著者
村上 隆紀 小池 正徳 嶋田 徹
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告 自然科学 (ISSN:09193359)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.p157-162, 1993-10

細胞レベルにおけるトマト半身萎ちょう病に対する抵抗性を調べるたあに,感受性2品種(強力米寿,ヒカリ)と抵抗性3品種(豊将,モモタロウ,ハウスおどりこ)を用いて菌培養濾液に対する反応を調べた。菌培養濾液を含んだLS寒天培地上で,胚軸からのカルス誘導とカルスの生育を調査したところ,誘導されたカルスと生長したカルスの生重量は,濾液の濃度が高まるにつれて抑制される傾向にあり,抵抗性および感受性品種間に反応の差は認められなかった。
著者
本江 昭夫 福永 和男
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告 第1部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.p85-91, 1983-06

(1)山地の大規模草地において植生調査を行い,出現した種について積算優占度を求めた。出現頻度の高い19草種について,反復平均法で序列づけを行った。(2)序列づけされた種について,第1軸には牧草地の造成方法が,第2軸には利用方法が強く反映していた。(3)クラスター分析により,48スタンドが4種類の植生タイプに分けられた。すべての植生タイプにおいて,オーチャードグラスとホワイトクローバーが優占していた。さらに,採草タイプではチモシーとオオスズメノカタビラが,放牧タイプではケンタッキーブルーグラスとメドウフェスクが,野草タイプではササ類の優占度が高かった。(4)山地の大規模草地における植生の変異には,標高や立地条件よりも人為的な撹乱圧の程度が強く関連していると推察された。
著者
永木 正和
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.555-570, 1977-07-25

露地野菜生産者は,作付面積の増大が価格低落をもたらすという事実に熟知していても,自らによっては作付面積を制御できないため,クモの巣サイクルに陥って,価格暴落による損失を余儀なくされていた。一方,消費者もクモの巣サイクルのもたらす価格高騰が家計を不安定にし,露地野菜が必需的食料であるだけにその家計へのシワ寄せも大きかった。本来,この種の問題は,基本的には,生産者の投機的な作付行動の結果としてもたらされたものであり,投機性を排除した生産者の積極的な市場対応によって,自ら作付面積変動を制御して,需給均衡する価格の実現と維持を計らなければならない。しかし,現実には生産者が市場対応をとりうるだけの条件が整備されていないし,それがなしえた場合にも限界があった。そこに,政府等の政策主体が,露地野菜におけるクモの巣価格-供給量変動を断ち切るための積極的な政策対応がとられるべき必然性がある。小稿は,1)そのような安定価格と安定供給を実現するための政策対応として,いかなる種類の政策がとられるべきであるか,2)現行の国の価格補填政策がいかなる問題点を含むか,3)それではいかなる方式の補填政策が採用されるべきであるかについて考察した。要約すれば以下のようである。(1)価格安定化対策としての流通,市場対策としては,価格形成には直接関与せず,価格の空間的,時間的な競争均衡達成が可能な限り容易になしうるように体制整備することである。具体的には,市場,産地情報の収集,分析,公表と,産地が積極的市場対応をなしうる条件としての高生産力専業農家の育成,その集団化による主産地化,および共販体制の整備と計画生産,計画販売の推進にある。(2)現在の国の「野菜価格補填事業」は,それが生産者所得を補償する事後的な対応であるとともに,次年度の価格高騰を防ぐ事前的な対応の双方を狙いとする点で意義がある。しかし,a)全産地,全市場を対象とする補填政策でないために,限界生産者,あるいは弱小産地の切り捨てになる政策になりかれないし,価格変動抑止効果も小さい。b)補填額に限度があり,真の生産者収益の安定を保証するものではなく,しかもクモの巣サイクルを必らずしも収歛方向に指向させるものでない点で不十分である。c)「保証基準価格」は,所得補償と価格高騰抑止のいずれを重視するかによって算定方法が相違するが,現行の補填政策はその狙いが明確でない。(3)現行の補填方式の問題の反省に立って,所得補償と価格暴騰抑止の双方を同時に目標とする補填方式を提示した。それは,2段階的な補填方式をとり,基本的には,需給均衡供給量を超過して収益低下をもたらす場合,それが反収増による収益低下であれば適切な水準で補填し,経営の安定を計る。しかし,作付面積の増加による場合には,需要法則に従って収益が低下し,これによって生産者の自主的制御作用が働く余地を残した。この点で京都府の行っている「粗収益補償方式」と明確に相違する。次に,収量変動を考慮しながら,来期の価格暴騰を防ぐため,ある一定の信頼水準において需要価格が一定以上には上昇しないようにするための補填額の算出方法を示した。以上のような,2段階の補填方式を採用するなら,生産者の直面する需要曲線は2重屈折線として示される。ここに提示した補填方式が採用されることによって本来の価格安定,経営安定,ひいては需要に適合した安定供給が達成されるであろう。
著者
光本 孝次 松村 信雄 五十嵐 正
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告 第1部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.606-610, 1973-01

