著者
石黒 直隆 富岡 直人 本郷 一美 松井 章 上原 静 江上 幹幸 山岸 則夫
出版者
帯広畜産大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

本研究は、縄文時代から中世にかけての遺跡より拙土する古代犬とオオカミの骨に残存するミトコンドリアDNA(mtDNA)を分離・増幅して古代犬を遺伝子面で復原し、日本在来犬の遺伝的系統を明かにすることを目的とした。1)縄文時代(20遺跡)、弥生時代(2遺跡)、古墳時代(1遺跡)、中世(1遺跡)、オホーヅク分化期(6遺跡)より出土した古代犬の骨よりmtDNA198bpを分離し、日本在来犬の遺伝的系統を解析した。北海道から関東にかけての遺跡では、ハプロタイプM5が多いのにくらべ、西日本から東北地方にかけてハプロタイプM2が多く、縄文時代からかなり複雑な遺伝子分布をしていることが明かとなった。しかし、縄文犬と弥生犬を遺伝的に明確に区別することはできなかった。2)中国試料のDNA分析と日本在来犬との遺伝的関係:中国の3遺跡(上海馬橋、大旬子、河南花国庄)から出土した古代犬25点をDNA分析した結果、10サンプルより残存遺伝子が増幅された。系統解析の結果、クラスター3に属した現生犬のM20の1サンプルを除いて、全てが日本の古代犬に検出されたM5,M10,M11のハプロタイプであり、日本在来犬の遺伝的起源が大陸由来であることが明かとなった。3)ニホンオオカミの遺伝的復原と日本在来犬との関係:日本在来犬とニホンオオカミとの遺伝的な関係を明かにするため、ニホンオオカミのmtDNAを解析した。形態的にニホンオオカミと同定された6試料(高知県:仁淀村、熊本県産、国立科学博物館所蔵の3試料、縄文中期1試料)よりmtDNA(750bp)の増幅し系統解析した結果、ニホンオオカミは犬と大陸のオオカミの中間に位置した。
著者
大原 洋一
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.431-445, 1979-11-20

アルファルファは世界に広く分布し,もっとも重要なマメ科牧草の1つである。この牧草は家畜飼養に必要な養分に富むものである。今回の報告は温度がアルファルファの生育,乾物収量に及ぼす影響に関する栽培学的面から実施した一連の研究計画の一部についてである。供試品種は北海道に適応する6種であるが,乾物収量の他に窒素成分及び6品種の1つであるライゾマ品種についてアミノ酸含量の分析を実施した。これらの研究結果を要約すると次のごとくである。1.供試品種はウィリアムスバーク,サラナック,バァナル,ナラガンセット,ライゾマ及びデュピイの6品種である。これらをファイトトロン内で15℃,20℃,25℃及び30℃の恒温として栽培したが初期生育,第1回再生,第2回再生とも25℃における生育がもっとも旺盛であり,乾物収量も高かった。これについで30℃,20℃,15℃の順に低減した。品種間ではサラナック,ウィリアムスバーク,デュピイの3品種が他の3品種に比し,より生産的であった。2.比較的低温に栽培したアルファルファは高温に栽培したものに比し窒素含量が高く,アミノ酸含量もこれに平行した。このように窒素含量,アミノ酸含量はアルファルファの生育に関連が深く,必須アミノ酸の含量は温度の上昇に伴って増加する傾向にある。今回,分析したアミノ酸は16種であるが,そのうちアスパラギン酸,グルタミン酸,ロイシン,リジン,アラニン,プロリン及びセリンは他のアミノ酸に比し高含量であった。メチオニン及びヒスチヂンが他のアミノ酸よりも少量であった。以上のごとく,今回の研究では温度がアルファルファの生育と密接な関係のあることを実証したが,この知見は多年アルファルファの栽培で問題になっていた栽培学上の若干の問題点を明らかにしたように思われる。したがってこの研究成果は日本の北方地域におけるアルファルファの栽培面積を増大せしめる可能性をもたらすものと期待される。
著者
大原 久友 福永 和男 吉田 則人 古谷 政道 大原 洋一 伊藤 具英 松岡 保男 伊藤 辰雄
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.225-"249-4", 1967-12-31

