著者
小郷 直言 米川 覚
出版者
富山大学
雑誌
高岡短期大学紀要 (ISSN:09157387)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.47-66, 1990-03

本稿では,学生の教育,学習への応用を中心に据えて,ワークステーション上に構築した一つのハイパーメディア・システムについて述べる。システムの持つべき特性として,1)マルチメディアの取り込み,2)インターフェースヘの配慮,3)ネットワークによる拡大,4)知識の増幅を目指す,5)協調的な作業環境を提供するなどについて特に注意を払った。さらにハイパーメディア・システムの応用例として,電子教科書,案内板,テレビ講座,双方向遠隔授業システムについて考察する。
著者
北島 勲 仁井見 英樹 畠山 登
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

炎症反応の中核を成す転写因子NF-κB活性化状態を病院検査室で利用できる高感度・迅速な計測方法を開発する。本研究は液相における物質のブラウン運動を計測する一分子蛍光相関法を基盤にした応用開発である。救急医療での迅速な対応が要求される全身炎症反応症候群(SIRS)病態に関わるNF-κB活性化状態の迅速検査法を確立することでSIRSの予後予測と早期対策が期待できる。
著者
高井 正三 藤本 幸夫
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

国際標準のAjax技法を使用した日本現存朝鮮古書原文画像データベース・システムは,Microsoft 2008 Server R2 OSのサーバー上に,Apache HTTP Server 2.2,Apache Tomcat 7.0,Postgres SQL 9.0,Enterprise Apache PHPをインストールし,JSP,Java Framework JSF,JavaScript,HTMLを使用して,画像の閲覧システムを構築し,画面遷移を伴わず,画像の拡大・縮小表示操作,画像の上下左右移動をスムーズに実行できるようになった.しかしながら,原文画像の著作権取得の遅れ,大学情報基盤センターの大規模な情報システムの更新に伴う,10年以上使用してきたデータ処理用Unix OSサーバーとソート/マージ・プログラムがシステムの全面的に入れ替えにより,使用できなくなるという環境の変化などの要因が重なり,原文画像のメタデータ・データベースとの整合および,現行の日本現存朝鮮古書データベース・システムDOKBとの結合を実現するには至らなかった.
著者
吉井 美穂 八塚 美樹 安田 智美 木本 久子 亀谷 由美 田澤 賢次
出版者
富山大学
雑誌
富山医科薬科大学看護学会誌 (ISSN:13441434)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.103-107, 2004-09
被引用文献数
4

私たちは,了解の得られた看護学科4年次生60名を対象にSD法(形容詞23対)を用いて成人看護学(急性期)実習前後の手術に関するイメージ調査をおこなった.実習前の手術に関するイメージは,「清潔な」「特色のある」「激しい」「固い」「はりつめた感じ」「男性的な」「ちから強い」「変化に富んだ」「特色のある」「テンポの速い」「せわしない」「動的」「クールな」「不安定な」であった.実習前に比べて,「楽しみである-憂うつである」「好き-嫌い」「明るい-暗い」「親しみやすい-親しみにくい」「のどかな-緊迫した」「激しい-穏やかな」「はりつめた-ゆったりした」「生き生きした-生気のない」「和やかな-とげとげした」の9項目で差が見られた.イメージは,ある対象に対するその人の過去経験や感情の評価などの心的過程のはたらきの総体を反映し,否定的なイメージは,消極的や無気力な行動を生み,肯定的なイメージは,積極的行動を生み出すと考えられる.今回調査した結果,手術に関する肯定的なイメージへ変化しており,学生の実習態度の向上に少なからず効果的に作用するものと考えられた.
著者
小柳津 英知
出版者
富山大学
雑誌
高岡短期大学紀要 (ISSN:09157387)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.191-205, 2005-03
被引用文献数
1

