著者
引網 宏彰 柴原 直利
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

褥瘡モデルラットを用いて、漢方方剤・帰耆建中湯の褥瘡に対する効果を検討した結果、帰耆建中湯は炎症性サイトカインの産生を抑制し、線維芽細胞が筋線維芽細胞に形質転換することを促進し、皮膚潰瘍の経過の終盤には細胞外マトリックスの再構築を促進させる作用を有する可能性が考えられた。帰耆建中湯は褥瘡治療において、貴重な経口治療薬になりうることが示唆された。
著者
徐 哲
出版者
富山大学
巻号頁・発行日
pp.1-107, 2016-09-28

富山大学・富理工博甲第108号・徐哲・2016/09/28
著者
藤本 孝子
出版者
富山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

Zucker fattyラットを用いて、インスリン抵抗性に対する和漢薬の効果を検討した。その結果、八味地黄丸に高インスリン血症改善作用、黄連解毒湯、桂枝茯苓丸、大柴胡湯、八味地黄丸、防已黄耆湯に脂質代謝を是正する作用が認められ、これらの作用によりインスリン抵抗性に好影響を与える可能性を示唆する知見が得られた。さらに、八味地黄丸ならびに防已黄耆湯投与後の脂肪組織における遺伝子発現をDNAマイクロアレイにより網羅的に解析した結果、和漢薬の投与により遺伝子発現が異なっており、これらの変化がインスリン抵抗性における作用発現の相違に関与している可能性が示唆された。
著者
山本 武
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

食物アレルギーを安全にかつ効率良く治療を行うために、抗原摂取によりアレルギー性消化器症状を発症する食物アレルギー病態モデルマウスに対して経口免疫療法を行う経口免疫療法モデルを作製し、葛根湯を併用した治療法の効果とその機序の検討を行った。経口免疫療法のみの治療よりも、葛根湯を併用した治療が腸管でFoxp3+制御性T細胞を増加させ、腸管粘膜免疫系のTh2免疫応答の過剰な亢進を改善し、食物アレルギーを有意に改善することを明らかにした。また、経口免疫療法や葛根湯併用療法によりアレルギー症状発症に関与する粘膜型マスト細胞が腸管で増加したが、葛根湯併用療法では粘膜型マスト細胞の脱顆粒によって増加する血漿中mouse mast cell protease-1量が減少した。このことから、葛根湯併用療法により粘膜型マスト細胞の脱顆粒が抑制され、食物アレルギー症状の発症が抑制されたことを明らかにした。葛根湯併用療法の治療効率改善の作用を示す葛根湯の有効成分を検討するために、葛根湯を構成する生薬の各単味エキスを経口免疫療法と併用して検討を行った。しかし、葛根湯併用療法と同様のアレルギー症状発症抑制効果は得られなかったため、葛根湯併用療法による治療効果は単独の生薬や成分による作用ではなく、複数の生薬エキスによる複数の機序を介した作用によることが示唆された。さらに、葛根湯併用療法による治療効果が長期間維持されるかを明らかにするため、治療後に抗原除去期間を経た後に抗原の投与を行いアレルギー症状の発症率について検討を行った。経口免疫療法のみでは抗原除去期間後に再びアレルギー症状を発症したが、葛根湯併用療法では治療効果が維持されアレルギー症状発症率は低かった。従って、経口免疫療法と葛根湯の併用療法による原因抗原に対する耐性獲得の可能性が示唆された。
著者
笹岡 利安 恒枝 宏史 和田 努
出版者
富山大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

エストロゲン(E2)は性周期や妊娠の制御に加えて糖脂質代謝にも関与する。本研究では、E2が制御性T細胞(Treg)を介して慢性炎症を制御することで糖代謝に関わる可能性を検討した。雄性マウスでは、高脂肪食負荷により内臓脂肪組織のTregは減少するのに対し、雌性マウスではTregは増加し、卵巣摘出によりTregの増加は消失した。また、雌性では高脂肪食負荷による慢性炎症が抑制されるのに対し、卵巣摘出により雄性の高脂肪食負荷マウスと同程度の慢性炎症を認めた。以上より、雌性マウスのE2はTregの内臓脂肪組織への局在と機能を高めることで、肥満に伴う代謝障害に対して防御的に作用する可能性が示された。
著者
笹岡 利安 和田 努 恒枝 宏史
出版者
富山大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

