著者
岡田 只士 榊 利之 橘高 敦史
出版者
富山県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

近年、血中ビタミンD(VD)濃度が炎症性腸疾患(IBD)症状の悪性化リスクと強く関連することが報告されている。本研究ではVDとIBDとの関係性を、動物モデルを使用して広く解析し、VDをIBDの治療や予防に活用することを目的とする。具体的には、①腸炎モデルにVDを投与し、VDの IBDに対する治療効果や医薬品応用への可能性を検討する、②VD欠乏モデルの消化管病態を解析し、IBD病態とVDとの関りを理解する、という二つの視点から研究を遂行する。 上記の研究を通して、食事やサプリメントによるVD摂取をIBDの治療や予防に繋げ ることを最終目標に本研究を推進する。
著者
星川 圭介
出版者
富山県立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本課題では2011年大洪水後のチャオプラヤデルタ農村部を対象に,治水事業がどのように進められているか,そして2011年をはじめとする過去の洪水年において地域住民が洪水にどの様に対処してきたかを調査した.その結果,農業についてはタイ政府の治水政策に沿った作付け体系に移行したものの,その変化は米価の上昇に支えられた側面が強く,将来的には予断を許さないことが明らかになった.また氾濫水に適応した住居の構築ができない貧困層の存在や,農村集落における冠水状況を悪化させかねない市街化の進展など,抜本的な取り組みの求められる社会的課題の存在も明らかになった.
著者
古澤 之裕
出版者
富山県立大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2014-04-01

無細胞系のHDAC阻害試験から、酪酸によるヒストン修飾の亢進は、おもに Class I HDACを介したものであり、Class II HDAC阻害に対する寄与はほぼないものと推測された。酪酸は時系列的にTregマーカーであるFoxp3を優先的に誘導する事がわかり、主にClass I HDACの中でも、HDAC1およびHDAC3に対する阻害を介して、Foxp3を誘導している可能性が高いと考えられた。
著者
畠 俊郎 川崎 了 菊池 喜昭 森川 嘉之 水谷 崇亮 金田 一広
出版者
富山県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

沿岸域における社会基盤施設を対象とし,微生物機能の活用により強度増進・遮水性向上および自己修復効果を得る新しい維持管理・機能更新技術について検討を行った。国内外でのビーチロックを対象とした現地調査と,人工ビーチロック形成試験から以下の結果が得られた。1)ビーチロックのセメント物質としてカルシウム,マグネシウム,シリカおよび鉄が期待できる。2)海域由来のSporosarcina aquimarinaを用いることで,砂地盤の強度増進効果と液状化被害抑制が期待できる.
著者
奥 直也 桑原 重文
出版者
富山県立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

