著者
藤 秀人
出版者
富山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

臨床研究では、メトトレキサートによって治療を受けている関節リウマチ(RA)患者を対象に、多施設無作為割付二重盲検比較試験を行っている。中間解析では、既存治療群と比較して時間治療群において治療成績が高い傾向を示した。基礎研究では、RAモデル動物を対象に炎症反応の日周リズムを評価した結果、RA発症前では認められなかったが、RA発症後に血中SAA(炎症の指標)やTNF-alphaに明瞭な日周リズムがあることが明らかとなった。今後、この機序解明を実施することで、個別化治療に向けた投薬マーカーの同定が期待できる。
著者
橋爪 和夫 山地 啓司 山地 啓司
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究の目的はスポーツ選手の喫煙が短時間最大運動及び回復期の自律神経調節能に及ぼす影響を検討することであった。喫煙習慣のある青年スポーツ選手では,1回心拍出量には特異な現象が確認できないが、筋疲労の回復が緩慢であった。青年スポーツ選手の喫煙は短時間最大運動の作業成績には影響しないが、回復期の体調が悪くなるという影響が認められた。青年期の喫煙は、交感神経の調節能よりも副交感神経の調節能への影響が大きいとの結論を得た。
著者
佐伯 聡史
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

鉄棒運動のけ上がりは、専門的なトレーニングを行えば、6、7歳で習得可能である。しかし、学校教育現場では習得することは非常に難しいとされている。本研究は、鉄棒運動のけ上がりの習得を促す効果があると期待される、筆者によって特許取得済みの「鉄棒練習具」を使用して、初等教育(小学生)、中等教育(中学生)、高等教育(大学生)の各カテゴリーで実験が行われ、その効果と適時性についての検証を行った。初等、中等教育では運動改善が見られたものの、その効果は限定的であり、短期間でのけ上がりの習得には至らなかった。しかし高等教育においてはけ上がりの習得に直結する運動改善が見られたことから、一定の効果が確認された。
著者
竹澤 みどり
出版者
富山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究はインターネット調査を用いて,情報通信技術(ICT)を用いた交際相手への暴力(IPV)の日本における実態および対面でのIPVとの関連を検討することが目的であった。結果,ICTを用いたIPV行為のうち言動監視が最も行われやすいこと,その影響や対処の仕方は人によって大きく異なることが明らかとなった。また,ICTを用いたIPV,対面でのIPVともに被害経験のある人が交際相手との関係においてより被統制感を感じていること,自己愛が関係不安や被害的な思い込みが高まることによってICTを用いたIPV加害行為の一部を高めることが明らかとなった。
著者
石崎 泰男
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

男体火山の末期活動と沼沢火山の沼沢湖噴火の噴出物についての岩石学的解析により、これらの大規模火砕噴火が3つ以上の複数マグマ溜りに由来するマグマ間の相互作用を経て発生したことが明らかになった。末期噴火では、2つのデイサイト質マグマ溜りが比較的短時間で形成され、各々へ独立したマグマ溜りから供給された苦鉄質マグマが注入し噴火が発生している。沼沢湖噴火のデイサイト質マグマ溜りは、この噴火の約2万年前には形成されており、先行噴火期には溶岩噴火を起こした。その後、独立したマグマ溜りから供給された2種類の苦鉄質マグマが順次デイサイト質マグマ溜りに注入し火砕噴火を発生させた。
著者
林 直人 樋口 弘行 吉野 惇郎 吉田 弘幸
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

高性能両極性有機発光トランジスタの開発を目指し、電子供与性部位であるフラン環と、電子受容性部位であるピラジン環またはキノン環を併せもつ新規ヘテロ芳香族化合物を合成し、その構造物性評価を行った。フラン環については、縮環向きの異なる二種類の構造異性体を比較した。薄膜の結晶性が低かったために、合成した試料からなる薄膜の電荷移動度は低い値しか観測されなかったが、一方で予想外に高い固体蛍光量子収率を示した。これは、凝集誘起発光とよばれ、近年おおいに注目されている。この理由は、エキシマー蛍光の効率性の向上、ならびに結晶状態における分子運動の抑制ということに起因する。
著者
安田 智美 吉井 忍 道券 夕紀子
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

在宅では血液検査や身体計測などによる栄養評価は困難である。そこで、非侵襲的かつ簡便で、介入点がわかりやすいスクリーニング表を作成した。75歳以上の444名の在宅療養者及び施設入所者を対象に、食事環境、食生活、口内環境・嚥下、体調・身体状況に関する34項目の質問と、上腕筋面積の測定を実施した。JARD2001による上腕筋面積の年齢別中央値を100とした対象者の上腕筋面積の割合を算出し、質問34項目との関連を検討した。さらに、判別分析にて項目数と配点を検討し、男女別で34項目の質問からなり、要介入、要注意、良好の3段階に分類できる在宅栄養スクリーニング表(Home Nutritional Screening Test ; HN-test)が完成した。このスクリーニング表の感度は男性93. 3%、女性90. 6%であり、高い確率で低栄養状態の判別が可能となった。
著者
鈴木 正康
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