石油化学工業の生産額の大半を占めるプラスチックは基礎原料(エチレン)、中間原料(モノマー)、最終製品(ポリマー)の製造過程に分ける事ができる。このプラスチックの製造では「統合の経済」、「規模の経済」、「範囲の経済」の三つが働くため、石油化学工業の国際競争力を考える場合には、現状の経営成果のみならず、これらの要因が発揮される生産体制かどうかを検討する事が重要である。我が国の石油化学コンビナートの生産規模は、1990年以降に完成したアジアや中東の80万トン水準に比較して、50万トン以下が大半である。そのため「規模の経済」の面で競争力は劣ると考えられる。次に、原料立地の中東に比較すると「統合の経済」の面でも競争力は劣ると考えられる。これまではナフサを原料としたプラントはエタンを原料としたプラントに比較して「範囲の経済」の面で競争力を持ってきたが、そのメリッ.トは失われつつある。さらに我が国の石油化学コンビナートは米国のような近接立地によるネットワーク化がなされておらず全国に分散・孤立立地というデメリットを持つ。さらに貿易政策の面では我が国の汎用樹脂には従量税が課せられ、国内メーカー保護の色彩が強かったが、2004年以降は低い従価税に移行し、輸入拡大が予想される。このような中、我が国の石油化学コンビナート内の企業間関係は、事業の統廃合、合併の進展で大きく変わりつつある。以上から、単純な企業集積のメリット.を説く産業クラスター論を我が国の石油化学コンビナートに適用しようとするのは無理がある。我が国の石油化学コンビナート再編の望ましい方向は、国内の生産規模を縮小し、「規模の経済」で有利な海外プラントへの投資を進め、輸入拡大を進めることが、国民経済の観点から望ましいと考えられる。
著者
澤田 愛子 塚本 尚子 中林 美奈子 松田 美千代
出版者
富山大学
雑誌
富山医科薬科大学看護学会誌 (ISSN:13441434)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.9-21, 1998-03

配偶者との死別は人生の中で最も厳しい試練であると言われている。しかしこの種のテーマを扱った実証的研究は乏しく, とりわけ, 高齢者のそれは皆無に近い。そこで著者は94年10月から95年9月まで, 配偶者と死別した65才以上の高齢者に聞き取り調査を実施した。調査地域は富山県の農村部で, 配偶者と死別後7-8ヵ月が経過した頃に訪問を実施した。調査結果から得られた所見は次の通りであった。1.高齢者の死別後の悲嘆過程は一般的に若年者のそれよりもマイルドである。2.しかし次のようなケースでは社会的サポートを必要とする。即ち, 1)死別後独居となって, 家族や友人からの支援がほとんど無い場合。2)配偶者が急死したために心の準備ができなかった場合。3)日常生活に多大な困難がある場合。4)死別者自身に深刻な健康問題があったり, 経済的に不安のある場合。5)配偶者への治療に不満を持ち, 医師に怒りを感じている場合。6)性格的な問題があったり, 家族と同居していても, 関係が良好ではない場合。3.これらの高齢者の支援のためには, 現存の訪問看護システムに死別カウンセリングを導入したり, 高齢死別者自身の自助グループの結成援助等さまざまな取り組みが必要とされよう。
著者
松井 文 佐久間 美江 筒口 由美子
出版者
富山大学
雑誌
富山医科薬科大学看護学会誌 (ISSN:13441434)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.127-135, 2002-04

本研究では, 富山県の自殺率急上昇の要因を明らかにすることを目的とし, どのような自殺予防対策が効果的であるかを考察した.対象は富山県の自殺率を引き上げていると思われる中高年男性に絞り, 中高年男性の持つ特性, 社会情勢, 富山県の県民性の3つの側面から, 既存の研究報告を参考にして分析した.その結果, 富山県の中高年男性は既存のうつ病の病前性格には当てはまらないが, 職場主義・実力主義などの近年の不況では苦しい精神状態に立たされやすい県民性を持つことがわかった.それが, 危機に陥りやすい中高年期の特性とあいまって, うつ病を発症しやすく, そのため, 自殺に至りやすいということがわかった.よって, 富山県の中高年男性に対する自殺予防対策としては, 職場での精神保健対策を充実させることが効果的であることが示唆された.
著者
村上 恭子
出版者
富山大学
雑誌
高岡短期大学紀要 (ISSN:09157387)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.207-219, 2005-03

ドン・デリロとトーマス・ピンチョンは、1997年に数ヶ月前後して長編小説を発表した。前者のUnderworldは20世紀後半のアメリカ史を背景とし、後者のMason&Dixonは18世紀半ばのアメリカ独立期の史実を描き、共に歴史を材料としている。しかも両者は産業資本主義社会の隠れた裏面に焦点をあて、その問題点を描いている。Underworldの場合、一見互いに無関係と思われる諸々の出来事がパラノイア的に関連付けて描かれており、その関連性が特異な効果を作品に与えている。作品には20世紀後半を特色付ける多くの要素--冷戦、核実験、軍産複合体、人種差別とそれに起因する暴動、反体制運動、種々の凶悪犯罪、メディア、廃棄物とそのリサイクル、社会の底辺に生きる人々等--が描かれているが、それらは共通のイメージや場所、小道具、数字等により相互が複雑に交錯し、関連付けられているのである。また諸々の事柄を関連付けて解釈するパラノイア的人物さえ登場している。これらの関連項は全てワールド・ワイド・ウェブで最終的に収斂しており、ネット社会に突入した現在の状況を象徴している。本論では、デリロのパラノイア的描き方を分析し、その効果を考察した。