両生類や爬虫類は、体表の分泌腺から悪臭や毒を出して捕食者から身を守ると考えられているが、実験的に証明されていない。そこで苦味と悪臭でヘビからの捕食を防ぐと考えられるツチガエルを材料に、ヘビ捕食作用の物質的実体と考えられる苦味物質と悪臭物質の同定に取り組んだ。カエルへの影響を極力抑えた非侵襲的な体表分泌物の採取法及び新臭気捕集法“ドライヘッドスペース法”を開発し、苦味物質としてrugosamarin Aと命名したペプチドを、また悪臭を構成する成分の一部としてイオノン誘導体と2種のアルデヒドを同定した。
著者
能登 勇二
出版者
富山県立大学
雑誌
富山県立大学紀要 (ISSN:09167633)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.pp51-55, 2011-03
著者
鎌倉 昌樹
出版者
富山県立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本年度は次のような項目において研究を実施した。1,神経化学的解析による疲労の分子機構の解明ロイヤラクチンの抗疲労作用を総合的に評価するため疲労の新たな評価系の構築を目指し、脳内における疲労の分子機構の解明に着手した。疲労の発現に大きく関与する脳を中心に疲労前後のマウスにおいて発現が変動している遺伝子を解析した結果、流水遊泳装置を用いて疲労させた後の海馬において発現が上昇する因子として、興奮性のシナプス伝達に関与するAMPA型グルタミン酸受容体(AMPAR)α1サブユニット(GluR1)と神経細胞においてアポトーシスのシグナル伝達に関与するB-cell receptor-associated protein 31(Bap31)を新たに見出した。一方拘束水浸ストレスを与えたマウスでは、GluR1とBap31の遺伝子発現に変化は見られなかった。従って、GluR1とBap31は精神ストレスではなく疲労の時にのみ発現が誘導される因子である可能性が考えられた。2,ローヤルゼリーの抗コレステロールの作用機構の解明ローヤルゼリー(RJ)は肝臓に対する様々な薬理活性を有す。しかし、その作用メカニズムやRJ中の有効成分は未だ明らかになっていない。そこで今年度は、RJの肝臓に対する薬理作用のメカニズムの解明にも着手した。その結果、RJの抗コレステロール作用は、コレステロール合成に関与するスクアレンエポキシダーゼの発現を転写レベルで抑制し、コレステロールの肝臓への取込みに関与するLow density lipoprotein receptor (LDLR)の発現を増強することに起因していることが明らかとなった。3,ロイヤラクチンが作用する肝細胞の受容体の同定昨年度、バインディングアッセイによる解析から57kDaローヤルゼリータンパク質(ロイヤラクチン)ははトランスフォーミング増殖因子(TGF)-αのアゴニストとして、肝細胞表面の上皮増殖因子(EGF)受容体に作用している可能性があることを報告した。さらに、ラット肝臓cDNAライブラリーを対象として酵母Two hybrid systemを用いた解析を行ったところ、ロイヤラクチンと相互作用するタンパク質としてRhomboidというタンパク質が新たに見出された。Rhomboidは、ショウジョウバエ(Drosophila)においてSpitzというTGF-α様のリガンドを切断し、EGF受容体を活性化している因子である。現在のところ、哺乳類細胞におけるRhomboidのホモログは見つかっているが、Spitzと相同性を示すタンパク質はいまだ見つかっていないことから、TGF-α様のロイヤラクチンが疑似的にRhomboidと結合したものと考えられた。しかし、ロイヤラクチンは蜜蜂においてRhomoboid-Spiz経路を活性化するという新たなシグナル経路を形成している可能性が示唆された。現在、Drosophilaを用いてロイヤラクチンが同経路の活性化しているか否かについての検討を行っている。
著者
平原 達也
出版者
富山県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、外耳道入り口に置いた小型スピーカから放射した計測信号を、頭部の周囲に置いた複数のマイクロホンで受けることにより、多点の頭部伝達関数(HRTF: head-related transfer function)を同時計測するシステムを構築した。この高速HRTF計測システムを用いると、多数位置のHRTFを15秒以下で計測できた。そして、このシステムを用いて、頭部を回旋させた状態のHRTF、頭部の近くから離れた位置までのHRTF、頭部近傍のメッシュ状の空間位置のHRTFを計測し、接近・遠離音像や文字軌跡の移動音像を再生するバイノーラル信号を合成できた。
著者
唐木 智明 張 帆 安達 正利
出版者
富山県立大学
雑誌
富山県立大学紀要 (ISSN:09167633)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.87-90, 2004-03-31

自発分極を有する酸化物強誘電体材料、(Ba,Sr)TiO_3と(Pb,Sr)TiO_3を化学共沈殿法で作成し、ナノサイズの結晶が得られた。硝酸塩とモノマーチタン(IV)テトラブトキシドとシュウ酸をスタート原料とした。中間化合物に対する分析により、全体の化学反応過程が明らかにされ、単一ペロブスカイト構造の結晶が合成できた。得られた(Ba,Sr)TiO_3と(Pb,Sr)TiO_3の直径はそれぞれ70nmと100nmであった。この結果により異なるナノスケールの結晶作成への道が開かれた。
著者
小林 香 片山 勁
出版者
富山県立大学
雑誌
富山県立大学紀要 (ISSN:09167633)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.42-49, 2008-03

