著者
東川 和夫 野口 潤次郎 古田 高士 渡辺 義之 清水 悟 児玉 秋雄
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

当初の研究目的は、被覆写像に対して、両多様体の多様複素グリーン関数及び対応する不変計量に関する不等式がいつ等号になるか、例で調べてみること。等質有界領域のバーグマン計量に対する正則双断面曲率が非正であれば、擬対称領域かという問題に解答をつけること。この2点であったが、いずれも記述すべき進展が見られなかった。この問題に関連して、次の3つの新しい結果を得た。(1)上に伸びる連分数展開を考えることによって、閏年を4年に一度置き、それを32回に一度やめ、そのやめることを691回に一度やめ、それをやめることを、703回に一度やめれば、真の時間と暦上の時間との違いは、常に24時間以内であることを示した。(2)互いに素なAとBに対して、pはAの平方とBの平方の和であり、奇数であるとする。このとき、(i)直交する二つの位数pのラテン方陣で、それぞれが、対蹟的完備であるものが存在する。ここで、ラテン方陣が対蹟的完備であることは、すべての対蹟の関係にある位数がAの方陣と位数Bの方陣を合わせたものに文字の重複がないことである。(ii)位数pの魔方陣で、対蹟的完備であるものが存在する。ここで、魔方陣が対蹟的完備とは、すべての対蹟の関係にある位数がAの方陣と位数Bの方陣を合わせたものの数の和が定和になることである。(3)5以上の自然数Nに対して、合同変換群が位数Nの回転群でしかないような1つの平行6辺形による平面のタイル張りが存在することを示した。
著者
岸本 寛史 斎藤 清二
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は次の4点である。(1)バウムテストの創始者であるKarl Kochの基本姿勢をドイツ語原著に基づいて明らかにする。(2)『英訳版』とその本訳である『邦訳版』の問題点を明らかにする。(3)我が国へのバウムテストの導入過程を検討する。(4)バウムテストを臨床的に発展させるために事例研究のスタイルについて検討する。結果の概要は次の通りである。(1)コッホはバウムテストを心理診断の補助手段として位置づけようとしていたが、意味論的分析をという手法を用いて、コッホが意図していた「心理診断」を明らかにした。その結果、コッホは判別診断を最終目標としていたのではなく、それも組み込んだ形での総合診断、バウムと描き手とを重ねる形での見立てを目指していたことが明確になった。(2)コッホが示している事例解釈の部分を、ドイツ語原著、英訳版、邦訳版を対比させながら翻訳の問題点を明らかにした。コッホはバウムのイメージを持ち続ける中で開けてくる直感を大切にする、優れた描写はそのまま解釈になる、バウムのイメージを各種の指標を使いながら外からみると同時に、イメージの中に入り込んで内側から見る、被験者への責任感、といった基本姿勢が理解されていないために、邦訳版ではそこで示されている解釈が読者には理解できないものになってしまったと思われた。(3)バウムテストの導入過程については、文献的検討により、邦訳者はコッホの原著の中でも主として発達診断的側面と空間象徴に基づく解釈仮説を盛んに紹介していたが、上記のようなコッホの基本姿勢が紹介されないため、これらの指標や仮説が一人歩きしていることが懸念された。(4)臨床的発展のためにバウムテストの事例研究を行うことが不可欠であるが、そのスタイルについては、従来の全経過を検討するようなスタイルだけでなく、ワンセッションにフォーカスを当てた事例研究が必要だと思われた。
著者
高山 龍太郎
出版者
富山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