著者らは公共草地における造成・維持・利用管理に関する一連の研究を行なっている。今回の報告は北海道河東郡上士幌町字清水谷の町有公共草地において実施したものであり,この清水谷公共草地では主として放牧育成牛による放牧育成を行なうものである。その調査研究の結果を要約するとつぎのごとくである。1.この公共草地は10年以前に森林であったが,その後自然草地(混牧林)として馬の育成に利用されていた。1961年から3ヵ年間にわたり集約草地として改良し,1964年からの3ヵ年間は蹄耕法による簡易草地として造成したものである。その立地条件を示すと全面積: 127ha集約草地造成: 30ha蹄耕法による簡易草地造成: 60ha自然草地: 37ha地況: 標高は400〜480m,乾性地85%,湿性地15%である。土壌: 十勝岳C統火山灰で被覆される火山灰土壌であり,表土のpHは5.9,燐酸吸収係数は1970である。植生: 造成前の植生は乾性地ではカシワ,ミヅナラなどの広葉樹,湿性地ではヤチハソノキの林相であり,前者はササ型(ミヤコザサ),エゾヤマハギの優占する長草型,後者はヒラギシスゲの優占する長草型であった。気象: 一般に低温であり,積算温度は2300℃内外である。時として多雨,無霜期間が短い年もある。したがって一時的には普通畑作物の限界地帯であり,草地農業地帯に属する。2。造成集約草地では常法,つまり障害物除去,耕起,整地,施肥,播種,覆土,鎮圧によって造成した。そのうち施肥と播種はもっとも重要であるが,その量は造成年次によって若干異なる。肥料として炭カル,熔燐,草地用肥料2号(6-11-11),草種としてチモシー,オーチャードグラス,メドウフェスク,アカクローバ,アルファルファ,ラジノクローバを2.2〜2.5kg/10a混播した。蹄耕法による造成も集約草地に準ずるが,集約草地造成の場合よりもやや混播草種数を多くし,播種量も増加した。混播量は3.5〜4.2kgである。造成草地の植生はいずれもよく保持され,とくにオーチャーグラス(マスハーデイ),チモシー(クライマックス),メドウフェスク,ラジノクローバおよびシロクローバ(ニュージランド)などが旺盛に繁茂し,雑草の侵入を防止している。10a当り産草量は3トン内外であるが牧養力はかなり高い。造成後7年次の草地でもかなり植生構成が良好である。造成経費は集約草地の3ヵ年平均がha当り90,628円,蹄耕法による造成草地のそれは38,088円であり,後者の造成費は極めて少ない。[table]3,利用管理集約草地30haを9牧区,簡易草地60haを7牧区,野草地37haを3牧区,つまり全面積127haを19牧区,1牧区平均6.6haに区分し,放牧期間を通じて植生に応じて輪換放牧を行なった。輪換回数は牧区,年次によって異なるが,おおむね2〜7回であり,5回の輪換がもっとも多い。余剩の生じを草については乾草として調製した年もある。1965,1966,1967年における利用状況を示すと左のごとくである。[table]4.放牧期間における育成中の発育入牧時と中間時および終牧時に体位の測定を行なったが,その結果を示すと上のごとくである。入牧時と終牧時における体重の回帰直線はつぎのごとぐである。1965年入牧時Y=14.644x十96.06r=0.939 1965年終牧時Y=15.569x+116.86r=0.946 1966年入牧時Y=13.232x+108.72r=0.971 1966年終牧時Y=16.513x十155.947r=0.965このようにこの公共草地においては放牧育成牛にかなりの効果が認められたが,その原因として考えられる点を指摘すると(1)植生の構成,とくに少ない侵入雑草とマメ科率の保持(2)かなり高い放牧密度(3)植生に応じた適当な輪換方法5.補助飼料給与が発育に及ぼす影響放牧育成牛の栄養を向上せしめるため各群10ヵ月,12ヵ月,14ヵ月齢のもの12頭を用い骨の組成と同じ第3燐酸カルシウムおよび育成牛用配合飼料を給与した結果は左のごとくであり,補助飼料給与の効果は認められる。したがって,育成牛の栄養不良なもの,植生の衰退したときなどはこのようなミネラル,育成牛用飼料を補給することがのぞましい[table]6.経営収支経営収支では1964年は赤字決算(14万円)であったが,1965年以降は黒字決算(1965年は8万円,1966年は52万円,1967年は67万円)となり年とともに次第に黒字額が増加している。収入の主な財源は放牧料と採草料であり,支出の大部分は管理人のための賃金と肥料代である。以上のようにこの清水谷公共草地はかなり造成年次から年数を経ているにかからず,植生の維持がよい状態にあり,集約草地と簡易草地を組み合わせてかなり高い牧養力を保持している。さらに育成牛の栄養も良好にして発育効果も大であり,加うるに経営収支も黒字に転じている。さらに労力の面からみてもこの公共草地は熟練した管理人1人で管理できる単位としてもっとも適正な規模のものであろう。したがってこの草地はもっとも安定した公共草地の1つにあげることができよう。
