著者
塚本 洋三 鶴見 みや古
出版者
公益財団法人 山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類学雑誌 (ISSN:13485032)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.107-112, 2013-03-30 (Released:2015-03-30)
参考文献数
15

The Yamashina Institute of Ornithology owns the 11,982 photograph collection of Kenji Shimomura (1903–1967), the pioneer of wildlife photography in Japan. One of the prints in the collection (ID no.: AVSK_PM_1198, Fig.1a) depicts the stomach contents of Crested Ibis Nipponia nippon. When the computer database of the Shimomura collection was made, the photographer of this print was plausibly thought to be Shimomura, but was uncertain. Later we discovered in some publication that this photo was taken by Jicho Ishizawa (1899–1967), an insect and bird researcher at the then Wildlife Research Laboratory of the Ministry of Agriculture. Because the photo showing stomach contents of the endangered wild Crested Ibis is rarely publicized, we are of the opinion that the accurate identification of the photographer is academically important. Based on the memorandum on the backside of the print, handwriting analysis was made by Shimomura's and Ishizawa's relatives. The implications of the rubber stamps on the backside were also considered. These investigations concluded that the photo in question was almost certainly taken by Ishizawa, who also identified the stomach contents. We hope that this example will alert researchers to the possibility of incorrect citation of the photographer in earlier publications already published, and that, when detected, these be corrected in subsequent citations. Comments on related subjects that arose through the process of identifying the photographer are also given.
著者
藤田 健一郎
出版者
公益財団法人 山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類学雑誌 (ISSN:13485032)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.53-55, 2008-09-20 (Released:2010-09-20)
参考文献数
8

Breeding sites of the Japanese Murrelet Synthliboramphus wumizusume are restricted to some small islands off Japan, but its breeding behavior and postbreeding dispersal are poorly known. On May 2003, an observation of a chick was reported in the south of Boso Peninsula, southeast Japan. On 16 May 2006, I observed two adults and two putative chicks of the Japanese Murrelet, on the coast of Tateyama City at the south end of Boso peninsula. This site is c. 70 km away from the nearest islands where this species is known to breed.
著者
山崎 剛史 亀谷 辰朗
出版者
公益財団法人 山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類学雑誌 (ISSN:13485032)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.286-292, 2022-12-15 (Released:2022-12-15)
参考文献数
18

Japanese names are a useful tool for Japanese speakers to communicate scientifically about birds. However, over 35 years have already passed since the most influential book treating Japanese names for all modern birds (Yamashina 1986) was published. During that time, the classification of birds has undergone major changes. Here we provide a revised list of Japanese names for species of flufftails (Sarothruridae) and rails (Rallidae), which adopts the latest classification system (Gill et al. 2022).
著者
磯田 辰也 田村 力
出版者
公益財団法人 山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類学雑誌 (ISSN:13485032)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.74-77, 2017-03-20 (Released:2019-03-09)
参考文献数
9

2013年2月20日,南極海の南緯65度56分,東経80度39分においてアデリーペンギンPygoscelis adeliaeの白色個体を確認した.この個体は体色を除き通常のアデリーペンギンと同じ体の特徴とサイズを有していた.体色には黒い部分が無く,羽毛はすべて白色で,目は通常の個体よりも色調が薄かった.そして,嘴は茶から紫がかった赤色で,脚は薄いピンク色だった.この観察されたアデリーペンギンの体色異常のタイプはイノライトと考えられる.

1 0 0 0 OA 正誤表

出版者
公益財団法人 山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類学雑誌 (ISSN:13485032)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.36, 2012-09-30 (Released:2015-03-13)
著者
天野 一葉
出版者
公益財団法人 山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類学雑誌 (ISSN:13485032)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.1-7, 2017-08-31 (Released:2019-03-09)
参考文献数
21