良い資質の乳牛のイメージを得るために,一般レベルの乳牛群,ブリーダーの乳牛群と輸入乳牛群の体型7部位と乳房形質12部位を測定した。測定時期は約乾乳期と約最高泌乳期の2時期である。1)体高,体長および尻長において,輸入牛とブリーダーのそれには非常に類似した平均値が得られた。輸入牛の腰角幅と〓幅の平均値はブリーダーのそれより大きいようである。一般レベルの乳牛は相対的に小柄である。2)輸入牛の乳房は泌乳による乳房の縦の変化が少なく,横の変化が非常に大きい。3)前後乳頭間隔では輸入牛の膨張係数が低い。
著者
川端 喬
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告 第2部 人文・社会科学篇 (ISSN:03857735)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.p245-274, 1976-02

(1) Lawrence's The Rainbow was published on the 30th September, 1915, and prosecuted by The Public Morality Council as 'a mass of obscenity of thought, idea, and action throughout', and forbidden to be sold on the 13th November, 1915. Lawrence says in one of his letters that "he had inside him a sort of answer to the want of to-day : to the real, deep want of the English people, not to just what they fancy they want". And he says in another letter that "the characters in the novel were not described in a certain moral scheme, but from the point of view that what they are as some greater, inhuman will. So we cannot find an old stable ego in them, but an another ego, according to whose action the individual is unrecognisable, and passes through allotropic states which are states of the same single radically unchanged element". (2) Tom and Lydia Lawrence describes their first meeting as a tacit coming together in concert of their two lives through the medium of inhuman will or soul's logic. To Tom women are the symbol for the further life which comprises religion, love and morality, and the fulfilment of his sensual desire. This conflict between spiritual and sensual life is sublated by dismissing his self-conscious ego and recognizing an otherness which cannot be controlled by a self-conscious ego. They consummated their relationship and their love surged and went down according to the rhythm of nature. Lawrence shows their relation as an ideal one. (3) Anna and Will Their relation is shown as a relationship which turns out to be egoistic through the opposition and contention of light and darkness, intellect and anti-intellect. It is ideal that Anna's world of intellect or light and Will's world of anti-intellect or darkness should be in an equilibrium. When the equilibrium between them is destroyed, their life becomes anti-life. Anna triumphed by destroying Will's mystical world, attacking it by intellect. But the result for her was only an ill-balanced self. She glorified and apotheosized her ill-balanced self as a perfect self. She danced trium-phantly before her Lord, egoistic God. Will lost his mystical world and gave himself up to a sensual life and pursued egoistically absolute beauty by his self-conscious ego and went in the direction of anti-life, sexual perversion. (4) Ursula and Skrebensky Lawrence seems to be trying to resurrect the life of modern man which almost suffccates by 'the average Self' which modern mechanical civilization forces us to be under. Ursula knows that the real world has lost its vivid life to 'the average Self' the commonplace. Things claimed as the highest good of the community are 'a general nuisance, representing the vulgar, conservative materialism at a low level', Skrebensky is the symbol for this ugly world. Debating with him, Ursula felt a deadness, a sterility around him. The lingering indefiniteness in their intercourse up to the time of his flight shows her conflict between loving him on the moral scheme of daytime consciousness and rejecting him or his anti-life world by her unconscious will. The firmness of being, the sense of permanency she had when she rejected Skrebensky completely and was in some way the stone at the bottom of the river, gives her a knowledge that instead of mad pursuit of eternity or absoluteness far away from the infinite God, we should accept God's creation and His love uncondionally and be at oneness with the infinite God. This basic relationship between God and man is understood as the point where man has to come back from his highly developed mechanical civilization.
著者
Cajayon Leticia Piornato 三浦 弘之 三上 正幸
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.35-45, 1986-11-30