著者
大原 洋一
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.79-88, 1980-11-29

この試験は,標高が高く,気温が低く,しかも土壌があまり肥沃でないような環境条件,つまり気象的にも地形的にもアルファルファの生育に適さない自然草地でアルファルファ導入の可能性を明らかにするために実施したものである。試験は1962年から1965年の4年間にわたって実施し,供試品種はナラガンセット,バーナル,デュピイ,イタリー,グリム及びライゾマの6品種である。これらの品種は海抜標高の424m,525m,717mの3カ所に3反覆の試験地を設定して栽培した。その結果を要約するとつぎのごとくである。1.一般に標高が高くなるほど気温が低くなる。生育初年目のアルファルファの生育は低標高の試験地の気温が高かったため高標高の試験地におけるよりも良好であった。このことは播種当初の初年目の生育は気温に対する感応が大きいことを示すものである。しかし,2年目以降の乾物収量では中位標高の試験地のものが他の試験地におけるよりも高いのは肥沃度が他の2カ所よりも高いからである。つまり,アルファルファの乾物収量に地力が大いに影響している。3年目以降になると,きびしい寒さのため冬枯れし,特に高い標高のところでは消滅してしまう。この試験結果から考えアルファルファの生育可能な標高の限界は600〜700m位であり,積算温度(5月1日から9月30日に至る1日の平均気温の合計)の下限は2,000〜2,200℃位に推定される。このようにアルファルファの乾物収量は気象及び土壌条件に左右されることが大きい。2.環境条件のアルファルファの生育に及ぼす感応は品種によって異なるが,供試した6品種の中ではナラガンセットとライゾマが生育期間に低温,濃霧の多い気象,日照時間の少ない環境の下でもっとも適していることが確認された。生育3年目では700m以上の高い標高に導入したアルファルファ品種の多くは冬枯れのため消滅するに至った。3.アルファルファの乾物収量と品種間,標高間,収穫年次間にそれぞれ1%の水準で有意差を示した。また積算温度間に正の相関関係がみられた。以上のごとく,この研究ではアルファルファの永続性を保持し,高い乾物収量をあげる標高の上限は700mであろうと推定された。しかし品種によっては永続性を保ち,冬損に耐える生理的特性をもっているものがある。したがって,このような冷涼な気象,凍結した土壌に耐えるようなアルファルファの育種を行うことも必要であろう。同時に適当な栽培管理を行うことも,このようなきびしい環境条件の下でアルファルファを導入する可能性が実現されるであろう。
著者
金子 章
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第II部 (ISSN:03857735)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.1-14, 1963-07-10
著者
芳賀 良一
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.37-44, 1967-03-31

1.ヒグマの繁殖は4歳から隔年に1産するといわれてきたが,昭和23年以降の飼育繁殖成績では,ヒグマの初産年齢は3歳で可能であり,また性周期は1年で,連年出産することも可能であることが明白となった。このことは昭和21年以後の捕獲数がそれ以前の捕獲数よりも増大していることの要因の1つであろうと考えられる。2.ヒグマの分娩時期は,37例の調査から1月下旬が最も多く,1月中旬・2月上旬がこれに次ぎ,2月中旬・下旬にも出産例がみられた。3.1腹の産子数は1頭ないし3頭で平均は1.7頭である。また産子の性比は雄が50.6%であった。4.北海道のヒグマの生息数は,捕獲統計によれば大正12年から昭和17年まで20年間の年平均捕獲数は約293頭で,およそ1,200頭の生息数と推定される。また昭和21年から昭和40年まで20年間の年平均捕獲数は約493頭で,生息数は3,000頭と推定される。したがって昭和21年以降にヒグマの生息数が増大したことが明らかである。