限られた資源を,任意のタイミングでやってくる複数の利用者が利用するシステム-銀行のATMやスーパーマーケットのレジなどが誰にでも分かりやすい例である-を考える.利用者がやってきたときに直ちに利用できる(空いている)資源の数がゼロであれば,当然のことであるが利用できない利用者が出てくる.待ち行列(バッファ)があり,資源に空きが出るまで利用者が待つことが可能であれば,このシステム全体を,資源が利用できるまでの平均待ち時間で定量的に評価することができる.バッファが空になると,休暇(バケーション)で総称される副次的作業に資源を使う場合,利用者の平均到着間隔が資源1つの平均利用時間に近づくに従って,システム内に滞留する利用者数が増え,副次的作業が後回しにされる.必要なタイミングで副次作業を行うことができるように,今回は,本来の待ち行列の前にもう一つ待ち行列を準備し,2つの待ち行列の間にゲートを設ける.このようなゲートを導入したM/G/1+vacationシステムについての諸量を,Level-Crossing法を用いて解析をする.
著者
大曽根 隆志 岩田 栄之
出版者
富山県立大学
雑誌
富山県立大学紀要 (ISSN:09167633)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.60-68, 1991-03-30

By using Synthesized Crystal Growth Technology which can simultaneously grow several kinds of semiconductor crystals on a single substrate, it is proposed that high-performance Synthesized-CMOS Devices with high electron & hole mobilities can realize both of ultra high speed operation and ultra low power dissipation. Assuming the supply voltage of 3.0V and operation temperature at 77K, it is estimated that CMOS devices fabricated by the combination of (p-GaAs/n-Ge) crystals may show the most high performance characteristics among many combinations of element and III-V compound semiconductors. From the circuit simulations of CMOS inverter chain, delay time (τ) and product of delay time and power dissipation (τP) may be improved by a factor of 15 and 14,respectively, in comparison with the conventional Si-type CMOS devices. Moreover, it is expected that the integration density of the Synthesized-CMOS Devices may become higher by about 10 times.
著者
能登 勇二
出版者
富山県立大学
雑誌
富山県立大学紀要 (ISSN:09167633)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.pp34-37, 2012-03
著者
渡辺 幸一
出版者
富山県立大学
雑誌
富山県立大学紀要 (ISSN:09167633)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.152-156, 2004-03-31

北陸地方の山岳大気環境の評価を行うため、2003年の秋期(9〜11月)に立山において、オゾン(O_3)濃度の測定や霧水の採取・分析を行った。立山中腹の美女平(標高、1000m)で測定したO_3濃度の平均値は34ppbvであった。10月上旬までは、日中(午後)に濃度が高くなる明瞭な日変化が観測されたが、11月には、夜間に濃度の極大がみられた。日中の濃度増加は光化学反応によるものと考えられ、夜間の濃度増加は、山風による上空大気の沈降によるものと考えられる。夜間の濃度増加は10月においても観測され、10月上旬には、O_3濃度のダブルピークがみられた。霧水のpHは、3.3〜5.3であった。霧水のpHは、中腹の美女平より、山頂に近い室堂平(標高、2450m)のほうが低く、強い酸性霧(pH<4)も観測された。後方流跡線解析の結果から、強い酸性霧が観測された期間の室堂平の空気塊は、大陸の工業地帯を起源としていると考えられた。大陸起源の汚染物質による霧水の酸性化が、北陸地方の山岳域で起こっている可能性が示唆される。
著者
米田 英伸 原田 裕之 浅野 泰久
出版者
富山県立大学
雑誌
富山県立大学紀要 (ISSN:09167633)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.96-102, 2000-03-31