ブロック状牛肉の深部に対するPseudomonas fragiとProteus vulgarisの影響について2℃で0,3,7および14日間貯蔵した時の変化を5回繰り返して調らべた。微生物学的分析の結果,P. fragiはPr. vulgarisよりも早く増殖した。P. fragi接種区のpH上昇は急速に起ったが,Pr. vulgaris接種区は緩慢に上昇した。揮発性塩基態窒素とアミノ態窒素の量的な変化は,P. fragiがPr. vulgarisよりもタンパク分解が大きいことを示した。非接種の対照区は貯蔵期間の終りの時期にわずかに増加した。SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動像の見かけ上の変化は,7日目におけるマイナーバンドの消失からP. fragi接種区はPr. vulgaris接種区よりも,タンパク質分解活性が少し大きいことを示した。走査型電子顕微鏡の結果から,筋線維に対する作用は,P. fragiを接種した試料が,Pr. vulgarisを接種した試料よりも腐敗の進行により崩壊が著しかった。筋原線維レベルでの観察の結果から,主要なタンパク質でないタンパク質画分の分解が起っているものと思われ,そのことは,SDSポリアクルアミドゲル電気泳動による結果からも支持された。
著者
リベラ W.C.D. 三浦 弘之 三上 正幸
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.207-216, 1981-11-15

Pseudomonas fragiは,冷却冷蔵された食肉中に占められる主要な微生物相の一つであることはよく知られている。塩類可溶性のタンパクの著しい減少は,Pseudomonas fragiを接種した鶏の筋肉のWeber-Edsall溶液抽出物の電気泳動図から明らかになった。即ち,Weber-Edsall溶液で抽出した鶏の筋肉に,Pseudomonas fragiを接種すると5℃で14日間経過した時に,タンパクの泳動バンドの性状と数に大きな変化がみられた。しかし,2日目までの性状や数にあまり大きな変化がなかったのではないかと思われた。スラブ電気泳動パターンによれば,塩類可溶性タンパクの分解はすでに5日間保蔵したあとにはっきりと起った。余分なバンドがMプロテインのところに現われ,7日後には非常にはっきりとしたバンドになった。そうして,ほとんどの泳動バンドは,14日目になると微生物のタンパク分解力によって消失した。このPseudomonas fragiの菌体外酵素は,鶏の筋肉のWeber-Edsall溶液抽出物に対して5℃で検討された。Pseudomonas fragiの菌体外酵素はセファデックスG-100のカラムクロマトグラフィにより精製された。その結果,タンパク分解活性をもつ2つのピーク(BおよびC)が観察された。これらの酵素画分の塩可溶性タンパクに対する崩壊のパターンは,対照の試料と同様に電気泳動的に研究された。ミオシンヘビーチェーンは,酵素画分Bによって小さなバンドが退行し,酵素画分Cでは完全に消失した。
著者
佐々木 基樹
出版者
帯広畜産大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