シカゴ学派社会学の研究法を範例に、不登校の居場所づくりに関するフィールドワークをおこなった。その目的は、不登校の居場所で繰り広げられる具体的な社会生活を描き、スタッフの役割や居場所を規定する価値観などを明らかにすることである。居場所の活動は、(1)諦めと休息、(2)夢中になる、(3)目標との出会い、(4)仲間との共働、という4つの局面から構成され、子どもは局面(1)から局面(4)へ少しずつ活動の幅を広げていき、居場所の外とつながっていく。居場所のスタッフの役割は、それぞれの局面での活動を活性化させることであり、そのとき生じるトラブルを解決して安心・安全な場を維持することである。居場所を規定する価値観は、子どもの意思やペースの尊重、競争の排除などであり、学校とは対照的である。「学校的価値観と居場所的価値観の行き来」という観点からそれぞれの居場所が想定する子どもの成長の軌跡によって不登校の居場所を類型化すると、(1)補完型(小回り・大回り)、(2)対抗型、(3)代替型という3類型が導き出される。
著者
井ノ口 馨 岡田 大助 大川 宜昭 鈴木 章円 Shehata Mohammad 鈴木 玲子 西園 啓文 野本 真順 横瀬 淳 村山 絵美 趙 埼 北村 貴司
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2011-04-01

「記憶のアップデート機構」は知識の形成を通じて精神活動の基盤となる。記憶のアップデートは記憶同士の連合により行われるが、そのセルアセンブリレベルのメカニズムは不明であった。本研究では、二つの記憶情報が連合する回路レベルのメカニズムを明らかにするために、(1)CS-US連合(2)行動タグ(3)高次の連合のそれぞれについて、記憶が連合(相互作用)するセルアセンブリレベルのメカニズムを解析した。その結果、記憶が連合(相互作用)する際には、それぞれの記憶の対応する神経細胞集団の同期活動によるオーバーラップが重要な役割を担っていることが示され、記憶がアップデートされる脳内メカニズムが明らかとなった。
著者
吉田 淑子 二階堂 敏雄 岡部 素典 小池 千加
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

羊膜上皮および羊膜間葉系細胞に含まれる幹細胞を純化し、疾患モデルでその効果を検討した。糖尿病モデルでは、一過性の血糖値の低下および延命効果が見られた。脊髄損傷モデルでは、損傷後1週間後に羊膜間葉系細胞を移植したにも関わらず、下肢の機能に有為な回復が認められた。骨欠損モデルでは、異種動物への移植であったにも関わらず、拒絶はほとんど認められず骨組織への再生が確認された。羊膜幹細胞は再生医療の細胞素材として有効である。
著者
大西 宏治 寺本 潔 田部 俊充 志村 喬 水野 惠司
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

子どもの地域安全マップの作成カリキュラムと防犯教材の開発に地理教育の視点から取り組んだ。日本では景観から犯罪危険性を読み取る教育として地域安全マップづくりが行われている。英語圏の取り組みを見る限り、このような防犯学習は少なくとも地理教育の観点からは日本のユニークな取り組みであることがわかった。カリキュラムは小学3年生程度で実施するまち探検を利用して、景観に危険を読み取る技能の育成から始める。次に、交通事故やその他の危険を地図から読み取る学習、最後に地形図などから地域の防災を取り上げる。このように景観や地図を読み取る技能を段階的に身につけていくことが、地域の安全や危険を読み取る技能の育成にもつながるであろう。
著者
松村 理恵子 岩田 美千代 澤田 愛子
出版者
富山大学
雑誌
富山医科薬科大学看護学会誌 (ISSN:13441434)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.77-84, 2001-08

本研究では, 看護婦と末期患者のコミュニケーションの課題を考察するために, 末期患者とのコミュニケーション場面における看護婦の感情を明らかにすることを目的とした.その結果, 看護婦の感情は《事実を知っている緊張感》, 《患者の人生に影響を与える責任の重み》, 《思いを共有できないつらさ》, 《何もできない申し訳なさ》, 《看護の手ごたえのなさ》, 《余裕のなさ》, 《責められることへのやるせなさ》, 《患者の心の中に入る怖さ》の8つに分類された.さらにターミナルケアに関わる看護婦は, 末期医療の特殊性から, 患者と同じ目標をもつことが難しいことを悩んでおり, また, 看護婦の無力感, 自信のなさなどから, ひとりの人間として患者と関わることが困難であることがわかった.これらのことから, 末期患者とのコミュニケーションの課題として, 末期医療の厳しい現実を正しく見つめた上で, まず自分のいかなる感情も自分のものとして受け入れ, さらに自分を価値ある人間として認めることが重要であると考えられた.
著者
小郷 直言 米川 覚
出版者
富山大学
雑誌
高岡短期大学紀要 (ISSN:09157387)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.43-63, 1992