著者
清水 亀平次 後藤 仁 三宅 勝 小野 斉
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.160-170, 1965-03-25

昭和38年10月より翌年3月にわたり十勝,釧路,根室,北見など道東地区の専業酪農家各3〜6カ所の乳牛計198頭788分房について異常乳発生実態と改善に関する調査研究を行なった。その概要は次のごとくである。1)異常乳(C.M.T.+以上でかつ細胞数50万以上)の発生は最高が釧路の54.8%,最低が根室の19.2%,平均32.1%でC.M.T.++以上で細胞数100万以上の高度異常乳がこのうちの57.3%を占ぬていた(第5表)。2)異常乳295分房の細胞培養結果,ブドウ球菌が最も多く27.5%,レンサ球菌,混合(レンサ球菌あるいはブドウ球菌とミクロコッカスが主体),ミクロコッカス,その他の菌(コリネバクテリウム,大腸菌,枯草菌,カビ)の順にそれぞれ21.4%,17.9%,5.1%,3.4%で菌検出陰性は24.7%であった(第9表)。3)異常乳から検出されたブドウ球菌は正常乳由来のそれにくらべCoagulase陽性菌が多く,レンサ球菌ではB群レンサ球菌(Str. agalactiae)が大部分を占めていた(第10表)。4)細菌培養所見と最もよく合致したのは牛乳内細胞数でC.M.T.,N.F.T.,B.T.B.テスト,異常乳試験紙の順に感度が低下した。B.T.B.テスト,異常乳試験紙では反応陰性の中に高度異常乳が相当含まれるのがみられた。従って細胞数,C.M.T.の成績を勘案して異常乳を判定する方法が簡易で信頼度が大きい(第2,3,4表)。5)異常乳治療のため7通りの薬剤による治療試験を実施した。このうち複合ストレプトマイシン100mgとペニシリンGナトリウム10万単位またはこれらにPVP 100mgを添加したものを5%ブドウ糖水溶液50mlに溶解し,搾乳後の乳槽内にただ1回注入するだけで前者にあっては34.4%,後者にあっては35.3%が異常乳から正常乳えと改善され,これらの効果は1%以下の危険率で有意であった(第11表)。終りに本調査研究の実施に当りご協力を頂いた関係教室所属学生各位ならびに分離菌株の諸性状検査に終始援助くだされた岡重美,藤堅太郎の両君に感謝する。また治療試験に当り薬品を提供してくださった武印薬品工業KKならびに三共製薬KKに深謝します。なおこの研究は昭和38年度北海道総合開発企画部の委託研究費によって行なわれたものである。
著者
田代 真 加藤 幹郎
出版者
帯広畜産大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1995

一般にすれ違いと必然性を欠いた安易な結末に特徴づけられるメロドラマという物語形態は、各時代の支配的表象メディアにのって、各物語媒体(小説,演劇,映画)を横断してきた。とりわけ今世紀には、映画という物語媒体をつうじて、新しい物語ジャンルの生成と大衆文化の想像力の形成の原動力として、この物語媒体にとどまらない支配的、普遍的な世界認識方法として機能するに至っている。本研究では、従来の悲劇を規範とした文学研究からはともすれば取りこぼされてしまいがちであったこのメロドラマに着目し、この物語形態の構造と歴史を、文化史的、社会史的な文脈のなかで明らかにすることをめざした。具体的には、1.この物語形態の集約たる20年代〜50年代のハリウッド映画という物語媒体におけるメロドラマの生成と構造を、(1)個別ジャンルにおけるメロドラマ的要素、(2)ジャンル間の混淆とメロドラマの横断性、(3)映画産業のイデオロギーと観客の受容の歴史的形態の心理社会学的調査の分析によって明らかにし、翻って2.メロドラマ映画とその歴史的先行形態としてのオペラの比較分析を媒介として系譜学的に遡行し、3.(1)19世紀英国ヴィクトリア朝演劇におけるメロドラマ構造と観客に対する舞台効果の関連性および(2)18世紀イギリス感傷小説の発展過程におけるメロドラマ構造と語りの多元性におけるジャンルのカ-ニバレスクの関連性を探った。上述の分析によって、メロドラマの横断性とは、神学と非民主的イデオロギーを背景に発達した悲劇のジャンル的な固定性に対して、封建体制の終焉とブルジョワ階級の台頭という社会的道徳的価値的変動に対応する神なき時代の民主的イデオロギーとして、この物語形態に特有のジャンル混淆の原理に基づいて、各時代の多様な民衆的想像力の要請に答えつつ同時にそれを形成した、流動性(可塑性)のあらわれにほかならないことが明らかになった。