The Moustached Laughingthrush Garrulax cineraceus is an alien species in Japan that has been recorded up until now only in southwestern Shikoku. On October 4, 2015, five birds were captured for the first time in Kagawa Prefecture, northeastern Shikoku, indicating that the range of this species in Japan is expanding. In the most-recent checklist (del Hoyo & Collar 2016), G. cineraceus is split into two species: G. cineraceus and G. cinereiceps. The dull dark grey or brownish grey on the crown, the chestnut or yellowish brown (antique brown) supercilium and ear-coverts, and either no or just a narrow blackish postocular eyestripe indicated these five birds to be G. cinereiceps, which occurs naturally in central and southern China. Measures to combat this alien species are needed urgently to prevent G. cinereiceps becoming established outside of Shikoku and spreading over the rest of Japan.
著者
ブラジル マークA シャーガリン イェフゲニ
出版者
公益財団法人 山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.162-199, 2002

オオハクチョウ(<i>Cygnus cygnus</i>)の生息域の大半は,ロシアおよびその周辺の旧ソ連邦共和国の境界内に含まれている。従来,本種に関する研究の多くは,ヨーロッパと日本で行なわれてきたが,1980年以降,ロシアでもかなりの量の研究が行なわれるようになった。これらの研究の大半はロシア国内の論文誌,それも地方の論文誌で発表されることが多いため,ロシア以外の研究者がこれらの文献に接したり,入手したりする機会は非常に限られている。このたび私たちは,本種を対象とした,ロシア国内の4地域における文献を整理,検討した。<br>そして,これら4地域:1)ロシア西部(ウラル山脈の西側)2)シベリア西部(ウラル山脈東側からエニセイ川まで)3)シベリア中東部(エニセイ川からレナ川まで)4)ロシア極東部(レナ川からベーリング海まで)における本種の個体数,繁殖生態,越冬地の範囲,渡り,換羽行動についても,おおよその全体像を求めてみた。この4地域の面積はいずれも,ヨーロッパ個体群が占有する面積とほぼ同じ,あるいははるかに上回っているかである。また,現在,個体群の大きさに関する正確な情報が入手できるのは,この4地域のみである。なお,本号ではロシア西部とシベリア西部,次号ではシベリア中東部とロシア極東部を報告する。<br>ロシアのオオハクチョウ個体群は大きく,おおむね安定している。また,北に向かって生息域を拡大しつつあると推定される。これらの個体群は,生息環境の撹乱や悪化,生息地の消失,狩猟などさまざまな人為的影響に悩まされているが,場所によっては,先に述べたような否定的影響が減少して,繁殖地を取り戻しつつあるところもある。ロシアのオオハクチョウは,北西部のコラ半島から東部のチュコト半島のアナディル渓谷とカムチャツカにかけて分布している。繁殖域の北限は通常,北緯67~68度付近であるが,場合によっては北緯70度まで,まれに北緯72度まで北上して繁殖した例があり,繁殖域の北限が徐々に北上しつつあるという状況証拠にもなっている。ヨーロッパロシア西部におけるオオハクチョウの繁殖域の南限は北緯62度であるが,サハリンやカムチャツカでは北緯50~55度まで南下する。西部のオオハクチョウは北緯47~50度付近まで南下して越冬するが,最も南の越冬地は日本にある。これは気候的な理由によるもので,日本では北緯35~40度にかけての低緯度地域に多数の個体が越冬しているのが観察される。ロシアではオオハクチョウは,タイガ北部と森林ツンドラおよびツンドラの一部で繁殖する鳥である。オオハクチョウの個体数と生息域は,20世紀半ばに生じた人為的影響により,一部の地域,特に西部で,19世紀から20世紀初頭のレベルにまで減少した。しかしながら,20世紀後半になるとオオハクチョウはかつての分布域を取り戻し始めた。<br>推定個体数は同一地域でも報告によって大幅に異なる.例えば,ロシア西部とシベリア西部の地域での個体数は1万羽程度から10万羽以上と推定されている(Ravkin 1991, Rees <i>et al</i>.1997)。このため,全個体数を推定することは事実上不可能である。最大のオオハクチョウ生息地であるこの地には,かなりの研究の余地がある。カムチャツカ,日本,朝鮮半島および中国における越冬個体数から推定すると,ロシア極東部には約6万羽が生息していると考えられる。世界のオオハクチョウの大多数はロシア国内で繁殖を行なうが,そのほとんどはロシア国境を越え,バルト海,カスピ海,日本海周辺などの近隣の国々で越冬する。渡りの時期は地方によって異なるが,少なくとも秋の渡りは,急激な気温の降下,特に日中の気温が5&deg;Cから0&deg;Cに降下することが引き金になっているらしい。ロシア各地で得られた記録からは,春と秋の渡りにいくつかの波があることがわかる。春の渡りでは,前半はつがいや家族が優勢で,後半は非繁殖個体が多くなる。秋には非繁殖個体のほうが繁殖個体より早めに渡り始める。これは,初期の渡りの群れには幼鳥が少なく,後半になるとつがいや家族,ヒナ連れの群れが多くなることからもわかる。生息域の西側では,オオハクチョウが,コブハクチョウ(<i>Cygnus olor</i>)やコハクチョウ(<i>Cygnus columbianus bewickii</i>)と一緒に渡りをしているのが観察されることもある。また東側では,コハクチョウと同じ中継地点を利用することが多い。<br>現在のロシア国境内におけるオオハクチョウ繁殖地は広く,在住のハクチョウ研究者は少ない。そのうえ,交通の便の悪い地域が大半という条件下では,最低限の基礎情報すら得られない地域があっても驚くに値しない。それにもかかわらずここ数十年の間にロシア国内で多数の論文が発表されていることは,素晴らしいことである。
著者
加藤 克 Andrew J. Davis
出版者
公益財団法人 山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類学雑誌 (ISSN:13485032)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.29-42, 2019-06-30 (Released:2019-11-20)
参考文献数
28
被引用文献数
1 1

