著者
荒田 明香
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.98-100, 2017-09-25 (Released:2018-09-25)
参考文献数
5
著者
小川 藍 霍野 晋吉
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.81-86, 2015-06-20 (Released:2016-06-20)
参考文献数
10

神経症状を示す3頭のウサギに対し,血液学的検査やX線検査,超音波検査,エンセファリトゾーン抗体検査,神経学的検査等を行い,神経疾患が強く疑われた。これらの症例に対し,MRI検査あるいはCT検査を実施し,臨床症状や治療経過を含めて,内耳/中耳炎,水頭症,脊髄軟化症と診断された。ウサギの神経疾患において,MRI検査やCT検査は犬や猫と同様に有用な検査の一つと思われた。
著者
古川 敬之 圓尾 拓也 杉浦 久裕 信田 卓男 塚田 祐介 鈴木 学 穴澤 哲也 吉原 啓太 前田 菜穂子 林 計道 福田 真平 細川 昭雄
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.121-125, 2012

グレート・ピレニーズ,去勢雄,6歳齢が左側鼻腔内からの出血を主訴に来院した。頭部単純X線検査にて左側鼻腔内の不透過性亢進を認めたことから,第1病日に頭部CT 検査および生検を行った。病理組織学的検査結果は骨肉腫であった。 進行度はWHO のTNM分類に基づき,T1N0M0と診断した。第24 病日に鼻腔内骨肉腫の減量手術を行った後,第29病日より高エネルギー放射線治療装置による放射線療法を36Gy/6 回/3週にて行った。第416病日,腐骨となった鼻骨片除去を行い,同時に鼻腔内粘膜の生検を行ったところ,骨肉腫の再発が認められた。第969病日,肺腫瘤および脾臓腫瘤を認め,第1012病日自宅にて死亡した。鼻腔内骨肉腫の犬に対して,減量手術および術後小分割放射線療法を行い,死亡までの2年9カ月良好な経過を得ることができた。
著者
堀 泰智 上地 正実 小儀 昇
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.99-103, 2005 (Released:2007-11-13)
参考文献数
11

12歳齢の雑種犬において顔面浮腫,腹囲膨満がみられた。血液生化学検査では低蛋白血症,低アルブミン血症がみられ,単純X線検査では腹水,胸水が確認された。腹部超音波検査では肝臓辺縁の鈍化,胆管拡張,膵臓の腫大,十二指腸の肥厚が認められたことから慢性膵炎が疑われた。症例は予後不良と判断されたため安楽死とした。病理解剖検査ならびに病理組織学的検査の結果,胆嚢炎,慢性膵炎,リンパ球形質細胞性腸炎と診断された。膵臓の腫脹,辺縁鈍化がみられた本例では,慢性膵炎の鑑別診断に腹部超音波検査が有用であった。
著者
大竹 修
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.74-78, 2016-06-15 (Released:2017-06-25)
参考文献数
9
著者
古川 修治 永島 由紀子 星 克一郎 平尾 秀博 田中 綾 丸尾 幸嗣 山根 義久
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.121-128, 2001 (Released:2007-05-29)
参考文献数
26

犬に対する有効なドパミンの投与方法を確立するため、ドパミンが循環動態に及ぼす影響を検討した。各投与量(3、10、20μg/kg/min)のドパミンを麻酔下の健常雑種犬に持続点滴投与し、カラードマイクロソフェア法による各種臓器血流量の測定を行った。その結果、ドパミンの効果は、特異的ドパミン受容体やα、βアドレナリン受容体への作用以外に、生体の血流量調節機能にも影響をうけることが示唆された。脳では各受容体への作用が弱く、自己調節機能によって血流量が維持されていると考えられた。心臓血流量は心拍出量に対応した変化を示した。ドパミンが高用量投与になるほど、心拍出量と心拍数の増加が認められたことから、心臓に対する負荷の増大を考慮する必要があった。消化管(胃や腸)における血流量の変化からは、ドパミンの効果で増加した血液が、時間経過とともに、要求部位へ移動することが示唆された。ドパミンが高用量投与になるほど、各種臓器にαアドレナリン受容体刺激作用による影響が認められた。しかし、本実験では、10μg/kg/min投与群で、心臓と腎臓の十分な血流量増加が認められたことから、犬に対するドパミンの適応範囲拡大が示唆された。
著者
酒井 秀夫 澤本 吉貴 酒井 聖花 阿野 仁志
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.180-184, 2015-12-25 (Released:2016-12-25)
参考文献数
11