著者
澤田 学 山本 康貴 浅野 耕太 松田 友義 丸山 敦史
出版者
帯広畜産大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究は,各種の表明選好法を社会的関心の高い食品安全性問題に適用し,分析対象とした安全性・環境対応に係る属性に対する支払意志額(WTP : Willingness to Pay)の計測を通して,わが国消費者の食品安全性に対する選好の構造を実証的に明らかにした.分析対象とした具体的な属性は,(1)原産地や遺伝子組換え原料情報(地場産牛肉,生鮮野菜の原産地表示,遺伝子組換え作物の含有率),(2)牛乳製造に関するHACCP認証,(3)サルモネラ食中毒(サルモネラ・フリー卵),(4)トレーサビリティ(生鮮野菜,牛肉),(5)農業生産における環境負荷情報(家畜ふん尿処理対策,野菜の有機など特別栽培方式)である.分析の結果,HACCPラベル付加牛乳は,通常製品の価格よりも5〜10%高い評価を得ること,地場産牛肉の価値を高める第1の要因は,新鮮さで,次いで,安心,おいしさ,廉価性,安全性の順であること,ミニトマトのトレーサビリティに対するWTPは有機栽培野菜に対する評価額の4割程度であること,牛肉のトレーサビリティに対するWTPは牛肉購入価格の5%前後であること,非遺伝子組換え枝豆に対するWTPは遺伝子組換え作物含有率表示に影響を受けるが,含有率のある程度の減少幅については同一のものとみなされていること,せり実験による食品安全性に対する消費者のWTPは,新たに開発したネットワーク型のせり実験システムにおいて安定的で精度の高い結果が得られること,などが明らかにされた.表明選好分析では,被調査者からアンケート調査や実験によって食品安全性やグリーン購入に対する支払意志額を表明させるため,アンケート質問票の内容や実験環境が分析結果に大きく影響する.本研究では,分析課題にそって体系的に回答者の選好表明を引き出すように綿密・周到に設計されたアンケート質問票およびせり実験方法も公開した.
著者
神田 〓子 西村 肇 千葉 検事
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.348-354, 1962-10-10

昭和35年7月における道東農民の食糧構成ならびに熱量,蛋白質の摂取状況を階層別に比較考察した。その結果を総括すると1.全般的に,米以外の穀類および牛乳の消費量が多く,米および肉,果実が著しく少ない。2.カロリー摂取は1人1日平均2,135cal.であり,この89.8%は植物性食品から得ている。D階層のカロリー摂取は1,805cal.で著しく低い。3.蛋白質は1人1日平均77.Og摂取しており,そのうち24.5g(31.5%)は動物性蛋白質である。動物性蛋白質の摂取量は低階層にゆくほど低くなり,特にD階層は少ない。
著者
小野 泱
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.334-361, 1970-11-25

1963〜1968年に十勝地方の平野部から高山部までの特に音更川水域のブユ相を調査した結果は次の通りである。1.十勝地方には2属3亜属10種のブユを産する。調査の中心となった糠平地方には10種がすべて棲息する。2.成虫の出現期:各種ブユ類の出現期とその最盛期はオオブユ4,5,6月(5月中旬) キアシオオブユ5,6,7月(6月上旬) ウチダツノマブユ平地高地6,7月(6月下旬) 7,8月(7月下旬) オタルツノマブユ5〜9月(6,8月) アオキツメトゲブユ5〜9月(6月中旬) アシマダラブユ5〜9月(6月中旬) オオアシマダラブユ5〜9月クロアシマダラブユ5〜9月(6,8月) ァカクラアシマダラブユ5〜9月ヒメアシマダラブユ8,9,10月(8月下旬) 3.