われわれはかねてより,「もんじゅ」と呼ぶ協働支援システムを構築し,相互学習法による学習・授業の支援に利用してきた。しかし,コンピュータシステムとしてTSSをベースとしていた関係上,リアルタイム性には限界があった。本稿では,もんじゅのLAN上への移植と,リアルタイム性を十分に発揮したグループライティングについて述べる。リアルタイム・グループライティングでは複数の利用者が共有ウィンドウにいつでも,自由に書き込め,しかも,十分な応答性能とWYSWIS環境を提供することができた。
著者
小郷 直言 米川 覚
出版者
富山大学
雑誌
高岡短期大学紀要 (ISSN:09157387)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.19-33, 1991

われわれは,集団における協働活動を支援するソフトウェアである「もんじゅ」と呼ぶシステムを開発した。もんじゅはTSS上にクライアント/サーバモデルをシミュレートする方法で構築されている。本論文では,システムを構成している基本的な枠組であるメッセージ通信とサーバの設計について詳しぐ述べる。
著者
中村 滝雄 横田 勝 今淵 純子
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

日本における刃物製品は貴重な鉄で製作されてきたと同時に、経済性、機能性や耐久性などが要求されることから、軟鋼に高炭素鋼をつけるツケハガネ(鍛接)といわれる伝統的な製作方法が用いられている。そのことによって鉄に柔軟性と強靭性を与え、優れた刃物製品を製作することができたのである。本研究で取り上げた種子鋏は、伝統的な鍛冶技能を有した刀鍛冶師が多く居住し、良質の砂鉄が豊富に産出していた種子島において製作が始められたツケハガネによる道具である。現在、種子島において全て手打ちで製作している牧瀬氏が製作する種子鋏は、伝統的な鍛冶技術で製作さているのが特徴的であり、優れた切れ味とともに品質も高く美しい形態をしている。本研究および調査結果の概要は次のとおりである。(1)種子鋏製作における作業環境や道具の調査を詳細に行って、牧瀬氏が製作した独特な道具と特徴を持った鋏の形態や機能の関係を考察した。(2)映像によって製作工程の記録を行うと同時に、伝統的なツケハガネ方法で製作された種子鋏の構造と機能的な特徴を解明した。(3)製品おける鋼の組織や硬度など顕微鏡観察によって材料工学的な解析を行うと同時に、他産地の製品と熱処理による硬さの比較検討を行った。その結果、種子鋏独自の性質を出現させていることが分かった。これらは徒弟制度の中で牧瀬氏が勘と経験によって修得したものであり、伝承されてきた種子鋏製作技術や伝統的な鍛冶技術の保存という点で貴重な資料となった。また、種子島における砂鉄の調査や技術の伝承方法の推察も予備的に行った。
著者
藤井 拓人
出版者
富山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

様々な癌細胞に異常発現するナトリウムポンプα3アイソフォーム(α3NaK)は、通常ナトリウムポンプが存在する原形質膜ではなく、rab10の存在する小胞に局在していた。ヒトおよびマウス癌細胞を用いたin vitro実験およびin vivo実験の結果、細胞内小胞に分布するα3NaKは、癌細胞の生存および成長に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。
著者
川村 隆一 植田 宏昭 松浦 知徳 飯塚 聡 松浦 知徳 飯塚 聡 植田 宏昭
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