閉経期の情動と糖代謝調節の異常におけるエストロゲンとオレキシンの意義を検討した。雌性マウスでは、雄性とは異なり、高脂肪食負荷による代謝異常から防御された。雌性ではオレキシンが欠損したときのみ糖代謝異常を呈した。高脂肪食負荷した卵巣摘出-オレキシン欠損マウスはさらに過度の体重増加および耐糖能異常を呈した。そこで、高脂肪食負荷した卵巣摘出マウスにエストロゲンを脳室内投与すると耐糖能は改善した。しかし、高脂肪食負荷した卵巣摘出-オレキシン欠損マウスではエストロゲンによる耐糖能改善作用は消失した。以上より、雌性マウスの糖・エネルギー恒常性はエストロゲンとオレキシンの両者により維持されることを示した。
著者
中野 雅之
出版者
富山大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2017-04-26

当該年度、申請者はKAGRAの入射光学系、特にPre-stabilized laser(PSL)とInput mode cleaner(IMC)について開発とインストールを行ってきた。入射光学系は主干渉計に安定な光を送るためのサブシステムである。多くの安定化は光共振器を使って行われる。重力波観測機では強度や周波数の安定化されたレーザー光が必要不可欠であるが、当該年度は特に周波数安定化について、インストール、インテグレーションを行い、その性能評価まで完了した。KAGRAの周波数安定化システムは全部で3つの周波数参照を使った3stageの階層制御で行う。このうち、第一階層の周波数参照共振器であるReference cavity (RC)と第二階層の周波数参照共振器であるIMCは入射光学系の管轄である。PSL上に置かれるRCを使った1st loopでは、レーザー結晶に取り付けられたPZTやbroadband EOMにフィードバックし、レーザー周波数を制御し安定化する。RCの制御帯域は500kHz程度である。second loopではRCより大きく、共振器長も安定なIMCを周波数参照とし、さらなる安定化を行う。また、RCの方が安定な1Hz以下の低周波帯ではIMCの共振器長を制御する。 IMCの制御帯域は20kHz程度である。Reference cavity(RC)とIMCの制御は非常にロバストで、調整することなく1週間以上ロックし続けることができることは実証されている。また、現状では2kHz以上で要求値を達成していないが、達成のためのサーボフィルタの改善設計などを行い、要求値達成可能性を示した。
著者
籔谷 祐介
出版者
富山大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、集約化が計画されている公的集合住宅団地において、団地の共用空間マネジメントを団地居住者と団地周辺居住者が協働で行うことで、団地内外居住者がネットワークされた拡張型団地コミュニティが形成可能か検証し、それによる団地居住者への効果を明らかにすることを目的とする。具体的には、団地の集会所やオープンスペース等の共用空間を活用して、活用方法を話し合うワークショップとそれを試行する実証実験を繰り返し実施することによって共用空間のマネジメントの主体形成を支援し、拡張型団地コミュニティが形成可能か試行する。その後、団地居住者へのアンケート調査により、本手法が団地居住者に与える効果を解明する。
著者
堀井 満恵 石田 真由美 長谷川 ともみ 塚田 トキヱ
出版者
富山大学
雑誌
富山医科薬科大学看護学会誌 (ISSN:13441434)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.89-96, 1998-03

母乳哺育は児の成長ばかりでなく, 母と子の絆(attachment)の形成に重要な要素であると言われている1).本研究はこの母乳哺育の意義を念頭におきながら, 母乳栄養の確立, その援助・指導のための効果的基礎資料を得たく, 59名の妊婦を対象に妊娠の経過に伴って変化する乳房の形態とその増大状況, 並びに超音波画像による乳房内変化を追跡し, これらのデーターを基に母乳分泌との関連について分析・検討した.その結果, 1.乳房は妊娠12週前後に一度急激に発育し, 中期には殆ど変化が見られず, 妊娠24週を過ぎると著しく増大する.2.乳房の形態のみでは乳汁分泌の良否は判断できない.3.超音波画像は, 乳腺発達の程度が診断でき, 泌乳良否の予測が可能である.などが明らかとなった.このことから妊娠中の母親教育に際して乳房の外計測や超音波画像による乳房内の状況を個別に提示でき, 母乳哺育促進への動機づけに有用である, などが示唆された.
著者
伊藤 裕夫
出版者
富山大学
雑誌
Geibun : 富山大学芸術文化学部紀要 (ISSN:18816649)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.18-21, 2007-12

