著者
渡辺 志朗 藤田 恭輔
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

マウスにリトコール酸(LCA)を投与することによって誘導される実験的胆汁うっ滞性肝傷害が、漢方薬である防己黄耆湯(BOT)を投与することによって軽減されることがわかった。このとき肝臓において、LCAの毒性を弱める酵素である水酸化酵素(cyp2b10)や硫酸抱合化酵素(sult2a1)の発現量が、BOTの投与によって増加していることもわかった。これらのことから、BOTはprenane X 受容体(PXR)をはじめとして、constitutive androstane受容体 やvitamin D受容体などの核内受容体の活性化を介して、上記の胆汁酸分解系酵素の発現誘導する可能性が示された。
著者
鈴木 道雄 川崎 康弘 住吉 太幹 中村 主計 倉知 正佳
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

拡散テンソル画像による検討の結果、統合失調症患者では、前頭葉と視床、側頭葉とを連絡する白質線維束の統合が障害されており、その一部が陰性症状の成立に関与することが示唆された。自己と他者の評価課題による機能的磁気共鳴画像(fMRI)により、前頭前野、大脳正中構造、後頭頂小葉などの機能変化が、統合失調症における自己意識の障害に関連することが示唆された。病初期の患者を対象とした構造的MRIにより、前部帯状回の構造変化が統合失調症の顕在発症に関与することが示唆された。
著者
深谷 公宣
出版者
富山大学
雑誌
Geibun : 富山大学芸術文化学部紀要 (ISSN:18816649)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.122-136, 2006-12

英国の演劇評論家マーティン・エスリンは、サミュエル・ベケットの戯曲を「不条理演劇」の範疇に組み入れた。エスリンの言う不条理演劇とは、従来の物語構造を否定し、人間存在の主体性やその形而上学的根拠が崩壊した状況を描く戯曲である。だが、エスリンの議論は、ベケットの戯曲の特徴を、主体性を肯定する実存主義の視点から照射するため、あいまいさを残している。また、エスリン以来、ベケット批評の領域では不条理演劇という名称がひとり歩きし、この名がはらむあいまいさは解消されていない。エスリンと異なり、ベケットの作品における主体性の崩壊現象を的確に捉えた論者/演劇人が存在してはいるものの、彼らの考えはあまり議論されずにいる。以上を踏まえ、本論では、エスリンを含む主な論者/演劇人の議論を主体性というモチーフの面から再検証し、ベケット批評の領域で展開されてきた不条理をめぐる諸説の整理を行う。その結果、ベケットの作品解釈において、登場人物の主体性を否定しきれないエスリン以来の議論と、主体性を否定する議論との差異を明らかにし、不条理演劇という語の持つ意味に新たな認識の枠組みを提示する。
著者
竹林 信一
出版者
富山大学
雑誌
富大経済論集 (ISSN:02863642)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.185-198, 1959-11
著者
松嶋 道夫
出版者
富山大学
雑誌
富山大学紀要. 富大経済論集 (ISSN:02863642)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.12-55, 1985-07
著者
嶋田 豊 後藤 博三 引網 宏彰 関矢 信康
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究の目的は、脳虚血による神経細胞障害に対する和漢薬(漢方薬)の保護作用とその作用機構をin vivoの基礎研究によって明らかにすることである。スナネズミー過性脳虚血モデルを用いて、漢方薬の経口投与の海馬CA1領域の錐体細胞の遅発性神経細胞死に対する効果、脳虚血後の海馬及び皮質における過酸化脂質(LPO)、一酸化窒素(NO)代謝物、スーパーオキサイド(O_2^<-・>)とヒドロキシルラジカル(HO^・)消去活性、ならびに抗酸化酵素活性に及ぼす効果について検討した。漢方薬は虚血7日前から、最長で7日後まで投与した。その結果、漢方方剤・釣藤散あるいは生薬・釣藤鈎の経口投与は、虚血7日後の海馬CA1領域の錐体細胞の遅発性神経細胞死を抑制した。また両者とも、虚血後の海馬におけるLPOとNO代謝物の生成を抑制した。虚血を行わない実験で、釣藤散あるいは釣藤鈎の経口投与は、海馬及び皮質ともにO_2^<-・>及びHO^・の消去活性を増強し、虚血後も海馬及び皮質ともにO_2^<-・>及びHO^・の消去活性を増強した。抗酸化酵素活性については、スーパーオキサイドディスムターゼ(SOD)、カタラーゼ(CAT)及びグルタチオンパーオキシダーゼ(GSH-Px)を測定した。虚血を行わない実験では、海馬及び皮質ともにCAT活性が上昇したが、SOD及びGSH-Px活性は変化がなかった。虚血後のCAT活性は、釣藤散あるいは釣藤鈎投与によって海馬及び皮質ともに増強を認めた。以上の成績より、一過性脳虚血モデルにおいて釣藤散あるいは釣藤鈎の経口投与は遅発性神経細胞死に対して保護作用を有し、その機序の一つとして脳内のCAT活性の増強を介する抗酸化作用の関与が示唆された。
著者
TANI T Wada Naoya
出版者
富山大学
雑誌
FES Far Eastern Studies (ISSN:13477250)
巻号頁・発行日
no.5, pp.45-55, 2006-05
被引用文献数
1