蛍光センサ色素や生体由来の分子識別素子を複数回重ねてマイクロコンタクトプリンティングすることで、一つのチップ上に複数種の極微小オプティカルバイオケミカルセンサを構築すると共に、作製したオプティカルバイオケミカルセンサを用いて化学物質の2次元的な分布の経時変化を画像化することに成功した。
著者
根本 曠子 山田 眞一
出版者
富山大学
雑誌
高岡短期大学紀要 (ISSN:09157387)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.203-216, 2004-03-15

本調査報告は、台湾の漆工芸に関する調査報告であり、次の二つの部分からなる。ひとつは、教育という視点からみた台湾における漆工芸の歴史と現状に関する部分であり、もうひとつは、若手の漆芸作家を通してみた漆芸の技法に関する部分である。台湾の漆芸は歴史的には中国大陸の福建省の影響を受けてきたが、1920年代以降は日本の漆工芸の影響を色濃く受けている。戦前日本で漆芸を学んだ頼高山氏や王清霜氏らにより日本の漆芸の技法が台湾の漆芸に受け継がれ、現在では台湾の伝統工芸の陶器に漆工芸を取り入れた新たな展開が見られる。
著者
川口 将史
出版者
富山大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

生殖的隔離は種分化を引き起こす重要な素過程の一つであるが、その成立メカニズムは明らかになっていない。生殖的隔離の神経基盤を解明するため、ヨシノボリの雄が同種の雌に求愛、あるいは別種の雌を排他する際に活動する脳領域を、最初期遺伝子c-fosの発現パターンを指標に同定した。その結果、視覚情報の処理過程や全身性の反応を制御する下垂体・視床下部の活動に違いが見られた。このことから、ヨシノボリの雄は雌を視覚刺激で識別しており、視覚情報の一次入力領域である視蓋が行動選択における判断の中枢として働くことが考えられる。
著者
岡崎 浩幸 加納 幹雄
出版者
富山大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は、英語教員の長期派遣者がどのような研修を受け、経験をいかに現場に活用してきたか、また、還元の妨げになっていたのは何かを明らかにし、今後の海外研修のための示唆を得ることである。その結果、研修内容には概ね満足し、帰国後使命感をもち、現場への還元にも取り組もうとするものの、得られた経験が他の英語教員のために十分に還元できていないことが明らかになった。還元を妨げていたのは「成果と現場とのギャップ」「研修への理解者不足」「還元機会の欠如」であった。今後の研修については「帰国後サポート体制」「英語教員への還元」「事前の目標設定」が研修成果を広げていくために必要であることも明らかになった。
著者
山崎 裕治
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

水産重要資源であるヤツメウナギ類の資源管理・保全を目的として,分子生態学的手法を用いた性成熟制御機構の解明を目指した.分子遺伝学的解析の結果,正の淘汰を受けた遺伝子領域の存在が示唆され,そこに含まれる機能遺伝子の転写調節に影響をもたらすことが期待される構造変異の存在を明らかにした.また,生態調査を加えることで,性成熟制御に関わる成長や脂肪蓄積に,餌資源が重要な要因となっていること,および資源維持には,集団間の交流が必要であることが示された.
著者
長柄 毅一 三船 温尚 清水 康二
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

韓国の慶尚南道出土の高麗時代や朝鮮時代に製作されたとみられる銅鋺、匙等、40点の金相評価ならびに成分分析を行った。なお、出土品は現代の鍮器とほぼ同様の組成であり、錫と銅のみで構成される二元系の熱処理型高錫青銅器であった。現代の鍮器では、銅鋺や匙などは鋳造法で作られることが多いが、出土青銅器はその多くが熱間鍛造で成形されたことが判明した。
著者
奥村 知之 塚田 一博 嶋田 裕
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

食道癌細胞株にmiR-203発現ベクターを導入したところp63発現増強を伴うp75NTR陽性細胞数は増加した。p75NTR陰性細胞ではp63が減弱しインボルクリンが増強した。コロニ―形成能は低下しマウス皮下移植腫瘍は有意に縮小し重層扁平上皮構造を示し中心に基底膜分子ラミニンとp75NTRの発現を認めた。食道扁平上皮癌細胞株においてmir203導入によりp75NTR陽性細胞の自己複製が維持されつつ分化が誘導され腫瘍抑制効果を認めた。mir203導入により癌幹細胞の悪性度が低下した可能性が考えられ、癌幹細胞を標的とした新規治療への応用の可能性が示唆された。
著者
加藤 正 北村 岩雄 村井 忠邦 池田 長康
出版者
富山大学
雑誌
富山大学工学部紀要 (ISSN:03871339)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.17-23, 1997-02