これからの大学は、単に教育・研究の場としてだけでなく、様々な形で地域社会と連携し、貢献することが求められてきている。富山大学芸術文化学部では、平成18年12月から、北日本新聞社と共催で「夕塾(せきじゅく)」をスタートさせたが、これもこうした試みの一つである。 夕塾は、基本的には学生たちが高岡市や富山県の文化や産業について、実際に関わってこられた方々のお話を通して学ぶ場を、広く市民の方々にも公開し、学生も市民も一緒になって皆でこれからの地域社会のあり方について考えていこうという特別授業である。学生には、普段の授業では受けられない、現実の社会や地域の課題に触れる機会を設け、芸術文化学部で学ぶことの意義をつかんでもらうとともに、これらを通して、大学を地域の文化拠点として、地域づくりに貢献していくための「出会いの場」を形成していくことを目指している。 以下、平成18年度に開催された6回の夕塾の概要を報告する。
著者
ペルトネン 純子 鳥田(宗吾) 稔弘 岡本 隆志 大熊 敏之 三船 温尚
出版者
富山大学
雑誌
Geibun : 富山大学芸術文化学部紀要 (ISSN:18816649)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.90-113, 2006-12

明治期の彫金師、海野勝〓が制作した宮内庁三の丸尚蔵館が所蔵する「蘭陵王置物」(明治23年制作)と「太平楽置物」(明治32年制作)の制作技法を彫金、鍛金、鋳金の分野から総合的に研究するため平成17年8月11日、三の丸尚蔵館において調査した。本稿は、「蘭陵王置物」「太平楽置物」の制作背景の研究と各作品の技法に関する詳細な研究を行い、明治期の優れた金属工芸作品の制作背景と高度な金属工芸技術の解明を目的としている。
著者
ペルトネン 純子 鳥田 稔弘 三船 温尚 大熊 敏之 岡本 隆志
出版者
富山大学
雑誌
Geibun : 富山大学芸術文化学部紀要 (ISSN:18816649)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.150-159, 2006-12

明治期の彫金師、海野勝〓が制作した宮内庁三の丸尚蔵館が収蔵する「蘭陵王置物」と「太平楽置物」を平成17年8月11日、三の丸尚蔵館において次のような研究者が調査を行った。鳥田宗吾は、象嵌技法を中心とした制作研究によって伝統工芸士と高岡市伝統工芸産業技術保持者という称号を持つ彫金技術者である。ペルトネン純子は、彫金・鍛金技法に関わる制作・技法・論文研究を行っている。三船温尚は、古代鋳造技法など鋳金技法に関わる制作・技法・論文研究を行っている。大熊敏之は、近代造型史、日本近代美術批評史などの論文研究を行っている。岡本隆志は、日本の美術・工芸に関する論文研究などを行っている。本稿は、調査時に録音したテープを起こし、編集を加えて、調査内容を掲載するものである。最終的な報告書には記載されない結論を導くための観察・考察経緯、観察手順、観察の着眼点などを記録した本稿が、今後の海野勝_彫金作品の研究だけでなく明治の金属工芸品調査や研究に僅かながらでも寄与できることを目的としている。
著者
山本 有子 庭前 京子 地田 千枝 赤壁 節子 星野 一宏 諸橋 昭一 笹倉 寿介
出版者
富山大学
雑誌
富山大学工学部紀要 (ISSN:03871339)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.121-129, 1997-02