Summer night temperatures are increasing across most of the globe. In this study, we attempted to detect variability in recent increasing trends in summer night temperatures in Japan. Hourly night temperatures higher than 25°C and 30°C measured by the Automated Meteorological Data Acquisition System (AMeDAS) of the Japan Meteorological Agency were accumulated for each night during each of six approximately 10 day periods during July and August from 1979 to 2002. These two parameters, called ANT25 and ANT30,were used for our analyses. Although increasing trends in night temperature were conspicuous in large cities such as Tokyo, Osaka, and Nagoya, they were also observed widely throughout Japan, including small cities and rural areas. The highest rates of increase in ANT25 were found in early August from Kanto and Hokuriku districts and to the west along the coast. The effects of night warming on rice production in Japan are discussed
著者
WADA N Liu Qi-Jing Kawada Kunio
出版者
富山大学
雑誌
FES Far Eastern Studies (ISSN:13477250)
巻号頁・発行日
no.5, pp.35-43, 2006-05
被引用文献数
2

We examined the synchronization of soil temperatures on an alpine tundra community between Mt. Changbai in northeastern China, and Mt. Tateyama in central Japan. The soil temperatures were measured at one-hour intervals for a total of 7526 recordings at both study sites, where a glacial relict plant Dryas octopetala var. asiatica was predominant. The hourly mean soil temperatures had high synchronization between the two mountains (r2= 0.87). After comparing soil temperatures by dividing the climate into two seasons, we found that synchronization of temperatures between the two mountains was higher in winter (r2= 0.75) than in summer (r2= 0.44). The Arctic Oscillation index, which is related to atmospheric circulation in the Northern Hemisphere, was significantly correlated with air temperature near each study site in the coldest month. Despite the difference in geographical location, a high similarity of seasonal variations in soil temperature in winter suggests that the thermal condition on the two mountains is controlled by the same air masses from higher latitudes. Keywords: Alpine tundra, Arctic Oscillation, Circumpolar plants, Glacial relict, Temperature innovation activities have a high potential to maintainable growth, this strategy alone is inadequate; entrepreneurship that involves a riskier style of management is required. Third, innovation alone carried out by venture enterprises in Japan can not contribute directly to employment creation. Rather, by combining innovation activities with market-in characteristics, enterprises are more likely to realize a surplus quickly, then achieve maintainable growth, thus indirectly contributing to employment creation.
著者
中村 友也 一條 裕之
出版者
富山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

過度の幼少期ストレスが成長後の不安やうつを惹起するメカニズムを明らかにするため、生後10-20日のマウスの仔を母親から毎日3時間分離し,成長後の個体の行動とストレス関連部位の外側手綱核、海馬、扁桃体の神経回路変化を調査した。幼少期ストレスを与えた群では、コントロールと比較して外側手綱核特異的に抑制性のParvalbumin陽性細胞数が減少し、ストレス下の興奮性神経細胞の活動性が上昇し、不安様行動とうつ様行動がみられた。本研究では不安やうつを引き起こす幼少期ストレスが外側手綱核特異的に抑制性回路を改変して高次機能に影響を及ぼすことを明らかにした。
著者
小泉 桂一 奥 牧人
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-07-18

昨年度までに、以下2つのメタボリックシンドロームマウスに関して、2種類の情報・数理学的な解析方法で「未病」状態を捉える試みを行った。1. メタボリックシンドローム自然発症マウスに対して、DNB解析を行うことで、「未病」状態のタイミングが5週齢で確認された。さらに、このDNB遺伝子は、約147個で構成されていることが明らかになった。今年度、この147個の遺伝子の関連性をGOおよびKEGG パスウェイにより解析した。その結果、GO解析では、炎症反応、免疫反応、細胞接着、ERK1/2カスケード、遊走の関与が、およびKEGG パスウェイ解析では、サイトカイン作用、神経活性化ライガンド作用、ケモカインシグナル、ファゴソーム、補体ー血液凝固系の関与が示唆された。さらに、漢方薬である防風通聖散がこのDNB遺伝子のゆらぎを低下させることも明らかとなった。2. 高脂肪食摂餌によるメタボリックシンドローム発症マウスに対して、超早期の発現変動遺伝子解析を行うことで、「未病」状態のタイミングが3日目で確認された。さらに、脂肪組織において酵素Xの発現が上昇していることが明らかになった。今年度、高脂肪食摂餌によるメタボリックシンドローム発症マウスに対して、酵素Xの阻害剤を投与したところ、顕著な抗肥満効果が確認できた。
著者
齋藤 滋 村口 篤 二階堂 敏雄 瀧澤 俊広 津田 さやか
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