Electric field on the ground in various charges situations under thundercloud model are calculated for estimation of electric structure of dynamic thundercloud. The real thundercloud has a convection of air current called a cell. It is thought to consist of the upward air current occurring the charge separation and the downward air current with the positive charge. The thundercloud model we proposed is constructed by three dynamic groups of the point charges. First group is negative polarity generated at the lower part of the cloud and stays at the generating position, second group has positive polarity and goes to the top of the cloud and third group goes down partially from the second group charge arrived at the top the cloud and the charge accumulates at some height above the ground. It is found from the parameter survey of the thundercloud model calculation that the amount of the accumulation charge and the height of it are effective parameters for strong electric field on the ground and there is strong electric field enough to cause thunderbolt.北陸の冬季の雷は, 強い季節風に雷雲が流され,夏季の雷とは違って独特の電気的構造を持っているようである。特に雷の持つエネルギーが大きく,ひとたび落雷が起これば,甚大な機器の破壊や停電が発生する。冬季の落雷事故は雪害を伴っていることもあり,何らかの対策を講じる必要があるが,一発雷という特徴もあるため,予測がしにくく,雷雲や雷のメカニズムの解明が求められている。現在,ドップラーレーダーやドップラーソーダーによる降水域のエコーの観測,地上での電界の測定などが行われているが,実際,雷雲がどのような状態の時に落雷が発生するかはまだはっきりと分かつていない。しかし,現在,本稿中の図1に示したような電荷分布が雷雲内にあると考えられている。雷雲内には上昇気流と下降気流が存在し,正負の電荷が上下に分布している。冬季の雷雲は外気温が低くまた,上昇気流がそれほど強くなく,雲頂高度が低い。負電荷の周りとその下の部分は下降気流部であり,強い降雨,降雪を発生するこの部分が強いレーダーエコーの出る部分である。
著者
南部 公孝 北村 岩雄 村井 忠邦 池田 長康
出版者
富山大学
雑誌
富山大学工学部紀要 (ISSN:03871339)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.9-13, 1998-02
被引用文献数
1

Observations and measurements of discharge phenomena at falling of water drops are examined for understanding of the lightning discharge at early stage. Since there is seldom investigation about the discharge phenomena, the investigation of this field is very important.The experiments are carried out with very simple apparatus which consists of a funnel with applied voltage and two needle electrodes. It is found that water drops spread like a cone shape at applying voltage and breakdown voltage with falling water drops decreases to 20 percent of that without falling them.我々は,落雷があった後激しい降雨があることを度々経験している。しかし雷に関する成書には,落雷への進展はストリーマの先端での電離作用によるとしており,落雷と降雨の関係を述べたものは見当たらない。我々はこの関係を明らかにしたいとこの研究を始めた。この研究は,より一般的には気体と液体の2相における一様非連続媒質での絶縁破壊現象ということになり,まだ未開拓の分野である。
著者
薄井 勲 戸辺 一之 箕越 靖彦
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究計画で我々は、脂肪組織M1/M2マクロファージ(Mφ)とインスリン感受性との関連について、特にM2Mφとインターロイキン10(IL-10)の働きに注目し検討した。PPARγ活性化作用を持つテルミサルタンは脂肪組織MφのM2極性を誘導し、一方脂肪組織低酸素はM1極性を誘導した。ジフテリアトキシンの投与によりM2Mφを欠失することができるM2Mφablationマウスは脂肪細胞が小型化し、インスリン感受性が改善した。視床下部のIL-10シグナルの活性化は骨格筋のミトコンドリア関連遺伝子の発現を増強させ、耐糖能を改善させた
著者
菊池 万里 小林 久壽雄 久保 文夫 風巻 紀彦
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