日本に西洋生物学が導入された草創期に,トーマス・ブラキストンによって北海道で採集された2点のコジュリンEmberiza yessoensisの標本について,採集者のノートと標本カタログの解析を通じて,(1)失われたと考えられていた標本の再発見,(2)詳細な採集情報が欠落した標本の情報復元を行い,タイプ標本の採集地が函館であることを示した。これらの標本はいずれも種の記載に用いられた標本であり,標本の再発見と採集情報の復元は,日本産コジュリンの分類学にとって重要な情報を提示するものであるとともに,種の分布の歴史的検討や過去の気候に関する情報を提供する可能性を示した。
著者
奥田 幸江 奥田 幸男
出版者
公益財団法人 山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類学雑誌 (ISSN:13485032)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.79-93, 2019-12-15 (Released:2019-12-15)
参考文献数
49

To study the moult of remiges and rectrices of the White-cheeked Starling Spodiopsar cineraceus, we collected 10,292 of these feathers at their communal roost in Kindai University Higashiosaka Campus, Higashiosaka City, Osaka Prefecture, central Japan, between 2008 and 2009. Feathers were identified as primaries (P1 to P10), secondaries (S1 to S6), tertials (Te1 to Te3) and rectrices (R1 to R6), and as adult feathers or juvenile ones. The birds had begun moulting before we started sampling in 2008, while we ceased sampling before they completed moulting in 2009, as they were driven away from the roost. We collected their feathers between early June and the end of September, while they used the roost from late May through November. They started moulting from the innermost primary (P1) to outer ones, from the outermost secondary (S1) to the inner ones, and from the center tertials (Te2) to the inner (Te3) and then the outer ones (Te1). As rectrices were replaced from the central (R1) but within a short period of time, the sequence of moult of rectrices was unclear. The moult sequences were the same for adult feathers and juvenile ones. Juvenile primary feathers were collected later in the season than adult ones. The inner primaries of adults, and the inner secondaries of both adult and juveniles, were relatively scarce. These observations indicate that adults shed their inner primaries before they formed the summer roost, and they suspended the moulting of the inner secondaries in September, presumably because of pair formation in autumn. The collection of shed feathers under the roosting area could be simple and useful technique to study moult.
著者
山階 芳麿 真野 徹
出版者
公益財団法人 山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.147-152_3, 1981
被引用文献数
22