平成18年度は、レッサーパンダの後肢足根部位のCT撮影をおこなった。CT撮影には、左後肢を用いた。脛骨長軸と足底面が垂直な状態、および、その位置から足を可能な限り回外させた状態の2通りの条件で足根関節部位のCTスキャン撮影を行った。さらに、得られたCT画像データを三次元立体構築して、足根関節の可動状況を観察した。また、肉眼解剖によって、後肢構成筋の形態を検索した。肉眼解剖の結果では、前脛骨筋の筋質はクマ科動物に比べると発達していなかった。さらに、膝窩筋の付着部位は、脛骨の近位に終止し、脛骨遠位端から膝窩筋終止部までの距離を脛骨の全長で割った比率は0.58とマレーグマの0.25-0.34、ジャイアントパンダの0.34-0.35、ホッキョクグマの0.45-0,56、ヒグマの0.49-0.56に比べるとホッキョクグマやヒグマに近い値を示した。この膝窩筋の付着範囲の結果から、レッサーパンダでは効率的な下腿の回内は見られないと考えられる。しかし、レッサーパンダの足根関節のCT画像解析の結果では、距踵中心関節において距骨頭の舟状骨関節面を中心足根骨が大きく回転し、さらに、踵第四関節において第四足根骨が、踵骨の立方骨関節面を大きく内腹側方向にスライドしていた。その結果として足の内側縁がほとんど垂直に挙上し足底が完全に内側を向いていた。これは、マレーグマで観察された足根関節の可動域よりも大きかった。レッサーパンダは生態学的には十分樹上性に適応しているが、筋による樹上適応は認められなかった。しかし、足根関節の樹上適応は明らかに認められた。大型のクマ科動物とは異なり、体重の軽いレッサーパンダにとって、関節の可動域が十分に確保されさえすれば筋を発達適応させなくても木登りは十分可能であると推測される。
著者
呉 珊 豊 碩 小嶋 道之
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告 = Research bulletin of Obihiro University (ISSN:13485261)
巻号頁・発行日
no.36, pp.29-36, 2015-10

日本の伝統的な保存食品である米味噌と米麦味噌を各々1 種類,及び中国味噌である甜麺醤と2種類の大豆醤について,理化学特性及び機能性成分,抗酸化活性を測定した。米味噌は,明度が最も高かったが,メラノイジン量及びDPPH ラジカル消去活性は最も低かった。米麦味噌のポリフェノール量,メラノイジン量及びDPPH ラジカル消去活性は米味噌のそれらよりも高かった。甜麺醤の明度は最も低かったが,メラノイジン量,ポリフェノール量及びDPPH ラジカル消去活性は5 種類の中で最も高かった。今回使用した5 種類の味噌に含まれるメラノイジン量とDPPHラジカル消去活性との間には正の相関関係(r = 0.853)が認められた。またポリフェノール量とDPPH ラジカル消去活性との間にも正の相関関係(r = 0.668)が認められた。ポリフェノール量がほぼ同程度である場合,メラノイジン量が高い味噌のDPPH ラジカル消去活性が高かった。これらの数値を用いた統計解析の結果は,メラノイジン及びポリフェノール類が日本味噌及び中国味噌共に共通に含まれる抗酸化活性に貢献する主成分であることを示唆している。また,明度とDPPH ラジカル消去活性との間には負の相関が認められた(r = -0.712) ことから,味噌の明度が味噌の抗酸化活性の簡易評価指標にできるかもしれない。
著者
今野 怜 藤巻 裕蔵
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告 自然科学 (ISSN:09193359)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.125-133, 2001-10

1999年4〜7月に利尻山において各植生帯ごとの鳥類の種構成,各種の相対的多さや垂直分布について調査した.植生帯はエゾマッートドマツ帯,ダケカンバ帯,ハイマツ帯にわけられ,それぞれ46,21,16種の鳥類が記録された.これらのうち,主要種(相対優占度が2%以上の種)は,エゾマッートドマツ帯ではミソサザイ,コマドリ,ウグイス,エゾムシクイ,キクイタダキ,ハシブトガラ,ヒガラ,アオジ,クロジ,マヒワ,イスカ,ナキイスカ,ウソ,ダケカンバ帯ではカヤクグリ,コマドリ,ノゴマ,ルリビタキ,ウグイス,エゾセンニュウ,アオジ,クロジ,マヒワ,ギンザンマシコ,ウソ,ハイマツ帯ではアマツバメ,カヤクグリ,コマドリ,ノゴマ,ルリビタキ,ウグイス,アオジ,クロジ,ギンザンマシコ,ウソであった.垂直分布についてみると,北海道本島の山地と比べて全体に分布する標高が低くなっていた。
著者
加藤 健太郎
出版者
帯広畜産大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

