また看護婦は無意識のうちに患者に対して [良い看とり] となるよう期待していた。
著者
伊東 美奈子 光永 悠彦 井部 俊子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.254-262, 2017 (Released:2017-12-21)
参考文献数
14
被引用文献数
3

目的:既卒採用者の離職の状況が不明であることから,全国的な調査を行い,既卒看護師の採用・離職の特徴を明らかにする.方法:都道府県毎の病院数や病床数によって層化し,無作為抽出された1,200病院の看護部門長を対象に,病院属性と2013年度の採用数および年度内離職者数を尋ねる質問紙調査を行った.既卒と新卒の結果について比較した.結果:246施設の回答を分析した.2013年度に採用を行った施設は240病院であった.既卒者は300床未満,一般病院,療養病床や精神病床を主とする病院で採用され,新卒者は300床以上,特定機能病院や地域医療支援病院,一般病床を主とする病院で採用される傾向があった.また,新卒は非常勤採用が0.8%とほぼ常勤で採用されるのに対し,既卒は24.3%が非常勤採用であった.採用年度内の離職率は新卒7.9%に対し既卒は17.9%と高く,特に100床未満の病院において既卒者が離職しやすい傾向があった.結論:既卒採用者は,新卒採用者より早期離職に至りやすく,定着対策,離職対策を早急に検討する必要がある.
著者
武内 玲 川田 美和 柴田 真志
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.68-73, 2019 (Released:2019-08-28)
参考文献数
18

目的:本研究の目的は,慢性期統合失調症患者の日中の身体活動と睡眠指標の関連を明らかにすることであった.方法:対象者は慢性期統合失調症入院患者27名(男性17名,女性10名,平均年齢58.3 ± 11.6歳)であった.客観的睡眠指標として小型体動計を用いて,総睡眠時間(TST),入眠潜時(SL),中途覚醒時間(WASO)および睡眠効率(SE)を評価した.また,主観的睡眠指標としてピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)を実施した.身体活動指標は歩数を採用し,一軸加速度計を用いて客観的睡眠指標とともに1週間測定した.結果:歩数は,SE(r = .629, p < .01)およびTST(r = .406, p < .05)と有意な正の関連が,またWASO(r = –.615, p < .01)と有意な負の相関関係が認められた.一方,歩数とPSQIスコアに関連は見られなかった.考察:身体活動の多い統合失調症入院患者は客観的睡眠指標が良好であり,身体活動を高めることが睡眠の改善に結びつく可能性が示唆された.