棲息場所:一定面積当り集中的に個体数が多くなる場所を河川型によって分けると源流型ウチダツノマブユ上流型アシマダラブユ,オタルツノマブユ,アカクラアシマダラブユ中流・下流型オオブユ,キアシオオブユ,アオキツメトゲブユ,オオアシマダラブユ,クロアシマダラブユ,ヒメアシマダラブユ河川の形質(川幅,流速,水深,底質など)によって棲息場所が規定されており,海抜高,水温,気温などはあまり関係がない。4.個体数:発生源となる好適河川のRiver densityが発生量を左右し,一定面積当りの個体数の多寡を比較すると,ウチダッノマブユーアシマダラブユーアオキツメトゲブユーオオブユーキアシオオブユの順に少なくなりいずれも普通種であるが,オオァシマダラブユ,クロァシマダラブユ,アカクラアシマダラブユ,ヒメアシマダラブユ,オタルツノマブユは稀少種である。5.高山部雪渓直下の原始河川の細流に大量発生するウチダッノマブユは氷河期のRelicであると推察される。6.吸血源:各種ブユ類の刺咬動物嗜好性はオオブユ,キアシオォブユ,アシマダラブユ人,豚その他牛馬 ウチダツノマブユ鳥類 アオキツメトゲブユ人畜,鳥類 ヒメアシマダラブユ人畜 オオアシマダラブユ馬,その他人,牛 クロアシマダラブユ,アカクラアシマダラブユ反芻獣,その他人 オタルツノマブユ鳥類 7.人体に特に被害を与える種:アシマダラブユ,オオブユ,キアシオオブユ,アオキツメトゲブユ。他の人体から吸血するブユ類はいずれも個体数が少なく被害はほとんどない。8.東大雪高山部で7,8月にウチダツノマブユが大量発生するが,人体から吸血するのはこれに混じている小数のアシマダラブユとヌカカの1種である。
著者
小野 泱 岩佐 光啓
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.751-768, 1976-06-25

1.1973年6月から9月にわたって各月毎に1回,4回にわたり日高幌尻岳七ツ沼カールボーデン(1,600m)とその登山口(900〜1,000m)において吸血昆虫の種類と月別発生状況を調べ,4属9種のブユ類,4属11種のカ類,1属5種のヌカカ類,3属4種のアブ類を確認した。特に七ツ沼におけるブユ類の日周活動についても調査した。2.一般に日高山系は特有の地形,気象条件,植物相などから大雪山系に比較して吸血昆虫の発生量は少ない。これは特に七ツ沼カールボーデンは乾燥した砂礫質で,同一高度の大雪山の高原状湿原と環境が著しく異なっている点と関係深いようである。3.ブユ類ではTwinnia sp.,Cnephia (Stegopterna)sp.の2属が今回の調査で北海道にも生息していることが確認された。種名は本州産,大陸産の類似種と幼虫,雄成虫の形態が比較されていないので後日検討すべきである。4.七ツ沼のブユ類ではTwinnia sp.が優占種となり,6月から9月まで見られ7月が最盛期となっていた。これに少数のアシマダラブユが混じ,きわめて少数のC. (Stegopterna)sp.,ウチダツノマユブユ,キアシオオブユ,スズキアシマダラブユおよびアカクラアシマダラブユが採集された。5.Twinnia sp.の日周活動は7〜16℃の温度範囲で,夕方にピークが見られる1山型消長が普通であった。しかし早朝から無風快晴15〜16℃となった日には朝夕にピークが見られる2山型を示した。6.ブユ類の刺咬活動は18〜28℃の温度範囲で観察されたが,優占種のTwinnia sp.は人体に吸血性はないと見なされ,アシマダラブユも亜高山帯のように明瞭な吸血性を示さなかった。7.カ類ではチシマヤブカが最も多かったが,大雪山系に見られるような大発生は認められなかった。七ツ沼で採集されたオオモリハマダラカは北海道未記種である。8.ヌカカ類ではヌカカが優占種となっていたが,本種も大雪山系のような大発生は観察できなかった。9.アブ類は4種発見されたが,それらの個体数は少なかった。
著者
杉田 聡
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告 (ISSN:13485261)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.107-170, 2020-11