沖縄島北部の通称ヤンバルと呼ばれている丘陵地帯に,地上を歩くクイナの1種が居る事は少し前から知られていたが,山階鳥類研究所の真野徹外数氏が環境庁の鳥類標識調査事業の一環として国頭郡奥間において,1981年6月18日から7月7日にかけて調査を実施し,そのクイナの成鳥及び幼鳥各1羽の捕獲に成功した。これら2羽については,各部を詳細に調べた後,足環をつけて捕獲した元の場所に放した。又これより前にフエンチヂ岳附近の林道脇にて拾得された1個体を名獲市の友利哲夫氏が標本として保存していたが,これも今回捕獲したものと同種である事がわかった。<br>これら3個体は羽色が<i>Rallus torquatus</i>及びその亜種に似ているが,嘴と脚が赤色でやや大きく,それに比例して翼と尾が長くなく,又最外側の初列風切羽はそれ以外の初列風切羽より短いなどの点が異なるので,今迄に発見された事のない新種のクイナと断定し,ここに新種として記載する。
著者
山内 健生 尾崎 清明
出版者
公益財団法人 山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類学雑誌 (ISSN:13485032)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.97-99, 2007
被引用文献数
2

2005年8月21-22日に沖縄島国頭村西銘岳で2雌の <i>Ornithoica exilis</i>(ハエ目:シラミバエ科)を2個体のヤンバルクイナ <i>Gallirallus okinawae</i> 幼鳥の体表から採集した。宿主のヤンバルクイナはいずれも良好な健康状態であった。今回の記録は沖縄島における <i>O. exilis</i> の初記録であり,ヤンバルクイナは <i>O. exilis</i> の新宿主記録となる。
著者
尾崎 清明 馬場 孝雄 米田 重玄 金城 道男 渡久地 豊 原戸 鉄二郎
出版者
公益財団法人 山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.136-144, 2002
被引用文献数
14

沖縄本島北部のやんばる地域において,ヤンバルクイナの分布を,音声プレイバック法を用いて調査し,結果を過去の調査結果と比較した。その結果1996~1999年は,調査した95メッシュのうち49メッシュでヤンバルクイナの生息が確認され,確認できたメッシュの割合は51.6%であった。2000~2001年にヤンバルクイナの生息が確認されたのは,調査した255メッシュのうち116メッシュでその割合は45.5%であった。生息域の南限が,1985~1986年からの15年間に約10km北上し,生息域の面積は約25%減少したものと考えられた。一方沖縄県によってマングースの駆除が実施されたが,捕獲された地域はヤンバルクイナが見られなくなった地域と一致することがわかった。このことから,ヤンバルクイナの生息域の減少には,マングースが関与していることが強く示唆された。
著者
小高 信彦 澤志 泰正
出版者
公益財団法人 山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類学雑誌 (ISSN:13485032)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.134-143, 2004
被引用文献数
8

1998年6月から2003年6月までの5年間に,ヤンバルクイナ<i>Gallirallus okinawae</i>の死亡個体(22件)と緊急保護個体(1件)の情報が集められた。死亡個体の情報22件のうち16件(72.7%)は自動車による交通事故が直接の死亡要因であると推察され,交通事故はヤンバルクイナの重大な死亡要因であることが明らかとなった。交通事故による死亡個体(16件)と緊急保護個体(1件)を合わせた計17件について,その発生場所と時期の特徴について分析を行った。発生場所については,国頭村内を通る県道70号線と県道2号線にヤンバルクイナの交通事故が頻繁に発生する地域がそれぞれ1ヵ所ずつ認められた。両地域は共に,ヤンバルクイナの生息地内を通る路線の中でも,自動車の走行速度が高くなると推察される場所であった。無飛翔性のヤンバルクイナにとって,生息地内を通過する車両の速度が高くなることは,直接的に交通事故件数の増加につながる。交通事故の発生時期については顕著な季節変化が見られ,5月と6月に11件(64.7%)の交通事故が集中して発生していた。この時期はヤンバルクイナの繁殖期と重なっている。
著者
元 炳〓 禹 漢貞 田 美子 咸 奎晃
出版者
公益財団法人 山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.4, no.6, pp.445-468, 1966
被引用文献数
1