1頭は歯肉出血,1頭は排便障害を主訴に来院した2頭の未去勢雄に停留精巣,雌性化,血中エストラジオール濃度増加を認めた。病理組織検査でセルトリ細胞腫と診断された。症例1は汎血球減少症と骨髄重度低形成を認めた。炭酸リチウム,ダルベポエチン, 組換え人顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF),蛋白同化ステロイドによる治療に対して無効で,トロンボポエチン受容体作動薬のロミプロスチムを投与したところ,血球減少症の改善が認められ,骨髄造血の回復も確認された。症例2は血小板減少症と軽度の貧血がみられ,骨髄は正~過形成髄で巨核球系細胞は低形成であった。その後好中球減少症も認められたため,ロミプロスチムやG-CSFを投与したところ血球減少は改善し,骨髄では巨核球の回復も確認した。ロミプロスチムは犬のセルトリ細胞腫に起因する骨髄抑制に対し有効な治療となることが示唆された。
著者
永田 矩之 湯木 正史
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.101-104, 2013-09-20 (Released:2016-01-26)
参考文献数
13

2カ月齢の未去勢雄の雑種猫が跛行を主訴に来院した。X線検査で右大腿骨遠位および右脛骨近位の骨折を認め,骨のX線透過性は亢進していた。血液検査ではイオン化カルシウムの低下および上皮小体ホルモンの著しい上昇を認めた。食餌内容は鶏肉中心とのことだった。治療は外固定,運動制限および食餌療法を行い,速やかな改善が認められた。臨床症状,X線検査所見,イオン化カルシウムの低下と上皮小体ホルモンの上昇,食餌内容および食餌の改善による速やかな回復という点から本症例を栄養性二次性上皮小体機能亢進症と診断した。
著者
Masahiko TAKENAKA Kazuaki TAKASHIMA Hajimu KURUMATANI Nobutaka IDA Reeko SATO Yoshihisa YAMANE
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.131-139, 2011-12-31 (Released:2012-12-18)
参考文献数
30

Objective : Since the sensitivity to prostacyclin differs widely depending on the animal species, it is essential to investigate the dose setting from the safety point of view before using beraprost (BPS) in diseased cats.Design : One week multiple administration toxicity study of BPS (10, 30, 70, 100 μg/kg, twice a day) compared with vehicle as control.Procedure : BPS group (n=6) at 10, 30, 70 and 100 μg/kg and vehicle group (n=5) were administered to healthy cats twice a day for 7 days. Both in BPS and vehicle groups, cessation period of the drug was provided 2 weeks between each doses of BPS. In addition hemodynamic parameters were also noted at 0.5 hour before initial administration on the first day and at 1 hour after final administration on the 7th day of each dose of BPS and vehicle.Results : Though BPS from 30 μg/kg upward transiently and dose-dependently increased the heart rate but had no influence on the blood pressure. Compared with the vehicle group, serum creatinine slightly but significantly decreased at 70 and 100 μg/kg and this decrease was also significant against the pre-administration value at the same dose. The influence of BPS on the blood parameters was nil or negligible, if any. Diarrhea were sporadically noted at 70 μg/kg, and mild and transient vomiting and sedation occurred at 100 μg/kg. However, each symptom soonerly disappeared without treatment.Conclusion : The pharmacological action and types of adverse effects of BPS in the cats were almost similar to those observed in other animals and the repeated oral administration of BPS can be safely conducted in cats at least up to 30 μg/kg twice a day.
著者
毛利 崇 高島 一昭 山根 義久 関口 麻衣子 岩崎 利郎
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.131-134, 2006