胎児は、母親にとって半異物のため、本来は拒絶されるが、免疫寛容を誘導する制御性T細胞(Treg)により、妊娠が維持される。今回の研究で父親抗原特異的な免疫寛容は精漿によりもたらされる事、ヒトの流産で胎児染色体正常例ではeffector Tregの数が減少していたが、父親抗原特異的Tregの割合は変化しなかった。一方、妊娠高血圧腎症ではeffector Treg細胞の減少は軽微であったが、父親抗原を認識すると考えられるクローナルなTregは、著明に減少していた。つまり、流産ではTreg細胞の減少が関与し、妊娠高血圧腎症では父親抗原特異的Tregが減少することが初めて証明された。
著者
藤坂 志帆 戸辺 一之 薄井 勲
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

肥満や便秘の治療に用いる漢方薬である防風通聖散が抗肥満作用を示すメカニズムとしては従来、褐色脂肪組織の活性化による基礎代謝の亢進が示唆されていた。前年度の研究において我々は、高脂肪食負荷マウスにおいて、防風通聖散が腸内細菌叢を変化させ、とくにAkkermansiaといわれる細菌の増加により肥満により低下した腸管のバリア機能が回復することを見出していた。その結果、肥満した個体の腸内細菌由来エンドトキシンが血中に流入した高エンドトキシン血症が軽減し、慢性炎症や糖代謝が改善することがわかった。その他のメカニズムとして、菌叢の変化が腸内細菌由来代謝産物を変化させて代謝改善に寄与するのではないかと考え、防風通聖散投与マウス糞便の標的メタボローム解析を行った。しかし短鎖脂肪酸などの代表的腸内細菌由来代謝産物については変化がなかった。防風通聖散による糖代謝の改善は、腸管バリア機能の回復による高エンドトキシン血症の軽減とそれに伴う慢性炎症の改善によると結論づけ、現在論文を作成している。近年、すでに上市されている様々な薬剤が腸内細菌組成に変化を与えることが報告されている。本研究もこれまで臨床利用されていた薬剤の腸内細菌叢を介した代謝への作用を明らかにしたものである。このような薬剤の多面的作用を理解することは、病態に合わせた治療薬選択に広がりを与え、様々な疾患の領域においても応用しうる有意義な発見であったと考えらえる。
著者
盛永 審一郎 加藤 尚武 秋葉 悦子 浅見 昇吾 甲斐 克則 香川 知晶 忽那 敬三 久保田 顕二 蔵田 伸雄 小出 泰士 児玉 聡 小林 真紀 品川 哲彦 本田 まり 松田 純 飯田 亘之 水野 俊誠
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-11-18

終末期の意思決定に関する法制度・ガイドライン等を批判的に検討した結果、以下のことが明らかとなった。①医師ー患者関係に信頼性があり、透明性が担保されていれば、すべり坂の仮説はおこらないこと、②緩和ケアと安楽死は、相互に排他的なものではなくて、よき生の終結ケアの不可欠の要素であること、③それにもかかわらず、「すべり坂の仮説」を完全に払拭しえないのは、通常の医療である治療の差し控えや中止、緩和医療を施行するとき、患者の同意を医師が必ずしもとらないことにあること。したがって、通常の治療を含むすべての終末期ケアを透明にする仕組みの構築こそが『死の質の良さを』を保証する最上の道であると、我々は結論した。
著者
王 阳
出版者
富山大学
巻号頁・発行日
pp.1-88, 2019-09-27

富山大学・富理工博甲第164号・王阳・2019/9/27
著者
吉久 陽子
出版者
富山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

メラノーマは色素細胞由来の悪性腫瘍で最も予後の悪い腫瘍のひとつである.我々はマクロファージ遊走阻止因子(MIF)の機能に関する研究の過程でMIFがメラノーマの増殖に関与することを見出した.一方で近年,MIFと類似性の高い立体構造を有するD-dopachrome tautomerase(D-DT)が同定されたが,生体内での詳細な生理活性や機能は明らかではない.本研究ではメラノーマの増殖におけるD-DTの関与について検討した.D-DTはメラノーマ細胞において恒常的に発現しており炎症性サイトカインやアポトーシス関連因子との関連性も明らかであることからメラノーマの増殖に関与している可能性が示唆された.