本調査は1965年6月上旬から7月下旬まで京畿道光陵試験林と附近の開けた土地で繁殖した次の10種(及び亜種)チゴモズ,ササゴイ,ホオアカ,ホオジロハクセキレイ,コウライウグイス,ハイタカ,エゾヒヨドリ,カラフトミヤマカケス,アカハラタカ及びコマオナガに対する育雛期の食習性を調査したものである。ハイタカ,エゾヒヨドリ,カラフトミヤマカケス,コマオナガは留鳥であり,残りの6種は韓国では普通見かける夏鳥である。<br>調査はCollar methodに依りcoil線を利用して,チゴモズに対しては90分間,ササゴイは100-120分間,ホオアカ,ホオジロハクセキレイ,コウライウグイス,エゾヒヨドリ,カラフトミヤマカケス及びコマオナガは50-60分間,各々適用した。調査した雛の食餌物の内訳は次の通りである。<br><b>1.チゴモズ<i>Lanius tigrinus</i></b><br>全食餌物は動物質のみでInsect Larvae form 41.5%, Adult Insects 49.4%, Spiders 7.69%,蛙1.53%の比率である。Insect Larvae 41.5%中<i>Gampsocleis ussuriensis</i>が33.8%で大部分を占めておりAdult Insectsでは<i>Platypleura kaempferi</i>が35.4%に及ぶ,Spidersは<i>Clubiona jucunda</i>1種のみ7.69%が見出された。<br><b>2.ササゴイ<i>Butorides striatus amuresis</i></b><br>食餌物は動物質のみで魚類48.57%, Ranidae 45.71%,其他5.71%である。魚類48.57%では<i>Zacco platypus</i> 20%, <i>Hemibarbus logirostris</i> 14.28%であり,両棲類では<i>Rana n. nigromaculata</i> 22.8%である。<br><b>3.ホオアカ<i>Emberiza f. fucata</i></b><br>食餌物は動物質のみでInsect Larvae 63.3%, Adult Insects 25.64%,其他12.78%である。<i>Pieris rapae</i>の幼虫は孵化直後から巣立ちまで48.1%を占めており農業上害虫駆除の功は大きい。<br><b>4.ホオジロハクセキレイ<i>Motacilla alba leucopsis</i></b><br>食餌物は動物質でInsect Larvae 30.5%, Adult Insects 55.4%, Spiders 13.9%である。Insect LarvaeではOdonata indet. 22.2%が最も多く,Adult InsectsではSyrphidae indet. 16.6%, Spidersは<i>Lycosa</i> sp. 12.1%, <i>Lycosa astrigera</i> 2.8%の<i>Lycosa</i>属のみ見出された。<br><b>5.コウライウグイス<i>Oriolus chinensis diffusus</i></b><br>食餌物はやはり動物質のみでInsect Larvae 62.36%, Adult Insects 20.17%,其他動物質が17.42%である。山林害虫である松毛虫<i>Dendrolimus spectabilis</i>を孵化直後から巣立ちまで全食餌物の45.08%を与えているのは注目すべき功である。<br><b>6.ハイタカ<i>Accipiter nisus nisosimilis</i></b><br>食餌物は動物質のみで小鳥類87.5%とRanidae 12.05%である。山林鳥類であるParidaeと<i>Paradoxornis webbiana fulvicauda</i>を捕食したし,以外に<i>Rana n. nigromaculata</i> 12.50%がある。<br><b>7.エゾヒヨドリ<i>Microscelis amaurotis hensoni</i></b><br>食餌物はAdult Insects 79.65%, Mollusca 12.15%, Vegetable matters 4.05%, Insect Larvae 2.70%, Araneina 1.35%の比率でInsect Adultsが全食餌物の大部分を占めておる。Adult InsectsではHomopteraが43.35%である。<br><b>8.カラフトミヤマカケス<i>Garrulus glandarius bradtii</i></b><br>育雛時の食餌物は動物質のみでInsect Larvae 38.80%, Adult Insects 28.90%, Araneina 24.87%, Adult Amphibia 15.49%である。孵化直後から巣立ちまで松毛虫35.08%, Araneina 24.87%, <i>Clubiona jucunda</i>だけが6.43%を占めておる。全食餌物のうち73.48%は山林害虫である。<br><b>9.アカハラタカ<i>Accipiter solo&euml;nsis</i></b><br>全育雛期間を<i>Rana n. nigromaculata</i> 89.08%で育ち多少の<i>Platypleura kaempferi</i> 8.26%がある。<br><b>10.コマオナガ<i>Cyanopica cyanus koreensis</i></b><br>食餌物はInsect Larvae 6.11%, Adult Insects 60.55%, <i>Hyla arborea japonica</i> 12.22%, Vegetable matters 1.11%である。<i>Gampsocleis ussuriensis</i> 23.39%, <i>Platypleura kaempferi</i> 15.55%及び<i>Hyla arborea japonica</i> 12.22%は全育雛期間に亙って与えている嗜好食餌である。
著者
山階 芳麿
出版者
公益財団法人 山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.43-57, 1978