本稿を私は「ドイツ詩の文法」と題したが、最初に「ドイツ詩」およびその「文法」の意味について、くわえて本稿を書くきっかけとなった直接の事情と今後の見通しについて、若干のことを記しておきたい。 「ドイツ詩」とは 「ドイツ詩」は、正確にはドイツ語詩である。ここで「ドイツ」は政治的概念ではなく、文化的概念である。だが、本稿では簡明を期して「ドイツ詩」と記す。こうすることで、複合語をつくる際に表現が煩瑣になるのを避けたい。また参照した各種文献を見ても、「ドイツ詩」という言い方が一般的である。つまり、ドイツ語でつづられた詩全体が――それがオーストリアのものであろうとドイツ国内の「方言」であろうと――本稿の対象である。現在は方言さえしばしば文字として書かれることで規範化される傾向があるが、規範化に抗する民衆の話しことば(民謡Volksliedや学生歌Studentenlied等における)をも対象に含めた(ただし例えば「ねえママ、欲しいものがあるの!」Och Moder, ichwell en Ding han! のように共通ドイツ語Hochdeutschとの違いが大きい語彙が並んでいる場合には、取り上げなかった)。 実は私がドイツ詩を読むようになったきっかけは、リートへの関心である。だから私が読んだ詩は、作曲家が付曲した詩であることが多く、その意味で偏りがあるかもしれない。詞華集(アンソロジー)ではとり上げられることの少ない、あるいは全くない「群小」の詩人をもとり上げているのは、そのためである(→引用詩一覧)。 そして私の関心がリートだったために、本稿では主に新高ドイツ語による詩を扱うが(それもリートの発展に合わせてほぼ18世紀以降〜20世紀初頭のもの)、時にはその後の現代詩や、逆に18世紀以前の古い詩を扱うこともある。また詩の理解のために、しばしば中高ドイツ語に言及する。 なおここで「リート」とは、主にピアノ伴奏による芸術歌曲の意である。一方、ドイツ語Liedは、芸術歌曲を含む各種の歌(例えば上述の民謡, 学生歌)ばかりか、詩をも含意している。しかもそれは、「叙事詩」(独和大‘Lied’)――叙事詩はかつて一定の節回しの下に語り(歌い)つがれて来たのであろう――のみならず、ゲーテの「さすらい人の夜の歌」Wandrers Nachtlied、「羊飼いの嘆きの歌」Schäfers Klagelied、あるいはメーリケの「妖精の歌」Elfenlied等に見られるように、抒情詩をも含んでいる。この点は日本語でも同様である。藤村の「千曲川旅情の歌」のように。 そして歌うsingenというドイツ語は、詩にも使われる。ゲーテは、詩は「読む」ものではなく「歌う」ものだと記しているが――Nur nicht lesen! immer singen!(Goethe, An Lina「単に読むのではない! とにかく歌うこと!」)――、それは、節回しをつけて歌うことではなく、韻文としてのリズムを意識して読むことを意味している。「文法」とは 文法は総じて規範性を要求する。「文法」は、古代ギリシャ語のgrammatikē、つまり文字grammaの技術technēから造語されたことばの訳語であるが、日本人が訳に用いた「法」という言葉は、grammatikēの役割をよく示している。文法は、言語利用の状況を分析する用具であるにとどまらず、ことば使いの正誤・良し悪しを判定する規範として一定の強制力を発揮せざるをえない。 だが、本稿で重視するのは、いわば詩の事実性である。本稿の課題は、規範意識をもって詩を評価することではなく、むしろそうした態度を排しつつ、現実の詩の多様性を記述することである。要するに、ドイツ詩が、音韻・語彙形成・統語法・語句への意味付与等においてドイツ語の規範文法から自由であり、その意味でむしろいかに文法の規範性を逸脱しようとするかを、論ずる。 例えば、主文において強調したい単語・句を文頭に置いた場合には、次の位置に動詞が来るのが、また、副文における定動詞は文末に来るのが、新高ドイツ語の文法的規範であり、これを逸脱した文は「非文」(非文法的な文)と見なされる。だが、詩はこれらの規範からは自由である。ハイネのように、日常のことば使いによって(したがって規範文法どおりに)分明な詩をつづる詩人もいたが、たいていの詩は、韻律上もしくは押韻上の制約から、あるいは――それ以上に――詩脚の並びが作り出すリズムや押韻を重視する立場から、むしろ規範文法を意図的に、もしくはやむなく壊す。そうすることなしに、詩はなり立たない。 もちろん、事実性も蓄積されればしばしば規範となる。少なくも、規範として機能することがある。規範からの自由を本質とする詩においても、いわば特有の「文法」が、歴史的に形成されてきたと言えるかもしれない。