大気海洋結合モデルならびに衛星リモートセンシングデータ等の観測データを併用して、夏季モンスーンのオンセット変動機構の重要な鍵となる大気海洋相互作用及び大気陸面相互作用のプロセスを調査した。標高改変実験からは亜熱帯前線帯の維持のメカニズム、植生改変実験からは降水量の集中化と大気海洋相互作用の重要性が新たに見出された。また、オンセット現象と雷活動との相互関係、夏季東アジモンスーン降雨帯の強化をもたらす台風の遠隔強制やモンスーン間のテレコネクションのプロセスも明らかになった。
著者
横山 泰行
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1994

重度化・重複化している精神遅滞児になわとび運動を定着させるためには,きめの細かい指導案が不可欠である.この要望に対して,現在のところ唯一満足のゆく指導案を公表しているのは,高畑の著書「フ-プとびなわでなわとびは誰でも跳ばせられる」である.本研究では,「フ-プとびなわ運動」の指導ステップを紹介し,次に,高畑の実践報告書「フ-プとびなわ驚異の教育力」を文献資料として活用している.つまり,重度の精神発達遅滞で,自閉的傾向の認められる事例児のフ-プとびなわ運動に見られるマスター過程を克明に追跡し,その過程で本人の心身(肥満問題や身体活動量・運動能力問題など),家庭の両親,指導者,クラスの仲間に及ぼした影響を要約をするものである.この事例児は「フ-プとびなわ運動」で肥満解消に成功することはできなかったが,肥満程度の昂進しやすい思春期に,肥満の最重度化にブレーキを掛けることに成功したケースである.数百回に及ぶなわとび運動の消費エネルギーも,重度肥満の程度を大幅に軽減できる身体活動量とはならなかった.本研究の後半は,小学部の頃から重度肥満であった事例児が中学部において,急速に肥満を解消していった過程を詳細に追跡している.血液の生化学的検査により,このままの状態が続けば,事例児の病気は避けられないといった診断結果が肥満解消を促す最大の動因となった.肥満解消の原因は,父親が学校と緊密な連絡を取りながら,家庭での徹底した食事管理,掃除や散歩の活用,学校側での定期的な身体測定,食事量・運動量のチェックと是正,家族に対する正しい肥満知識の普及,両親を説得して肥満治療にあたった点にあるといえよう.また,嘔吐による体の変調も急激に体重を減らした要因であった.
著者
丸山 茂徳
出版者
富山大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

最終年度である本年度はこの2年間の研究成果をまとめ公表することを目的とした。高圧型変成相系列の標準となるフランシスカン層群の研究はJournal of Petrologyに印刷された。フランシスカン層群のテクトニクスはTectonophysics誌に、研究のまとめは月刊地球にそれぞれ印刷された。この2年間続けてきたカナダバンクーバー島の低圧型変成相系列の研究と中圧型変成相系列をまとめて、低温の変成作用一般を論じ、"Low-Temperature Metamorphism and Related Tectonics"と題してケンブリッジ大学出版会からB5判約450ページの専門書を出版する契約を結び、アメリカ人研究者2名と共同して第1稿の約2/3を仕上げたところである。
著者
秋月 有紀
出版者
富山大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2005

首都圏および大阪都市圏で建設件数が急増している地下大規模空間に対する火災安全設計手法の開発が急がれている。そこで京都大学防災研究所田中哮義教授と共同研究を行い、昨年実験で収集したデータに基づき、火災時に発生する視環境の低下(停電や火災煙による視野輝度の減衰)を避難者の視力に換算し、取扱が容易な指数関数を用いて避難者の歩行速度および避難時心理状態を予測するモデル式を構築した。この成果はアジアオセアニア国際火災会議で報告し、平成20年度に国際火災学会(査読付論文)として対外報告することが決定した。さらにトンネルを模した実大実験空間において燃焼実験を行い、燃焼に伴う空間内温度・風速分布の測定に合わせて視野輝度分布の経時変化を測定した。トンネル内の温度分布実測値は、既存の二層ゾーンモデルを発展させた多層ゾーンモデルの予測値とよく対応したが、視野輝度分布は取扱が容易な二層ゾーンモデルで十分説明できることを確認した。関西大学原直也准教授および前出田中教授との共同研究において、閉空間の床面照度簡易予測モデルを構築し、実在する地下街駐車場での車両火災を例にシミュレーションを行った結果を、国際照明学会で報告した。また避難誘導灯や非常口サインなどの避難誘導ツールの実態把握を行うにあたり、前出田中教授・摂南大学岩田三千子教授・同志社女子大学奥田紫乃講師と共同研究を行い、効率的なサイン設置状況の把握方法について調査データに基づき検討し、成果を平成20年度建築学会(査読付論文)および国際色彩学会で報告する予定である。さらに照明学会屋外防災照明調査研究委員会の委員として東南海地震対策に熱心に取り組んでいる和歌山県・静岡県の夜間屋外照明の災害時対応について行政ヒアリングを行い、前年度に調査した四国の結果と合わせて年度末に開催されたシンポジウムで地方自治体の夜間避難対策の現状について報告した。
著者
神川 康子 永田 純子
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