9カ月齢の雌のスフィンクスが全身性のそう痒を伴った丘疹を主訴として来院し,皮膚生検の結果色素性蕁麻疹と診断した。初期には抗ヒスタミン剤とプレドニゾロンを用いて治療し,維持にシクロスポリンを用いて良好に経過した。シクロスポリンの投与量は症状に応じて減量し,第417病日に完全に投薬を中止した。その後も再発もなく第466病日現在良好に維持している。
著者
深瀬 徹
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.125-129, 2006

蚊の吸血の防止法を確立するための基礎的検討として,ヘアレスラット(HWY/Slc,雄,4週齢)24個体を1群6個体の4群に分け,無処置対照群,ペルメトリン100mg/kgプアオン投与群,フィプロニル7mg/kgスポットオン投与群,イミダクロプリド10mg/kgスポットオン投与群とし,それぞれの投薬を行った。その後,各ラットを1個体ずつケージに収容し,そのケージを主にアカイエカが大量に発生している環境に設置して30分間にわたり蚊の飛来と吸血の状況を観察した結果,無処置対照群とフィプロニル投与群,イミダクロプリド投与群のラットは多数の蚊による吸血を受けたが,ペルメトリン投与群のラットから吸血を行った蚊の数は有意(p<0.05)に少ないことが確認された。次いで,ラットにおいて効果が認められたペルメトリンを同一用量でプアオン投与した犬と猫を同一環境に係留したところ,蚊の吸血を防止することが可能であった。
著者
今本 成樹 岩崎 隆 三好 紀彰 三好 喜久雄 増田 国充 二本松 昭宏 渡辺 修一郎 山下 洋平 射場 満 今本 三香子 難波 信一 吉田 留理子 相馬 武久
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.96-102, 2012-10-20 (Released:2013-10-10)
参考文献数
14

一般病院に来院した犬1,104 頭,実験用ビーグル犬74 頭,2 つの繁殖場の犬120 頭の3 群に分け,Heat extract enzyme-linked immunosorbent assay(HE-ELISA)およびマイクロプレート凝集反応(MA)を用いて,抗Brucella canis (B.canis)抗体の保有状況の調査を実施した。一般病院群における検査においては,6 頭(0.54%)が抗B.canis 抗体陽性であり,1,073 頭(97.2%)は抗体保有が確認されなかった。実験用ビーグル群とカイ2乗検定を用いて比較すると,p-value < 0.0001 となった。 抗体陽性犬の6 頭のうち4 頭が繁殖場から引き取られた犬であった。この6 頭全てにおいて臨床症状は確認されなかった。一方,繁殖場の犬においては,26 頭(21.7%)が抗B.canis 抗体陽性と判定され,流産や精巣炎といったブルセラ症を疑わせる臨床症状を示す犬は抗体陽性犬のうち3 頭に過ぎなかった。 B.canis 感染を診断するにあたり,感染してからの期間,治療歴,発情,検査方法により診断結果に差が生じることや, B.canis 感染犬が必ずしも臨床症状を示すわけではないことは,既に知られている。今回の結果でも,抗体陽性犬の全てが,臨床症状を示したわけではない。そのため,B.canis 感染の検査においては,定期的・複数回の臨床症状の観察やB.canis 抗体検査を実施することが望ましい。B.canis 感染の蔓延を防ぐための犬のブルセラ症の監視・管理方法については,一般病院においては,感染症例に遭遇することは今回の結果からも非常に少ないと考えられるので,繁殖場をはじめとした集団飼育施設における管理について,今後さらなる対応を検討する必要があると考えられる。
著者
伊藤 直之 村岡 登 金井 一享 中尾 るり子 堀 泰智 星 史雄 樋口 誠一
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 = Journal of Animal Clinical Research Foundation (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.19-23, 2008-03-20