原虫感染における糖鎖の役割について、以下の研究成果を得た。質量解析を用いて、原虫の膜蛋白質に結合するレセプター因子を含む複数の宿主細胞因子を同定した。また、原虫の感染阻止に効果的な物質を作製するため、多糖類に硫酸化等の修飾を付加した物質を作製し、細胞培養系においてその原虫侵入阻害、増殖阻害の効果を解析した。さらに硫酸化等の化学修飾を付加した糖鎖について、原虫感染を阻害する糖鎖分子と実際に結合する原虫蛋白質の同定に成功した。また、同定した原虫分子が実際に宿主細胞に結合することが示された。これにより、原虫感染に関わる糖鎖レセプターの役割を解析することに成功した。
著者
鈴木 省三 左 久 斉藤 保則 坂口 昭彦
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告 第1部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.p317-321, 1982-08

搾乳室進入順位と待機場内における各牛の位置・動態との関係から,進入順位決定に関与する要因を検討する目的で,ロータリー式搾乳室を利用する39頭の搾乳牛群について,15日間,30回にわたり,各個体の待機場内における移動状態を1頭進入するごとにフィルムにおさめた。待機場内の最初の位置は,最上位グループが最前列を選び,最下位グループは最前列を避ける他は場所を選ばず,中間グループは上位ほど前方に位置する傾向があった。待機場内では,1頭が搾乳室へ進入するごとにかなりの個体が位置を変え,総体的には逐次前方に移動するが,同じ位置に長くとどまるもの,一挙に2ゾーン以上前進するもの,後退するものなどがみられた。中間グループでは搾乳室進入に対する個体間の優劣関係は不明瞭で,待機場内の最初の位置,隣接する他の個体との関係,個体の習性・状態など偶発的要因が複雑に関与してその時々の進入順位を変えるものと推察された。
著者
藤巻 裕蔵
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告 自然科学 (ISSN:09193359)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.245-252, 1998-06

1976〜1997年の4月下旬〜6月下旬(高標高地では7月下旬)に北海道中部・南東部の調査路460か所でコムクドリとムクドリの生息状況を調べた。コムクドリとムクドリの生息環境は主に農耕地域で,一部住宅地も含み,これら2種の分布が重なる傾向が見られた。コムクドリは,いずれのタイプの森林でも観察されず,出現率は農耕地・林で19%,農耕地で20%,住宅地で14%であった。ムクドリは,森林では落葉広葉樹林だけで観察されたが,出現率は3%と低く,それ以外の環境における出現率は農耕地・林23%,農耕地36%,住宅地21%であった。両種とも標高400m以下に分布していた。調査路2km当りの観察個体数(平均値±SD)は,コムクドリでは農耕地・林0.3±0.7羽,農耕地0.3±0.9羽,住宅地0.4±0.9羽,ムクドリでは落葉広葉樹林0.1±0.4羽,農耕地・林0.7±2.8羽,農耕地1.0±2.2羽,住宅地0.3±0.9羽であった。農耕地ではコムクドリの方がムクドリより少なかったが,農耕地・林と住宅地では両種の生息状況に違いがなかった。
著者
竹内 正人 大島 義広 藤巻 裕蔵
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告 第1部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.p157-165, 1987-06

日高山脈の中部と北部の72か所で,1978-1983年の6年間に,1,145個体のネズミ類を採集し,これらの分布について調べた。種数と捕獲指数,種多様度は高山帯の低木群落では少なくまたは小さく,低標高の森林で多くまたは高くなった。高山帯の低木群落ではヤチネズミ属のネズミ類が優占し,森林ではアカネズミ属のネズミ類が優占していた。ミヤマムクゲネズミとエゾヤチネズミは,高山帯の低木群落から低標高の森林にいたるまで捕獲されたが,湿性高山植物群落や川沿いの森林では前者が多かった。ミカドネズミは様々な環境で捕獲されたが,少なかった。ヒメネズミとエゾアカネズミは森林,とくに針葉樹林以下で多くなった。カラフトアカネズミは非常に少なかった。