Alpha-mannosidase is widely distributed in plant seeds and microorganisms. The purification of the enzyme recently received increasing attention because the enzyme was used to determined the carbonhydrate structures of oligo-mannoproteins, which has specific biological activities. An α-mannosidase was purified over 100-fold from Wata callus by successive chromatography with overall yield of 8%. The purified enzyme had a molecular mass of 250 kDa. This enzyme had the same optimum pH at 4.5 and optimum temperature at 50℃ as one from jack bean. This enzyme appeared to be metal enzyme containing Zn^<2+>. The enzyme hydrolyzed p-nitrophenyl- α -mannoside, methyl- α -n-mannopyranoside, benzyl- α -Dmannopyranoside, α(1->2)-mannobiose, α(1->3)-mannobiose, and α(1->6)-mannobiose, with Km of 0.527mM, 0.182mM, 0.190mM, 1.06mM, 0.696mM, 5.10mM, respectively The hydrolysis of various α-linked mannobiose indicated that the enzyme hydrolysizes the α-mannobiose in the order of α(1->6) > α(1->3) > α(1->2), unlike the conventional α-mannosidae.近年,生体細胞の細胞表面あるいは酵素表面に結合した糖鎖が,細胞の生理活性あるいは酵素活性に多大な影響を示すことが報告されている。例えば,maltoseを加水分解するヒトの腸間酵素は重量に対して30-40% の糖を含んでいるが,papainの加水分解に対して抵抗性を示す。一方,酵母の細胞壁と結合したmannoseを多量に含む糖鎖は,酵母の性的凝集反応を引き起こすことが知られている。特に,Saccharomyces cerevisiaeにおける糖鎖の構造は古くから検討されており,糖鎖の構造は,mannoseがα(1→6)結合で結合したoligo-mannose骨格に,側鎖として2,3個のmannoseがα(1→2),または,α(1→3)結合したmannobioseとmannotrioseが結合されていると報告されている。近年,この糖タンパクの生物学的役割を明らかにするため,oligo-mannose型糖鎖の構造を解明することが重要となってきた。そこで,この糖鎖の結合状態を決定するために,特定の結合部位のみを加水分解することが可能なα-mannosidaseが必要とされている。現在まで,jack beanから精製したα-mannosidaseが安価で入手しやすいことから,oligo-mannoseの構造決定に使われてきた。しかし,この酵素は加水分解速度が遅く,さらに,基質特異性としてα(1→2),α(1→3),α(1→6) 結合の順に切断するため,mannose含量を決定するために利用できるが,明確な構造決定に利用できなかった。また,近年,発見された微生物由来のα-mannosidase は,主にα(1→2),α(1→3)結合を特異的に加水分解すると報告されている。従って,oligo-mannose型糖質の構造決定を行うために新しい切断特性を有するα-mannosidaseの検索とその性質を決定することが急務となってきている。そこで我々の研究室では新しい起源からα-mannosidaseを生産回収することを目的として担子菌植物などを用いて検索した結果,綿カルスの細胞内にα-mannosidaseを高濃度に蓄積することを発見した。本研究では,この綿カルスからα-mannosidaseを高純度に精製することを検討した。さらに,精製した酵素の至適pH,反応速度パラメーター,基質特異性等の特性を,従来報告されているα-mannosidaseと比較検討した。
著者
磯部 祐子
出版者
富山大学
雑誌
高岡短期大学紀要 (ISSN:09157387)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.73-89, 1994