一般家庭で飼育されている犬190頭および猫89頭から糞便を採取し,市販のELISA(enzyme-linked immunosorbent assay)キットを用いてクリプトスポリジウム抗原を検出した。クリプトスポリジウム抗原は,犬では6.3%(12/190),猫では10.1%(9/89)の糞便から検出された。犬ではクリプトスポリジウム抗原の検出率は,糞便性状や年齢,性別,由来,生活環境のようなプロフィールと関連が認められなかった。同様に,猫においてもクリプトスポリジウム抗原検出とプロフィールとの間には,関連性が認められなかった。これらの成績から,一般家庭で飼育されている犬および猫において,クリプトスポリジウムの感染は,低率ではあるものの広く蔓延している可能性が示唆された。
著者
矢吹 淳 小出 和欣 小出 由紀子
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.25-29, 2011-03-20 (Released:2012-04-04)
参考文献数
12

10歳齢のゴールデン・レトリバーが3日前からの食欲低下,嘔吐および白色の下痢を主訴に来院し,各種検査の結果,総胆管閉塞が疑われた。入院にて3日間の内科的治療を行ったが,改善が認められず,CT検査後に外科的治療を行った。CT検査では胆嚢頸部に結石を認めた。開腹手術にて胆石を摘出し,胆嚢切除を行ったが,大十二指腸乳頭部に炎症ならびに狭窄が認められたため,総胆管ステント留置術を実施した。術後,速やかに黄疸は改善され,術後32日目に内視鏡検査を行い,鏡視下にてステントを抜去した。ステント抜去後の経過も良好で,術後1261日に別疾患で死亡するまで閉塞性黄疸の再発は認められなかった。本症例より,総胆管ステント留置術は,短期的な胆汁流出路の確保が必要な症例に対して有用である可能性が示唆された。
著者
小川 純也 小川 浩子 福山 泰広 長谷川 剛 下江 弘美 平松 佳子 栢森 康司
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.19-23, 2011-03-20 (Released:2012-04-04)
参考文献数
5

犬前十字靱帯断裂に対して脛骨粗面を前方に転位することによる膝関節の安定ができるTTA手術は,その手術手技が比較的簡単で,そのうえ術後の成績も安定しているため今現在では世界中で行われるようになっている。その一方で本邦ではまだあまり一般的には行われていない。本院では,約7年前,まだこの手術法が確立する前からこの手術を始める機会を得られ,その結果数例においてではあるが術後の合併症を経験し,その発生の原因の究明や予防に努め,今現在では安定した手術結果を納めている。今回は,本院における全ての手術成績と合併症を示しその原因と対応を紹介する事で,今後日本においてこの手術を始める時の礎となることを期待している。
著者
中道 潤 安川 邦美 田端 克俊 森下 啓太郎 福井 健太 植野 孝志 下田 哲也
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.7-11, 2011-03-20 (Released:2012-04-04)
参考文献数
6

動脈管開存症(PDA)による重度の心不全の犬において,貧血と血小板減少症および脾臓の腫瘤病変が認められた。内科治療により心不全の改善を図った後,脾臓摘出術を実施した。術後一旦全身状態は改善したが,貧血,血小板減少症,低アルブミン血症,肝不全,腎不全が進行し死亡した。病理組織学的検査により血球貪食性組織球肉腫と診断した。本症例の貧血および血小板減少症の原因は,脾臓の腫瘍組織における細血管障害性溶血性貧血と腫瘍細胞の血球貪食によるものとが考えられたが,脾臓摘出後も貧血および血小板減少症が進行したことから,腫瘍細胞による貪食が血球減少の主な原因であると考えられた。
著者
浜岡 将司 藤岡 透 長井 新 江畑 健二 石原 直子 瀬戸林 政宜 福田 新 高岸 領 藤岡 荘一郎
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.107-112, 2010-12-31 (Released:2012-02-07)
参考文献数
16

ASA分類1,2の犬48臨床例に対しメデトミジンとミダゾラム(MM)を投与し,気管挿管後イソフルランと酸素で麻酔維持を行った。自発呼吸で維持し動脈血液ガスを分析した後,35症例で人工呼吸に変更し13症例では自発呼吸を維持し,15~30分後に血液ガスの分析を行った。ただし自発呼吸時にEtCO2が45 mmHgを超えた場合は,10秒に1回補助呼吸を用手で入れた。その結果,人工呼吸を行った場合pH,PaCO2,PaO2/FIO2(P/F ratio)および肺胞気-動脈血酸素分圧較差(P(A-a)O2)で有意な改善が認められた。結果よりMMを麻酔前投薬として用いイソフルランで麻酔維持を行った場合,換気能や肺の酸素化能の低下が示唆された例があった。また人工呼吸時にはこれらの症状が改善したため,MMを麻酔前投薬として用いイソフルランで麻酔維持を行った症例では人工呼吸を行う意義があると考えられた。
著者
内田 佳子
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.95-99, 2010-09-20 (Released:2011-12-16)
参考文献数
10

