出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.288-289, 2019

表紙の説明:春の野山にすみれの花を探しに行った.山の斜面にすみれとは違う鮮やかなショッキングピンクの花が視界の中に飛び込んできた.「カタクリだ!」思いがけない出会いほどうれしいものはない.カタクリの粉は,現在は食用に用いられることが多いが,昔は滋養薬としても利用されていた.カタクリの開花時期は咲く場所の気候・標高・環境の 違いにより3月から6月までと幅広い.カタクリの群生地に出かけるのも楽しいが,春の野山をハイキングし,思いがけない出会いを楽しんでみては?
著者
藤田 勇三郎 上原 郁恵 森本 泰子 中嶋 真由美 波多野 力 奥田 拓男
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
藥學雜誌 (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.108, no.2, pp.129-135, 1988
被引用文献数
38

Inhibitory effects of caffeoylquinic acids isolated from leaves of Artemisia species and other related compounds on the lipoxygenase dependent peroxidation of linoleic acid were studied by kinetic and electron spin resonance(ESR) measurements. The order of inhibition activity was as follows : 3, 5-dicaffeoylquinic acid (ID<SUB>5</SUB>0=2.0&times;10<SUP>-</SUP>5 M)=rosmarinic acid > geraniin (2.8&times;10<SUP>-</SUP>5 M)>&alpha;-tocopherol (3.7&times;10<SUP>-</SUP>5 M)>chlorogenic acid (7.5&times;10<SUP>-</SUP>5 M)=caffeic acid>ferulic acid (2.5&times;10<SUP>-</SUP>4 M). This order coincided well with that obtained from the measurement of radical scavenging activities of these compounds against 1, 1-diphenyl-2-picryl hydrazyl. The inhibition profile of these compounds on lipid peroxidation in the lipoxygenase system was quite similar to those obtained previously in the biological systems of rat liver mitochondria and microsomes. In the separate ESR measurements in alkaline dimethyl sulfoxide solution, all caffeoyl-quinic acids exhibited relatively stable ESR signals assigned as a radical derived from the one-electron oxidation of dihydroxyphenyl group. From these results, it was concluded that the radical scavenging mechanism is commonly operative in both chemical and biological peroxidation systems.
著者
進藤 直哉 王子田 彰夫
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
MEDCHEM NEWS (ISSN:24328618)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.92-99, 2017-05-01 (Released:2019-07-30)
参考文献数
3

コバレント阻害剤は求電子的反応基で標的タンパク質と共有結合を作り、強力で持続的な薬効を示す。毒性の懸念から従来の創薬では避けられる傾向にあったが、標的選択性の高いコバレント阻害剤(TCI)の開発が近年盛んである。マイケルアクセプターはシステイン残基に対する反応基として汎用されているが、薬剤の構造や時間・濃度に依存してさまざまな非特異反応を起こすことが報告されている。筆者らはTCIの標的特異性の向上を目指して新規反応基を探索し、クロロフルオロアセトアミド(CFA)基がチオールと穏やかに反応することを見出した。CFA基を既知のEGFR阻害剤骨格に導入しSARを検討した結果、承認薬と同等のEGFRT790M阻害活性とin vivo抗腫瘍活性を示す化合物NS-062を見出した。また蛍光ラベル化解析により、CFA誘導体がマイケルアクセプターと比べ極めて高選択的にEGFRと共有結合を形成することを確認した。
著者
小原 拓
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.141, no.4, pp.463-471, 2021-04-01 (Released:2021-04-01)
参考文献数
31

We have been conducting research with the aim of generating evidence for the safety of perinatal drugs. As a result of reviewing the records of inquiries to the Drug Information Office of our hospital, we found a large discrepancy between the description of perinatal drugs in package inserts in Japan and the description of the Pregnancy Risk Category according to the U.S. Food and Drug Administration. In the Japan Environment and Children's Study (JECS), we determined the proportion of drug and supplement use among 97464 pregnant women. We clarified that prescriptions of antihypertensive drugs for pregnant women increased during the second half of pregnancy, while prescriptions of anti-epileptic and anti-anxiety drugs decreased after pregnancy using a claims database. A survey of pharmacists and pharmacy students revealed a lack of awareness of effective folic acid intake to reduce the risk of neural tube defects in infants. The percentage of pre-pregnancy folic acid supplementation among pregnant women participating in the Babies and their Parents' Longitudinal Observation in Suzuki Memorial Hospital on Intrauterine Period (BOSHI) study, the JECS, and the Tohoku Medical Megabank (TMM) Birth and Three-Generation (BirThree) cohort study was 6.3-18.0%. As a result of close examination of the records of inquiries to the Drug Information Office of our hospital, and of cases in which our lactation plan sheet was applied, it was found that there were discrepancies between the information on the drug package insert and the information on Medications & Mother's Milk, etc. in Japan. The results obtained have been clinically applied in daily practice and we are continuing our research while taking measures.
著者
池谷 裕二
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.473, 2015 (Released:2018-08-26)