富山県内の土壌,下水処理場の活性汚泥,及び生物工学研究センター保存菌株(TPU)よりアゾ化合物である4,6-ビスフェニルアゾレゾルシノール(4,6-Bis)の分解微生物の探索を行った。その結果,好気条件である振とう培養,及びTPUからのスクリーニングにおいては4,6-Bisに由来する褐色を脱色する活性を示す株は一株も得られなかったが,静置培養では脱色活性を有する微生物8株を得た。この内,5株(No.1&acd;No.5)は活性の発現に液体培地への流動パラフィンの重層や絶対嫌気条件のガスパック中での平板培養を必要としたのに対し,残りの3株(No.201&acd;No.203)は活性発現にこのような厳密な嫌気性での培養を必要としなかった。また,No.201&acd;No.203の3株は培地中の4,6-Bis (0.002%)を10日間の静置培養により完全に脱色した。4,6-Bisが分解された培養液をHPLCにより分析した結果,アゾ基の還元的開裂により生成すると予想される4,6-ジアミノレゾルシノール(DAR)は検出されなかった。
著者
中川 佳英
出版者
富山県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

ヴァルター・ベンヤミンは、彼の著作「ゲーテの『親和力』」において、ゲーテが、この小説のなかで、彼の自由志向にもかかわらず、一方で宿命的な人生観、世界観に捉えられていることを指摘し、これを「神話的な力」と名付けた。本研究は言わばこの見解の批判的発展である。2005年秋に独文学会北陸支部研究発表会で口頭発表をした、「ゲーテ『タウリス島のイフィゲーニエ』と犠牲」においては、犠牲を迫る諸力(=神話的な力)と犠牲の儀式を廃止しようとする意志(=自由への意志)が当該作品の中で、どのように対決し、展開していくかを論証しようとしたものである。これは冊子体の科研費研究成果報告書に掲載されている。また、同報告書に同論と並んで掲載されている他の2論文について概要を述べると、まず、「『ファウスト』第二部第三幕におけるヘレナとフォルキュアス-美の啓蒙運動」においては、ヘレナの美という、文字通りの「神話」が、弱肉強食の生存競争を包摂しており、メフィスト扮するフォルキュアスとの口論を通じて、それがあぶり出され、最終的にヘレナの脱出という形で、この「神話」の克服が希望されていることを示した。つぎに「『親和力』における情熱、延期、昇華-オッティーリエとエドアールトを中心に」においては、情熱という、本来既成倫理や因習、すなわち神話的な威力をもったものを打破する力となるべきものが、度重なる「延期」行為を通じて、フロイト的昇華作用を受け、その結果、情熱自体が審美的方向に変質してしまう様を示した。以上、当初の予定では、「ゲーテ『タウリス島のイフィゲーニエ』と犠牲」を含め、これら3つの論を学会誌に発表した上で、同報告書に掲載するつもりであったが、諸事情から、そのための時間を得られなかった。しかし3つの論とも、近いうちにしかるべき学会誌に掲載するつもりである。
著者
渡辺 幸一 朴木 英治 久米 篤 青木 一真 中野 孝教 石田 仁 松木 篤 岩坂 泰信 松木 篤 田中 泰宙
出版者
富山県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

高所に出現する弱い黄砂(バックグランド黄砂)の動態やその自然環境へ及ぼす影響を評価するため、立山において、エアロゾル粒子、微量気体成分、降水、霧水、積雪などの観測・分析を行うと共に、植生への影響について検討した。年度による程度の違いはあるものの、毎年秋期に「バックグラウンド黄砂」の影響がみられることがわかった。立山山の植生は、大気汚染物質だけでなく、黄砂粒子の影響も大きく受けている可能性が示唆された。また、立山での観測と並行して、回転翼航空機による富山県上空大気観測も行った。観測結果から、高所では高濃度の光化学オキシダント物質に植生が晒させやすいと考えられる。