酪農学園大学行動治療科に常同行動を主訴として来院し,3年以上の後追い調査をした猫5症例について報告する。いずれも室内飼育で,雄3頭,雌2頭であった。初診時年齢は1歳6カ月齢から6歳齢,常同行動がみられてから来院まで4カ月から3年間が経過していた。常同行動はいずれも舐性行動で,過剰な自己グルーミングが4例,繊維舐め/摂食が1例であった。鑑別診断の後,全例に対して行動修正法として常同行動に対し一切反応しないことの指示および環境改善プログラムを実施し,薬物療法として塩酸クロミプラミン0.8-1.3 mg/kg/dayを併用した。全例で2から4週間内に常同行動の頻度が減少した。行動修正法を継続し,休薬のための減薬プログラムに入ったところ,減薬中に2例,さらに休薬後3週間以内に2例の計4例で症状が悪化または再発した。これらの例では塩酸クロミプラミンの再導入により常同行動が制御された。これら4例では現在に至るまでの3から6年間,薬剤は継続投与されており,維持量は0.25-0.5 mg/kgの1日1回または隔日投与であった。
著者
矢島 愛子 小向 奈津美 小林 沙織 神志那 弘明 大石 明広 佐藤 れえ子 安田 準
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.79-86, 2010-09-20 (Released:2011-12-16)
参考文献数
17

ヒト用免疫阻害法CK-MB測定用試薬を用いて,犬血清CK-BBを測定できるかを検討した。犬血清をマウス抗ヒトCK-MMモノクローナル抗体(M抗体)と正常マウスIgG抗体(陰性コントロール)にそれぞれ感作させた後,無処理犬血清と共にアガロース電気泳動・CK酵素染色した。無処理血清および陰性コントロール血清では,CK-BBとCK-MMが認められた。M抗体処理血清ではCK-BBは出現したがCK-MMは消失して阻害効果を認めた。次に,犬血清とCK-MB活性値が既知のコントロール液の段階希釈検体を免疫阻害法で測定したところ,双方の検量線は良好な直線性が認められた。さらに28頭の犬を用いて,免疫阻害法と電気泳動法において,M抗体で阻害されない残存CKとCK-BBの間および両方の測定方法で得たCK-MMの間で良好な相関関係を認めた。犬でも免疫阻害法にてCK-BBを評価できることから,犬の神経疾患のスクリーニング検査に用いることができると考えられた。
著者
近澤 征史朗 小林 秀樹 堀 泰智 星 史雄 金井 一享 伊藤 直之 佐藤 淳 山本 祥大 立花 麻子 春原 瑠美 打出 毅 折野 宏一 渡辺 清隆 樋口 誠一
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.71-77, 2010-09-20 (Released:2011-12-16)
参考文献数
28

犬の多中心型リンパ腫(Multicentric Lymphoma: ML)における血清フェリチン濃度を指標とした病態モニタリングの有用性を評価した。ELISA (enzyme-linked immunosorbent assay)法を用いて測定したMLの診断時血清フェリチン濃度は健常犬と比較して有意に高値を示し(平均値±標準偏差:1448±546および373±122 ng/ml,p<0.0001),化学療法の経過に伴って大きく変動した。また,完全寛解時の血清フェリチン濃度は健常犬と同等レベルまで低下し,再燃時には再び上昇する傾向を認めた。血清フェリチン濃度は他の悪性腫瘍,炎症など様々な疾患で高値を示すためMLの初期診断には適さないものの,MLの再燃予測あるいは抗がん剤治療中の病態モニタリングに有用な指標になり得る可能性が示唆された。