ドイツの詩が、ドイツ語の規範文法を逸脱する仕方で生みだされつつも(だからやはり慣れないと非母語話者にはドイツ詩は難解である)、それでも一定の規範が、つまり詩特有の音韻規則・造語法・構文法・比喩法等が、ひいてはたしかに「文法」と呼べそうな規範の体系を摘出することはできる。例えば「中性単数1,4格名詞につく形容詞の強変化語尾esは省略できるが、他の場合はおおむね許されない」といった、詩において見られる規範の集成として。 こうした、弱いとはいえ一定の力を有する規範の――もっとも詩人は常にそこから自由に創作するのだが――体系をまとめるのが、本稿の一面の意図である。ただし事柄によってはその規範力は弱く、「文法」というよりむしろ解釈者・鑑賞者にとっての認識枠組みと言う方が適切な場合さえある。例えば「本来冠詞がつくべき場所に、詩では冠詞が置かれないことがある」という現象は、もはや規範文法からの逸脱とは見なされないだろう。積極的にせよ消極的にせよ、それは詩という文芸形式から導かれる必然的な技法だからである。 本稿では、ひとまずドイツ詩の「文法」という言葉を用いるが、私の記述は以上のような意味をも含むものと理解いただきたい。以下、一般的な文法理論の区分を借りて、第1章で音韻論、第2章で形態論・語彙論、第3章で統語論、第4章で意味論・語用論を論ずる。 ただし、この区分は厳密なものではない。これらは、文法理論の下位体系というより観点であって、互いに他を想定せずにはなり立たないからである。実際一般の文法書は、主に品詞論を中核とし、以上の観点をないまぜにして記述されている。それゆえ第1〜4章は、おおまかな枠組みと理解いただきたい。 直接の事情と今後の見通し 付随的に、本稿を書くことにしたより直接的な事情と今後の見通しを、簡単に記す。私は5年ほど前から、地元の文化センターで「ドイツリートを原詩で楽しむ」という講座を担当してきたが、その苦労は小さくなかった。日々ドイツ詩を読み資料を準備しつつ、詩に特有の語法に翻弄され、『ドイツ詩の文法』の類があればと何度思ったかしれない。若干の注をつけた、ドイツ詩ないしドイツリートの選集はたしかにあり(生野他、佐々木、三浦、高橋②、野村等)、それなりに参考になるが、いかんせん個々の詩文に関する個別的な注では限界があると感じた。 とすれば、『ドイツ詩の文法』を、私自身が書くしかないと思うようになった。もちろん、私の非才さ・浅学さ・読書の偏りから限界は大きいが、試みに、これまでの考察を公にして、識者の批判をあおぎたいと判断した。現在の見通しでは、本稿は大部のものとなる可能性が高く、とうてい簡潔で手頃(コンパクト)なものとはならないが、後日、そうしたものを再度まとめるべく努力するつもりである。
著者
三浦 弘之 泉本 勝利 三上 正幸
出版者
帯広畜産大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

と殺後の家畜の枝肉を早期に冷却することによって食肉の品質劣化を防ぐいわゆるコールドチェーンは流通上のメリットとして一応は定着したが、一方においては急速に冷却されることによって食肉の熟成に関与する様々な酵素系が抑制され、例えばATPの分解が遅れるために死後硬直の最中に食肉を流通させるところから肉が"かたい"とか"うまみに欠けている"とかの評価を受ける様になって来た。本研究ではと殺後の家畜に低電圧電気刺激を行って種々の酵素系を活性化させ、いわゆる熟成を人為的にコントロールしようというものである。昭和61年度においては羊を供試動物とし、直接電圧で3.2〜3.8Vの低電圧で30秒、60秒、90秒、180秒の電気刺激を行って生化学的変化を調べることで肉質変換の機構を明らかにした。昭和62年度においては同様のことを3.2〜3.8V、13.8Hzで30秒、60秒、90秒、電気刺激を加えたホルスタイン肥育牛について生化学変化的変化を調べることで肉質変換の機構を明らかにした。昭和63年度においては最終まとめの年にあたるため研究もれの事項をホルスタイン肥育牛とホルスタイン経産牛をつかって精査し、特に電気刺激によって変換する肉質のうちタンパク質画分、ペプチド画分、アミノ産画分の変化について明らかにした。この3年間の研究成果によって、低電圧電気刺激によって起こる生化学的変化は、食肉色調の鮮明化、肉の軟化、トロポニンTの早期消失、3万、3.2万、3.3万ダルトンバンの出現による食肉の熟成などがみられ、肉質の変換が起こることを明らかにし、低電圧電気刺激は60秒間の刺激時間が最適であることを証明した。