研究成果の概略は次の通りである.・完備な確率空間上のBanach関数空間Xにおいて,マルチンゲールf=(f_n)のsquare function Sfに関するBurkholder型のノルム不等式c‖f_∞‖_X【less than or equal】‖Sf‖_X【less than or equal】C‖f_∞‖_Xが成り立つための必要十分条件を与えた.ここにf_∞はf=(f_n)の概収束極限を表す.・一様可積分なマルチンゲールf=(f_n)に対して,Af=(Af_n)を|f_∞|から生成されるマルチンゲールとする.XをBanach関数空間とするとき,SfとS(Af)が同時にXに属すための(Xがみたすべき)必要十分条件を与えた.・完備確率空間上の再配分不変なBanach関数空間Xに関連した新たな再配分不変空間H_p(X)及びK(X)を定義し,XとH_p(X),K(X)の間に成立する種々のマルチンゲール不等式を確立した.・完備確率空間上のBanach関数空間XにおいてDavis型のマルチンゲール不等式‖Mf‖_x【less than or equal】C‖Sf‖_xが成立するための必要十分条件を与えた.その結果として,この不等式が任意のマルチンゲールに対して成立すると仮定すれば逆向きの不等式‖Sf‖_X【less than or equal】C‖Mf‖_Xも自動的に成立することを証明した.ここに,Mfはfのmaximal functionを表す.・マルチンゲールf=(f_n)に対して,θf=(θf_n)をθf_n=sup_<0【less than or equal】n【less than or equal】m【less than or equal】∞>E[|f_m-f_<n-1>‖F_n]のように定義する.θfはfの最大振動を表す量と考えられる.Banach関数空間において,θfに関するある種のノルム不等式が成立するための必要十分条件を与えた.
著者
大井 信一 赤坂 総一郎
出版者
富山大学
雑誌
富山大学工学部紀要 (ISSN:03871339)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.61-64, 1961-03

06/02/02 08:09ウラン光度定量において,過酸化水素,チオシアン酸塩,黄血塩その他の無機試薬を用いる方法は一般に簡便であるが,鋭敏度はわるい。有機試薬は一般に選択性に乏しいが鋭敏警はすぐれているものが多く例えば,ジベンゾイルメタン,2-アセトアセチルピリジン,オキシン,1-(2-ピリジルアゾ)-2-ナフトール等がある。更に菅野によりケルセチンスルホン酸,フラボノール等のすぐれた試薬が報告された。之等有機試薬は妨害元素の分離又は隠ぺいの適当な方法を併用すれば,すぐれたウラン定量用試薬であり今後ますますこの種の有機試薬が見出されることと思われる。著者等はウランと錯化物をつくる事が報告された2,2'-ビベンズオキザゾリン,(以下BBOと略記する)およびビスサリチリデンエチレンジアミン,(以下,BSEと略記する)について光度定量用の試薬としての適用性について検討した。これらの試薬は何れも中性ないし弱アルカリ性においてウランと反応しBBO錯化合物はイソアミルアルコールに抽出されて青紫色,BSE錯化合物はクロロホルムに抽出されて黄色を呈しそれぞれ溶剤5ml中前者は2μg,後者は4μg迄のウランの定量が可能であることがわかった。鋭敏度はかなり良いが,鉄,コバルト,マンガン,ニッケル等とも反応し妨害をうけるのでこれらのイオンは予め除いておぐか,隠ぺいしなければならない。
著者
磯部 祐子
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、江戸後期から明治初期の漢文笑話集および漢文小説に 収められた漢文笑話の所蔵・書誌の調査、訳読と作品の分析を行い、各話の特色、パロディ化された出典の変遷を導く。これにより、江戸後期および明治の漢文笑話が、江戸前期漢文笑話の特徴であった小咄の翻案や中国『笑府』の模倣の枠を超えて、風刺性・物語性が増加していくことを導き、その背景を考証するものである。本研究は、これまで、日本における漢文笑話作品集のうち、『笑門』(1797)、『胡盧百転』(1797)、『笑堂福聚』(1804)、『善謔随訳続編』(1798)、『奇談新編』(1842)の基礎的調査と訳読を終えたが、今年度は『善謔随訳続編』について、個々の笑話を『沙石集』の影響・先行小咄との関連性 ・中国由来の典故の使用実態・使用語彙の特質・仏教色等の側面から考察し、訳読・解説およびその考察結果を論文として発表した。すでに発表公刊している「善謔随訳続編を読む(一)」(『富山大学人文学部紀要第67号』)に続編である、「善謔随訳続編を読む(二)」(『富山大学人文学部紀要第67号』)「善謔随訳続編を読む(三)」(『富山大学人文学部紀要第68号』)の二篇がそれである。その中では、『善謔随訳』と『善謔随訳続編』の相違とその背景にも言及した。また、『訳準笑話』作品と明代『笑府』の関係について、一昨年、中国寧波天一閣博物館・上海復旦大學古籍整理研究所共催の「明代的書籍與文學國際學術討論會」において発表した内容に基づき、中国の研究誌『文匯学人』第308期に、「從中國笑話到日本小咄」と題して発表した。この論考は、中国の笑話「笑府」の影響下にあると思われる『訳準笑話』作品を、『笑府』の原話と比較し、①用語の文言化、②内容の日本化、③ストーリーの合理化、④中日笑話の相違等の視点から考察したものである。他、『奇談新編』についても、訳読と解説を進めた。