本文は文献表にかかげたソ連邦,韓国,中華人民共和国の新しい文献により,日本に多く見られる3種のツル,タンチョウ,マナヅル,ナベヅルの大陸に於ける現状を解説した。<br>1.タンチョウ<i>Grus japonensis</i><br>大陸における蕃殖地はソ連邦ではアムール川中流,ウスリー川中流,ハンカ湖東岸にあり,この3ヶ所に蕃殖期に見られるタンチョウの総数は約80羽であるという。又満州の松花江の沿岸にも数ヶ所の蕃殖地があるが,その数は多からず,正確な数は報じられていない。これ等のタンチョウは渡り鳥で,約半数は韓国に,残りの半数は中国の東部に越冬するようである。<br>2.マナヅル<i>Grus vipio</i><br>マナヅルの蕃殖が近年確められたところは,沿海州の中部&bull;アムール川中流の湿原及び満州西北部の札蘭屯附近である。しかしそこに蕃殖する数は越冬地に来る数より遙かに少ないので,他に蕃殖地があると思われる。そしてソ連邦及び中国の鳥学者の一致した推測では,バイカル湖東岸附近,蒙古のKerulen川及びOnon川流域であろうという。上記のマナヅルの全部は渡り鳥で,約2700羽が先ず朝鮮の中部,特に漢江下流に来る。そしてその大部は朝鮮の中部の西岸に止まるが,一部は日本の荒崎に来る。近年荒崎に来るマナヅルの数が急激に増加しているのは,朝鮮に於けるマナヅルの越冬地である西海岸の干潟が,干拓によって狭められたためであるらしい。<br>3.ナベヅル<i>Grus monacha</i><br>ナベヅルの蕃殖地は,ウスリー川の右岸の中国領内で少数蕃殖するかも知れないが,それ以外は全部ソ連邦領内である。それはエニセイ川の支流のツングスカ川流域から,Lena川の支流,ことにViljni川流域,Olekno-charekoe高原等で,一部はアムール川中流及びウスリー川中流にも蕃殖する。蕃殖区域は東西2000km.,南北1500kmに及ぶ。そこで蕃殖する約2800羽のナベツルは満洲及び沿海州を通って日本の荒崎等へ来て越冬するが,中国及び朝鮮では極めて稀にしか観察&bull;採集されていない。そこで,どこを通って飛んで来るかという事が今後の研究問題である。又このようにナベヅルの殆んど全部が日本へ来て冬を越す事がわかったので,ナベヅルの保存については日本の責任が重大である事が再認識されねばならない。
著者
鶴見 みや古 園部 浩一郎 山道 弘美 塚本 洋三
出版者
公益財団法人 山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類学雑誌 (ISSN:13485032)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.136-182, 2014-03-20 (Released:2016-03-25)
参考文献数
5
被引用文献数
1 2

Dr. Yoshimaro Yamashina (1900–1989) was a Japanese ornithologist and the founder of the Yamashina Institute for Ornithology. His two-volume “A Natural History of Japanese Birds”, published in 1934 and 1941, was an important contribution that had a major influence on the development of Japanese ornithology. One characteristic of the book is the use of figures printed from wood engravings. Indeed, this is thought to be the only Japanese bird book that includes figures made in this way. The Institute has been working on registration and preservation of the old unattended materials. The project revealed materials, such as original drawings, wood blocks and autographed manuscripts that Dr. Yamashina had used in preparing the handbook. A total of 527 related materials were registered, consisting of 51 autographed manuscripts, 448 original drawings, wood blocks, etc., and 28 miscellaneous items such as letters and envelopes. It was evident that Dr. Yamashina had shown a meticulous attention to detail in the preparation of his handbook. Furthermore, he had kept working on writing with a clear intention of publishing a third volume. The materials for the published and unpublished handbooks are important for studying the history of the development of Japanese ornithology, and they are also valuable as a means of showing that Japan at that time had a culture capable of producing such a book. Most of these materials are owned by the Institute.
著者
正富 宏之 百瀬 邦和
出版者
公益財団法人 山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.265-279, 1989
被引用文献数
1