本論は,瞼譜の発生と変化分化の歴史を考察し,瞼譜に多用される色彩のうち,紅と黒を中心とした瞼譜派生の法則性及び色彩のシンボリズムについて考察を加えたものである。儺祭の仮面などが母体と考えられる瞼譜は,唐の「塗面」「染面」を濫觴とし,宋の戯文に至り,「抹」「〓」などの描写法が出現する。次いで,金の侯馬董墓などによって,滑稽役者の隈取りが類推可能となる。『元曲選』中には副浄,〓旦を中心とした部分化粧の記載が見え,末や外などにも脚色人物本来の顔色が特記されるようになり,このことは内面的個性を顔色に表そうとする具体的意識の嚆矢と考えられる。明の伝奇は,浄とそれ以外の人物を明確に区分するために,浄に瞼譜が使用され,昆山腔の脚色名は瞼譜の施行方法に基づいて行われるようになる。以後,清になると,色彩ごとに登場人物の特徴が次々とシンボライズされていくが,清中葉では,脳門と両眉に具象的図柄を描くことによって人物の特定化が更に明確になされていく。京劇を中心にまさに瞼譜芸術の極みへと向かうのである。この背景には京劇など花部の広範で雑多な享受者が存在したこと,加えて民間の社火瞼譜の影響があったことを指摘する。一方,京劇瞼譜の洗練には,宮廷の瞼譜観も反映されていたと推論する。また,色彩的に多用される紅と黒の二色の考察によって,内面を表象すると考えられた瞼譜は,(1)類似した個性を同色の範疇に収めただけでなく,(2)親子襲用,(3)姓名或は色彩語との類似性,(4)音通による相関性などの要素によって数多い登場人物の色彩決定がなされていった。しかし,(5)反面的意味での色彩決定,(6)舞台上の色彩バランスによる色彩の特定化などの点も同時に指摘し得るのである。併せて,中国の瞼譜には日本の歌舞伎のような厳密な正邪の区分は存在せず,その発生と派生をみても曖昧なシンボリズムしか見いだすことはできないと結論する。
著者
森田 信一 松本
出版者
富山大学
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.247-260, 2006-12-14

大正期の童謡運動は、鈴木三重吉が子どものための質の良い読み物を考慮し、「子供の純性を保全開発するために、現代第一流の藝術家の真摯なる努力を集め、兼て、若き子供のための創作家の出現を迎ふる、」(鈴木 1917)ことを目指して大正7年に創刊した「赤い鳥」に代表され、続いて「金の鈴」「童謡」などの雑誌も刊行された。これらの雑誌を中心とした童謡作品については、主に物語や詩などの言葉の面から多くの研究が行なわれている(藤田 1971,童謡詩人會 1997)。音楽面からは童謡運動に参加した作曲家について、小島(2004)が「赤い鳥」と「金の鈴」を中心にとりあげ、成田為三、草川信、弘田龍太郎、本居長世、中山晋平、藤井清水、山田耕筰、河村光陽の童謡作品について、特に旋律の音階構造を詳しく分類、分析している。これらの作曲家は、日本近代の洋楽作曲家として、大正期から昭和期にかけて活躍した人々である。それらの作曲家のうち草川信については、現在でも「ゆりかごの歌」「春の歌」「どこかで春が」「風」「夕焼け小焼け」「汽車ポッポ」「みどりのそよ風」などの童謡作品がよく聴かれ、演奏されている。草川は童謡の作曲家と捉えられることが多いが、実際には童謡以外にも、歌曲、合唱曲、器楽曲などを残している。しかしこれらについては、現在ほとんど知られていない。そこで本稿では、まずいくつかの資料とご子息(次男)草川誠氏へのインタビューから草川信の生涯と仕事を概観する。次に、和声学を中心とした当時の日本の作曲理論の状況を調査し、彼の音楽技法上の背景を知る。そしてそれらに基づいて、草川信の作品のいくつかを分析して、この作曲家の、和声構造を中心とした音楽上の特徴を明らかにする。これによって、これが草川信の作曲法の特徴をつかむとともに、大正から昭和期へかけての日本の洋楽の作曲様式の状況を知る、ひとつの手掛りにもなると考えられる。
著者
黒田 敏 桑山 直也 早川 由美子 出沢 真理 柏崎 大奈 秋岡 直樹
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

骨髄間質細胞とnon-Muse細胞を移植した各群の運動機能の回復は移植後21日目に明らかとなったが、その後安定期に達した。Muse細胞を移植したクループでは、機能的な回復は移植28日後には観察されなかったが、35日後に明らかとなった。組織学的評価では、唯一Muse細胞は梗塞脳に生着し、神経細胞に分化した。本研究では、Muse細胞が虚血性脳卒中患者における末梢血中に骨髄から動員されるという仮説を証明することを目的とした。虚血性脳卒中患者29人について定量的解析をした結果、Muse細胞の数は発症後24時間以内に増加し、喫煙とアルコール摂取量がMuse細胞の増加に影響を与えることが明らかとなった。
著者
鳥田 宗吾
出版者
富山大学
雑誌
高岡短期大学紀要 (ISSN:09157387)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.257-272, 2005-03