先進国の中で最も睡眠不足だと言われる日本の子ども達の心身の健康や生活の質を向上させるために、小学生や未就学児を対象に、睡眠・生活実態調査と学力調査、および重心動揺による自律神経機能の測定を行い、それらの関連を分析した。その結果、子ども達の就寝時刻の遅延が、睡眠の質(寝つき、熟眠感、目覚めの気分)も、日中の生活(覚醒度、集中力、いらいら感、)の質も低下させることが判明した。そして子ども達の就寝時刻を遅れさせる最も大きな原因はTVやゲームであり、ついで、習い事の多さも原因となっていた。また、TVやゲームの時間は、試験の成績や健康状態とも有意に関連していた。とくに小学生では、4年生以上において生活習慣が悪化しやすいので、この時期に睡眠習慣を見直す科学的な指導が必要であるといえる。学力と生活習慣の関連では、4教科のうち、国語が最も多くの生活習慣項目(睡眠習慣、規範意識、家族関係、自尊感情など)と関連しており、また算数は、睡眠時間や食生活、健康状態と関連があり、健康状態が良いほど、思考力が必要な問題の正答率が良いことが判明した。また、起床困難を改善するために、小学4,5年生を対象に、子ども部屋に漸増光照射照明器具を設置して、その効果を検証したところ、起床時の気分や日中の気分を改善し、QOLを高める効果が認められた。最後に、学年進行とともに睡眠習慣が改善する児童と、改善しない児童の生活実態の10ヶ月間の変化を比較したところ、就寝時刻が遅延した児童ほど、日常生活(あくび、TV・ゲーム時間、服装など)も悪化し、生活の質が低下することが認められた。小学生までの間に、子ども達には、就寝時刻を乱さないように生活を見直し、TVやゲームの時間を自分で制限するなど、自分で考えて生活する力(自己管理能力)をつけることが重要であると考えられる。
著者
加賀谷 重浩 川上 智規
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

大気中のガス状原子水銀,粒子状水銀および降水中全水銀,溶存態水銀を,富山県内の複数地点で採取した試料に対して定量した。降水中の溶存態水銀の割合と,大気中浮遊粉塵から純水あるいは塩酸を用いて抽出された水銀の割合とがほぼ一致することを見いだした。また大気中粒子状水銀は,採取期間ごとに異なる粒径別分布を有することを見いだした。これらより,大気中粒子状水銀について詳細に検討することにより,水銀の環境動態に関する情報が得られると考えられた。
著者
村川 秀樹
出版者
富山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

理工学分野において現れる様々な問題を含む非線形拡散問題を取り扱った。非線形拡散を含む問題の解析や数値解析において、拡散の非線形性をどのように扱うかが問題となっている。本研究では、非線形拡散問題の解が、拡散が線形である半線形反応拡散系の解により近似されることを示した。この結果は、非線形拡散問題の解構造が、ある種の半線形反応拡散系の中に再現されることを示唆するものである。一般に、非線形問題を扱うよりも半線形問題を取り扱う方が容易であるため、本研究は非線形問題の解析や数値解析に応用できることが期待される。