1.1989年4月28日から5月2日にかけて,北海道東部の十勝,釧路,根室および網走の各管内で,セスナ機と一部にヘリコプターを用いて,タンチョウ<i>Grus japonensis</i>の巣の分布と繁殖状況を空から調査した。<br>2.延べ飛行距離は約3,000km,延べ飛行時間は22時間48分で,上記調査期間の前後に,地上からの調査と聞き取り調査も併せて行い,空中調査を補完する資料を収集した。<br>3.十勝地方では8巣(全体の8.2%),釧路地方で52巣(53.1%),根室地方で38巣(38.8%),合計で1回の調査ではこれまでの最高の98巣(内3巣は地点未確認)を見つけたが,網走地方では個体&bull;巣とも発見できなかった。<br>4.巣の分布状況はこれまでと基本的に変わりなかったが,新たな地点に営巣した例が各管内で若干みられた。同時に,開発により営巣の妨害されたと思われる箇所や環境条件の思わしくないところでの営巣も見受けられた。<br>5.最も接近した2巣の間隔を地形図上で測定したところ最短で400m,最長で17,100mあり,平均では3,101mであった。また,釧路湿原では湿原周辺部と中央部では巣の密度が前者で明らかに高かった。<br>6.空中調査時に繁殖活動をしていた番い(n=93)のうち,確実に雛連れのものは1例のみで,他はすべて就巣行動を示していた。<br>7.個体群の中の繁殖個体の割合は約70%と見積られたが,推定生息個体数283羽は越冬個体数のわずか63-68%でしかなかった。南千島へ移動するほかにどこで越夏する個体が多いのか,依然としてはっきりしない。
著者
久井 貴世
出版者
公益財団法人 山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類学雑誌 (ISSN:13485032)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.89-123, 2019

<p>It is widely recognized that the similarities in appearance between the Crane, particularly Red-crowned Crane <i>Grus japonensis</i>, and the Oriental Stork <i>Ciconia boyciana</i>, has previously led to confusion as to their accurate identification. However, the actual situation regarding this confusion has not been studied, and it is unclear how much knowledge people in the past had about both species or whether they were able to tell the two species apart. This paper seeks to clarify the actual situation around Crane and Oriental Stork identification, drawing extensively upon natural historical materials among historical documents of the Edo period. Examination of these documents revealed that the morphology and ecology of both species were accurately understood, and that the recorded information is also accurate even if viewed in the modern period. The fact that these two birds belong to different species is recognized and elaborated due to their differences in medicinal use and food processing, for instance. Natural historical documents from the Edo period indicate the Crane and Oriental Stork were correctly identified as different species, and that the possibility of them being confused was low.</p>
著者
蛯名 純一 三上 かつら 仲村 昇
出版者
公益財団法人 山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類学雑誌 (ISSN:13485032)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.43-47, 2015

<p>We investigated the structure and materials of two nests of the Common Crossbill <i>Loxia curvirostra</i> collected in Shimokita Peninsula, Aomori Prefecture, Japan. The nest bowl was constructed of pine twigs with bark, shredded bark, wood-chips, other twigs, chemical fiber yarns, staple fibers, grasses, pine needles, feathers, rhizomorphs, animal hairs and fishing line. These materials were utilized in different manner in the exterior and interior nest bowl. Pine twigs with bark were used only for the most exterior portion, whereas the middle and interior parts consisted mainly of shredded bark of <i>Cryptomeria japonica</i>. Harder objects, such as twigs, wood chips and flexible fishing line, used for the middle part, served as a framework to produce a space between fibers and strings, creating a spongy layer of air. The area around the interior nest bowl was composed of thinner bark strings than the middle and outer nest bowl. Chemical fiber yarn, feathers and animal hairs were also found around the interior bowl.</p>