本稿は、およそ400年の歴史をもつ高岡の彫金技法に関する、歴史の概要、鑿の種類、象嵌技法、作品制作工程などを解説するものである。若い学生や後継者がこれらを参考にして、今後の高岡彫金の発展に貢献できることを願っている。また、高岡短期大学の学生作品が工芸産業界に大きな刺激を与えた最近の事例を紹介した。
著者
武井 勲
出版者
富山大学
雑誌
研究年報 (ISSN:03851958)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.151-195, 1990

1. 序論一一研究の目的,範囲,方法,および意義 (1)研究の目的 (2)研究の範囲 (3)研究の方法 (4)研究の意義2. アメリカにおける危機管理(CrisisManagement)理論 (1 ) アメリカにおける危機管理理論の概要 1) 危機管理理論の要約 2) 危機管理の必要性 3) 危機管理の目的,方法および定義 4) 危機管理の性質 5) 危機管理に対するリスク・マネジャーの責任 6) 危機管理教育の目標 (2 )危機管理の基礎概念 1) 危機(Crisis)の概念 2) 危機管理の諸段階 3) 危機管理の目標 (3 ) 危機管理計画の 5要素 (4 )危機管理の組織構造 1) 危機管理手続きマニュアル 2) 危機管理における命令系統 3) 危機管理対策本部 4) 危機における中央指揮所 5) 代替通信手段 (5 )危機管理の人材 1) 避難手続き 2) 危機警報 (6 )生産施設の危機管理 (7 )危機管理の運転資金 1) 緊急事態対応資金の準備 2) 資金の流れを平常通りに維持する能力 (8 ) 危機における市場の維持 (9 ) 特定危険に対する危機管理計画 (10)危機管理上の業務閉鎖手続き3. 日本における危機管理一一佐々淳行氏の危機管理論 (1 ) 日本人と危機管理 1) 日本民族の特性 2) 内閣安全保障室の設置経緯とその機能 (2 ) 危機管理の基本的な心得 1) 「予防」こそ最高の危機管理 2) 悲観的に準備し,楽観的に実施せよ 3) 「無駄」と「価値ある無駄」 4) 危機管理委員会とクライシス・マネジャーの任命 5) 「危機管理」と「管理危機」 6) 「本末転倒」の戒め(TheTail Wags the Dog.) 7) 「異常なLJ の維持,被害局限措置(DamageControl) 8) 自己管理(Self-Control) (3 ) 情報処理システム 1) 悪い情報の報告システム 2) 良い情報の報告システム(「巧遅」の原則) (4 ) 指揮命令 1) 「陣頭指揮」 2) 「率先垂範」 3) 決断・具体的命令発令前の情報源の確度の確認 4) 誤判断はっきもの,不決断は誤判断より悪い 5) 二段,三段命令 6) 命令,変更,混乱(Order,Counter-Order, Disorder) 7) 必ず代案を(Alternative) 8) 口頭命令は簡単明瞭に,復唱・復命の励行(参謀肩章の飾緒) 9) 任務付与 (5 )組織管理 1) 人事 2) 勤務評定 3) 会議 4) 広報 5) 補給経理4. わが国の危機管理の問題点 ( 1 )日本企業の危機管理の問題点 1) 企業の危機管理意識を高める程の脅威のなかった日本国内の社会環境 2) 危機管理意識は低く,ポリシーも未確立 3) 危機管理の担当部署および責任者の不在 4) "湾埠危機"にみる日本企業の危機管理に関する3つの問題点 (2 ) 日本政府の危機管理の問題点5. わが国の危機管理の在り方 (1 ) 日本企業に望まれる危機管理対策 1) 企業の危機管理ポリシーの明確化と専任者の早期設置 2) 危機管理担当者に求められる日常の業務と緊急時の対応 (2 )日本政府に望まれる危機管理対策 1) 危機管理ポリシーの明確化 2) 情報・ノウハウの一元化と提供窓口の設置 3) 国際交流の推進と国際的情報ネットワークの整備 4) 危機管理庁の創設および危機管理大臣の任命