小山隆太博士は酒に酔うと人柄が一変します.シラフのときでも自身の考えをテキパキと話すタイプですが,アルコールが回ると更に遠慮なく本音を語ります.言うまでもないことですが,とめどもなくクドく,そして,アツいです.そんな彼が昨年の酒席でこぼしていた言葉が「日本薬学会には足を向けて寝られない.私は薬学に育ててもらったようなものだ」です.小山博士が学部学生だった頃から14年間にわたって交流してきた私には,この発言が口からの出まかせでなく,本心からのものであることがよく分かります.それほどまでに日本薬学会を愛する小山博士が,この度,同会の奨励賞を受賞されました.どれほど喜んでおられることか.心より「おめでとう」とお祝い申し上げます.
著者
池田 幸弘
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.56-57, 2016

道修町,難読地名である.不勉強な筆者は薬に関わる仕事に就いてからこの町を「どしょうまち」と呼ぶことを知った.調べてみると,昔は「どうしゅまち」と呼ばれていたのが,訛って「どしょうまち」になったようである.その源は,古くはこのあたりは道修谷と呼ばれていた,北山道修という医師が居て門前に薬屋が集まってきたなど諸説ある.
著者
久下 周佐 関根 僚也 色川 隼人 武田 洸樹
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.147-151, 2022 (Released:2022-02-01)
参考文献数
25

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が発生し,パンデミックを起こしてから2年以上経過したが,いまだその混乱は続き、終息の目途は立たない。一方で、COVID-19の予防や治療を目的とした医薬品の開発および使用が驚異的なスピードで進んでおり,発生後1年以内に既存薬の使用や、mRNAワクチンの開発、中和抗体医薬の開発がなされた。そして2年後の現在、経口治療薬が開発され、実用化されようとしている。本稿では、これらCOVID-19に関する医薬品の開発の状況を振り返り、期待される経口治療薬の開発の経緯、現状と今後について述べる。
著者
五十嵐 中
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.51, no.10, pp.937-941, 2015 (Released:2018-08-26)
参考文献数
7

「日本の医療費(国民医療費)は,平成24年実績で年間39兆円です」…数字が大きすぎて,あまり実感が湧かない.「1人当たりにすると,年間30.8万円です」…今度は小さすぎて,やはり実感が湧かない.「この教室,だいたい150人いますね.1部屋で,年間4,000万から5,000万円ですね.」このあたりの金額を出すと,ようやく「手頃」にイメージできるようになる.年々医療費が増大していくなか,臨床系の学会でも,「〇〇の医療経済」「××の費用対効果」のタイトルを時折目にするようになった.マイナーな分野に陽が当たるようになったのは嬉しいことである.ただ残念なことに,まだまだ誤解されることも多い.このコラムでは,薬剤経済評価・費用対効果評価について,「そもそも何なのか」「どうやって評価するのか」「評価結果をどう使うのか」に分けて紹介していきたい.

1 0 0 0 結膜炎

著者
内尾 英一
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.196-200, 2014

結膜(conjunctiva)は眼表面を覆う粘膜組織で,角膜以外の部分を指す.球結膜(bulbar conjunctiva)と瞼結膜(palpebral conjunctiva),その移行部である結膜円蓋(conjunctival fornix)から成っている.表面は涙液で保護されている重層扁平上皮組織であり,上皮には結膜上皮細胞以外に粘液を分泌する杯細胞がある.上皮下には血管や各種の細胞が豊富に存在する.眼球とは疎に結合し,眼球を保護し滑らかに運動させる機能がある(図1).<br>結膜は眼表面(ocular surface)を形成し,外界に直接接している部位である.そのため感染症やアレルギーなどの炎症を生じやすい特徴があり,臨床所見は様々である.本来動物は海の中で進化していたが,両生類以降陸上で生活をするようになると,眼表面の乾燥を防ぐために涙液を持つようになり,さらに眼瞼も陸上生活に対応して備わった.魚類には眼瞼はない.瞬目(まばたき)をすることにより乾燥を防ぎ,涙液を行き渡らせることができるが,これは進化の結果として獲得したものである.しかし現代の生活では様々な要因で乾燥しがちであり,ドライアイも増加している.<br>結膜炎は結膜の炎症性疾患であるが,原因によりアレルギー性結膜疾患と感染性結膜炎とに大別される.すなわち,非感染性結膜炎と感染性結膜炎である.